牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

共同育成

2010-01-27 22:05:33 | 繁殖関係



引き続き、鹿児島でのことである。
車で移動時に、全く人気のない山間の畑の中に畜舎があったので、見学させて貰った。
和牛の雌牛が40頭位い飼われていた。
子牛は1頭もいなく、生後10ヵ月令から24ヵ月令程度で、かなり栄養状態が良く、一見肥育牛の様でもあった。
暫くしたら、一人の老人が軽トラで巡回してきた。
この飼われている牛のことを聞いたら、4人の繁殖農家が、更新用の繁殖用雌子牛を共同で育成していて、人工授精して妊娠が確認されたら、それぞれの繁殖牛舎へ移動させて管理し、分娩させていると言うことであった。
4名が交替で育成舎の管理をしており、発情を発見したら人工授精師に連絡して種付けしているという。
1畜種当たり40~60頭の繁殖規模であり、1畜種当たり年間5~6頭の更新頭数で、育成期を共同分業することで、効率的な管理体制が取れると言うことであった。
粗飼料には、自家製の稲わらと乾草が飽食給与されており、濃厚飼料は育成専用の配合飼料を給与されていた。
各畜種は、育成舎へは軽トラで数分の位置にあると言うことであり、和牛産地さながらの共同管理方式であると感じた次第であった。



情熱

2010-01-26 22:23:30 | 繁殖関係


本州などから見れば、鹿児島の粗飼料生産は牧草にしろ、稲わらにしても気象条件に恵まれている。
それだけ粗飼料の自給生産環境に恵まれていることで、その経営手腕が活かされれば、和牛の繁殖経営では、低コスト生産が実現可能である。
見学した農家のうち、数頭から20頭規模では、写真にあるように、既にイタリアンライグラスを青刈りして自家産の稲わらに20~30%程度混ぜて親牛にも子牛にも与えているケースが大部分見られた。
親牛には、カッティングベールローラーで結束した稲わらもイタリアンライグラスも細切することなくそのまま与えられていた。
子牛には、それぞれを3cm程度に細切して混ぜて与えているようであった。
聞くところによれば、1月セリで去勢牛が53万円で売れたと50歳代の畜主が顔をほころばせていた。
又、その前夜、初産で雌牛が無事に生まれたと安堵の笑みをほころばせていた。
牛を飼うことに情熱のほどが伺われた瞬間でもあった。

厳寒時に刈り取れる

2010-01-25 22:55:55 | 飼料


暫く鹿児島で繁殖農家を見て回る機会があった。
さすがに温暖な地方だけあって、草地のイタリアンライグラスは既に草丈が30~40cmにも伸び青刈り適期となっていた。
関西の中部から北部にかけては、飼料作物の栽培畑をめったに見なくなったが、公共の牧場などでは、草丈は未だ10cm程度で刈り取りどころではない。
温暖な九州地方は、牧草などの栽培に適し、大規模でない農家の大部分でイタリアンライグラスなどを栽培して、冬季は生草で夏以降では乾草調整後に保存して乾草で給与している。
粗飼料を自給していることで、自らが栽培した給与飼料の中味を自らが確認出来ることで安全性を自覚できる。
併せて、草食動物は生草給与が本来の摂取であり、含まれる成分や付着している栽培土壌等に含まれるミネラル効果が自然な形で摂れることにもメリットがある。
生草を給与している牛は、被毛の艶が良く、繁殖性に富むことになる。
写真は10/01/21に写した。

