鹿児島県から毎回届けられる競り市名簿に変化が起きていた。
知名度の高い種雄牛の産子数が激減しているのである。
聞くところによれば、主産地の市場管内に指定した種雄牛の精液は、それ以外の地域では入り難くなったという。
今回の精液の流出の制限は、精液の保存法や輸送法など流通手段が未整備時代であった頃は、やむなく郡単位で種雄牛を所有していた頃の方式に逆戻りした感がある。
牛肉の自由化を阻止する運動が叫ばれた頃は、国内一団となって和牛の改良を進め、外国産牛肉との差別化を鮮明にする動きがあった。
その影響からだろうか、それまで精液の県外流出は不可であったが、次第に全国各地で同じ精液の供用が行われるようになった。
その効果により、肉量肉質の改良が進み産地間差のない子牛生産が実現した。
今ここに来て、精液の流出制限が始まった意図がどこにあるかは定かではないが、子牛のブランド化を目指そうとしているのは確かであろう。
或いは産地間競争を煽り、県内レベルを高め、再び和牛の品質日本一を奪還する意図なのかもしれない。
これら大義名分は結構なことであるが、それらの結果如何では、県内の地方市場の切り捨てに繋がりかねない。
現に、離島などでは、当初に述べたように、主要種雄牛の産子が激減している。
つまり、目玉商品が減少していることになる。
さらに、市場を薩摩半島と大隅半島のそれぞれの1箇所ずつに整理統合するという構想のようであるが、その布石なのかと要らぬ憶測もしたくなる。
まさかとは思うが、種雄牛繋養者の意向ということも否定は出来ないが、それではこれまで供用してくれた生産者への背任行為と言うことに繋がりかねない。
これでは、県内産業の将来性が万全だとは言い難い。
地方や離島などは、新たな目玉となる種雄牛の掘り起こしなどの手だてが不可欠となってくる。