牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

飼い直しの補足する

2008-09-30 17:37:20 | 肥育


素牛を導入して、暫くは粗飼料主体で飼い直しすることを前述した。
子牛を高く競り落として貰うために、発育や増体を良くしようと濃厚飼料の割合を多くして与え、その結果、りっぱな尾枕を付けて市場に出てくる。
この様な牛は、そのまま育成配合を多給して肥育状態に持っていけば、脂肪の蓄積が早期に始まり、こぢんまりとした肥育牛に仕上がる。
順調に仕上がればよいが、ビタミンAのコントロールをすることでA欠乏症になる可能性がかなり高い。
脂肪壊死に罹る可能性も否定できない。
もう一つ問題視すべきことがある。
それは、昨日書いたことであるが、濃厚飼料多給の結果、ルーメンアシドーシスに罹りやすい状態にあると言うことである。
同症状の結果は、既に述べた。
導入後、飼い直しをする効果は、粗飼料を多給させて健全なルーメン(第一胃)を作るということが目的であるが、それは取りも直さず、今時の大多数の素牛が肥満で、ルーメンアシドーシス状態であることを前提とし、肥育に取りかからねばならないことから、飼い直しの必要性があると考えている。
以前から、地域によっては、グリーンマークを付けた牛は、その価値を評価して貰おうという取り組みがあるやに聞く。
グリーンマークとは、子牛を粗飼料主体や放牧主体で育てた牛に認定マークを付けてセリに出すシステムのようである。
しかし、その認定の根拠と証拠立てがどのようになっているかは知らない。
これが信頼できれば、大変結構なシステムである。
飼い直しが極めて容易くなるからである。

肥育牛の蹄葉炎の一例

2008-09-29 20:32:53 | 牛の病気


生後25ヵ月令の去勢牛であるが、蹄葉炎に罹り、餌を食べる時、前肢のヒジを突いたままある。
無理矢理、前肢を伸ばせば、直肢状態でロボット病とも称される。
肥育牛の蹄葉炎の原因は、粗飼料の摂取量が少なく、濃厚飼料の摂取割合が多いと発症しやすい。
和牛では、子牛相場を期待する余り、濃厚飼料に頼る傾向があり、そのために、肥満児様の子牛は、粗飼料の食い込みが減少し、肥育段階になっても同様の傾向となり、やがて蹄葉炎を発症することとなる。
つまり、ルーメンアシドーシスとなるため、それが蹄葉炎を引き起こす。
蹄葉炎には、様々な症状があると聞く。
導入して数ヶ月経つ頃に、蹄が広がり正常な形ではなくなるケースがままある。
こうなると悪循環で、蹄にかなりの痛みがあるために、運動量も少なくなり、食欲の低下と次第にツナギも弱くなる。
濃厚飼料の給与量を抑え、出来るだけ粗飼料主体とし、変形した蹄は、早め早めに形良く削蹄して、対処しているが、完治することは余りない。
余程早期に対処することで、治ることもある。
その様な牛の角や蹄にやや赤っぽい縦筋が残っていることがあるが、アシドーシスの後遺症状であると獣医師の説明である。
牛は草で飼うの基本が生かされていれば、蹄葉炎はないのかも知れない。



体調とかかわる皮膚病

2008-09-28 16:38:11 | 牛の病気

春先に撮った写真であるが、導入間もない牛に罹っている皮膚病で、そろそろ治りかけた状態である。
この種のは、一切治療の必要はない。
子牛の時に肺炎や下痢をやや長期に患っている子牛に、罹りやすいと獣医師の話である。
だから、それらの疾患が改善されれば、問題なく治るという。
そのために、食い込みを良くし、体調を強靱に持って行かなくては成らない。
この種の皮膚病は、子牛に罹りやすいが、成畜に罹る皮膚病は異なる皮膚病のようである。

以前は畜舎を新築して、牛を入れると象皮状の皮膚病が蔓延していた。
何がその原因なのかは定かではないが、セメントの灰汁の性だと聞いたことがある。
米ぬかを水で溶いてコンクリートに掛ければ、発症しなかったとも聞いた。
当方でも新築して、牛を入れて10日位い経つが、今のところ発症の気配はない。
最近の生コンは速乾性で、灰汁が少ないのかも知れない。

