牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

牛枝肉相場の低迷が続く

2009-05-30 08:40:49 | 相場


牛肉消費が低迷の最中、国内でも新型インフルエンザの感染が確認されたことによるニュースが、これでもかこれでもかの様相で報じられ、その挙げ句都市部や観光地への旅行や旅館ホテルの宿泊キャンセルが続発しているという。
これらの影響は、牛肉消費の低迷に拍車をかけ、それらを反映して食肉市場では、牛枝肉の5等級で2,000円/kgを割り込むものや、4等級で1,600円という相場がみられている。
得てして、引き潮の時には、災難が続くというが、まさに今時の牛肉生産および流通産業の低迷は、物材費の高騰による損益に加えて、世界的な経済不況が引き金となり、我が国の輸出産業の現地消費激減による同不況がらみにおける牛肉消費減、新型インフルエンザによる消費低迷の加速と枚挙に暇がない状況である。
この状況は、牛枝肉の75%を占める4等級以下の肥育牛は、確実にかなりの損益に至っているはずである。
大方の肥育関係者は、これまで出荷すること事態に夢を抱いていたはずが、現在では、恐る恐るの出荷であろう。
ここに至っては、出荷時の月齢や体重対策など、考慮の他となり、この状況からの脱却対策の目処が立たず、苦慮の生産現場である。
今後は、この教訓を生かし、導入子牛選定や利用飼料等、不況に強い肥育経営策の構築のみである。
現状での願いはただ一つ、出荷時期に至った肥育牛の上質肉期待のみである。



絵画に出てくる牛たち

2009-05-27 17:08:14 | 予防治療


この絵は、有る大学の玄関ホールに飾られているもので、早坂貴代史作「新緑萌える」という力作である。
絵の素晴らしさもあって、絵画に出てくる牛たちは、牧歌的で、放牧風景がリアルに描かれている。
いつもは牛たちに囲まれていても、油絵などに描かれている牛たちには、ニュアンスは異なるが、心惹かれるものがある。
この絵を見ていると、牛は牧畜であるという本来の牛社会を意図されて描かれている絵であり、日頃牛に関わっている作者の作品であろうことが伺える。
だから描かれた牛たちにも親近感が湧いてくるのかも知れない。
汗まみれであっても、相場が気掛かりでも、あくせく働く合間に、この様な素晴らしい文化に触れて観ることで、牛飼いならではのひとときの喜びを、ひしひしと味わえることになる。






恐るおそる触る

2009-05-25 17:22:18 | 予防治療







小学生2年生の学外授業は地元施設を探検するというもので、5名の生徒が当センターを引率の父兄代表1人で訪れた。
聞いたことをメモると言うので、事務室で対応した。
一人ずつ、習ってきたであろう挨拶をしてくれた後、8項目の質問を一人ずつ手分けして聞いてきた。
全員がB4のコピー用紙に罫線で等分に区切った中に、質問内容と回答を記録するスペースを拵えて、メモる用意が出来ていた。
私の回答を、メモっては消し、メモっては消しながら真剣である。
学校へ帰ったら調べたことを発表することになっているらしい。
まだ2年生のことで、多くを話しても理解やメモがし難いようであった。
質問が終わったら、2~3の牛舎を案内することにした。
5名の内、始めて牛を見た生徒は4名であった。
驚いたことに、始めて牛を見た生徒らはいきなり「こわい!」であった。
経験のある生徒は牛に触りたいという。
座って近付いたら触れるよというと、気持ちいいわと頭部を触り回す。
すると、もう一人の生徒も興味を持ち始めた。
子牛の前ではそれでも、やや後ろに下がり気味でも舎内をついて回った。
ところが、仕上げ舎では、3名の生徒が、怖いといきなり逃げ出してしまった。
二人は、800kgぐらいの牛に触ろうと必至である。
この状況を見て、自宅に牛や家畜がいれば、抵抗はないのであろうが、無理もないことだと苦笑いであった。
最後に、「うしさんのかお」のレジメを全員に渡しながら、「学校やお家のお父さんお母さんと一緒に見て、内容を教えて貰ってください」と私の思いを託した次第である。
地元の子供たちの来訪は初めてであったが、願わくば高学年の見学会が増えることを大いに期待したいものである。


