牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

気掛かりな瞼の脱色

2009-11-30 17:28:59 | 肥育



09/3月導入の去勢牛であるが、写真左の牛の瞼に、V/A欠乏症の症状が現れている。
出荷月齢を28ヵ月令と睨んで、自家配合を導入後4ヵ月以前から徐々に給与し始め、5ヵ月目に入る頃には、完全にVAコントロール状態となった。
そのため、後2ヵ月でV/Aコントロールは終了することになる。
若くから、配合で押してきたために、増体成績が良い分、V/Aの消費が多く、恐らく、血中濃度が40Iu/d1以下に下がったためであろうと判断している。
1マス7頭中、瞼の脱色がこれほど顕著な牛は1頭だけであり、ややその気配有りが1頭出ている。
この様な群内でのバラツキは、個体差によるものと思われるが、瞼の脱色だけで、関節の浮腫や視力低下などの症状は診られないことから、これから約3ヵ月間はこのままで経過を見ることにしている。
症状がさらに顕著となれば、別飼いしてVA剤等の投与などしかるべき対策を取ることになる。
これらの状況から同コントロール事態は、順調に経過していると判断している。




手やりと自動給餌装置

2009-11-27 19:27:06 | 肥育



和牛の肥育を行う場合、配合飼料等の給与量で枝肉の善し悪しが決まることは、周知のことであろう。
日本飼料標準肉用牛編を参考に、素牛が増体系であるか、肉質系であるかによって、DGのレベルを決めて、それに見合った飼料設定を行うことも、言うまでもない基本知識である。
飼料設定が行われても、それぞれの肥育センターでは、それらが忠実に実施されているとは限らない。
通常牛を飼う畜主によって、牛の顔色を見ながら給与量を決定し、他人などには任されないというタイプ、その基本理念を理解させマニュアルを設定して、担当者を信用して任せるタイプ、近年では、その全てを人ではなく、自動給餌装置など機械による給与など様々である。
これから、100~200頭程度の規模で肥育を開始するケースでは、是非とも自動給餌機を利用することを進めたい。
肥育を行う過程で、日常の給餌量を常に一定に保つことが非常に重要だからである。
勿論、最初から最後まで一定に与えるというのではなく、日頃の増体速度や健康状態を綿密に観察しながら自動給餌機を旨く使いこなさなければならない。
手やり方式では、一々計量して与えるなどは手間が掛かり、おまけに牛の消化リズムを狂わせ兼ねない。
一般的には、経験的に手箕などに掬った量を適当に把握して、8kgとか10kgなどと与えているケースが多いようである。
しかし、このケースでは、例えば1頭当たりの給与量を100gや500g程度の誤差はほぼ毎日のようにあると断言できる。
この場合、頭数が200頭いれば、その約750日間分の誤差量を考慮するとかなりの不効率となっているはずである。
このことにより、順調な増体を得られないケースは半端ではないと想像できる。
これらを計量器或いは、量単位を把握する自動給餌機であれば、給与量は指示通りほぼ一定される。
日に複数回与えることも十分可能である。
前述したが、日に6回給餌して成績を上げているセンターがあると聞いたことがある。
日に2回以上与えることで、手やりの場合より、凡そ10~20%摂取量が多くなることは、筆者も経験済みである。
省力化と増体効果が機械力に頼れるために、新規参入者には後者の導入が得策と考えている。
薩摩当たりの肥育センターはこぞって同機を導入して、高い5等級率をものにしている。

牛を驚かせない

2009-11-26 23:57:20 | 牛の管理



牛のイメージは、実に穏やかでのんびりしているというものの例えが一般的である。
前述した記憶があるが、牛は実に臆病で実に繊細な動物である。
舎内の通路などで、人が急激な行動をとれば、牛らはパニックになり予想外の行動を取る。
例えば、普段の作業着ではなく、ど派手の服などを着用して、突然牛房へ近付いただけで逃げまどうのである。
急に大声出したり物音させるのも牛らには不安を与えることになる。
声もかけずに房内にいきなり入り込むことも、牛らを驚かすことになる。
何時如何なる時にも、牛と人はコミュニケーションを取りながら接することが牛作りには不可欠でなのである。
先ず声をかけてから牛と接するは極当たり前の常識である。
体重が400kgを越せば、暴れることで、10cm角の角材でも折ってしまうことは十分あり得る。
常に、牛を驚かすことは、常に不安がらせることになり、性格が荒くなったり、それらがもとで食欲不振になったり、出荷後の枝肉では、ロースなどにシミ(ダークカッティングビーフ)が残ることになり易い。
性格が神経質な牛は、丸々と肥ってくれず、穏やかな牛でなければ良い枝肉は出来ないとベテランの言葉である。


