牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

安心

2010-02-24 23:52:56 | 牛の管理



鼻環を付けた牛は、写真のようにはなかなか行かないものだ。
まして、写真のように若い牛ほど神経質である。
牛らとコミュニケーションを取るには、ある程度の我慢が必要である。
写真の場合は、掌を広げたまま、同じ場所に置いたままにしていることで、興味津々な牛らは次第に近付き、舌なめずりしたりしてくる。
そこで指などを動かしてしまわず、されるがままにしていると、写真のように掌に鼻環を乗せてくる。
牛らを捕まえる場合も、追っかけることではなく、じーっと待つことで寄ってくるので、そうなってから捕まえる方が楽である。

子牛市場ランキング

2010-02-22 22:41:41 | 素牛


新聞によると、平成21年度産地別黒毛和種の子牛市場毎の上場頭数ランキングが掲載されている。
北海道は目を見張る勢いの躍進ぶりである。
噂通り、競走馬の生産牧場や酪農牧場が黒毛和種の繁殖に経営転換しているための増頭であり、日本一の和牛産地になるは、そう遠くではないであろう。
増減率で北海道の2地域では19~21%の伸びであり、他地域では精々数%に過ぎない。
また、セリ価格については、これまでになく、全国的に平均化されている。
兵庫県や岐阜県が上位を占め、継いで宮崎県が高い平均セリ価格を示している。
これらの産地からは、但馬系の素牛の需要が高く、肉質系が取り合いになっているようである。
血統的には、肉質系と増体型からなり、全国何処から素牛を導入しても遜色が無くなった感がある。
平均上場価格は33~45万円の枠の中に入っており、優れた素牛は50~60万円で何処の市場でも同様の傾向である。
宮崎中央市場などは、全国からの購買者で賑わうために、平均価格を押し上げているようである。
賢い素牛の導入法は、平均価格の低い市場で、市場平均価格より多少高いレベルを入手するのが賢い導入法であると判断している。





分娩予定日

2010-02-19 21:56:03 | 繁殖関係


黒毛和種について、分娩予定日を換算するのに昔から、種付け月から3を差引、種付け日に10を加えて求めてきた。
この算出法の根拠は妊娠期間が285日とされていたからである。
現実にそれに照らして計算すると、283~285日となる。
黒毛和種の子牛登記書には、該牛の種付け日が印字されている。
08年11月以降、鹿児島県下から導入した417頭の在胎日数の平均を算出した。
その平均値は、290.4日で標準偏差は4.81であった。
従来の計算値からは5日以上も在胎日数が伸びていることになる。
以前は長期在体とされていた300日以上が16頭もおり、285日とそれ以下は71頭(17%)で、286~290日は143頭(34.3%)、291日以上は何と203頭(48.7%)であった。
また雌雄別では、雌289.45日(55頭)、去勢290.56日(362頭)であり、雌子牛の方が若干短い値であった。
このように在胎期間が伸びてきている理由には、和牛の成熟値が大きくなったことが考えられるが、生時体重が大きいほど在胎期間が長いかの傾向は見られなかった。
給与飼料や血統による影響などが関わっている可能性も考えられる。
この様な数値から、分娩予定日の目安は、種付け日に15日を加えて求める方が現実的であると感じた次第である。

