牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

子牛用ワクチン

2008-08-30 09:16:59 | 牛の成長


畜舎で子牛生産していると、季節的に風邪症状なのか下痢や咳を伴う病気になることがある。
この症状には、必ずと言っていいほど高熱を伴い、次第に瞼が重くなり生気が失せてくる。
そして、子牛たちへ次から次に感染する。
屋外の放牧場での管理であれば、この様なことは稀である。
2~3頭飼っている場合も、その様な発症は稀である。
これらの状態から、畜舎で蜜飼いすると、様々な疾病に繋がる。
予想するに、畜舎内が次第に疾病の原因となる多様な病原菌などに汚染されていることが伺える。
肥育牛であれば、その牛房が空くとともに消毒が習慣付いている。
しかし、繁殖牛房は常に常時多頭の牛たちがいることもあって、消毒などに至らない場合が多い。
分娩房などは以外と消毒管理されている例は多い。
疾病は、分娩房だけに常在しているのではなく、舎内の全てを管理しなければ、根絶には行かない。
実は、消毒法も様々で、薬剤や石灰に依ったり、バーナーなどによる焼射消毒などであるが、なかなか完全にはいかない。
そこで、昔はなかった様々なワクチンが開発されて、親牛にも子牛にも接種することによって、これらの疾病を予防している。
5種混合ワクチンとヘモフィルスワクチン(ヘモ)は、全国的に競り市前の月齢時に接種が行われ、子牛登記書の裏にその記録がある。
ヘモに関しては、競り市を挟んで生産者と肥育センターとで前後2回接種している。
中には、接種状態が不十分で、導入後1~2ヵ月後同症に罹るケースもある。
最近は、生後1ヵ月半くらいに第1回目を接種して、その1ヵ月後に2回目を接種するという混合ワクチンも出回っているようである。
このワクチンは、ヘモに加えて幼牛の肺炎等に効果があるとされておる。
肺炎に効果があっても、ヘモについては、2回目を2ヵ月半に接種したら、競りに出す頃になれば、同ワクチンの反応が消滅しているのではないかと考えられる。
最近、そのワクチンを接種してきた子牛が数頭いて、その対処に困惑し、メーカーに問い合わせたが、予測の上という回答しかなくさらに困惑した例があった。
結局、導入時に従来のヘモワクチンを投与したばかりである。
これらの開発や普及は良いが、投与に関する技術を確立させた上で、普及させて貰いたいものである。


枝肉価格

2008-08-29 23:39:13 | 枝肉


肥育牛を仕上げていざ出荷と送り出す。
そして3日後には、格付け表と仕切り書がファクシミリで送られてくる。
それを目に通すなり、一喜一憂である。
日ごとにその成績が厳しい結果となりつつある。
格付け成績が下がると言うことではなく、枝肉単価がじりじりではなく、ぽんぽん下がる感じがする。
4等級なら大丈夫とタカをくくっていたのだが、1,600~1,800円台となった。
70~80万円台になれば大変と記述したが、それが現実になりつつある。
これでは、20~30万円の赤字となる。
A-5率が15%、4等級が50%、3等級以下が35%ではどのように計算しても、赤字経営と言うことになる。
上物率が80%を超えてトントンの計算になる。
素牛価格が55万円、諸々の経費が45万円、これが平均価格である。
実は、素牛価格が55万円はまだ良い方である。
平均65万円という肥育センターもある。
素牛価格が、35万円でペイする現状では、良いものを作るしかない。
仕切り書などを手にパソコンへかかるデータを入力して、出荷牛の一覧表をプリントアウトする。
そこには、枝肉量に単価、格付け成績に加えて、差益欄がある。
近頃は、赤色の文字が目立つようになった。
諸物価の高騰により、牛肉の消費がかなり冷え込んでいることが、枝肉単価に連動しているとのことである。