子供らのために

2009-05-23 17:30:51 | 予防治療


珍しく、小学生らが、来週センターを探検に来ることになった。
センターを所望した子供たちは、僅かに5名だそうである。
見学以来に、質問事項が8項目ほど羅列されていた。
それで、1時間余り見学させて欲しいというものであるが、余りにも話題に乏しそうなので、写真のような4ページのパンフを手作りした。
そのためにこのところ、熱意に欠けるブログであったと自省している。
帰りには、ポイと捨ててしまうであろうが、一人ぐらいは、最後まで目を通してくれるであろうと、最近になくまじめに取り組んだ。
5分の1で、20%である。上々である。
これくらいの勢いで、将来牛や理科に感心を保って欲しいと切なる思いである。


飼い牛のお守り

2009-05-20 19:34:00 | 予防治療



関西の著名な大学の牧場の牛舎で見かけた牛のお守りである。
昔から、農耕牛を飼っていた農家の牛舎には、「牛馬観音」の御札が貼り付けられていたものである。
最先端の研究が行われている現在の牧場に「北野天満宮飼牛守護」の御札がマグネットでそれとなく止められていた。
牛たちの無事を祈るは、科学者であっても、当然な願いであり、大変殊勝な光景であると気分良く離場した。

後悔先に立たず

2009-05-18 19:34:04 | 牛の病気



仕上げまで数ヶ月の去勢肥育牛が、尿毒症で急死した。
予てより、尿石症の疑いがあり、断続的に加療を続けた牛であったが、最近も数日間その治療を続けたが、食欲不振となり、獣医師の直検により膀胱に尿が溜まっているとのことで、とりあえず血液検査をして加療することとなった。
血液検査の結果、BUN値が100で、出荷しても廃棄の可能性が高いとのことであった。
膀胱の尿を排出させることで、この値を下げることを期待して、尿道へカテーテルを装着する手術が行われた。
カテーテルが順調に装着され、尿の排出をみたが、尿は血液と思われるほどの血尿であった。
膀胱内で何らかの炎症が起きていたのであろうか。
ところが、尿の排出による効果は見られず、その翌日、2度目に見回った昼前急死しているのを発見した。
獣医師によれば、尿毒症が悪化したものと判断された。
これまで、この種の手術に立ち会ったことは無かったが、肉牛ジャーナルに08年12月号から連載されているシェパードの蓮見浩獣医師の「尿石症のお話」の記事中、尿石症の手術の詳細を拝見したばかりであった。
今回、蓮見師の紹介記事同様の手術内容であり、「なるほど!」と固唾をのみながらの観戦であったが、残念な結果に終わった。
尿石症の治療を徹底しなかったツケでもあり、先立たぬ悔いしきり。

子牛価格の低迷

2009-05-17 23:36:11 | 素牛


八重山市場5月セリの子牛相場が金曜日の新聞に掲載されていた。
総平均価格が、28万円で依然厳しい相場が持続している。
この市場に出荷している和牛生産者から、セリ価格が今一であったとコメントを頂戴した。
通常購買者は、①子牛の瑕疵を含めた健康状態、②発育状態、③生後月齢、④血統、⑤体型の良否、⑥産次、⑦生産者の育成実績などを寸時に判断してセリに挑んでいる。
中でも、敬遠したくなるのが、発育に問題があり体幅に欠ける子牛、9産次以降の子牛、生後220日令以前と300日令以上の子牛、体重220kg以下と300kg以上の子牛、血統では3~4代祖の種雄牛の能力が把握されていない場合などを重視している。
産次については、8産次以上については、その肥育成績が右下がりであること、父牛については、常に上物を産出する優れたものの他、新米種雄牛に着目している。
年々優れた種雄牛がデビューしている傾向にあるためである。
子牛生産者は、購買者の目を盗み、これらの条件に叶う子牛生産であれば、厳しい相場ではあるが、次第に納得のいく結果が得られるはずである。
現状でも、良い子牛は、それ相応の高値で競り落とされている。
その様な子牛の高値条件が、如何なるものかを把握するかにかかっているとも言える。