和牛経営に挑む

2010-02-16 18:48:08 | 繁殖関係



「牛飼いはなかなか難しいです」
脱サラから数年、農家の跡取りとなった60歳間近の子牛生産者の言葉である。
親の牛飼いを見よう見まねで和牛の繁殖を行っていると言うことであった。
年老いた親が飼っていたという10数頭の母牛が飼われており、母牛の栄養状態は、太り過ぎず痩せ過ぎず、適当な状態で飼われていた。
数頭飼いなら素人でも周囲の先輩などのアドバイスで牛飼いは出来ようが、多頭飼育ともなれば、牛は何故草を食うかなどの特性や飼料給与法、牛の発育など成長の特徴、発情・人工授精・妊娠から分娩などの繁殖に関することなど牛の基本的な知識の有無が効率的な経営を遂行する上では、重要となってくる。
聞くところによると、周囲から生後3ヶ月経ったら親と話して、子牛用の餌に慣らすようにと言われたが、どのような乾草をどれくらい、育成飼料をどれくらいでどのように増やしていったらいいのか、子牛が良く下痢をすることがあるが、それは何故だろうかなどとも聞かれた。
そこで、牛飼いの手ほどきについて、地元経済連や獣医師などにわからないことは積極的に問いかけて理解されることや手っ取り早いところでは、子牛市場名簿などに「淡路和牛飼養管理マニュアル」などと子牛の発育に沿った飼料給与などが掲載されているケースがあるので、それらも注視して参考にするのも現実的な対応であり、技術が備わればオリジナルな飼い方を実践してはどうだろうかと勧めた次第である。
一方、高校卒業後海自で5年間入隊生活を経て除隊して、将来和牛の繁殖経営を行いたいとして、この4月から農業大学校で2年間学ぶという青年にあった。
人生色々あるだろうが、このような青年に会えて、和牛関係者として頼もしく感じた次第である。
農大卒業後の彼の実践力を見極めたいと思っているところである。
志を持って農業大学校などで基礎知識を学び、それらを習得した若者達がその知識を活かして成果を挙げているケースが多くなりつつある。
話を戻すが、脱サラで牛飼いに苦慮している彼には、中央畜産会または畜産技術協会などが、発行している牛飼いの手引き書があるので入手するようにアドバイスした次第である。
~和牛子牛を上手に育てるために~ など

美味しい牛肉生産

2010-02-12 23:44:23 | 肥育
不飽和脂肪酸が多ければ、風味豊富で美味しい牛肉が生産されるとのことで、多くの肥育関係者は少なからず意識しているであろう。
この不飽和脂肪酸には、味と深く拘わっているオレイン酸割合を多くすべしとしている。
それには前期からTDN値が低くDCP値の高い配合飼料を与えると良いと言い、それを実践している組合組織があったり、糟糠類の割合を多くすればいいなども聞く。
何れにしてもそれが確実か否かは、定かではない。
最近はオレイン酸云々をブランド化の条件にしている箇所があったりで、それらの手法を口外しないケースもある。
何れにしても、さらに美味しい牛肉を目指すには自らそれらを試すしかない。
筆者らは肥育に不可欠な穀類・糠類と5 %未満の補足飼料は何れもバランスよく配合しているが、牛肉の味については評価頂いている。

冬場の見回り

2010-02-09 17:50:14 | 牛の管理



今冬は、積雪がなく凌ぎやすいと感じていたところ、日曜日には15cmの積雪となり、朝夕は車道がアイスバーンとなった。
畜舎も水が凍てついて昼前には牛らがモーモー泣き出したが、午後1時頃には出水した。
昨日の朝夕は-5℃以下に下がった。
その凍ても、今朝になって気温が上りだし昼間は15℃まで気温が上昇し、周りの降雪も日陰のみになった。
陽射しを求めて牛らも屋外に出たり、運動スペースのない箇所では柵の隙間から頭部を外に出して陽射しを求めている。
寒風を避けるために畜舎の周りを囲んでいるために、牛舎内が薄暗くなっている。
牛らの体調を見回るが、完全には目が届かない。
この様な時は、陽気の良い時期より見回りを入念にする必要がある。
V/A欠乏症や尿石症などはそのタイミング次第では大事になりかねない。
牛らを守るための処置が事故を招くなどは本末転倒である。
家畜化された牛らは、事故や病気から自らを守ることが出来なくなった。
家畜化した人間がそれに変わる配慮を怠ってはならない。