自家生産粗飼料で留意すること

2008-08-28 23:07:47 | 飼料


自家生産した粗飼料を給与する場合、繁殖雌牛では、生草のまま与えているケースがある。
特に西南暖地など、冬季でも刈り取りが可能な地域では、牧草を保存するサイロやロールベール調整時に必要な機器類の調達費用を考慮すると、青刈りのまま給与した方が、低コストに繋がるようである。
徳之島で200頭の繁殖を目指している牧場でも青刈り給与方式であった。
最近一般的になってきたのは、ロールベールによる貯蔵方式である。
前述のヒエの記述で書き漏らしたことがある。
それは、圃場の条件によるが、硝酸塩中毒を引き起こす例があることである。
この中毒は、硝酸塩含量の多い草を牛などに与えたために起こる中毒症状であるが、血液が濃くなり、やがてはチョコレート状になり、血液の流れが止まり、起立不能状態の症状となる。
この硝酸塩中毒は、草種、生育ステージ、刈り取り時の天候、圃場の土壌条件等が拘わっている。
窒素分の濃厚な厩肥等を多量施肥した土壌等では、栽培作物の硝酸塩含量が高くなる。
また、長雨が続いた直後に刈り取った場合、その含量が極端に増加している場合がある。
筆者等は以前、スーダングラスやたでなどの雑草が多量に含まれている若いトウモロコシを雨上がりに刈り取り、繁殖育成雌牛に給与した途端、頭部を下向けにして前肢が立てなくなる症状が出た。
つまり、同症状であった。
メチレンブルーを希釈して静注した途端、回復した経験がある。
牧草等の硝酸塩含量は、出穂し種子が実ると減少するが、栄養分が高い時期に硝酸塩含量も高い。
硝酸塩含量は、青刈り時が最も高いが、サイレージや乾草調整後も残存するケースがある。
ヒエのように濃緑色の草は、要注意であるが、種子が熟した後であれば、ほぼ大丈夫である。
また、牛を繋牧させる場合、同症が多発した例が過去にあった。
繋牧時にも、これらの条件を留意して実施すべきである。




新聞を読んで

2008-08-27 18:34:16 | 雑感


牛肉等の生産履歴を保証する生産情報公表JAS(トレサJAS)の規格緩和のニュースが今朝の日本農業新聞で報道された。
この問題については、前述して子牛を競り市から導入する場合は、子牛生産者と関係の獣医師の正確な情報など同規格が厳格であるため、認定を受けられないと記述した。
報道では、現在牛で同認定を受けて出荷しているのは、全国で僅か0.4%に過ぎないとあった。
農水省の関係者らは、これでは消費者の要望に応えられていないことと、現状ではその割合を増やす見込みがないと判断したのであろう。
そのため競り市から導入した子牛についても、同規格を緩和して認定が受けられるようにするというものである。
具体的な緩和策の詳細は、報道されていないが、今秋中には告知するとしている。
同認定の緩和を待ち望んでいた肥育関係者や流通関係者らには朗報であろう。
この認定を受けて肥育生産された牛肉については、安全性が保証されることから、2~3年後には生協や大手のスーパーなどでの取扱量がかなり増加することが予想される。
生産現場では、安全管理と不慣れな事務処理を抱えることになるが、枝肉にその付加価値が得られるか、流通過程のみの対価となるかが気がかりである。

夏場の草作りはヒエに限る

2008-08-26 19:08:13 | 飼料


以前勤務していた牧場の話である。
50~60頭の繁殖雌牛から子牛生産して、肥育までを行う牧場である。
凡そ10ha程度の圃場で粗飼料生産を行い、繁殖牛と仔牛には、年間を通じてそのロールベール製のヘイレージを飽食させている。
考えてみれば、今時珍しいやり方であるが、飼料高騰の今後を考慮する時、功を奏した粗飼料の自給生産なのかも知れない。
ここでの粗飼料生産は、その全てがロールベールによる貯蔵方式である。
5月の連休が終わると、イタリアンライグラスを収穫し、その1月後に2番刈りをし、さらに約1月後に3番刈りを行って収穫する。
イタリアンライグラスは夏場には、萎凋し枯れるため、そのまま放置し、それを待っていたかのように、ヒエが勢いづく。
それを9月になれば収穫してベールするが、結構の収穫量である。
ヒエを収穫後は、堆肥を散幡して次年用のイタリアンライグラスを播種する。
また一部には、春まきのスーダングラスを播種し、夏場に2~3回刈り取りベールし、最後はヒエ頼みである。
ヒエを粗飼料にすることを、怠け者のすることと遠吠えする御仁もあったが、イタリアンライグラスよりも嗜好性が高く、粗飼料としてりっぱに利用できるのである。
ひえの最もの長所は、肥料が不要であることである。
それと、何処の土壌も肥料過多であると新聞で拝読するが、その点、ヒエは過多となった土壌を綺麗に掃除してくれるのである。
牛は、ヒエの種子も大好物のようである。
もう、15年以上同様の栽培体系を継続している。



