牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

最近の稲ワラ事情

2011-10-06 00:00:08 | 飼料


今月は中国稲ワラの入手難であると取り扱い業者の話である。
東日本大震災以降、全農と関係する輸入業者が中国稲ワラを相当量確保したからだとも聞いた。
セシウムに被爆した宮城県産ワラを利用して出荷制限を受けた関連肥育センター用に確保する目的に加えて、セシウム被爆を受けた東北各県への補給目的などが考えられる。
一方、中国国内に於いても牛の肥育がかなり拡大しつつあり、稲ワラの消費も徐々に拡大しているとも聞いている。
これらの背景を受け、中国産稲ワラが、取り合いとなり品薄になっているという関係業者の説明を受けた。
この一ヶ月間、その影響を受けてか、中国産稲ワラの品質がかなり劣悪になった。
色が腐敗色で異臭を放つ、おまけに販売量を増やす目的で、稲刈り時に水田の地表すれすれに刈り取るためたに、土が付着し飼槽の底に目立つほどである。
このような有り様を回避すべく、予てより複数の取り扱い業者と接触しているが、何れも同様に品薄のために、臨時的に余分に納入することは確約できないと言う。
品薄のため、価格を引き上げざるを得ないとも強気の様相である。
暫くすると、新ワラが出始めるそうであるが、新ワラは水分含量がやや高いために、その影響から品質低下が予測される草である。
毎年、2~3月頃は中国の産地が低温状態で輸出され、中国よりやや暖かい日本に輸入されて保管されれば、温度差から再び湿度を増しカビなどで品質が低下する。
一方9~10月は国産わらの収集月であるが、天候不順が重なり、こちらの方もかなりの品質低下である。
国産稲ワラは、薫蒸消毒を施さないために、肝テツ寄生を防止するために、1年近く保管を要する。
このように稲ワラに限っても、天災や人災、伝染病発生、併せて国策などの影響を受けながら、和牛肥育は行き先険しいのであろうかと危惧しつつの昨今である。

乾草取り入れ

2011-05-20 23:08:42 | 飼料


ゴールデンウィーク明けになれば、イタリアンライグラスの穂が熟し、ヘイレージ調整の適期を迎える。
ところが、今年は3~4月の低温の影響から、10~2週間遅れで、その適期を迎えたという。
以前、勤務していた牧場の乾草調整の話であるが、今週になって刈り取り適期となり晴天日に恵まれ、総動員で収穫に当たっていた。
晴天のあまり、ラッピングロールべーラーに調整するには、やや乾き過ぎだとのコメントであったが、何はともあれ、100%取り込むことが重要であるために、晴天日のうちに収穫を終えたいとのことである。
ここでは、約60頭の黒毛和種の繁殖雌牛に、このヘイレージを飽食給与している。
そのために、繁殖障害もなく、順調な成績を上げているようである。
合わせて、肥育を行っているが、育成期にヘイレージを飽食していることが、肥育成績にも効果となっていて、最近出荷した中には、ロース芯面積が80平方センチもあったと、自慢たらたらであった。
結構なことである。
約200kgのロールべーラーを2,000個作るを目標にしていた。
このような風景を観ていると、牛ならずとも牛飼いとしても癒される。



国産稲ワラは確保できないのか

2010-12-15 17:42:15 | 飼料
畜産関連組織から経営に関するアンケートが届いた。
低コストや増頭計画についての具体的な手だてがあるかというもので、それらについて関連する意見があれば書けよ!である。
現状では、経営努力をはかっても、円高差益が還元されなかったり、牛肉の消費低迷がもとでの枝肉相場の低迷など、社会的要因により低コストなどの成果が上がりにくい状況である。
その他に敷き料に関する設問や粗飼料の自給に関するアンケートもあった。
ただし、稲ワラなどの確保に関する設問や聞き取りはなかった。
牛の肥育では、稲ワラ確保が重要なポイントであり、万が一中国東北部において口蹄疫の発症を想定したとき、国内の肥育関係者は大打撃を受けるは必定である。
現在、中国産稲ワラは、6~7cmにカットされ、ネットに詰められ加熱処理されたものが我が国の肥育現場に届けられている。
加熱処理は高温スチームが使われていると聞く。
日本国内においても、同様の稲ワラ生産が可能ではないだろうかと思うことがある。
しかしながら、中国は過去に日本がそうであったように、刈り取った稲を束にして乾かし、それを稲ワラ用のカッターで細切してネット詰めされていると聞いたことがある。
ところが、日本の場合は、ワラを取り込みカッターにかけることをしないで済むために、機械化が進み、あげくコンバイン作業が米の収穫には不可欠となった。
重労働で無くなった米作りだけが目的となり、その副産物である稲ワラは、米作りの蚊帳の外として無視されるようになった。
中国では、就労人数も多く、係る人件費や物価が安価であることや機械化が日本ほど進んでいないために、稲ワラを販売する環境が残存している。
最近の中国は、かなりの速度で経済成長を遂げているが、やがては農村部にもその影響は及び、コンバインを導入するであろう。
そうなれば、日本の二の舞である。
これらのことを念頭に、農政も係る生産者も今から対策を講じねば、肥育経営は大きな打撃を迎えることになる。
九州地方では、それに危機感を持った肥育関係者自ら国産稲ワラの確保のために、水田の地主に代わり田植えから収穫を行い、稲ワラを確保しているケースもある。
また目下進められている飼料用稲ワラの作付けなどは、酪農や繁殖用としては実現性は高いが、和牛肥育用としては、水分割合が高いために、現状では実用化できにくい。
国内産稲ワラを如何にして確保するかをソフトおよびハードの面から知恵を絞り出して努力をなすのが農政であり、それらを支援するのが農業者であり畜産経営者である。








