牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

kuroiusiは定年を迎えました。

2020-11-09 12:10:13 | 雑感
kuroiusiは2008年3月から「牛コラム」を開設しました。この12年8ヶ月にわたり、驚くほど多くの皆様にお立ち寄り頂きました。
心から感謝申しあげます。
kuroiusiは、まだ若いと高をくくっておりましたが、年明けには傘寿を迎えます。
これを機会に、和牛業界の外から産業の推移を楽しく観戦することを決心しました。
好景気で推移した和牛産業は、外来感染症のあおりを諸に受けて、他産業同様に厳しい現実を
目の当たりに致しました。凡そ10ヶ月が経過しましたが、未だに収束の見通しは猛煙に包まれています。
この現状の中で、政府や自治体は生産者保護政策に努め様々に支援を行っております。これらの支援が
実現したことにより、子牛価格も枝肉価格もやや高騰の兆しが見えつつあります。
しかしながら、これらの施策は当面の切り抜け策に過ぎ無かったのですが、この施策が呼び水となり、
市場が活気づいてくれることを祈るばかりです。
内外の経済の動向は、感染症の終息が実現の暁には必ずや回復すると確信しております。
来たるべきその状況に供えて、産業界こぞって生産現場の技術向上や効率的な生産方式を共有して
供えて頂くことを切に希望する次第であります。
やがて和牛産業界が再び活況を呈することを予測して、「楽しく観戦」と申しあげました。
個々の皆様の経営が丑年を境に上向きますよう祈念します。

kuroiusi  高原牛徒(若松 繁)

新型コロナウイルスの波紋

2020-03-15 12:17:47 | 和牛産業


新型コロナウイルスの影響から海外からの観光旅行者数が激減したり、また工場閉鎖などでの関連業界の輸出入がストップしたため、国内外の産業に大きな打撃を与えている。
今月に入り牛肉の消費減で、枝肉価格は地域によっては破壊的な相場となっており、仕上げ牛を出荷することに恐怖を感じる状況となっている。
素牛価格90万円、枝肉重量500kg、BMS9(5等級)、枝肉単価2,250円、仕切り価格123万円、飼育経費費額750円、肥育日数650日、収支結果は16万円の赤字となる。この結果はまだしも良い方であり、4等級やそれ以下では1,500~1,700円と想像すら出来ない競り値が現実となっている。
この傾向を受けて子牛価格にも影響が出始めた。主産地では5~6万円下げの市況となっている。
オリンピック景気に期待をかけ、上景気を目算していた和牛界に取っては、予期せぬ世界的な感染症の拡散の影響から、内外の観光客による飲食関連が低迷して、関連卸会社にはブロック肉が山積みになっている。
同ウイルスの感染防止策は不可欠であるが、産業維持のために飼料やマルキン事業への支援策が不可欠であろう。見通しとしては、肥育センター等が経営難となれば、素牛価格に直接反映される。
繁殖および肥育生産者においては、努めて経費節減に努め、負の経営からの脱皮を図る必要に迫られている。同時に関係団体等におかれては、国への支援策の具体的な要望が望まれる。

和牛肥育危機感

2019-06-07 09:28:14 | 肥育


現在、素牛価格は好調で、枝肉価格は低迷している。
なのに子牛市場では低迷で悲鳴を上げながら、肥育関係者が素牛を高値で落札している現状がある。
大丈夫だろうかと危機感を感じている。

◎肥育素牛価格は依然と好調である。
好調の理由には様々ある。
①素牛の発育がかなり改善されている。
DG1kg以下の子牛が少なくなり、1.3~1.5kgで以前は見られなかった発育の良好な子牛が見られるようになった。
子牛用育成配合の品質とその利用の仕方により結果が好転していると判断している。
飼料効率を高める添加剤もその一因になっていると聞く。
また血統、つまり増体能力を期待した交配で増体速度が改善されている。
肥育素牛を入手する段階で、肥育終了時の枝肉価格を期待するために、仕上げ体重の大型化が望まれることから発育の良い系統間の交配が進められている。
②肉質の良好な系統間交配が全国的にみられている。
どこの子牛市場でも、「安福久」母体の子牛が増加し、これらの子牛は発育が良好なれば、確実に高価で落札されて、市場平均を引き上げている。
△特に去勢子牛の全国平均価格は80万円以上を維持している。
△マルキンの経費計算では肉専用種の素牛価格は72.3万円としているが、黒毛和種以外の和牛の価格を加味すれば、その辺になるのであろうか。

