牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

冬場の出荷

2012-03-14 22:47:33 | 枝肉

どちらかと言えば、冬場に仕上がる肥育牛は胸部や腹部に鱗状の汚れが付着しやすい。
敷き料が湿りやすいからである。
出荷が予定されれば、それらを洗い落として出荷に備えなければならない。
BSE発生以降、牛体に糞などの汚れは付けないで出荷するように指導されたからである。
しつこい鱗は、なかなか落ちにくく、水をかけ柔らかくしてから落とすことになるが、低温時には、冷水をかけるのはかなりのストレスになっているはずである。
最早、BSEの発生を聞くことはなくなったからには、多少の汚れは我慢して貰っても良いのではと思いたくなる。
出荷時を前にしてのストレスを与えることへ、関係者としてかなりのストレスを感じざるを得ない。
低温時に冷水で洗い、即座に搬送しなければならないケースがあり、牛らは寒さに堪らないであろうとも思う。
ブログを開いて頂いた厚生省や農水省の関係者がおられたら、牛体の汚れの影響云々を再検討して頂きたいと切望する次第である。

実は、水洗い直後に搬送した場合は、ストレスのために、筋肉等にはダークカッティングビーフなどになる恐れを否定できない一面もあろうと判断している。
2年間をかけて丹念に肥育してきたものを、出荷時の一瞬にストレスをかけるなどは、忍びない話でもある。

肉質が低迷している

2010-10-20 18:30:56 | 枝肉


最近出荷牛の肉質が相対的に今一である。
食肉市場に出かけて他産地からの出荷牛を偵察に向かうが、いずこも同じような成績である。
肥育法も生産地もあちこちと変えているわけではないが、何故か結果が出ない。
血統的には、著明な種雄牛の産子であるにも関わらずである。
同様の交配に絞り込んでも、結果は様々である。
交配関係が単純であれば相性が良ければいいものになり易いが、このところ他産地間での複雑な交配が行われており、相性関係自体が複雑で、なかなか結果を出すケースが希となってしまったのではあるまいか。
それぞれの遺伝子は単純なものではなく、その発現は神のみぞ知ると言われているほど、人が期待するほどに発現しない。
昔から産地内で閉鎖的に交配を重ねて来た頃は、遺伝子の分散が少なく、期待する形質を選抜しながら改良を加えてきたが、その方が速度は遅くても、改良の中身は確率の高いものが揃っていた。
そのいい例が、但馬牛である。
宮崎県でもそのような改良で全国的に評価を得ていたが、忠富士のように増体型を有するようになれば、宮崎産の特徴は全国同様となってしまった。
牛の改良は何時の時代でも、目標を持ち、それに向かって地道に進めるに限る。
兵庫県の頑固さが不可欠で、それが故に日本一のブランド化を実現するに至るのではなかろうか。

枝肉の瑕疵とトラック移送

2010-03-31 23:58:42 | 枝肉
全身シミ(多発性筋出血)の枝肉が出た。
通常シミが出るケースとしては、出荷のためのトラック移送中の過激なストレスによる体力消耗が原因になることが知られている。
また、と殺直前に暴走や牛同士の突き合いなど、過激な行動をした場合、筋肉内のグリコーゲンが減少することも知られており、この減少の影響は、通常と殺後には筋肉のPH値が下がるが、このケースでは下がりにくく、シミになると言われている。
その他、と畜場に繋留中に放れたり、肥育中は大人しく、動きの鈍い牛が、トラックに積み込まれたため、異常な恐怖感などによる興奮が基となるストレスのために、グリコーゲンの蓄積低下を来すケースや、と殺までに長時間絶食状態のため同様なケースになることも考えられる。

これらのことを念頭に、今回発生したシミの原因を検討中であるが、大まかにこれらの原因が一つ或いは複雑に拘わったものと判断している。冬季や猛暑など厳しい移送環境での肥育牛のトラック移送では、積載したまま長時間駐車するなどは、係る瑕疵などに繋がる可能性がある。積載されている車中の牛たちは、他牛を警戒し絶えず四肢を突っ張りあえいでおり、ドライバーのテクニックの良し悪しに左右されている。