今冬は猪などが現れない

2010-01-19 23:13:03 | 予防治療


今冬は、写真のような猪や鹿が現れていない。
1年前は、とくに猪の集団来襲が賑やかであった。
5~6頭のうり坊も良く現れたが、今年は今のところ皆無である。
今年は、畜舎の周囲にある樫の木には、実が鈴なりで、むしろに広げたみたいに落ちこぼれていた。
恐らく、深い山などの木々の実が豊作で、里に出てくる必要がなかったのであろうかと想像を巡らしている。
昨年は、これらが夜間に来襲するため、仕上げ期の肥育牛が房外の侵入獣などに興奮して飛び跳ね、心停止した例が2頭あった。
それだけではなく、閉じたはずの通路の隙間から入り込み、給与のため準備していた稲わらを踏み散らし糞尿で汚され、使い物に出来ない例も多々あった。
酷い時には、配合飼料を満載したトップカーの荷台を壊すこともあった。
通路の壁柵を修理しても考えられないほどの猪力で潰される有様であった。
今年は、それらも皆無であり、山々の本来の営みが正常であることの重要性を具に味わった次第である。




口蹄疫の号外

2010-01-18 23:02:26 | 牛の病気



新聞・FAX・封書などで、韓国で新年早々に発症が確認された口蹄疫の号外が、他に関係団体を含めて5通も届いた。
これによると、中国本土や台湾など広範囲に発症したことが理解できる。
特に台湾では昨年2~8月までに異なる地域で8回も発症したことも判る。
その様な時には、今回のような号外は届かなかった。
最も近隣国での発症を重要視したためであろうか。
これらの国々とは、人の交流も盛んであり、中国に至っては、稲わらの輸入国でもあり、我らが和牛との接点も飼料を交いしてかなり感染が危ぶまれる。
今回の韓国だけではなく、近隣国での発生事象時にはニュースをこまめに流して、その喚起を生産者や消費者にも促すべきではないだろうか。
10数年前に我が国でも発生した折には、消毒薬が希望者には無償配布されたが、今回はそれぞれにおいて消毒をせよ!との通達のみで、何で消毒したらよいかなどが、今一判らない生産者も多いことであろうが、その説明はなかった。
農家と関わりのある旅行者は、汚染地の土などを靴底に偲ばせるだけで、感染源となりやすい。
肥育センターなどの施設では、多頭化による飼育のため、発症は経営に根幹からのダメージを与えることになる。
因みに消毒用には、次亜塩素酸Na6%製剤などが有効とのことである。

寒さからの馴化

2010-01-14 22:56:32 | 素牛


今朝は-7℃、水道は垂れ流しのために、凍てつかなかったが、ウォーターカップの殆どがガチガチに凍り付き午前中は、流水を見ることはなかった。
そんな中、昨日の早朝、南西諸島から子牛が1車到着した。
恐らく10℃以下には下がらないであろう温暖な地からの導入である。
鹿児島港でコンクリートフロアーに一旦降り立ったが、再度トラックに積み込まれ、一晩経って積み卸しである。
ところが、車内から一向に出ようとしない。
無理矢理、後方から追い出すようにして漸くにして本州の地に降り立った。
寒波がらみで荒れた海上航海であっただけに、かなりのストレスを受けてきたであろうと思ったが、意外と疲れもなく、元気に飛び跳ねる有様であった。
気温が20℃も異なる地域からの移動であり、時間掛けずに寒さに馴化して貰うことが当面の願いでもある。

水守り

2010-01-12 23:14:05 | 牛の管理


氷点下の厳しい寒さの中では、水守りが大変である。
当方では、雪解け水が地下に保水され年中ほぼ一定して湧き出る山水を水源としている。
そのため、終日どこかでオーバーフローしている。
公営水道であれば、無駄な使用量は避けねばならないが、その心配はない。
だから、ウォーターカップであれば、1~2箇所ドレンコックを設置して、凍てつく夜には夕方、舎内の水抜きをする必要がある。
それでも、氷点下10℃以下ともなれば、水回りのコックやウォーターカップなどは凍り付いて昼前頃まで動かない。
流しや洗濯室やトイレなどは、コックを緩めてパイプ内の水を絶えず動かせていなければ、真冬日などは、1日中コックなどが動かないこともある。
今夜から再び寒波の到来情報が報道されているが、アイスバーンとともに気掛かりである。