猛暑の割には熱射病も少なかった

2008-08-25 19:43:41 | 牛の病気


年々温暖化が進行している。
昔なら想像も付かない気温が記録される。
この夏は36℃を越すこともあった。
肝機能に問題のある肥育牛1頭が、熱射病と診断されたが、夜間の気温が25℃程度に下がるために、大事に至らなかった。
一頃、光化学スモッグなどと警報が出されていたが、近年余り聞かなくなった。
高温化が、湿度を若干下げているのかも知れない。
そのために、熱射病の発症が減っているのだろうか。
ここ数日、雨天のこともあり、気温が20℃代に下がった。
牛に食欲が出始めたと思ったら、仕上げ前の肥育牛にビタミンA欠症状が出始めた。
食欲が低下したり、四肢が若干腫れるというものである。
数頭の内1頭は緊急出荷したが、筋肉水腫のため衛生検査が保留となってしまった。
出荷直前に獣医師が採血して生化学検査を行っていたが、ビルピリンなどの検査値は、差ほど高くなかったので、保留の理由が今一理解できないでいる。
水腫つまりズルであるが、これが出れば、購買者は待ってましたとばかり、半値近くの下落である。
おそらく大赤字になるは、必定であろう。
普段からの観察が抜群なら、この様な結果には至らなかったはずである。
育成時の飼い方で、カロチンなどの摂取量と肝臓への蓄積割合が潤沢であるような飼い方に徹底されていなかった事が、A欠に繋がったと判断している。
同時期の導入群に集中しているからである。
また、増体速度が高い牛にもA欠症状は見られることは前述した。
篤農家の話のように、田圃の畦草を3~4kg毎日与えることで、A欠症状を回避できるかもしれないが、現実味がない。



素牛の血統

2008-08-22 23:44:57 | 素牛


素牛購入は、手慣れないとなかなか成果が上がりにくい。
市場名簿を手に、セリ開始前までに一通りランク付けしなければならない。
予め、事前に送られてくる名簿で、性別、日齢、期待育種価、産次、血統、母牛の実績、瑕疵等の表示項目、生産者の実績などをチェックしておき、当日は、子牛の健康状態や発育栄養度、問題があれば牛の性格等を寸時にチェックすることになる。
事前調査の内、難しいのが血統評価である。
血統の組み合わせを理解し、その組み合わせに最もあった肥育法を行うことが基本であろう。
鳥取系や島根系であれば、増体系であるために、増体能力を効率よく高める肥育法を取るべきであろう。
一方但馬系であれば、肉質系で増体能力は今一であり、それに適した肥育法を取らねばならない。
子牛市場に出てくる子牛の血統は、その全てが異なる。
一般的には、両親、母の父、祖母の父までは名簿に記録されているので、それらを参考にするしかない。
血統的に理想的な組み合わせであっても、枝肉にした場合の評価が狙ったとおりに行くとは限らない。
むしろはずれることの方が多い。
ただ、血統上で3代祖が、鳥取系、但馬系、島根系がほぼ均等していれば無難である。
同一の血統であっても、肥育成績が一定することは稀である。
その様な条件下で、それぞれの特徴を持つ系統を均等に交配することは、発育や強健性、増体や肉質能力を安定して引き出せる要素がある。
血統が偏っていれば、それらを念頭に肥育法を考慮しなければならない。
勝忠平×平茂勝×第20平茂 この様な組み合わせを見ることがある。
若干兵庫系は見られるが大部分は鳥取系である。
増体系を意図して交配されていればよいが、畜主および人工受精師が交配で生まれる子牛が改良や肥育結果にプラスになることを意識しながら人工授精して貰いたいものである。



飼ってはいない!

2008-08-21 23:13:15 | 予防治療


牛の写真ではない。
困った侵入ものである。
最近は、一家だけではなく、2~3家族の巣立ったうり坊どもが、昼間堂々と現れる。
夜はと言えば、それらを生産した親猪どもが侵入して、わらなどを散らすなどの悪さをする。
施設の周囲が山林であることが、彼らを侵入し易くしているらしい。
害虫駆除を自治体に申請中であるが、その期間が過ぎたとのことで、目下門前払い。
近頃は、猟師の数が高齢化で激減しているとのことであった。
肥育牛に実害はないが、畜舎の外には、牛の糞かと思えるような大きいものを散らしている。
悪いことだけではない。
敷地の雑草が生えそうなところは、その殆どを鼻先で堀巡らし、掃除刈りせずにすむ。
ある人が、子牛が高すぎるようなら、天然肉を飼ったらもとで無しで将来性があるんじゃないか、と皮肉る。
実は、 彼らだけではなく、鹿の一団も来ているらしい。
山野の状況に変化が起きていることだけは確かなようである。
後は烏どもである。
先日、低・高周波とテープで騙された。
烏より人間の方が手に負えない!