肥育成績

2009-12-24 18:24:03 | 枝肉



過日、タイトル「腰に水」に貼り付けた写真である。
コメンターより、まだまだ仕上がってはいないと指摘して頂いたが、その成績が知りたいというコメントを頂戴したが、このほど当牛を出荷した。
コメンターから指摘されたとおり、今一の成績であった。
当牛は、血統が茂勝栄×安茂勝×福栄で生後月齢29.6ヵ月令であったが、と前体重792kg、枝肉重量525.6kg、枝肉単価2,600円、枝肉販売価格1,340,095円であった。
格付け結果は、A5であったが、BMS no.10、ロース芯面積63Cm2、背厚9.0Cm、皮下脂肪3.3Cm、歩留まり基準値74%、BCS no.3であった。
この牛は、導入価格市場平均セリ価格では、「中ノ下」に当たる481,000であったことから、差益は50万円には届かなかったが、まずまずの結果であった。
「腰に水」状態と肉質との関係は、この1頭如きでは、確かとは言い難いが、予測結果は強ち無関係ではなさそうである。
血統にもよるが、じっくり堅肥りのタイプは、その期待感が高い気がしている。

近畿東海北陸連合肉牛共進会

2009-11-22 23:28:14 | 枝肉
共進会展示場風景



去勢牛の部で最優秀賞となったリブロース切断面


本日(11月22日)、京都市中央卸売市場第二市場に於いて第56回近畿東海北陸連合肉牛共進会が開催された。
兵庫・京都・滋賀・福井・三重・静岡の1府5県から、100頭(雌43頭、去勢57頭)の出品がった。
雌牛の部では、三重県鈴鹿市から出品された出生地岐阜県産で飛騨白清の産子が最優秀賞に選定された。
去勢牛の部では、京都府亀岡市から出品された出生地宮崎県産で福桜の産子が最優秀賞と農林水産大臣賞に選定された。
最優秀賞の雌牛は枝肉重量479.1kgで唯一のBMS no.12、去勢牛は608.2kgでBMS no.11であった。
因みに、雌牛はBMS no.12が1頭、11が3頭、去勢牛は11が4頭であった。
全体的な肉質の格付け割合は、5等級率は43%、4等級率は47%、3等級以下が10%であり、数字的には共進会の面目を果たした感はあったが、BMS no.12が100頭中僅か1頭は若干寂しい結果となった。
中でも静岡県勢は、出品頭数11頭中5等級が9頭で5頭級率81.8%と好成績であったが、兵庫県勢は、BMS no.8の2頭が最高ランクでかなり成績低調であったことが印象的であった。
セリ価格は、最優秀賞の雌牛が5,300円/kg、去勢牛が6,020円/kgであった。
次回は、神戸市での開催予定であることから、兵庫県勢の巻き返しを期待して会場を後にした。