現在は、この様な皮膚病は、約1,000頭中1頭もいなくなった。


安全安心のイメージ作り

2008-09-26 21:46:17 | 雑感

食品の安全安心を消費者や関係者に理解と信頼を得ようと肥育生産者などの中には、懸命に努力されているケースが有ると聞く。
基本的に第三者機関に情報を公開して生産品を安全であると認定する方策であれば、確固たる信頼が得られる。
その様な認定でなくても、澄んで静寂な生産環境をアピールしたり、空気や水をアピールするケースもあるようだ。
その様な飼育環境を消費者にイメージ付けすることは、係る産業をより展開する上では、重要な要素であろう。
筆者も出荷用に、オリジナルな生産履歴を1頭1頭作成して添付している。
手前味噌かも知れないが、かなり好評である。
周囲を山々に囲まれ、安心してのびのびと生きているという牛をイメージ化するために、飼育に携わる人たちが牛を囲んだ写真をカラーで貼り付けている。
制作に当たり、消費者がこれなら安心で美味しい牛肉であろうことをイメージしてくれるであろうと意識しながら作成した。
和牛の肥育センターや子牛生産者総意でその様な意識で、消費者に理解を求める努力を重ねて貰いたいと思っている。
そのことによって、和牛への理解が深まり、安全と美味しさをイメージしながら牛肉を消費して頂けようと確信している。

コクシジューム症

2008-09-25 19:34:17 | 牛の病気





尾籠な写真であるが、本日撮った牛の糞である。
コクシジューム症に罹った牛の糞であるが、明らかに血便である。
導入後20日足らずの雌子牛で、新営なった育成舎内で発症しているのを本日気づいたものである。
導入牛は、おそらく生産地で同症に感染したものであろうと判断している。
写真下のように、同症に罹ると、下痢と共に血便が認められ、常に尾をあげ気味にしている。
同症を発症させる菌が、親の体内や畜舎内の糞などに常在し、他牛に感染し、強健でない子牛などに発症する。
肥育牛では、生後20ヵ月令以上でも発症する。
また、同症は、気温の高い時に発症しやすい。
腸壁が充血し、やがて出血することで血便となると言われ、商品名アップシードやサルファ剤などを投与することで治る。
写真のような糞は、速やかに取り除くことも感染を防止するには必要である。




肥育経営日々深刻化しつつある

2008-09-24 19:46:50 | 肥育
枝肉相場が下落している。
BMS no.が4で、肉の締まりが2、つまり2等級に格付けされれば、kg単価は1,200円まで下がった。
これでは、枝肉重量が500kgで60万円となる。
飼育日数にもよるが、平均的には、40万円の赤字となる。
冗談や笑い事では済まされない現実となりつつある。
現相場では、A5でなければ黒字にはならない。
枝肉重量が400kg以下では、A5でも90万円に満たなく、赤字となる。
これらのことを考慮に入れると、全国平均が20%に満たないA5ランクであるが、残りの80%は赤字という計算になる。
現行の素牛価格の牛が出荷できるまでの1年半は、この現状に甘んじなくてはならない。
日本経済の好転無くしては、牛肉の消費増も望めない。
飼料等の高騰も下落の傾向にはない。
この厳しさに開いた口が塞がらない肥育経営が現実みを帯びて来つつある。
政府は、食糧資源確保の観点で思い切った支援処置を考慮しなければ、和牛の飼養頭数にかげりが生じかねない。
高々40億円の支援では、その効果は泡と消えるのではないだろうか。
何故なら、肥育牛1頭当たり平均20万円の赤字が見込まれるが、1万円程度の支援でも、焼け石に水の例えに他ならないからである。


牛に優しく

2008-09-23 18:52:04 | 牛の成長


日本には、昔から食卓に座れば、手を合わせて「頂きます」と唱える習慣がある。
学校では、給食費を払わない生徒とその親たちが増えていると聞く。
おまけに、何で「頂きます」なのよと、それに抵抗しているとも聞く。
実に嘆かわしいことであると感じている。
先日、通勤途中のカーラジオで、ゲストのコメンテーターから、その話が出た。
人は、野菜や米など命あるものを頂いているから、それらに感謝する証として「頂きます」があるというのであった。
全くその通りであると、筆者も頷きながら拝聴した。

話を牛の話題に戻すが、食卓の「頂きます」の観念に戻れば、牛飼いや食肉関係者など畜産関係者全てが、その意を認識しているはずである。
畜魂慰霊祭などの挨拶では当然のようにその様な話を拝聴し、つねに我に返っていることがままある。
その様な観点を常に意識することで、家畜たちとも仲良くなるはずでもある。
おめおめ、気に入らないとか言うこと聞かないとからと言って、鞭を振るう時代ではないのである。
全ての家畜が、食肉用として飼育されているからには、そのことを熟知して、飼育環境の改善だけでなく、管理する一人ひとりが家畜の嫌がる行為だけはしないと認識すべきである。
当欄にコメントを頂く人たちの全てが、それらを当たり前のように認識したコメントが寄せられている。
その家畜への思いやりが、それぞれの成果が着実にあげられていると予測できる。
畜主と家畜たちが意を介してそれらの目標のを目指せば、当然のように成果は実ると日頃考えている。
時折、異常な行動をとる素牛が導入されることがある。
これは、子牛たちに何らかの危害が加えられているからで他ならない。
それでは、折角有能な資質を有しても、結果的には、それらを生かし切れないことが多々あるのである。
家畜と接するには、常に「頂きます」の精神を忘れないで欲しいものである。