紅葉を背に牛らが出て行った

2009-11-25 18:09:48 | 予防治療



今日も5頭を食肉市場に見送った。
偶然途中まで、トラックの後を追う形となった。
周りの山々は赤や橙や黄色に染まり、冬の到来を感じさせているが、トラックはその様な紅葉を背に走り去った。
トラックの何の変哲のない後ろ姿を見ながら、ふと気付いたことがあった。
それは、いつも見慣れたトラックのナンバープレートである。
「4129」とある。
「良い肉」の語呂合わせである。
30年前当方のセンターを創設したオーナーが経営の成功に賭けた願いをこめて、10数年前、トラックを更新した時に納入業者に頼み込んで付けたナンバーだったと聞いたことがあった。
他の車にも、「1129」のナンバープレートもある。
恐らく、こうした語呂合わせで新車を導入する同業者も見られることであろう。
昨夜は、そのオーナーの七回忌にあたり、ご親族や業界関係者ら多数が集い偲ぶ会が開かれた。
兎に角、根っからの牛好きのオーナーであったようである。

国産稲わらのβカロチン含量は軽視できない

2009-11-23 16:49:57 | 飼料


近畿東海北陸連合肉牛共進会場で、N社の編集者N氏と合う機会があった。
氏によると、各地の取材で、肥育の粗飼料に国産稲わらを使用してきたら、肉質の成績が下がったので、再び中国稲わらに切り替えたという話を聞くことがあるが、何故だろうかという質問を受けた。
筆者はその原因が何故かは確認していないが、予測できることは、国産稲わらの収集時期の天候が良く、稲わらと言えども、乾草並みの調整が出来たため、βカロチンの値が通常値より意外と高く、それをV/Aコントロール時期に給与することで、完全なコントロールが出来ていなかったのではないだろうか、と筆者の意見を話した次第である。
和牛の肥育用粗飼料にカビや腐敗していない稲わらは不可欠であると述べたことがあるように、稲わらを給与することで、牛の消化器官ルーメン壁などを正常にする働きがあり、そのために配合飼料の順調な摂取量に繋がる効果がある。
先に但馬牛の肥育マニュアルについても記述したが、そのマニュアルに稲わらは出来たら生後月齢20ヵ月目頃から与えるとあり、その根拠に窮していたところであったが、βカロチン含量がその一因であったのであろうと昨日今日予測を深めている次第である。
この予測が当たっていれば、当然国産稲わらの使用法についてきめ細かに対処すべきである。

今年は、国産稲わらの収集については、10月一杯までは順調であったが、その後は天候不順のため、九州などでは未だに取り込めていない地方があると聞いている。



近畿東海北陸連合肉牛共進会

2009-11-22 23:28:14 | 枝肉
共進会展示場風景



去勢牛の部で最優秀賞となったリブロース切断面


本日(11月22日)、京都市中央卸売市場第二市場に於いて第56回近畿東海北陸連合肉牛共進会が開催された。
兵庫・京都・滋賀・福井・三重・静岡の1府5県から、100頭(雌43頭、去勢57頭)の出品がった。
雌牛の部では、三重県鈴鹿市から出品された出生地岐阜県産で飛騨白清の産子が最優秀賞に選定された。
去勢牛の部では、京都府亀岡市から出品された出生地宮崎県産で福桜の産子が最優秀賞と農林水産大臣賞に選定された。
最優秀賞の雌牛は枝肉重量479.1kgで唯一のBMS no.12、去勢牛は608.2kgでBMS no.11であった。
因みに、雌牛はBMS no.12が1頭、11が3頭、去勢牛は11が4頭であった。
全体的な肉質の格付け割合は、5等級率は43%、4等級率は47%、3等級以下が10%であり、数字的には共進会の面目を果たした感はあったが、BMS no.12が100頭中僅か1頭は若干寂しい結果となった。
中でも静岡県勢は、出品頭数11頭中5等級が9頭で5頭級率81.8%と好成績であったが、兵庫県勢は、BMS no.8の2頭が最高ランクでかなり成績低調であったことが印象的であった。
セリ価格は、最優秀賞の雌牛が5,300円/kg、去勢牛が6,020円/kgであった。
次回は、神戸市での開催予定であることから、兵庫県勢の巻き返しを期待して会場を後にした。

紅葉のない島から子牛が着いた

2009-11-20 17:53:02 | 素牛




畜舎の周りの山々は、一面黄紅色三昧である。
毎年のことではあるが、山々の色彩がまるで別世界を思い浮かべる風景である。
紅葉などを見ることのない南の島から子牛たちが着いた。
着いたばかりの牛たちも、別世界に辿り着いたのではと感じているに違いない。
おまけに朝夕の気温はいきなり2~3℃と冷え込んでいる。

到着時に抗生剤を打ち風邪や肺炎予防に備えているが、それらの発症が案じられる。
また、それぞれの牛舎では担当者が周囲を冬囲いして今冬に備えている。
牛たちも寒さを受けて冬毛を伸ばしにかかり、昼間はひ弱な太陽光を求めて運動場へ出ている。
風邪などに罹らず順調に増体してくれることを願いながら導入牛たちを見回った。



景気浮上への手は打ってあるのだろうか

2009-11-19 17:28:14 | 予防治療



昨日は鹿児島の子牛価格の低迷について述べたが、肥育サイドから述べれば、この傾向は願ってもない状況である。
しかし、そうとばかり喜んではいられない。
和牛関係者としては、そのために頭数が減り産業が停滞することは、関係者一人ひとりにその影響が降りかかることになるからである。
これらの問題解決には、消費サイドの景気浮上しかない。
消費が伸びれば、それに相応して枝肉相場も浮上し、肥育業界が活気付くことで、子牛相場に反映されることになる。
一にも二にも、政府の景気対策次第である。
生産者は総じて懸命に努力しているというのに、今のままでは、政策に泣かされていると言っても過言ではなさそうである。

紅葉は盛りなのに

2009-11-18 17:17:34 | 素牛



周囲を山々に囲まれているが、今は紅葉の盛りである。
さて今朝の新聞市況欄に、肝属市場と都城市場の子牛のセリ価格が掲載れていたが、いずれも厳しい相場であった。
古い話であるが、鹿児島県では曽於中央市場管内と肝属市場管内は県内有数の和牛の産地であった。
薩摩や伊佐や姶良郡などは、曽於や肝属に続けとばかりに生産者とともに和牛関係者は改良に躍起であった。
県共などでも上位入賞するのは曽於や肝属から出品された繁殖育成雌牛などであったものである。
以来数十年経った今、鹿児島県では薩摩中央市場が平茂勝の出現以来、繁殖基盤がレベルアップして逆転した。
とくに肝属市場管内には、著名な種雄牛管理者が存在しているだけに、市場価格の低迷を考えると、些か解せない状況である。
雌子牛価格が20万円台に低迷することは、子牛繁殖の生産意欲が低下したことでもあるが、繁殖経営を志し、または規模拡大を計画中であれば、この低迷時に検討すべきチャンスである。
ところで当方には、その肝属市場管内で繁殖牛50頭余りを繋養している跡取り息子が、農大を卒業してこの4月から5~10年間を目処に研修中である。
毎日携帯を駆使して様々な情報を入手しており、新聞より先に市況などは判っているらしく、今朝の新聞市況を話すと「そうなんですよ」とさも悔しそうに返してくる。
将来は一環経営をとの目的意識を持っての研修であるが、ベテランに負けずとも劣らない牛飼いぶりであり、実に頼もしい限りである。





依然!牛肉消費は低迷を続けている

2009-11-16 22:16:18 | 牛肉



今日、ある会合で大手の食肉卸会社の社長と会う機会があった。
相変わらず、牛肉の消費が低迷し、回復の傾向が見られないとのことである。
ミートフェアーなどのイベントでも、人は数千人集まるが、その殆どが焼き肉が食べられることを楽しみに出掛けていて、展示品の即売は完売することはないそうである。
とくに、これまで人気のあった高級肉は、かなり売れ残ったそうである。
イベントでなくても人気のあるのは、細切れや切り落としのようである。
このところ人気の内臓肉も、安価なてっちゃんなどに集中し、上ミノなどやや値の張る物は、出にくいと言う。
この状態を乗り越えるために、様々な趣向を凝らして年末商戦にかけていることであろう。
食肉業界が活気付かなければ、枝肉相場の低迷を受け、肥育や子牛繁殖者らも大きな打撃を諸に受けることになる。
一般市民は、景気回復を新政権に賭けたが、未だその目処さえ見えてこない。
和牛関係者は、丑年に景気回復を祈願したが、その結果は未曾有の消費減の年となってしまった。
政府は、こうした不況の要因が、サブプライム関連なのか、政治の方向性のミスなのかなど、正確に分析して対策を立てる必要がある。
片方で食料自給率を改善すべきと云われているが、このままの状態では農業者の係る意欲を削ぎ、益々自給率の低下を来すは火を見るより明らかな状況である。