牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

生産現場ではA-5なんて

2008-06-30 20:15:14 | 肥育


今日はA-5の肉ですき焼きにしようか!なんて言ってみたいものだ。
つまりは消費者ではなく、生産者サイドでは、なかなかA-5レベルの牛肉に有り付けない。
何もお金を出せばチャンスはあろう。
けれども、自ら生産したものは、高級であればあるほど"もったいない"思いにかられるものだ。
本来なら、りっぱな商品であるかは、生産者自身が食味し、自信が有ればお客さんに勧め、買って貰おうと言うことになる。
しかし、農家的志向は昔から零細であったことが、身に付いてしまい、自ら試し食いするくらいなら売ってしまえの志向なのである。
自信を持って生産し、自信を持って販売できるような強い精神状態を養うのも、生産基盤を拡大する上で不可欠なことでもある。


肥育用配合飼料

2008-06-29 20:19:50 | 肥育


前述したが、肥育飼料について、他所ではどのような配合飼料を使用しているであろうかと、興味津々の御仁が多々おられるようである。
肥育飼料は、何処のセンターでも大差ない飼料を使用しており、基本的には穀類50%、ふすまなど糠類35%、その他に産業副産物などが含まれているはずである。
要は、内容ではなく、前中後各期の粗飼料と濃厚飼料の使い分けであったり、配合飼料をどのステージで多量与えるか、少なく与えるかなどを一工夫しているかいないかである。
それにより、若干の成果の差が現れるかも知れない。
増体能力を高めながら肉質を良くする与え方を工夫するかであろう。

写真は肥育用配合飼料である。何処のセンターでも同様の写真しか撮れない。
穀類では、黄色トウモロコシを30%以上使用することは、カロチンなどの影響から、脂肪の色がその割合が増す毎に黄色が濃くなる傾向がある。
また、マイロを15%以上混ぜれば尿結症を発症しやすくなる。
これは同症の結石の成分であるリン酸マグネシウムが他の餌に比し、マイロには多く含有しているためである。

肥育配合も例外なく、価格の高騰で今後の肥育経営に大きな懸念材料として覆い被さってきている。
鹿児島などでは、穀類の自給生産を本格的に取り入れようとする畜産農家が出始めたというニュースを見た。
代替え飼料や自給生産や飼料米の利用など、真剣に考慮すべき時代に至った観がある。

肥育育成期用の餌

2008-06-28 20:11:53 | 肥育

肥育センターにより、与える飼料の種類は、まちまちである。
扱う飼料が同一の飼料会社であれば、それらの肥育センターは似通った飼い方を行っていよう。
古いタイプの肥育センターでは、上物を期待して独自の飼い方を行い、その飼い方を他に知らそうとしない例がままある。
しかし、数千頭以上の大規模経営者たちは、時流に合わせ、情報収集による技術の確立を目指していて、餌とか肥育法などについて聞かれれば企業秘密だなどの声は聞こえてこない。
国内のどこかで自らに必要な情報源があれば、臆することなく出掛けるという具合である。
それが掛かる産業の発展に繋がり、強いては自らの経営にプラスになることを認識されておられるからである。

写真は、著明な肥育関連飼料会社製の肥育前期用の配合飼料である。
穀類が50%、そう糠類30%、その他20%の内容で、その他の中にヘイキューブが若干混合され、カロチン含量を増し、嗜好性が考慮されている。
これらには、写真にあるようにペレットが数種混ぜてあるが、その内容については、明らかにされていない。
当然、具体的な内容が公表されるべきであろう。
肥育育成用配合飼料は、写真とは異なる仕上げ配合と同様な形状のものもある。
育成の場合は、子牛の骨格等発育を促すため、多少タンパク質の割合を高くしたものとなっている。

この飼料を仔牛に給与されているケースが、生産履歴等で多々ある。
この飼料は、肥育飼料であるので、子牛育成用ではない。
メーカーもそれぞれの飼料を発売している以上、それらの指導は徹底して頂きたい。
買ってもらってからのことは、お客次第だからでは無責任というものである。