もう 知らんわ

2008-08-20 22:55:54 | 肥育


この夏も猛暑が続いている。
このところの温暖化は、牛たちにも我々にも、年々生息し難い環境となりつつある。
畜主たちも暑さの中で、汗まみれである。
昼になると、牛も人も寸時を昼寝でストレスを癒す。
原油や飼料等の高騰で、畜主には頭の痛い夏でもある。
飼料メーカーからは、例えば、トウモロコシがトン当たり6,000円、大豆粕が4,000円、大麦が3,000円上がりましたので、配合割合から換算すると最低でも1,500円の値上げになるなどと4半期毎に値上がりが続いている。
一方、配合飼料価格安定基金については、かかる基金が飼料価格の高騰で底を突いて、悲鳴を上げたくなるような状況である。
同基金が底を突いたとして、その対策が具体化しつつある。
その骨子は、配合飼料の給与総量を抑えるための肥育期間の短縮と、エコフィードや自己生産飼料等の利用性の向上の2本立てからなっている。
これらの具体的な条件をクリアした出荷牛1頭について、5,000円の支援が成されるという。
この支援策の対象者は、配合飼料価格安定基金へ加入していることと、同申込みには、それらの飼養改善計画書を添えて申込をしなければならない。
この様な支援策では、同基金に加入しているメンバーであっても、支援を受ける諸条件はクリアできない。
加入者に原因があって赤字経営を強いられている訳ではない。
ごもっともな支援策とは言い難い。
飼料等の効率的な利用性を高めることには異存はないが、高々5,000円のために肥育成績を落としてまで対応する畜主はいないだろうと思われる。
政府は、始めからその辺を読んだ上で、形だけの対策を取ろうとしているとしか考えようがない。
しかも、期間限定で、平成20年7月1日以降来年3月末までに出荷した牛となっている。
経営安定対策は、経営者個々が抜本的な改革無しでは好転することはないのではなかろうか。





JAS認定を考える

2008-08-19 22:29:36 | 雑感


野菜や食肉などの安全性を求めるために、生産段階から流通までの安全管理等を、第三者機関による認定や検査などにより生産履歴に漏れのない記録が要求される所謂JAS認定制度がある。
同認定を受け、安全性が保持されることによる付加価値は、消費者への信頼性を得ることと、かかる手間を代償とした付加価値は存在するが、消費者のニーズにより一定した効果は期待できない可能性がある。
食肉卸売会社の社長によると、牛肉においても販売店や量販店等から同認定を受けている牛肉の引き合いが徐々に増加しつつあり、今後さらに加速しそうだとの話を聞いた。
因みに、国内では、乳用種やF1などは北海道・東北地方で同認定された牛肉が流通し、通常1kg当たり1,700~1,800円程度のものが2,000円程度で流通していると聞いた。
一方和牛の同認定には、大きな壁がある。
それは、生産履歴を事細かに記録する必要性から、肥育素牛を子牛市場から導入することにそのネックがある。
現在子牛市場に出荷する際、子牛登記とともに購買者に手渡している生産履歴では、日常的な飼育法や疾病記録が具体的でなく、その内容がJAS規格では資料不足であり、認定の対象となっていない。
市場単位の全ての子牛出荷者、肥育場、食肉市場や食肉加工場、さらに食肉卸業と販売店の全てが同規格に沿った安全性が保証された飼養法や食肉処理が行われていて、それらの全てが記録に残され、その全ての過程を定期的に第三者機関が検査して合格することにより、同認定牛肉が誕生することになる。
よって、同認定に限ると、現在の子牛市場からの素牛導入法はその対象外となっている。
家畜市場を通さないで、特定の子牛繁殖施設と肥育場および食肉処理関係箇所で同認定に基づく検査や記録が整えば、同認定は可能である。
また、子牛生産から肥育までを行う一環経営であれば、これも認定の対象になる。
ただ、同認定を受けるためには、毎日の詳細で膨大な記録が必要であることと、第三者機関による同認定のための初度経費や現地検査にかかる旅費や滞在費と検査費用が年に1~2回必要となるため、小頭数での認定では、係る経費率を考慮するとペイしないなどの問題点もある。
肥育牛を年間約50頭出荷する一環経営の牧場が、食肉処理までを実施するとして、この春同認定を受けた。
同牧場で認定牛を出荷するまでは、少なくとも2年余りを要するが、同認定の効果のほどが待たれるところである。