牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

TPP問題と国力

2011-01-22 00:54:07 | 牛の餌

TPPへの加入問題は我が国の食料自給率を低下させる恐れを波乱でいる。
我が国の同自給率は既に40%を割り込んでいるとも言われている。
この現実は角度を変えれば、日本は如何に国力の小さき国であると言わざるを得まい。
また、この事実は我々日本人の将来に大いなる危惧となっているを実感せねばならない。
日本の現状は、10人のうち6人が外国産食料に頼っていることになる。
今、日本の経済人や日本政府は、経済政策の失敗を重ね、経済不調がらみから将来展望を見通す能力に欠けていると言っても過言ではなく、その自信の無さから係る外圧にも消極的な対応を余儀なくされ、指導性に失している状況下にある。
戦争さえ勃発しなければ、食料は外国から安定的に買えるから自給率を案じることなどないという安易な思考を輸出関連業界の関係者らは豪語している。
取り方によれば政府の姿勢にも同様の感は否めない。
これらの思考は、他人を軽んじて我が懐の富だけを優先する思考の何ものでもない。
食料生産国において、戦争が起きる、口蹄疫や新型インフルエンザなどの伝染病、燃料などエネルギー源の枯渇や政治的枯渇、尖閣諸島問題に見るような領土争いなど、これらは何れも一発触発で予断を許さない状況下にある。
そのような事態に至れば、食料などの輸入はたちどころに滞ることになろう。
その結果、日本人が飢えに遭遇することは、かなり高いレベルで起こりうることは専門家なら想定できるはずである。
フランスは同自給率130%を確保している食料大国であり、GDP世界2位の中国、3位の日本よりも、フランスの国民生活は遙かに豊かであるという。
つまり、自給率を上げ国力を高めることが豊かさの原点なのである。
この一年間においても、世界的な気象異変の影響から、穀類の生産量は減少し、そのためにロシアや中国などへの需要が増加したため、小麦やトウモロコシなどの輸入は高騰を持続して、我々畜産業でも今後益々悪影響をもたらしかねない情勢となっている。
TPPに加入して係る産業を安定化させたい関係者の意向はわかるが、その加入により、農業など第一次産業が漸次影響を受けるは火を見るより明らかである。
その結果、食糧自給率はさらなる低下現象を来すことになる。
政府はTPPに加入する意向であり、農業振興対策を強化すると言っている。
海外から超安価な食料が輸入されれば、農業対策どころではなくなる。
TPPから食料関連産物の輸入制限がない限り、政府の抽象的な食料政策目標が成就する手だてはないのである。
諸外国は自国国民の経済発展のためにTPPへの加入を求めている。
日本も国民生活安定のために、国力増強のために独自の政策を打ち出すべきで、TPPの加入には断固反対である。

育成用粗飼料

2009-08-25 18:31:19 | 牛の餌



当センターでは、20数年もの間、導入牛には、オーストラリア産オーツヘイを与えている。
安定的に導入できることと、価格もUS産の他の粗飼料に比し、多少安価で安定しているからである。
導入後約半年間、飽食状態である。
オーツは、チモシーやイタリアンライグラスに比し、繊維が荒いために、子牛の消化には不向きではないかという情報もある。
しかし、当方では、この間然したる問題は生じていない。
栽培中は、硝酸塩濃度が高い植物であるが、出穂期を過ぎれば、濃度も低下するために、結構いけてる粗飼料と判断している。