導入牛は6ヵ月令

2008-06-28 00:16:51 | 素牛



写真の牛群は、生後6ヵ月令の子牛たちである。
肥育素牛として導入された。
近年、和牛の子牛市場で競られる子牛の平均生後月齢は、約9.5ヵ月令である。
これらの子牛は、商品化を高める目的で、やや過肥気味で出てくる。
生産履歴の中には、給与飼料の種類がトウモロコシや大麦と記されたものも少なくない。
つまり、肥育状態で飼われている。
枝肉重量を500kg以上にするには、肥育初期に良質粗飼料を飽食させて、俗に言われる「腹づくり」をしなければ、肥育後半まで、肥育配合を順調に食い込んでくれない。
競り市に出すまでに、肥育状態の子牛は、その粗飼料の食い込みに難があり、順調な肥育を全うできない。
その点、6ヵ月令で導入すれば、粗飼料の利用性は、それが目的のため非常に高い。
その結果、肥育成績はその大多数が上物にランクされ、抜群な結果を得ている。
産地によって生後12ヵ月令で出荷されている箇所もある。
願わくば、7ヵ月令であれば願ったり叶ったりである。

話は変わるが、以前兵庫県美方地方の子牛市では、生後5~6ヵ月令で出荷されていたものである。
美方産は、発育増体が他産地のものより、多少のっそりであったため、雄のまま導入し、雄のまま肥育を開始し、1歳半くらいなってから去勢するという方法を取っていたことがあった。
雄のままであったため、マキ牛用にそのまま種雄牛にする場合もあった。



元睾丸で仕上がり状態を判断する

2008-06-26 22:34:36 | 肥育
                 写真1


                  写真2


                  写真3


                  写真4

神聖なるブログに卑猥な写真を掲載したが、これも牛の肥育では見逃すことの出来ないファクタの一つである。
去勢するために元睾丸の内部は、脂肪の塊となる。
肥育期間を4段階に分け、4段階に入っても増体が非常に盛んであれば、写真1の様にその勢いが元睾丸にも現れる。
逆に、体不調により食い込みが次第に細ると、写真2の様になりやすい。
時には、去勢時の方法如何で、肥育が進んでも、元睾丸の所在を認めがたい形になる場合がある。
元睾丸を確認できないのが写真3である。
雌の形のようだが、歴とした去勢牛で、その周囲を見ると適度に肥育過程を経ているように判断できる。
肥育が進むと体脂肪が次第に増えるが、この過程は体上線から体下線方向に蓄積し、最後は、胸底や下方へぶら下がっている元睾丸辺りに蓄積する。
この元睾丸へ脂肪が蓄積するのは、配合飼料を多量摂取するためで、体脂肪が必要以上に蓄積する度合いにより個体差があり、元睾丸は大小様々な大きさになる。
そして、仕上げ時期には、牛体自身が涸れてくるように、写真4のように、元睾丸も若干涸れた感じとなる。
これくらいが、適度な大きさと涸れ具合である。
大きさは、肥育期間中の餌の食い込み量が判断でき、涸れ具合は、体脂肪が減じ、枝肉基準値が高くなることを示唆している。
さらに、元睾丸を触手することでも、仕上がり具合が予測できる。適度の硬さが良い。どの程度と言われても、触り慣れることにより判断できるようになる。


これが尾枕なり

2008-06-25 23:44:06 | 素牛



盗撮した訳だが、これが究極の尾枕である。
写真のは、肥育末期に尾根部の両側に出来た見事な尾枕である。
これが、子牛市場に出てくる子牛に見られることがある。
子牛を高く売らんがために、ご馳走を沢山与えた結果、尾枕が出来るケースが多々ある。
この様な子牛は、乾草など粗飼料の食い込みが悪いため、順調な発育が期待できない。
写真のように肥育末期に出来る場合は、むしろ当たり前である。
生体のまま肉質を予想する場合は、身体全体を指先で押して肉付きが良いかどうか、シッペキ(にぎり)を握りしめたり、尾枕を触ったり、去勢跡などに、脂肪がストックされているか、脂肪の硬さは適度に蓄積しているかなどで、肉質を予想していた。
だから、尾枕も肥育の仕上がり具合を判定するのに、重要であった。
熟練すれば、尾枕の大きさや硬さなどから、体脂肪の蓄積具合がわかる。