◎枝肉価格は低迷している。
R1/6/6に関西のとある食肉市場で、あるイベントがあり、雌8去勢14頭が出品された。
格付け結果は5等級9頭、4等級13頭
①平均枝重475.8kg、平均枝単価2,424.8円、平均枝肉価格1,153,699円、内臓等20,000円、販売価格1,173,699円(税抜き)
②平均素牛価格(推定・イベント用を加味)850,000円、生産費468,135円(マルキン参考)、経費計1,318,135円
③単純差益 -144,436円 
つまり大赤字の結果である。

◎枝肉消費低迷の理由
①輸入肉の増加
②日本経済の低迷により、若者の和牛肉離れ
③季節的に低迷

◎さて対策は
日本経済の立て直し。
夏に向けての焼き肉消費の回復を期待。
素牛価格を15万円下げて導入する。
飼料費等の値下げなど経費の節減を図る。
事故率を徹底して下げる。
泣き言ではないマルキンの発動。

オレイン酸値の美味しさとは

2019-05-21 17:43:51 | 和牛産業
次回の和牛全共では、旨味成分の一つオレイン酸濃度を競う新たな区が実現するらしい。
新設の目的は承知していないが、オレイン酸値が高ければ、牛肉は本当に美味しいのだろうか。
脂肪交雑つまりBMSナンバーが高ければ、味に不満は無い。
筆者はオレイン酸値が高・中・低濃度の和牛肉の試食会に2度参加したが、これらの差をしっかり見分けることは出来なかった。
第一、オレイン酸が高ければどのような味を味わえるのかが理解できていない。
BMSナンバー3~5程度での味比べなら、多少の比較は可能だろうと判断している。
しかしながらBMSナンバー9以上では、霜降り肉の美味しさが強烈で、オレイン酸の美味しさの効果は感知出来ない。
霜降り肉の美味しさと言われている多汁性や柔らかさや甘味などは、その濃度の濃さによるが、含まれる不飽和脂肪酸に起因している。
オレイン酸もこの不飽和脂肪酸の一つであり、オレイン酸値が高ければ、旨味が増す理屈に繋がるが、同脂肪酸には他にも旨味成分など様々な脂肪酸から構成されており、オレイン酸が増加することでのバランスの変化が美味しさにどのような影響が生じるかも未定である。
また、オレイン酸を高くする要因も遺伝子、飼料、肥育期間などの影響やこれらが複雑に関わった結果なのかは、まだ手探りの状態である。
前回の報告は興味深い肥育結果ではあるが、未だデータ不足であり、信頼性を得られる結果では無く、大凡の傾向に過ぎない。

オレイン酸

2019-05-14 20:04:39 | 和牛産業
 前回オレイン酸について記述してから、1年4ヶ月が経ちました。
その間、オレイン酸値の測定頭数も倍を超し、オレイン酸値が高くなる要因が見え隠れし始めました。
筆者が関係する施設での考察であります。
①雌雄では去勢牛の平均は56.0、雌牛は57.5で比較的雌牛の数値が高い。
②肥育期間とオレイン酸値は、雌雄を合わせて、肥育に問題があり肥育期間が20ヶ月未満の平均は55.0、22-23ヶ月で56.8、23ヶ月以上で59.3と肥育期間が長期になるほど高い数値となる。
③枝肉重量とオレイン酸値の関係は、枝重による差は認められなかった。
④BMSナンバーとオレイン酸値ではBMSナンバー3から9まではの平均値は、ほぼ同様で56~57であり、BMSナンバー10は55.7、11は55.1、12では51.9とかなりの差があった。