先月の子牛相場

2010-01-11 23:15:43 | 素牛



過日の農業新聞では、12月の子牛平均相場が全国的に上がったとあった。
平均的には1~2万円程度の上げであったが、全国的にはそのバラツキの幅が狭まった感がある。
先月開催の近畿東海北陸連合肉牛共進会の出品牛が宮崎県産が最も多く、上位入賞した結果を受けて、宮崎県の子牛相場が上昇したと解釈されていた。
しかし、上昇したのはむしろ去勢牛ではなく雌牛であった。
これから主産地を目指した他県から繁殖用に買いが入っていたと、現場に赴いた購買者から聞いた。
また去勢牛より、雌牛の方が平均セリ価格が高いのは、兵庫県と薩摩中央の2箇所であり、兵庫県の場合は、神戸ビーフブランドが但馬牛であることと、松阪肉も同様に但馬牛の雌牛であることが、相場を上昇させ、薩摩中央の場合は、県内外から繁殖素牛として購買意欲が高まっていることが上昇の一因となっているようである。
また、筆者も以前記述したように、普段より年末に肥育牛を多数出荷した空き牛舎を満たすために、セリが競合したために相場が高まったとの見方もあった。
この傾向は、理由が一時的な傾向と判断できるため、暫くは現相場を維持していくものと思われる。
いずれにしても、牛肉の消費が上向きでなければ子牛相場も、子牛同様に年末微増した枝肉相場も好転は見込めないと見ている。


快適環境

2010-01-09 19:02:14 | 牛の管理



低温日が続いているが、つかの間の晴れ間を見て冬囲いを外してやると写真のようにボスと第2ボスらしい牛が日向ぼっこしている。
囲ってしまうので、舎内はいつもより暗くなるので余計に日向が恋しくなるのであろう。
囲っているので、アンモニアガスなどがこもる心配もあることから、開けられる時には出来るだけ開けている。
ガスの貯留を無くするために、冬季でも畜産用換気扇は欠かせないが、完全ではないので囲いを時々開ける必要がある。
そのことが、牛たちには心地よいこともあり、家畜福祉の一端でもある。
環境を快適にすることは言うに及ばないが、飼料にあっても、変色やカビのない品質が良好で、嗜好性に優れた粗飼料や配合を与えて始めて、牛らは快適であろうと認識している。

天満宮の牛

2010-01-08 22:08:11 | 予防治療





三が日、京都北野天満宮に家族で初詣参拝した。
噂通り狭い参道は、参拝者で身動きできないほどの賑わいであった。
天満宮は牛馬が祀られていることでも知られている。
家族そっちのけで、参道脇の牛の銅像を探し回り、触手し健康や暮らしの安寧を祈願した。
普段から狭い参道の両側には、様々な出店が所狭しと並んでおり、牛像を探すのに苦慮したほどであった。
幾つかの牛像を探し出したが、歌舞伎にでも出てきそうな雰囲気の銅像ばかりであったが、主立ったものを貼り付けて見た。






10数年前、太宰府天満宮へ行ったことがあるが、何処の天満宮は梅と牛がトレードマークとされているようであった。
参拝者は、牛像に触り捲り、自らの幸運を願っているようで、像の表面は満面無く磨きが掛かり光沢を表し、その神々しい光りが人々を引き寄せているかのようでもあった。
それにしても、人間の強欲の現れに牛様は”傍迷惑!”と言わんばかりである。




この牛像の臀部には、文政二年(1819)作と有り、最も古い作と思われるが、背は抜けるように薄いが、後躯の豊満さには牛屋としては惚れ惚れする形状で、思わずお尻を平手で撫でてしまった。





この像は、近々に献上された感のある子牛像であった。
何の意図で子牛なのかはサダかではないが、子ども達の気を惹きたいためであろうかと想像を巡らせながら撮った次第である。

東風吹かば思いよこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな