牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

熱中症をよそに

2010-07-31 18:40:35 | 牛の管理



猛暑が続いており、熱中症の発症が案じられるこの頃である。
軽度の熱中症と判断された雌牛を急遽出荷した。
仕上げ舎の牛については、前述したように様々な対策をとっているが、肥育度が高いほど、紙一重の危険性を孕んでいる。
生後12ヶ月例の育成畜は、35℃の高温状態というのに、写真のように日差しの強い太陽光をもろに受けながら寝ている。
奥の日当たりのない陰で寝れば良いものをと我々は思うが、どうやら牛らは直射光線が心地良いのであろうか。


サシはどのランクが美味しい?

2010-07-31 00:46:23 | 牛肉















リブロースの切断面をBMS no.12(写真①) 10(同②) 8(同③) 6(同④) 4(同⑤)に格付けされた写真を並べたが、これらのランクでは写真①が品質が良く高価に流通していることは、周知の事実である。
黒毛和種を肥育している生産者は、究極的にはこのランクの枝肉に仕上げたいとしている。
それは、究極的な目標であるとともに、高価で競り落とされるからでもある。
これらは生産者サイドだけではなく、枝肉流通関係者も同様である。
一方、消費者サイドに最も好まれているランクも生産者同様であろうか。
事実はそうでは無いようである。
食通はサシだけをターゲットにせず、見た目を重視する傾向があり、例えば、写真③程度の筋肉とサシの分布割合がバランスが良くて、味も良いとのことである。
実際にこれらを食味してみると、写真④が差ほど油濃くなく、肉の味もシビアに感じられるような気がする。
これらのサシの写真は、見る人により見方は千差万別であろうが、牛の審査と同様でその数を加えることにより、その実際が理解できる。

最近は、高級牛肉について、食味する年代層の嗜好感覚が以前より差が無くなりつつあり、すき焼用であれば、ステーキほど油濃さは感じられないが、ステーキではA5ランクは老いも若きも油濃いとし、写真④⑤レベルをどちらかと言えば多目に摂れている傾向がある。
生産する側も、高級志向があり、それをものにするために高価な素牛を導入し、高価な配合飼料を多量に食い込ませて、必要以上の生産費を掛けようとしている。
消費者サイドに最も好まれるランクを上位とする格付けが実現した場合、それがBMS no.7~8程度であれば、生産者の肥育法にも低コスト生産が実現するものと常々考えている次第である。

発症から100日

2010-07-28 18:55:26 | 予防治療


2月導入の宮崎産の雌牛である。
運動場付きの牛舎のため、ややオーバーワーク気味であるが、まずまずの発育状態である。
その後4月20日に同所から導入した素牛らも順調に餌を食い込んでいる。
あの忌まわしい発症から100日目になる。
宮崎県は家畜の移動解除を宣言したが、当初の感染経路の調査結果が出ないままでの行政措置であり、それだけに畜産関係者相互に今しばらくは慎重な対応が不可欠である。
稲わらに巣くった口蹄疫ウイルスが半年後まで生存したという例があったと呼んだことがある。
この間に被った牛豚などの生産者が受けた莫大なる同症被害の二の舞を想像すれば、慎重な上にも慎重を重ねるしかない。
本稿でも、感染経路などの調査結果について、疑念無きを期待するコメントが述べられているが、今後の発生時の対応に備え、効果的な予防や封じ込めのための貴重な資料となり得る調査結果であってほしいと願う次第である。
関係者の総意は、発生当初の危機管理体制の甘さを払拭しうる規範の確立を鶴首の思いで期待されているはずである。

合掌造りの畜舎

2010-07-26 22:01:56 | 畜舎





当センターに設置されている肥育舎の一つに合掌造りの牛舎がある。
広さは35×25mであるが、この畜舎は、廃校となった小学校の講堂を移転した建物と聞いている。
粗飼料などを貯蔵する目的で、H鋼で補強して中二階にしてきたため、牛房の天井が低く、照度が暗く風通しが悪く、肥育成績も他の畜舎に比し今一であった。
そこで、天井板を全て撤去して、畜産用換気扇を設置した。
おそらく、この畜舎で飼われている牛たちには、別天地の心地であったに違いない。
それまで、牛らの観察もままならない有様であったが、明るさと通気性が著しく改善され、心なしか飼料摂取量が増えたように思っている。
驚いたことに、天井板が外された屋根裏の理化学的で華麗な骨組みが浮き彫りとなり、合掌造りの素晴らしさを日ごと楽しんでいる。
移転し再利用するだけの値打ちを見込んでのことであったろうことが伺われる。

鹿児島県も子牛市場再開

2010-07-25 22:22:23 | 素牛

鹿児島県内においても、7/20より子牛市場が再開された。
早速、1車を導入した。
本来は5月上旬に予定されていた子牛であったが、約75日間の延期を余儀なくされた子牛であり、平均日齢が360日であったが、330日齢以下の子牛を選定した。
導入牛の平均相場は、予測通り若干安価で日齢の割合からは下落気味であった。
DG0.85kg程度で、若干小さめであり、相対的に体高は問題ないが体幅にやや欠けるものが大部分を占めた。
濃厚飼料を食い込んでいたと見えて、乾草の食い込みも今いちであった。
輸送トラックは、従来12.5㌧車に28頭を積載しているが、今回は平均体重が大きいことを見越して、1車25頭としたが、それでも積載頭数は目一杯であり、次回からは22頭程度がよいと判断した次第である。
ところで、九州から素牛を導入すると有って、管轄する家畜保健所から、口蹄疫がらみで導入時の臨床検査や消毒を実施したいとの申し出があり、土曜早朝であったにも関わらず、同所の担当者が立ち会った。
写真は、搬送トラックとともに、導入牛の消毒を実施したときの様子である。


猛暑

2010-07-21 18:57:56 | 牛の管理


今年は各所のゲリラ豪雨の被害が凄まじいまでに猛威を振るった。
海の日当たりからは猛暑が続き、肥育牛への影響が気がかりである。
昨夏は当センターでも、仕上げ末期の去勢牛1頭が熱中症で犠牲になった。
畜産用換気扇を制御するインバーターの回転数を若干高めにしたり、西日を遮蔽するなどの対策が不可欠である。
また、猛暑時の出荷は、昼間の搬送を夕方に変えるなどの対策を行っている。
鹿児島の子牛市場が再開されたが、この春まで長年導入先としている南西諸島からの導入を計画中であるが、関西地方が南西諸島より気温が高いため、事故の発生を留意している次第である。



走り出す牛

2010-07-20 21:25:06 | 牛の管理


高々体重600kgの雌牛を出荷するために6人の若者たちが悪戦苦闘している風景である。
若者と言っても彼らの平均牛飼い歴は7年位で、牛の扱いには十分なれているはずである。
しかし時たま、群中ではおとなしいけれど、舎房から単独で引き出すと走り出す牛がいる。
そのため、走り出さないように多勢でローデングシュートまで移動させる。
猛暑の中、ここで走り出し強烈な興奮状態になることだけはさける必要がある。
熱中症を患ったり、全身シミがでたり、むれ肉になることを回避しなければならないからである。
走り出す牛は特定の生産施設から導入された牛に多く、子牛の離乳から育成時の管理に何らかの問題があると判断している。

疣心(いぼしん)

2010-07-19 22:12:54 | 牛の病気

昨夏8月宮崎県から導入した去勢牛1頭に全廃棄がでた。
枝肉市場の衛生検査チームから、検査結果に写真を添えた報告が届いた。
これまで発症したことのない珍しい病名で、左房室弁に疣贅性心内膜炎を認めたとある。
つまり俗に「疣心」と呼ばれ、心臓内に疣(写真)のような敗血症と診断する根拠となる菌が認められとあった。
当牛の発病からの経過は、数日前から食欲不振で、やや痩せた感じがあり診療を依頼したが、胃の動きが極めて悪いと言うことで、その治療と脱水を警戒して6Lの補液を行い、採血した。
翌朝の見回りで、水溶血便が診られ、「やばい!」と獣医師の診断を仰ぎ、即処分の結論から切迫となった。
ちなみに、採決の結果では、特に問題となる数値はなく、炎症に関する数値だけが高い程度であった。
血便の原因と疣心との関係は明示されていなかった。
聞くところによれば、同症は生時での診断や発症原因、治療は判明していないようである。
素牛導入時に、発育が良く健康であることを見抜くことぐらいが対処法のようである。
滅多に無い症例だけに事故として納得するしかないようである。

口蹄疫のニュースから

2010-07-16 00:20:57 | 予防治療

宮崎県における口蹄疫の発症から間もなく3ヶ月になろうとしている。
児湯郡での移動解除が16日と迫る中、国と県の思惑が異なり、結局国の主張に県がおれた格好となったが、他の関連被害者などからは理解しがたい経過となっている。
これまでこれらの取りざたに対して、当ブログのコメンターの諸氏から数多くのコメントが寄せられ、多くを教えられ感謝の至りである。
今回の断末魔ともとれる国と県のやり取りに対しては、コメンター諸氏のシビアな意見が当を得ている。
今回は県側が、終盤と思える経過の中で、口蹄疫の怖さと関連法を軽視した感は否めず、曲解或いは無知が故の主張のように思えたが、法の重さを重視する関係者には、歯切れの悪い感覚として受け止められる結果となった。
県所有の種雄牛や民間所有の種雄牛への法解釈は、ごねどくの発想であり、今後へ危惧すべき禍根を残しかねない前例になったことは、否めない事実であり、今後は、このような醜態とも思える対応から脱却し、畜産関係者の納得いく行政に徹して頂きたいと願うのみである。

子牛市場の再開と不安と

2010-07-12 23:08:08 | 素牛


いよいよ鹿児島県も南西諸島での子牛市場を7月20日以降に開催することが決定したようである。
この地域では、奇数月に市場が開催されるが、5月セリが延期となったため、今月は5月セリの市場名簿をそのまま活かしてセリに掛けるとのことである。
本来7月セリの分は8月に開催され、7~9月の3ヶ月間は毎月の開催となる見通しである。
このように本来2月に1回開催される市場では、9月開催時から市場閉鎖の影響を受けなくてすむことになる。
しかしながら、本来毎月複数日開催される市場では、セリ頭数が多い分、その影響が長引くこととなる。
一方、今回の口蹄疫発生の影響がらみで、東北北海道へ購買先を一時的に変更した購買者らも、ある程度の買い控えが有るため、和牛の主産地における市場再開を鶴首の思いで期待していたはずである。
これまでに再開された子牛市場のセリ価格については、高値が付いたところややや下落した箇所など様々である。
購買者の育成法により、多少の月齢の高い子牛については、無関係に競り落とすケースも有ろうが、粗飼料での買い直しを実施しているセンターなどでは、子牛が配合のみを好むケースが多く、買い直しに苦慮しそうである。
子牛生産者側で粗飼料の利用性に富む飼い方が続けられていることを願うのみである。