干ばつ時の粗飼料事情

2010-12-13 19:00:35 | 飼料

今年は世界的に気象異常に見舞われたようである。
今夏の猛暑は我が国だけかと井の中の蛙状態であったが、最近の海外からの粗飼料事情からオーストラリアの干ばつなどの影響から、穀類や粗飼料の作柄の減少が現実視され取りざたされている。
写真は、目下クレーム中のオーツヘイであるが、完全脱色とも言える状態である。
A欠状態の肥育牛用に単価を下げて引き受ける予定にしている。
中国産稲ワラも輸入量が減少しつつあるが、納入業者の説明は歯切れの悪い情報説明である。
農水省の説明では、減少の情報はなく、輸入業者の何らかの問題ではないかとのことであった。
他力本願の粗飼料確保は、海外の伝染病などの影響を受けやすいが、このような事態を常に意識し、時には通常の計画を変更した具体的な対策を打たないと肥育経営の破綻に繋がりかねないと再認識している現状である。
国産粗飼料の増産体制をさらに強化して貰いたい。


飼料計算

2010-11-27 16:17:30 | 飼料


訪問者から要望のあった飼料計算を記述するが、日本飼養標準(肉用牛)によれば、飼料計算を含む本誌の内容が納められたCDが添付されている。

肉用牛に給与するための飼料計算を行うには、予め日本飼養標準などを参考にして次の①~③を調べておく必要がある。
①飼料計算を行おうとしている牛の飼養形態に応じて、現体重とその増体レベルを想定する。
②①の想定に基づき、日量必要なDM(乾物量)やCP(蛋白量)やTDN(養分総量)を調べる。
③給与を予定している何種類かの飼料について、DMやCPやTDNなどの成分量を調べておく。

上記①について、肉用牛の雌子牛で現在体重175kgあり、増体レベルはDG1.0kgとする。
②①に該当する各成分の必要量はDM4.76kg、CP789g、TDN3.3kg
③成分等については、
 A.チモシー乾草(輸入)     DM80.8%、CP7.5%、TDN62.8%
 B.イタリアンライグラス乾草 DM86.1%、CP10.5%、TDN53.8%
 C.育成用配合飼料 DM77%、 CP17%、TDN70%
○計算法(1) 予め、次のような給与量を想定する。
△1案 [A=3.0kg、C=3.0kg]
MD値を求める
A3.0×0.808=2.424 C3.0×0.77=2.31 AC(MD)=4.734kg 26g不足
CP値を求める
A3.0×0.075=0.225 C3.0×0.17=0.51 AC(CP)=0.735kg 54g不足
TDN値を求める
A3.0×.628=1.884 C3.0×0.7=2.1 AC(TDN)=3.984kg 684g多い