前回記述した予測的な内容は、同様の傾向となっている。
上記の条件以外にも、給与飼料、遺伝子などが関わっていると予測できる。

オレイン酸

2018-01-26 23:44:26 | 和牛産業


食肉に含まれる旨味成分であるオレイン酸値の話題が取りざたされて久しい。
牛肉に含まれるオレイン酸が気がかりである。
オレイン酸値を高める要因については、様々に予測はなされているが、確実視される要因は定かではない。
血統だとか、穀類割合を高めるなどや、逆にモネンシンを投与している牛のオレイン酸値は低いとも伝わってくる。
また、BMS値の高い牛肉はオレイン酸値が今一だとか、3等級や4等級の方が高い値となるとも聞く。
最近、食肉市場で行政関係者のご尽力により、出荷牛の枝肉についてオレイン酸値が測定されている。
筆者の施設の出荷牛も約150頭測定して頂いているが、それらの平均値は56%を安定的に推移している。
これらの結果を上述の血統に因するかを父親や母体などとの関係を見てみても、その傾向は皆無である。
穀類に関しては、仕上げ配合の約58%程度でその割合が徳に多いとは判断し得ていない。
勿論、モネンシンの投与も実施していない。
等級による蓄積の分布については、BMS10~12については、平均的には50~55%以内に分布し、BMS5~9までに高い値が見られている。
肥育法の中身を吟味してみると、その影響を最も受けているのは育成期の粗飼料の内容と摂取量が深く関わっているのではと推測している。
導入後の2ヶ月間は良質のチモシーを、その後の2ヶ月間はチモシー・オーツヘイ・スーダンヘイをミックスした粗飼料に若干の稲ワラを咥えて給与している。
出荷月齢の平均は約30ヶ月令であるが、オレイン酸値の高いものは62.8%と60%を越す個体も多々いる。
推測に過ぎないが、粗飼料にその因があるとした場合、子牛市に出荷されるまでにチモシーなどの粗飼料を摂取している素牛を肥育した牛は、60%を超す傾向にあり、その逆であれば、平均値に到らないのではと考えている。
粗飼料の胃内における消化吸収過程における発酵の影響を推測している。

オレイン酸値の高い牛肉とBMS値の高い牛肉では、どちらが消費者様に好まれるのであろうかと気になるところである。
勿論それらの旨味の種類は異なるはずであるが、様々に食味体験をしたいものである。


素牛について考える。

2016-09-29 23:11:50 | 素牛


肥育素牛をセリ落とし、子牛登記を確認すると、血統に不足はないはずなのに母牛の育種価が見事?にCCCCCCでガックリすることがある。
子牛市場によっては上場時の体重が総じて小さく200~240kgのレベルの子牛が出てくる。
そのような小さな子牛でも現相場は80~90万円台で、Kg単価は3,500円以上となる。
大市場では300~350kgの子牛でも平均的には80~100万円で競り落とされ、kg単価は2,800円程度である。
肥育して出荷する時点では、素牛価格が50~60万円の時なら小さな子牛でも採算は合っていたが、今ここに至り前述のようなセリ価格となれば、250kg以下の素牛では、採算割れはほぼ確実となる。
赤字になる子牛については、余程の理由がなければボタンは押せない。
なぜ赤字だろうか。
多少の個体差はあろうが、素牛の増体能力(DG)は、肥育期間を通して小さい牛では0.6~0.65kg程度であり、大きい子牛は0.7~0.8kg程度になる。
大まかな数字であるが、肥育期間が21か月間であれば、小さい牛は増体量は400kg前後で終了時体重は620kgで出荷目減りして枝肉量は約420kg、単価2,500円なら内臓等を含めた仕切り額は115万円にしかならない。素牛代85万円、肥育経費45万円で130万円となり、販売価格には及ばない。
枝肉単価3,000円で採算が合う計算になる。
大きな子牛なら枝肉量525kg、単価2,500円で145万となり、1頭5万円の差益は確保でき、単価を上げればその倍にも3倍にもなるはずである。
さて、文頭のCCCCCCの話であるが、~血統に不足はないのに~の原因は、予想に過ぎないが、上場時の小さな体重が大きくかかわっている。
前述のようにDGが低く、仕上げ体重が小さいために総じて、枝肉の格付結果では、枝重、ロース芯面積、ばら厚、皮下脂肪厚、歩留基準値、そしてこれらのマイナスの相乗効果が脂肪交雑に表れてオールCになる可能性が高いのではと判断している。
そのために両親の潜在能力が肥育の結果では発揮されないまま、母牛の育種価に反映される。
子牛の体重が小さい結果は、その母牛の育種価にマイナス要因となっているのである。
つまり、子牛生産者、市場関係者の方々には、これらの問題をご認識していただくことが、肝要かと危惧している。