がんばって欲しい京都産牛

2010-02-08 18:27:25 | 素牛


関西で和牛の肥育素牛を導入しているのは、兵庫県産と京都府産であるが、このうち京都産の素牛は、元もと但馬系であったが、現在ではその大部分の母体は鹿児島系である。
これまで、京都産は、月齢と体重は大きいけれど、肥育後の出荷時の体重は他産地のものより、小さいが定評であった。
九州系に換わってからは、増体型となり肥育中の発育や増体はかなり改善されてきている。
これまで、但馬系の特徴で有る発育難のために順調な仕上がりに辿り着くのに難儀してきた。
今では京都産も九州産との区別が付きかねないほど大きな口をして食欲旺盛な素牛に変わっている。
増体は改善されたが、但馬牛特有の小ザシで美しい枝肉は姿を消しそうな気配である。
今回出荷した京都産の牛に、偶々母牛が安平-糸秀に地元の但馬系菊幸を交配したのがいたが、美しい小ザシでA5の格付けであった。
生後29.5ヵ月であったが、さすがに小格で枝重が450kgで神戸肉ブランドに匹敵しそうな結果であった。
素牛価格を調べたら、08.6月市で導入したが、38万円であった。
これまで、この様な牛もいたが今では、影を潜めつつある。

兵庫県では素牛難が予測される中、本来の但馬系で辛抱しておれば、肉質系京都産素牛として関西の肥育関係者に珍重がられる未来があったはずである。
京都産牛の将来像が見えてこぬ中で、生産規模にも厳しい状況が見られるようになってきた。


短い角

2010-02-07 17:36:12 | 牛の角



写真の牛は生後26ヵ月令の黒毛和種雌牛である。
7ヵ月令で導入したものであるが、子牛の頃から角が伸びず、除角は実施していない。
現在では5cm程度で他の牛とは比較にならないほど短い。
通常雌牛は、去勢牛に比し、性格が荒く同房の牛に角を向けることが多々ある。
去勢牛は温順なため、除角することはないが、雌牛は導入直後に角の先端を切除して見たほどである。
写真の牛は角が短いために他牛を突くこともなく穏やかに育っている。
和牛の角は、良く伸びて黒くなるが、この牛は除角した牛のように肌色みたいな角質だけである。
この牛の角が何故伸びなかったかは、理解し得ていないが、この牛の姉に当たる牛も短く、兄に当たる去勢牛は通常のように伸びている。
何代祖かにそれらしき交配親がいたために、その遺伝子の発現なのであろうと想像を巡らしている。
管理上は、性質温順で管理しやすい優等生であるが、後は肥育成績が伴えば特等性なのだが。


日向ぼっこ

2010-02-04 21:40:10 | 肥育


暖冬の予想が外れて、このところ氷点下すれすれの寒さが続いている。
半月前に南の諸島から導入した子牛らには過酷な環境なのかも知れない。
早朝それらの房を覗くと、真っ白な吐息を吐きながらひとかたまりに固まって座り込んでいる。
南の島では見られない光景だったに違いない。
これらの環境の変化から体調を案じているが、彼らは意外と元気である。
ビタミン剤の投与や導入時の抗生剤の効果もあろうが、青々とした乾草を多給していることもそれらをカバーして体調維持に繋がっているのであろうと判断している。
低温下でも昼頃になれば、僅かばかりの陽射しを求めて全頭が日向ぼっこのために屋外に出てくる。
気持ち良さそうな光景を目の当たりに、溜飲を下げながら彼らに向かってにんまりと触手を求めると一斉にそれに応えてくれる。
至福のひとときでもある。

多産

2010-02-01 17:56:21 | 繁殖関係



写真は15産した黒毛和種のベテラン雌牛である。
筆者の頭髪はそろそろ霜降り状態だが、この牛は睫毛が白くなっていた。
(社)全国和牛登録協会では、15産を果たした牛を表彰している。
しかし、鹿児島県では、10数年前からこの表彰を辞退している。
産次が進むほど、その産子の経済能力が低下することから、母牛の早期更新を促す狙いや、
早期更新することで、雌子牛の繁殖牛としての供用率が高くなることなどが考慮にあった。
そのこと事態が、和牛繁殖経営にプラスなのかの結論には辿りかねないが、多産することで低コスト生産に繋がることだけは疑う余地はない。
健康で何時までも多産可能な繁殖雌牛であれば、その能力を完全燃焼させることが、畜主の果たすべき姿ではないだろうか。
改めて、写真にあるベテラン牛の功績を讃えたくなる。