監視角度

2008-09-22 19:44:08 | 牛の管理


写真は、監視する目線の高さから撮った肥育牛房の牛たちの状態である。

牛を監視することは、肥育管理にとって不可欠なことである。
しかし、折角監視したつもりでも見逃す場合もある。
それを見逃さないためには、牛を確実に見渡せる角度が重要となる。
その飼育スペースが広ければ広いほど、それが重要である。
写真の角度であれば、房内に10頭いてもほぼ見渡せる。
写真を撮った高さであるが、牛床面より、通路を35cm高くした例である。

監視は、反芻や下痢、尿石症や歩行など牛の体調や食欲状態、問題なく飲水しているか、また飼槽の状態など様々なことに注視して監視が必要である。
頭数が多いと、ほぼ反芻して全体が座っているようでも、時には、発熱でうなされている場合などは、それが判りにくい場合が多々ある。
鼻環を掛けた場合のように、全てのトラブル時に大声で鳴いてくれれば、容易いが牛たちは黙して潜んでいるのみである。
通路を高くした畜舎を見聞きされた他所の畜主は、早速この様に底上げしようと決心されたと聞く。





肥育の生き残り対策の一面を考える

2008-09-21 16:15:00 | 肥育

今年7月に導入した去勢牛群である。
順調に草を食い込み、順調に発育している。
ややオーバーワーク気味の感ありだが、これくらいの方が、今後の食い込みが期待できる。
後1ヵ月したら5~7頭飼いのマスで肥育を本格的に集中させる予定である。
一般的には、この3ヵ月の飼い方で肥育の将来が決まると良く聞く。
この間の育成は、それぞれの肥育センターによって多少異なっているようである。
但馬牛を肥育するあるセンターでは、この3ヶ月間は草を主体として腹作りを行うと聞いた。
こちらでも、それに近い飼い方であるが、この間は、今時話題となっている食品副産物のうち、ビール粕等を加工した製品を与えている。
これは、育成飼料を飽食させると軟便になり易いために、その対策として20数年間与えている。
また、最近の素牛は肥育牛状態でセリに出てくることから、その勢いを活かし、飼い直ししないで、そのまま肥育状態として継続するという方法もあるようだ。
この場合は、早期に体脂肪の蓄積が始まるので、こぢんまりとした体型のまま仕上がる傾向がある。
ただ、以前より和牛の発育や体型が大型化しているため、この肥育法でも、枝肉重量が480kg程度で仕上がるそうである。
同時に早熟させるため、仕上がり月齢が、生後26~27ヵ月令で出荷可能となる。
肥育期間の短縮と飼料摂取量を抑える効果が得られ、肥育効率の向上に繋がることも考えられる。
問題は、市場性に伴う枝肉に仕上がるかが注目されるところであろう。
肥育牛の緊急支援対策事業の支援条件にも、肥育牛の出荷月齢を29ヵ月未満にするか、前年度出荷月齢の平均値より少ない月齢で出荷することが、基本条件とされており、その上で、エコフィードの利用率であるとか、肥育牛の飼養環境が改善されているかなどが条件下されている。
肥育牛経営は、低コストを勧める必要に迫られているが、同対策にあるような期間短縮やエコフィードや代替え飼料などの項目を日頃から考慮検討する必要に迫られていることを実感している次第である。



珍しい疾患

2008-09-20 14:01:33 | 牛の病気


最近始めて発生した肥育牛の病気で後大静脈血栓症に罹り、喀血して死亡した生後17ヵ月令の去勢牛である。
早朝発見して、獣医師の往診により、同症と診断された。
鼻孔および口から大量出血して、一見脱水症状様で、生気を失っていた。
獣医師は、「この病気は治ることは無い」とのことであったが、1時間後に死亡した。
これは化膿性肺炎や肺動脈栓塞のため肺の動脈が破裂し、大量の血液が気管内に流入して鼻孔と口腔から吐き出される疾患であるとのことであった。
それまで、他牛に比し、体幅が若干劣る程度であったが、食欲は多少細めであった。
原因については、子牛育成時に肺炎に罹っていたか、肝膿瘍や肺膿瘍を患っていために同症に至った可能性があるとのことであった。
滅多に発症しないが、おそらく全国でも0.1%程度の疾病率である疾患のようである。