上記の計算結果では、MDとCPの必要量は僅かに不足し、TDNは逆に若干多すぎる結果が出たため、再度給与量の補正が必要となる。
次案を設定して同様の計算を行い、それぞれの成分において約5%以内の誤差の範囲内で給与量を算出する。
とくに、直接栄養成分であるCPとTDN値を重視し不足の無いように配慮する。
○計算法(2)
 △2案[B=3.0kg、C=2.8kg]
MD値を求める
A3.0×0.861=2.583 B2.8×0.77=2.156 AB(MD)=4.739kg 21g不足
CP値を求める
A3.0×0.105=0.315 B2.8×0.17=0.476 AB(CP)=0.791kg  2g多い
TDN値を求める
A3.0×.538=1.614 B2.8×0.7=1.96 AB(TDN)=3.574kg 274g多い
2案では、外国産チモシー乾草を国産イタリアンライグラス開花期乾草へ変更して算出した。
TDN値が約7%程度多いが、単種の成分ではないために、若干多目でも問題ない数値である。
現実の給与に当たっては、さらに複雑な給与設定を行うほど、多岐にわたる様々なミネラルやビタミン等が補足できることで、必要成分の目安はより精度が増すことになるので推奨に値する。
適量な計算結果が得られない場合、2~3種類の餌に固執せず、単味飼料などを補足して必要量を算出する。
飼料計算は上記項目だけで万全ではなく、代謝エネルギーやリンやカルシウム、ビタミン等を同計算に加味することで、家畜の体調維持には不可欠である。

稲ワラクラッシャー

2010-10-15 22:50:52 | 飼料





中国産稲わらは長さ7~8cmにカッティングしたものを78×34×27cmの長方形に梱包してネットが掛けられている。
この梱包1個当たりの重量は凡そ20~22kg程度であるが、納入時にはこの梱包16個が一括りとなってくる。
産地での加温処理の際に、この梱包での稲わらが、解しやすい場合と非常に堅く解し難い場合があり、給与担当者はこれらを崩すのに一苦労している。
ローダーのバケットで叩いて崩したり、掛合で殴って梱包を解しやすくしたり、三つ又で叩いて崩す者それぞれであり、時間と労力を浪費しているのが現状である。
そこで今回、稲わらクラッシャーなる機械を導入した。
機械は幅125cm、奥行き160cm、高さ70cmの極単純なネット付きボックスからなり、奥行きの130cmのスペースに中国わらの梱包を4個か6個を2重に並べておき、出口までの30cmのスペースの底面部にわらを崩すための刃が付いた回転用の太めの1本のローターが幅一杯に取り付けられただけのシンプルな構造で、回転させたローターでわらを崩して、シュート状になった出口から出すものである。
動力源はリフトを利用し、リフトに機械本体を載せて油圧と電機を利用し、機械本体の上げ下げと、奥行き130cm部分のわらを載せる部分が出口に向かって低く傾斜させ、わらがローターにうまく噛み込むように油圧操作ができるようになっている。

当機では数分で4個の梱包が解すことが可能で、手で解したものより、かなりソフトな感じで、肥育牛の食い込みも改善されている。
シュートの高さを調節することにより、飼槽にダイレクト給与でき、1時間で500頭程度の給餌が可能となる。
これにより、稲わらの効果であるルーメン環境の改善と増体および肉質の改善が期待できると見込んでいる。

当機の製造会社は数社あるようであるが、通常2機種あり、給与スペースにゆとりがあれば大きいタイプ、当方は通路が狭いために、小型を導入した。
価格は約120万円なり。

再度講演を拝聴して

2010-09-21 18:23:08 | 飼料

和牛に関して、給与飼料中の微量要素が不足しているという講演があった。
講演は京都大学大学院農学研究科の鳥居伸一郎助教である。
主なる内容は、同助教らが09年に実施された微量元素含量の全国調査(繁殖雌牛290戸、育成子牛(164戸)により、とくに繁殖雌牛への銅や亜鉛などの不足が明らかであるとし、繁殖牛では、毛色が日焼けしたように茶色になるとか、繁殖成績の低下、子牛の発育不足などに関係があるとし、日本飼養標準に標準値とされている値の倍程度を与えることで銅不足は解決するというものであった。
銅などの不足の原因は、繁殖牛に給与される粗飼料は含まれる銅の割合が少なく、銅の割合が一定量補充されている配合飼料の給与割合が少ないためであるとしている。
これらの元素を補給するには、これらが強化された配合飼料や総合ミネラル添加剤を用いると良いとのことであった。
これらのうち、毛色については、粗飼料主体で銅不足の状態で生まれた仔牛は茶色で、哺液剤などを与えることにより、毛色が黒くなり、3~4ヶ月頃乾草を飽食させれば、再び茶色となり、子牛市場を意識して、育成配合を増やすことで、再度濃くなると言う話もあり、うなずける面があった。
ある施設で、低コストが目的で、離乳後の子牛に良質のヘイレージを飽食させているが、発育も今一であるが、毛色がやたらと茶色であることに気づくことがあった。
この研究報告については、個々の飼育環境により問題なく飼育されているケースが多々あるはずであるが、その逆もあると言うことであろうと解釈した。
なぜならば、大多数の繁殖牛は年1産の分娩間隔をなし、繁殖雌牛の頭数に比し子牛頭数が下回っているとは実感していないからである。
繁殖経営者がそのことを意識しながら対処する情報源となったことは事実で興味深い調査研究であった。