しかし、今の時期になれば、何故かハエが集る。
以前、コメントでもそのことを指摘されたことがある。
当地では、後1月か1月半の辛抱である。



安全と安心

2008-07-12 20:02:44 | 牛の餌


今年2月から中国産稲わらを導入して、バーリーストローの利用を止めた。
昨年秋から解禁された同稲わらの輸入については、黒竜江省など中国東北部の口蹄疫を発症していない一部の地域の特定の農家の稲わらだけが、加熱処理工場で処理され、農水省の監視のもと、日本へ輸入されるようになった。
輸入された同稲わらには、加熱処理年月日と加熱処理工場の番号と農家番号が記されたラベルが付けられている。
この同稲わらの導入には、殊の外慎重に対応して実施した。
BSE国内発症以来の生産者及び消費者間共通の認識となった食の安全と安心を徹底する必要が常識的となってきた。
この様な認識の最中、同稲わらについては、過去に口蹄疫やウンカ事件などに加え、当時タイムリー的に食品への農薬混入事件などがあり、同稲わらには、ただならぬ不信感があったため、供用には慎重を期する必要があった。
そこで、取扱業者に相談して、同稲わらが、飼料として安心して供用できるための証拠を要求した。
その結果、日本への輸入解禁に至った農水省の経緯に繋がる文書が届けられた。
しかし、どの文書を見ても口蹄疫と害虫に関する内容は網羅されていたが、話題の農薬について消費者に納得して貰える内容のものはなかった。
そこで、輸入された稲わらについて、農薬の残存を検査することとした。
しかし特定した薬物についての抽出検査は、雲を掴むようなものであるという。
そこで、通常農作物に使用されている200品目について、つくば市にある分析セーターへサンプルを送付して検査依頼した。
結果は、全てにおいて、「認められず」であった。
ただし、問題となった、メタミドホスがその項目になかったため、再度検査に出した。その結果「認められず」であった。
この結果を受けて、そのお墨付けを入手した上で、同稲わらの給与を開始した。


牛談義(3)

2008-07-08 22:47:02 | 牛の餌


飼料稲の栽培面積が年々増加しているという報告があった。
その栽培法や利用法についての研究や実用化の実現に向けて開発されている。
飼料稲は、発酵飼料と放牧的利用法の二つが主な利用法であった。
発酵飼料は刈り取って、そのままロールベールしてラッピングすることでサイレージ化して利用する方法である。
ロールベールする一つの試みとして、飼料稲の切断長を1.5cmと4.5cmにして乳牛に給与したら、切断長が短いほど採食量が多く、泌乳量も多いという研究報告があった。
切断長を短くしてロールベールする新しいべーラーが開発されたそうである。
また、黒毛和種に飼料稲のロールベールを給与する例と、飼料米を作付けした水田で立毛放牧する際、電牧を利用することで、無駄のない採食が実現した例があった。

食品副産物の飼料としての実用化の例として、おから、焼酎かす、菜種油かす、米ぬか、ビールかす、ウイスキーかす、モルトかす、醤油かすなどを混合して、乳酸菌発酵飼料に変えて約4,500頭の肥育飼料として利用している例も紹介された。

この他、このシンポでの紹介はなかったが、未利用資源としては、竹や木材を粉末にした飼料化や残飯の飼料化などが進められている。
世界的な穀類のバイオエネルギー化や耕地面積の減少など、飼料用穀類の生産量は激減すると言われており、まさに、危機的状況である。
どげんか、せにゃいかん!


牛談義(2)

2008-07-07 18:24:05 | 牛の餌


牛談義の続きである。
今や、中国は大型船で飼料用穀物を輸入し、日本はミニチュアみたいな小舟で輸入しているという例え話がでた。
既に中国の年間輸入量は日本の約3倍だそうだ。
これは当分、さらに増加傾向にあるという。

日本の畜産の動向を左右しかねない強者たちが、真剣にこの話題を取り上げ、「今まさに日本の畜産は曲がり角にさしかかっている。従来型の志向ではなく、発想の転換が迫られている」と異口同音に飛び出すからには、現実にその方向性を真剣に模索しなければならないと感じた次第である。
この様な話になれば、和牛の格付けの話が当然のように出た。
前述した「文句の付けようがない」で脂肪交雑度のモデルに写真が加わったと述べたが、会場にはこのモデルの写真掲載に拘わった委員からの説明があったが、その要旨は概ね前述した通りであった。
シンポ終了後、同委員に、脂肪交雑と美味しさとの関係で、本当に美味しいレベルを最高ランクにする試みについて尋ねたら、将来的にはその方向に進むだろうとの回答であった。
それが、BMS値で5なのか、7なのか、9なのかは消費者の協力を得て、官能(食味)テストを取り入れることも視野にあるという。
現状では、脂肪が50%以上も蓄積する超高級牛肉は、本当に美味しいかどうかを知らない消費者が多いのも事実である。
今の時代は、本当の美味しさをあからさまにし、それに値する値打ちを付けるのが当然のような気がしてならない。
オーストラリアでは、以前よりその方法が取られていると言うことであった。
出荷牛の格付け判定如何では、肥育内容もさらに改善され、飼料事情の緩和に繋がる重要な懸案でもある。