ロースとロース芯面積

2009-11-05 17:07:34 | 枝肉



以前ロース全体の写真を貼り付けたことがある。
ロースは、肩の辺りにある第3胸椎辺りから発生して腰角間である十字部近くまで伸びて、その長さや重量は、牛の筋肉の中では、ずば抜けて大きく、肩から第12胸椎までをリブロースといい、第13胸椎(季肋骨)から第6腰椎にかけてロインロース(サーロイン)とされている。
ロースの形は、リブロースは楕円筒状をしており、ロインはサーロインステーキで判るように横に平たくロース幅が大きくなっている。
リブロースの肩よりほどその直径(ロース芯面積)は小さく、ロインに向かって次第に大きくなり、十字部辺り(第6腰椎と仙骨の間)が最大となっている。
現在食肉市場では、ロース芯面積を測定したり肉質を判定するために、リブロースの第6~7肋骨間(胸椎間)を切断しているが、これらのことから、この部位でのロース芯面積が大きいと云うことは、ロース全体のボリュームが大きいことに繋がる。
一方ロースは筋肉の中でサシが入り易く、高級な筋肉とされている。
この様な形状や品質を考慮する限り、同じ手間暇と多量の飼料をかけて生産するからには、経済価値の高い部分をより多く生産するはものの道理である。
ロース芯面積が大きく、ロースの絶対量が大きくても、流通や小売り、そして料理の現場では、従来からそれらを無駄なく活かした方法が取られて、ステーキやすき焼き用として珍重がられている。
枝肉を審査する場合、大まかには一定の枝肉量とその形状に問題が無く、枝肉格付け結果が良好であれば、優れた枝肉とされ、同様な品質が複数居れば、当然ロース芯面積の大きい方が上位に選ばれ賞賛される。
それほどまでに、ロースの存在は、云うまでもないが重要視されているのである。
この様な優れた枝肉を生産することが、大方の肥育関係者が求めている肥育技術の一端でもあろう。

草の食い込み効果を再認識する

2009-07-03 01:06:53 | 枝肉



このところ、泣かず飛ばずであった肥育成績に、一点の光が差した。
地域の枝肉共進会で、グランドチャンピオンに選定された。
200kg足らずで導入した子牛であったが、血統は茂勝栄-北国4の3ー神高福で、生後33ヵ月令、枝肉重量535kg、ロース芯面積82、BMS11で、リブロース切断面は、ロース芯の大きさから見応えがあった。
このところ、当方でBMS値が10以上を占めているのは、この6~7ヵ月令で導入した素牛が大部分を占めている。
しかも、サシはともかくロース芯の大きさが目立った。
逆に言えば、サシの入る枝肉は、ロース芯も大きいのが通例である。
何故ロース芯が大きくなったかは、再々述べているように、子牛時からの粗飼料の利用性に長けていて、その効果により配合等の食い込みが良好であったことが、最大の要因であると判断している。
前回出品した牛も父牛は北仁号であったが、同様に草効果が功を奏しロース芯は77と大きめであった。
また血統的には、過去に母の父である北国4の3号を父にした場合、指したる成績は皆無であった。
セリ価格については、これまでは3,000円以上であったが、今回、市況を反映して、2,800円に留まった。
この結果を受けて言うまでもないが、草を食い込ませる飼い方こそが肥育成績の良し悪しにに繋がることを再確認した次第である。


新たなファクタで枝肉を評価する

2009-02-20 23:50:46 | 枝肉


牛肉の美味しさは牛肉に含まれる脂肪酸の一つであるオレイン酸の量が深く関わっていると言われている。
このオレイン酸については、先に開催された鳥取全共でも話題になった。
今朝の日本農業新聞によると、長野県ではオレイン酸量とBMS値に一定のランクを設定して、その条件を満たしていれば、美味しい牛肉として認定すると言うものがあった。
また同新聞では、全国和牛登録協会の現場検定調査委員会関連記事中でも、オレイン酸に関する記事があった。
牛肉の味、とくにその美味しさにはオレイン酸やグルタミン酸濃度が深く関わっているなどが関係者により、科学的に究明されてきた。
これらを枝肉段階で測定できることも実現し、その結果を基に自信を持って消費者に美味しい牛肉が提供できるとして、食肉業界でも話題になっているようである。
今後の肥育生産者にとっては、オレイン酸濃度を高めるための技術構築が要求されよう。
サシ偏重の業界であるが、これらの新たな評価が加味され、究極的な高度のサシに依存しなくても、美味しい牛肉の生産が可能となれば、コスト低減に繋がる可能性をオレイン酸により、見いだせるかも知れない。
但し、その脂肪酸を得るために、穀類依存度の高い肥育が必要とされれば、なにをかいわんかや。