和牛が危ない 5

2016-01-31 09:30:17 | 和牛産業



繁殖牛子牛生産現場における増頭の現状はどうなのだろうか。
今後増頭が期待できる状況として4つのケースが考えられる。
1.既に多頭化を実現している生産者がさらに増頭する。
2.若年生産者による増頭や若者による新規生産者の実現。
3.女性生産者による増頭。
4.肥育現場での子牛生産。
5.農外企業者による参入。

1.鹿児島県で200頭規模の子牛生産を実施している経営者の話である。
「生産技術が実績的に安定していれば、10頭を20頭にするも、100頭を200頭にするも、そんなに難しいことではない。
現場での作業は一定していて単純だから、労働力との兼ね合いであることがわかったので、100頭から200頭に増やしてよかったと思っている。」
この経営者にとって結果的に資金はかかっても、子牛価格の高騰により、返済の目処は明るいはずである。
おそらく、このような認識を持って多頭化を実現している経営者は増頭を実現されていることであろう。

2.減頭の最大の要因は、飼育者の高齢化があげられると前述したが、高齢者の中には多頭化が実現していなくても、後継者のあるケースもある。
関西のある地域では、数年前飼養頭数が底値に至るほど減少したが、その後は増頭はしていないが減少もしていない。
暮れの挨拶にと、そこの生産者10名ほどが来訪された。
開口一番の筆者の「皆さん、いい顔をしておられますな・・」に笑顔の返礼であった。
メンバーは50歳代2名、他は20~30代の若者で有り、全員が後継者であり、増頭にはやる気満々の様子であった。
彼らの将来に大いなる期待感を抱いて見送った。
また、高卒後航空自衛官になったが、数年後和牛繁殖の夢を捨てきれず自衛官を辞し、県の農大に入学し、卒業後資金を借りて40頭規模の畜舎を建てた。
ところが、繁殖雌牛を導入するにも高騰のため、入手難となり暫く空舎の状態が続いた。
そこで、離農する高齢者が手放す経産牛をぽつぽつと入手したり、無理して子牛を入手しながら、4年目に入り漸く30頭に増やし、昨夏から子牛の上場が実現した。
このように夢を持つ若者も現存している。

3.肥育センターにいると子牛登記のデータをパソコン入力していると、女性生産者が微増していることに気づく。
昨晩秋、沖永良部から女性和牛部会10名の強者らが来場された。
なかなかの研究熱心で有り、父牛のことや地域の肥育成績などを食い入るように尋ねたり、記録しておられる。
好景気が火を付けた感があり、女性の経済観念や成績と価格との関わりに異常な興味が受け取られた。
女性に出来るのが牛飼いで有り、高く売れるのも牛への愛情に繋がっているようであった。
今から30数年前、当時の故上坂章次和牛登録協会会長も「これからは女性が和牛を飼う時代」と冊子を編集して啓蒙されたことがあった。
沖永良部の女性部会のパワーに、くさばの陰で同会長もほくそ笑んでおられよう。

4.現状の高騰では、将来の肥育経営が暗転しかねないと感じている多頭肥育の経営者は少なくないと判断している。
そのような事態を回避するには、一環経営が良策として繁殖部門を取り入れている箇所も増加しつつあるとのことである。
肥育現場での繁殖経営には、問題点も多く、一から畜舎や素牛を導入するには、子牛の高騰が足かせになっている。
最大の問題点は、繁殖技術のノウハウを取得している担当者が従事しなければ、繁殖障害や分娩から子牛育成に事故率が多発しセンター閉鎖に至った例も聞く。
技術者の問題が経営を左右する。