牛談義

2008-07-06 20:12:40 | 牛の餌



牛たちが何やら、深刻な談義を始めた。
耳を潜めて聞き澄ましてみると、近々食い扶持桶が底を突くというのである。

昨日、京都で「畜産システム研究会」があり、飛び込みでその末席に加えて貰った。
北海道から九州までの50名足らずの参加者であったが、大学の研究者や独立行政法人中央農業総合研究センターの研究官、自治体の研究者、大型畜産経営者、複合産業経営者、中小規模の酪農及び肥育生産者、畜産コンサルタント、消費者サイドの関係者、畜産関連情報誌の記者など実にバラエティーに富んだ集まりであった。
同研究会は、今回で22回を数えるシンポジュームで主題は、最近の畜産情勢を反映したもので「自給飼料や地場資源を用いた乳肉生産の可能性」であったが、諸に輸入飼料が底を突きそうだということが、根底にあった。
5名のパネラーにより、主題に関連の研究や経営内容の紹介があった。
現実的な話題としては、飼料稲の栽培とその活用法や産業副産物などの飼料化による乳肉生産経営等が紹介された。
ユニークな経営としては、京都府京丹後市で土木建設業の傍ら牧草生産と放牧を取り入れた肉用牛の繁殖60頭と肥育70頭、クルマエビの養殖、塩の精製と販売を手掛けた複合経営があった。
この経営には、それぞれが大規模ではないが、その労力は、同じメンバーが当たっているため、それぞれの経営間に血脈が通っているようで、将来性や夢が持てるような経営内容であった。
この肉用牛の飼養はJAS認定を受けており、ユニークと言えば、10頭足らずの日本短角種を放牧で子牛を生産して、サシは入らないが美味しいというファンがいるので、肥育しているといい独特な畜産経営でもある。
この経営の形は既に60年代から継続され、土建屋さんが牛が好きで牛飼いになり、牛には塩が不可欠と知るや塩田を作り、山を生かせるのに放牧に強い牛はいないかと東北岩手に出掛け、ダニに強く山で肥る日本短角種と出合い、冬場の草作りに土建業の技術で草地を開くという、つまり経営者のロマンが脈々と息づいた複合経営なのだそうである。



ビタミンAのコントロールと枝肉格付け

2008-05-23 20:17:32 | 牛の餌


ビタミンAのコントロールは、肥育牛が凡そ生後15ヵ月令から20ヵ月令までの間、ビタミンA剤をカットする方法である。
その期間が過ぎれば、少量の同剤の添加を行い、牛の肝機能の低下をくい止め健康維持を図るのが得策である。また、同コントロールについては、同研究に携わった農水省のチームがモデルケースを提示している。
肥育牛へ同コントロールを行った場合と行わない場合では、明らかな違いが出る。
コントロールを確実に行った場合、肉質判定に用いられるBMS no.は8以上にランクされる割合が確実に高い。
この様な枝肉は、皮下脂肪や筋間脂肪の蓄積割合が低いため、ロース芯面積が比較的大きいため、歩留基準値がAにランクされる72%以上になり易い。
肉質に関係する格付け項目のうち、脂肪交雑・肉のきめしまり・肉の色沢・脂肪の色や光沢なども、それぞれ4~5等級となるケースが多い。
仕上がり時には、被毛などの艶は次第に退化し、食い込みも自然に落ちてくる。
つまり、牛自体が涸れて来るのである。こうなったらしめたものである。
一方コントロールを実施しない場合は、肥育末期まで育成期同様に食い込みが旺盛なため、仕上げ期になっても牛が涸れなく、毛艶があり生き生き感がある。
その結果、ロース芯周囲に筋間脂肪(カミ)の蓄積が多く、そのためロース芯面積が小さく、皮下脂肪も厚脂となり、歩留基準値は72%以下となりBランクとなる。
肉質関連項目については、脂肪交雑の蓄積が少なく、肉色が濃く、きめしまりや脂肪などの格付けも3等級程度となる。
ビタミンAのコントロールによって、牛の健康を損なうようでは、牛へストレスを科し、食い込みが低下し増体不足となり、結果的に肥育は失敗となる。
育成時にカロチン含量の多い飼料を多給するとともに、ビタミンADE剤を補給するなどの手だてが不可欠である。