乾草調整のシーズン到来

2009-05-14 19:47:53 | 飼料










ゴールでウィークが過ぎると毎年、乾草調整のシーズンが到来する。
近くにある大学の圃場でのその作業風景である。
いつもは、雨に打たれ倒伏するので、今年はそれに強い品種に替えたとのことである。
イタリアンライグラスの茎が細めの品種で早生系統のようであるが、昨日の夕刻近い頃に刈り倒したと言うが、写真は今日の同時刻の風景である。
若干収量は少ないらしいが、ヘイレージにするには、絶妙の乾燥具合で最高の出来である。
草の芳香も素晴らしく、ヘイレージ調整して、ラッピングを開けた時にも、ヘイレージ特有の素晴らしい芳香の中で和牛繁殖牛たちが頬張ることだろうと、思い浮かべながらこの調整風景に暫し見とれながら時を過ごした。
この様な粗飼料は、輸入乾草にないオリジナルなもので、担当者らの取り組みのタイミングと努力に感嘆した。
牛たちが喜ぶ風体を見たいものである。


第4胃変異か盲腸炎か

2009-05-11 23:13:22 | 牛の病気










導入2ヵ月目の去勢子牛が食欲不振に陥り、原因不明のため、獣医師の診察を受けたのは、去る3月30日であった。
診断がなかなかつかなかったが、それは盲腸炎なのか第4胃変異なのかで判断しにくい状態であるという。
おそらく変異であろうが、開腹手術してみないとらちがあかないと言うことになり、その翌日に手術となった。
結果は、後者であったが、変異の具合は差ほど重傷ではなかったが、胃内からは黒褐色の内容物が貯留し、それらを取り出すことで、手術は終了した。
手術の翌日からは、食欲と胃の動きが回復した。
獣医師の的確な診断と、その処置の正確さに敬意を表した次第である。
写真は、その回復状態を撮ったものである。
1枚目は、手術終了時、2枚目は4月3日の抜糸直後、3枚目は本日の状態で、発毛状態にかなりの変化が見られる。
同症き原因不明であった。

繁殖雌牛の育成(27)

2009-05-09 23:36:16 | 雌牛






⑭子牛の頃からコミュニケーションを取る(2)
筆者は、機会を見ては親子牛群の中に入り、牛たちと戯れコミュニケーションを取り合っている。
軍手越しの手を彼らに差し出すとおそるおそる近寄ってくるが、群中では腰を屈めていると、筆者の周囲には群中の全ての牛たちが、難なく近寄り、鼻鏡を寄せ舌でコミュニケーションを牛たちの方から取りに来る。
牛の習性なのか、自らの体より小さい者には、興味を示し、相手に勝っていると思いこむのか、そのために意外と容易に接触してくる。
ところが、ひとたびその場で立ち上がると、牛たちはたちどころに散ってします。
相手の人間が自分らより大きいため、草食動物特有のひ弱さが飛散に繋がるのである。
だから、そのような場合は、そーっとそーっと立ち上がることにしている。
屈み込んでいる時に、軍手越しでいると、ホルスタイン種の子牛の如く、軍手を競争するかのように口にくわえて吸い込んでくる。
牛に餌を毎日与えていることだけで、コミュニケーションがとれていると思うのは、些か軽々に過ぎる。
人と同じように、日常のあらゆる行動の中でのこうしたコミュニケーションを再々取ることで、牛たちは人を信頼してくれるのである。
毎日の手入れであったり、引き運動であったりも有効なその手段である。
以前にも述べたが、飲酒運転は事故のもとであるが、牛飼いにとっても飲酒後の分娩介助などは、コミュニケーションを論ずる以前の問題である。
如何なる術者であっても、牛からみれば、豹変した怪獣の如きに見えるらしく、一瞬のうちに母牛は、猛獣化して突きにかかってくる。