5.牛は繁殖経営も肥育経営も、経営者自身が牛の飼養技術を習得していなければ、目的を成就させるのは至難のことである。
企業経営者が安に利益を夢見て牛飼いに触手するには問題点が多すぎる。
上記4.の事案同様である。
いずれにしても、家業が歴代の牛飼いであるケースは、様々に払拭できる解決案はあろうが、そうでなければ、上記2.の後半に記述したように、しかるべき技術者から専門的に学んでからの就農が不可欠である。



和牛が危ない 4

2016-01-14 23:37:09 | 和牛産業
日本における黒毛和種の減少は、和牛肉の供給減だけに終わらない。
子牛生産者の減少が子牛生産頭数を減少させているが、そのことによって、離農者数の増加、家畜人工授精師・獣医師・地域JA担当者・家畜商・種雄牛管理者、家畜市場の統廃合、肥育頭数減に伴う肥育担当者減、子牛生産や肥育頭数に伴う飼料業界や動物薬業界等、牛の生体や枝肉や部分肉の運送業界、食肉市場・食肉卸売り・部分肉処理や内蔵取り扱い業界・食肉小売り等流通業界、食肉検査や格付業務等々への諸々の影響は計り知れない事態になる恐れが危惧される。
そればかりではない、頭数減によって諸に影響を受けるのは、畜産振興協会や各府県の外郭団体である配合飼料安定基金協会、畜産衛生指導協会などと、最たるものは全国和牛登録協会であろう。
これらの組織団体は存続に拘わる重大な影響を被ることになろう。
勿論、国や地方自治体など行政にも及ぶこととなるが、このことにより全国の消費者の食生活の内容も変化せざるを得ない事態となる。
これらの現象の顛末について、列記した様々な関係者、列記漏れの関係者のお一人おひとりの方々は、この現象をどのようにとらえておられるだろうか。
これから年度末や新年度を控えて係る業界関連の会議等の開催が目白押しと想像されるが、その場に於いて「和牛が危ない」現状を話題提供して頂き、増頭あるいは現状維持への具体的な対策を論じて頂きたいものである。
このことは、関係者であれば他人事ではなく、我がことなのである。
具体的にお願いしたいのは、国民の生命と財産を守る役目を担っておられる国会から地方議員の皆様にこの事実を理解して頂き、対策を講じて頂くことであり、そのことでことの解決が効率よく解決の目処が立つからである。
和牛に拘わり凡そ50年経過し、和牛の危機を感じたのは昨今のことである。

和牛が危ない! 3

2016-01-08 18:50:34 | 和牛産業
鹿児島県経済連から、新年度(28年1~12月)の県内14家畜市場別の開設日と上場頭数が届けられる。
予定頭数のため、実際の上場頭数には若干の違いがあると判断しなければならないが、27年度と比較することで、市場上場頭数の大凡の推移がわかる。
年間上場頭数が1,000頭未満の市場では2~5%の増頭傾向が見られるが、上場数2万頭に近い曽於では2,140頭減少の11%と予想以上の頭数減となり、1.5万頭規模の肝属でも7.8%の減少傾向である。
4,000~7,000頭規模では、姶良・徳之島が5%程度の減少、鹿児島中央・種子島では現状維持である。
これまで減少傾向にあった薩摩は5.3%の増頭となっており、関係者の努力の結果が伺える。
3年前、減少傾向の全国の中で、善戦していた徳之島が、28年度の予想では残念ながら6.5%の減少の見通しとなっている。
全県的には、27年75,320頭、28年71,520頭で、年間3,800頭が減少し、減少率は5%となっている。
これらの減少傾向が続けば、鹿児島県では10年を待たずに半減することが予測できる。
1頭70万円の子牛が3,800頭消滅することで、26.6億円の資源が消滅することになる。
県全体で28年は約500億円の資源価があるが、10年後には半減し、和牛産業は厳しい時代を迎え、係る産業界の影響力は測りきれない事態を迎えることとなる。
健闘している薩摩のように、曽於や肝属には増頭を健闘して貰いたい。
鹿児島県では主要産業である和牛復興のために、県が旗振りとなって国を動かし、和牛資源の確保のための気勢をあげるべきである。