複雑な配合でなくても

2008-05-22 19:31:33 | 牛の餌



肥育牛用配合飼料は複雑なほど成績が良いのであろうか。
人でも牛でも、多種多様な食物を摂取した方が、あらゆる栄養分やミネラル或いはビタミン類が取れるので、身体に良いとされ、その様な指導を受けてきた。
人なら100歳も長生きするからさもないことである。
しかし肥育牛の場合は、僅かに生後30ヵ月で出荷するため、それらを神経質に取りざたする必要はないと考える。
現実に、メーズと大麦60%・フスマ30%・大豆粕5%・米ぬか5%・タンカル等1%の単純な仕上げ配合で肥育を実施している箇所もある。
肥育成績は、A-4以上の上物率は50%程度であるという。

肥育センターなどでは、ある物質を与えることで、肉のきめ締まりや色や光沢が良くなったり、不飽和脂肪酸の蓄積量を多くするなどの効果を期待して、数多くの単味飼料を加えて配合している例が一般的で、むしろ神経質な感もある。
一方最近の穀物相場の高騰により、むしろ単純な配合より、安価な単味を数多く用いる方が得策なのかもしれない。

牛の肥育は、如何に飼料を食い込んでくれるかが、最大のポイントなのである。

肥育牛用配合飼料

2008-05-21 19:56:53 | 牛の餌
肥育牛用配合飼料の一般的な内容は次の通りであろう。
育成用では、穀類35~40%・糟糠類40~45%・植物性粕類10%・乾草類10%・ミネラル等1%。
仕上げ用は、穀類55%・糟糠類40%・植物性粕類5%・ミネラル等1%。
これらのうち、穀類はメイズフレーク(トウモロコシ)・大麦フレーク・スエコ・マイロなど、糟糠類はフスマ・米ぬか・麦ぬか・コーングルテンフィード・ホミニフィードなど、植物性粕類は大豆粕フレーク・ナタネ粕・コーンコブ・パイナップ粕など、その他はタンカル・糖蜜・ミネラル・ビタミン群などが使用されている。
この様に、配合用の単味飼料には、かなり多くの種類が用いられている。
配合飼料メーカーによるものほど、肥育配合には多種多様な単味飼料が混合されているようだ。
自家配合の場合は、その入手条件等により種類が限定されていると聞く。
どちらの配合飼料を使用したから、肥育成績が極端に差があるなどと聞くことはない。
どちらも、A-5にランクされる出荷牛は必ずいるはずである。


肥育牛の給与体系

2008-05-20 19:00:20 | 牛の餌
肥育牛への飼料の給与体系は、①導入から4~5ヶ月間、②その後の半年間、そして③仕上げ期の三段階に分けた給与法の形が一般的である。
①の期間は、牛が成長する期間であることから、それに必要な蛋白質の割合の高い飼料を与える。配合飼料はDCP(可消化蛋白質)13%以上、TDN(可消化養分総量)72%程度の育成配合を用いる。この期間には、③の期間にビタミンA欠乏症にならないために、カロチン含量の高い良質の粗飼料を多量に与えるとともに、ビタミンADE剤等を定期的に与える。良質粗飼料は、蛋白源としても不可欠な飼料である。
②の期間は、仕上げ期の肉質向上を狙ったビタミンAのコントロール期間であるため、この期間に入ると粗飼料も配合飼料も徐々にその種類を替える。粗飼料は稲わら、配合飼料は仕上げ用の配合飼料になる。仕上げ用の配合飼料は、DCP12%程度、TDN72%以下の配合を用いる。とくに、ビタミンADE剤については、配合飼料の重量比で0.01%未満に抑える。その代わり、肝臓等の機能維持を考慮してビタミンB群を配合飼料に添加するなどの配慮が必要である。
③の期間は、粗飼料も配合も②の期間同様であるが、ビタミンAのコントロール期間後に当たるため、肥育牛がビタミンA欠乏症等にならない程度のビタミンADE剤を補給する飼育法を行う。
これらの各期別のうち、①は腹づくり期、②は増体期、③は文字通り熟成仕上げ期である。そのため、①と②の期間には、通常の飼料給与とは別に蛋白等の濃い単味飼料を「おやつ」と称して与えたり、③の後半に肉のあがりを良くする狙いや、美味しい不飽和脂肪酸(オレイン酸など)の割合を高める狙いで、大麦、きなこ、ホミニーフィードなどを「おやつ」として与えているケースがあると聞く。
以上は、黒毛和種去勢牛を素牛として高級牛肉を生産するための飼料体系である。