穀類の消化について

2010-06-28 16:16:53 | 飼料


肥育牛の糞に穀類がそのままの状態で排出されているというコメントがあった。
今から凡そ50年前、日本で若齢肥育が始まった頃は、麦やトウモロコシが未消化のままではあったが、DGは順調であった。
圧ペンと粉砕では、粉砕の方が糞中へ多く見られた。
そこで若齢肥育牛を用いた消化試験が再々行われた。
その結果、未消化の状態であっても、穀類のTDNなどは消化されたものと同様であった。
肥育牛の糞は見た目には未消化でも問題ないとの結論であり、糞の状態をして、これが肥育牛の糞であるが一般的であった。

ところが最近、肥育牛の糞から未消化のままの穀類が無くなった。
これは、単味飼料の加工の仕方が改善されたためである。
四国に本社のあるO社のトウモロコシはアルファー化(加熱処理等によりデンプンの結晶構造がなくなり、糊化すること)処理により消化し易いことで定評がある。
また麦類も圧ペン加熱処理されており、糞中に穀類が未消化のまま見かけることは少なくなった。
コメントのケースは、穀類がアルファー化されていないことが予測できるが、気がかりであれば、同処置を行った穀類の利用を勧める次第である。

牛は発泡酒が好き

2010-06-14 23:32:17 | 飼料





肥育育成用のビール粕の話である。
滋賀県高島市で製造されている「エクセル」という発酵飼料であるが、これまで、キリン一番搾りから出るビール粕が主原料であったが、この春から発泡酒粕に変わった。
見た目にはさほど変わらないが、写真上がその製品であり、下はそれを採食中の様子である。
従来品より、風味がよく食いつきが良くなった。
ビールと発泡酒では用いられている麦芽の割合が異なり、ビールは50%以上、発泡酒は50%以下とされ、実際は20数%が一般的とされ、発泡酒の場合、その分麦芽以外の原料が多く使用されていて、含まれる粗タンパクが若干多いようである。
そのために、心なしか食い込みがよいのかもしれない。
これまでは、1頭1日あたり、精々3kg程度の摂取量であったが、5kgを食い込む牛もいる。
我々は、気分的にビールの方を好んでいるが、牛らは発泡酒粕の方が嗜好性が高いようである。
ただし、気温の上昇時は、発泡酒粕の方が若干カビ易いような気もしている。
肥育前期用の配合飼料だけより、同発酵飼料を与えることで、整腸効果がある。

中国産稲わらの品質

2010-04-14 23:34:22 | 飼料
                中国産カットわら



導入している中国産稲わらの品質に、このところ問題が生じている。
これまでも、中国稲わらの納入業者を替えた形跡がある程、品質が一定しないことがままあった。
最近になり再び劣悪な稲わらが数回に亘り納入され、その都度交換した。
品質に問題のない稲わらは、色もまずまずで、カットわらのため結束ひもを解くとぱらぱらと扱いやすい。
品質の悪いわらは、黒っぽく変色していたり、かび臭さや異臭がする。
通常稲わらの品質を判断するのに、先ず色を見て判断することが一般的であるが、色だけでは信用出来ないことが起きた。
見た目では通常と全く変わらない品質であったが、牛等の食いが極端に止まったのである。通常の1/3程度しか食い込まない。
異臭がすることもないのに食い込まないため、とりあえず、同時納入の1車全てを交換した途端、以前の食い込みに戻ったのである。
稲わらを牛らが食い込んだ時に、口内で刺激を感じたのであろうと急遽対応した。
通常16梱包一括りを黒いロープで括られてコンテナなどで納入されるが、今回はその一括りの4梱包に1梱包が過熱状態で腐敗臭がするものが混ざっていた。
納入業者によれば、中国からそのままの状態で入ってくるので、その原因がわからないと言い、とりあえず再び交換することとなった。
通常なら、考えられないことであるが、中国から出国までに、湿ったわらとそうでないわらを混ぜ合わせたであろうことが想像できる。
このようなことは、以前にもよくあり、カットわらをビニール製のネットでくるんであるが、そのビニールネットの色がとりどりに混ざってきたことも数回あった。
加熱処理を開始した頃は農水省の関係者が中国に常駐していると報告があったが、現在はどうであろうか。
このようないい加減な品質管理を徹底して指導出来ないものであろうか。
日本への輸出条件が整備されていないためのいい加減さである。