今年最後の上場

2008-12-27 00:17:21 | 枝肉


年の瀬も押し迫り、最後の出荷牛の販売結果がFAXで届けられた。
去勢牛9頭、雌牛1頭の10頭であったが、5等級4頭、4等級6頭の結果であった。
1頭当たりの平均値は、仕上げ体重788kg、と前体重768kg、期間DG0.68kg、枝肉重量515kg、枝肉歩留67.0%、枝肉単価2,070円、販売価格111万円、差益2.5万円であった。
上物率100%をものに出来たが、これでも、5等級のみが黒字で4等級では全てが赤字であった。
現状では、良い枝肉を作らなければ確実に赤字経営となる。
素牛価格が「中の下」から「中」程度の導入牛の結果にしては、まずまずの成績であり、それ以上のクラスの素牛であれば、かなり厳しい結果であろうと予測している。
今回の結果は、近況からは成績に恵まれた方であり、気分良く有終の美を飾れた結果に満足している。
このところの枝肉価格の低迷は、不景気が牛肉消費の減少に反映され、そのことが大きな原因になっている。
年明けの1~3月期は、配合飼料の下落は実現しそうな状況であるが、20%の下落でも経営は安定とまでは行かないと判断している。

さて、連日300人を越す多くの皆様に拙いブログを開いて頂き、誠に有難うございました。仕事と様々な用事を抱えながら、2本のブログに挑戦中のため、些か寝不足気味で、血圧降下剤をお医者様に勧められております。
誠に申し訳ありませんが、明日より年明けの4日頃まで休載させて頂き、休養を取らせて頂くことと致しましたので、皆様にはご理解頂きますようお願いいたします。
皆様には、どうぞ佳いお年をお迎え下さい。
今年一年間有難うございました。



肉質の予測は当たらない

2008-10-21 20:53:55 | 枝肉


生き物は両親から様々な遺伝形質が伝えられる。
それらを人間は、自らの目的に添った形質が発現することをひたすら願っている。
昔は、交尾に頼って種付けを行っていたため、地域にいた種雄牛だけを交配せざるを得なかった。
人工授精の技術が普及し、精液の保存技術も開発され、現在のように、液体窒素による凍結保存が普及し始めると、全国各地で採取される精液が、何処でも利用可能となった。
とくに、家畜改良事業団は全国展開して今日のような実績を年々高めてきている。
凍結保存による輸送体制が確立されたことでの恩恵を受けている。

この様に、子牛生産者は、自らが希望する全国の精液が利用でき、全国で生産される全ての子牛の血統は、どの牛も遜色のない一流揃いとなっている。
一流揃いなのに、それらの肥育成績には、かなりのバラツキがある。
子牛の育成や肥育技術などの差があるなどの遠因はあるが、同一センターで同様の肥育を行ってもバラツキを揃えるには至らない。
と言うことは、同様な交配でも遺伝力の相違が拘わっているとしか判断し得ない。

遺伝能力を肥育センターで吟味しても仕方ない。
これまで、多くの畜主たちが、導入牛の肉質に拘わる形質を探求してきた。
とくに資質の形質とされている角・蹄・毛・皮・骨味・体各部の輪郭の鮮明度・肥育度などがそうである。
しかし、これらの資質についても、肉質と深く関わっているとは言い難い。
このことは、前述している。
写真の2頭の牛は、生後30数ヶ月の雌牛であるが、毛色と毛艶にしっかりとした差がある。写真の右側の牛は、毛色は真っ黒で、てかてかに光沢があり、左の牛は、毛色はやや赤っぽく、差ほどの艶はない。
右のは、末期まで食い込みが衰えず、左は、食い込みが衰えてきていたが、これらを比較して、BMS値が左の牛の方が、2ランクは良いだろうと予測していた。
何れも但馬系と鳥取系の血液割合は7:3である。
格付け結果では、肉質は何れも同じ成績であった。
この様な予測は、なかなか当らないことを実証したようなものである。
むしろ、肥育の仕上がり具合から予測する方が確率が高い感がある。