美味しい牛肉にはタンもある

2008-06-24 19:44:57 | 牛肉


美味しいのは何もロースやヒレ肉だけではない。
牛タンもその一つで、とくに和牛のタンは重宝がられている。
仙台市などでは、名物料理(米産肉が禁輸されてショックと新聞報道があった!!)とされているくらいである。
黒毛和種は、改良の過程で、外国種との交わりがあった。
その名残の一つに舌の途中から色が変わる特徴がある。
俗に「中接」「奥接」といわれるものである。
これらが無い牛は、改良度が進んだと解釈されてきた。
その理屈から写真の牛は、実に美味しそうな舌を持ち得ている。
全く接いでいないので、優れた黒毛和種ということになる。
舌といえども、黒毛和種のそれはサシもあり、美味しいのは当たり前だが、要は料理の腕次第であろう。



美味しい牛肉(13)

2008-06-23 18:47:09 | 牛肉
      BMS no.7~8クラスのすき焼き用の牛肉

牛肉専門店のショーウィンドーを覗けば、すき焼き肉用、牛しゃぶしゃぶ用、ステーキ用、牛鉄板焼き用などが、様々なグレード毎に美しく飾られている。
遠来の友や親戚がやってきた時や、年末年始などは、普段買っているグレードよりも、いい括弧して、より美味しい牛肉を買ってしまう。
お肉屋さんの思うつぼである。
一昔前なら、その様な時は、100gや200gはサービスしてくれたものである。
しかし、最近はその様なサービスは滅多に見なくなった。
品物に自信があるからだろうか。
昔ながらの景気づけのサービスがあれば「また焼き肉にしようか!」と無い袖で大判振る舞いしたくなるはずだ。
生産者は、薄利が故に薄利多売の生産を苦労して強いられる。
消費量を伸ばし、産業に景気づけするのは、お肉屋さんの役目ではないだろうか。

情報が経営を助ける

2008-06-22 21:25:22 | 肥育



近年肥育される黒毛和種の雌雄の出荷割合は、去勢牛が約60%、雌牛40%となっている。
このうち去勢牛は、約60%以上が上物として取引されている。
このことを念頭に置き、素牛を導入することは重要なことである。
単純に考えれば、子牛相場が肥育成績に深く関わっていると踏めば、子牛相場の中程度以上の素牛を導入すれば、その殆どが上物に仕上がるという計算である。
しかし、その相場は、買参人である自らが決めているという事実がある。
相場が子牛の品質を正確に物語っていれば問題はない。
前述したが、その能力を予測するには、血統であったり、その組み合わせの相性の良し悪しであったり、どのような飼料を摂取し、その発育状態はどうか、子牛を育てている生産者の取り組みはどうか、病歴の有無、参考となる肥育成績のデータの有無とその結果を生かせるかなど、様々な情報により、買参人自体が子牛相場を一歩一歩正確なものへと導くことが自らの肥育生産の成功へ大きく影響する。
それらの情報をもとに、競られる子牛の価格を個々に値付け出来る技術がそれらに大きく影響する。
肥育頭数を単純に確保するのと、上記の根拠を念頭に置くのとでは、経営感覚に雲泥の差が生じるはずである。


会わせて2トン

2008-06-21 21:22:20 | 去勢牛



写真は黒毛和種去勢牛であるが、2頭合わせて2トンはありそうだ。
鹿児島産で06年9月の導入牛である。
このところ、食い込みが落ちてきているが、増体速度が高いために、全体的にゆるい感じがする。
後1月くらいは涸れさした方が得策だろうと睨んでいる。
これくらいの去勢牛であれば、枝肉単価が1,750円であれば、損も儲けも無い。
このところの枝肉相場は等級が低いほど下落幅が大きくなっきた。
3等級では、1,750円は厳しい状況である。
些かでも儲けようとするならば、4等級は確保せねばならない。
相場の下落はかなりのショックであるが、この様な出荷牛の商品価値を予測することが、今は心安らぎの一瞬である。