牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

牛徒雑感

2011-02-28 23:34:20 | 雑感


毎年2月は子牛価格が上がることで知られているが、今年も例外ではなく曽於や小林では約3万円高で取引された。
実感はないがマルキン事業では肉専用種が久しぶりに1.4万円の黒字に推移されたとして補填金の発動は行われないこととなった。
しかし素牛価格が3万円以上高騰すれば、再び赤字に転落する。
子牛生産サイドには、その分利益が上積みされる。
利益が見込めるようになり、子牛生産頭数が増加し安定的な出荷頭数が確保されれば、肥育サイドも同様に経営安定に繋がるとして期待している。
また子牛の運送費などの軽減のために、肥育地帯の近在で子牛生産が増加してくれることを期待してやまないが、現状では益々期待から遠のいているのが現状である。
従来どおり代わり映えのしない取り組みでは、係る産業は次第に疲弊する一方である。
高校入試のシーズンになったが、志願数が地元ニュースで流されたが、農業関係学科では、40名の募集に1~数名程度とある。
若者たちの農業離れの原因は、3K離れとも言われているが、日本農業の将来は由々しき現実を迎えようとしている。


鉱塩は使い分ける

2011-02-24 19:11:37 | 予防治療







一般的に肥育用配合飼料にはNaclは配合されていない。
湿気や配合の変質を引き起こすからである。
その代わりミネラルなどを含ませ固形化された鉱塩を利用している。
去勢牛は、尿道結石症の発生が出易い。
それを予防している一つが、塩化アンモン入りの鉱塩である。
去勢牛を用いて肥育するようになった当初の55~65年頃まで粗飼料には生草を給与していたが、その頃はこの尿石症やビタミンA欠乏症の発生は極希であった。
その後、粗飼料に稲ワラを利用するようになり、配合飼料の給与割合が多くなるにつれて、尿石症やA欠乏症が多発するようになった。
このうち、尿石症を発症したものには、塩化アンモン30gを水で溶いて与えることで、回復した。
その後、この効果を利用して塩化アンモンを混合した鉱塩が市販されるようになり、予防効果が一般的になった。
最近では、従来品(写真上)に加えて尿石症への予防効果をさらに高めるために、塩化アンモンを従来品より2倍混合した200TZが市販されている。
一方、雌牛の場合は、尿管の構造が去勢牛と異なることから尿石症の発症は皆無であるために、塩化アンモン入りの鉱塩は不要である。
そのために、雌専用として安価な岩塩(写真下)を導入して利用している。


牛らも春の風に生き生きしている

2011-02-23 00:19:45 | 牛の管理


気温が徐々に上がったことから、寒風や低温から牛らを守るために締め切っていた上下のカーテンを巻き上げると、牛たちは久方の春の直射日光に当たり、明るさと適度の通気性を肌にうけて心地よさそうに軽快感を味わっている様である。
昨夏の好天高温続きと、今冬の豪雪と低温は、牛らにとっては想像以上のストレスとなっていたのではないかとの家畜保健衛生所の見解であった。
牛らのストレスからの解放と体力増強を念頭に、このような春の日差しを受けさせる環境が必要であろうと意識している。
写真にある畜舎は、農大で畜産を選考し、将来の自営を目指し、当方へ入所して来月で2年目となる若者が担当しているが、彼はそのような牛らの要求を心得て敏感に対応してくれている。

蹄葉炎

2011-02-22 00:31:28 | 牛の病気


08.01~10.12までの3年間、9市場から1,500頭の素牛を導入している。
これらの子牛のうち27頭がルーメンアシドーシスと蹄葉炎に罹患した。
これらの疾患に罹患した牛は、完治が難しく、正常な発育や肥育状態にならないために、その大部分が低い枝肉評価となり、マイナス差益に陥っている。
これら27頭のうち、去勢牛5頭が既に出荷済みであり、枝肉重量の平均は460kgで平均単価は1,640円で1頭当たり約130,000円のマイナス差益となった。
この数字を乗じれば、単純に350万円の欠損を見込むことになるが、現在飼育中の蹄葉炎罹患牛(写真)には前肢を伸ばせないのが5頭ほどいて、さらに大きな欠損を覚悟しなければならない。
これらの罹患率は産地による特徴がある。
導入100頭当たりの罹患頭数の多い産地は、関西と宮崎のそれぞれ1市場で、4.17頭、4.1頭と他の市場平均1.2頭より明らかに高い値となっている。
罹患しやすい子牛のタイプは、DG値が高いケースや、血統では増体系より肉質型で栄養状態の良い牛が罹りやすい傾向がある。
これらの疾患は、導入直後の粗飼料による飼い直しを行っても、粗飼料の利用性に欠け濃厚飼料主体に摂取するタイプである。
子牛の育成中に、粗飼料の利用性の高い子牛に育てることを留意して貰いたいものである。

切り落とし

2011-02-17 22:02:22 | 牛肉





お買い得ですよ! と言って並べられているのに「切り落とし」(写真)や「細切れ」がある。
「切り落とし」は、すき焼き肉用にスライスする過程で、整形からはみ出されたもので、すき焼き肉と差ほどの差はなく、1枚の肉片がやや分厚かったり、薄かったり、形が一定していないが、すき焼きにするには何ら支障はない。
むしろ、単価1,000円のすき焼き肉クラスが切り落としされたものであれば600~800円程度である。
この「切り落とし」は、いわばすき焼き肉の副産物であって、10%にも満たない量しか出てこないため、満足いくほどの販売量はない。
だから、著明な店舗などでは、これを求めるのに朝から行列が出来るようである。



大動脈破裂

2011-02-15 23:54:47 | 牛の病気


低温日など寒暖の差が大きさは、牛たちにとって暖房機器がないために厳しいストレスとなっているようである。
朝一に給餌した稲ワラを食った仕上げ期に至った去勢牛が、午前11時前に急死した。
診療歴のない牛であっただけに、狐につままれたような驚きであった。
一般的には急性心不全と言うことになろうが、死因不明のままでは今後の対処法にも参考にならないために急遽、管轄する家畜保健衛生所に解剖による死因調査(剖検)を依頼した。
その結果、腎臓上部における大動脈破裂による大量出血が直接の死因であった。
しかし、斃死牛特有の心臓や肺や肝臓など循環器や消化器官等は実に綺麗であって異常は全く認められず、何故動脈が破裂したかは確定していない。
このような症状は初めての疾患であり、悔しい出来事であったが貴重な症例であった。
早期発見早期治療をモットーとしているが、この症例の場合、早期に発見したとしても既に間に合わない疾患であろうことが伺えた。
作夏7月以来の肥育牛の事故であった。


口蹄疫

2011-02-12 18:52:44 | 牛の角




朝から石川県で口蹄疫の発生が疑われた情報で大騒ぎであった。
昨秋以来、トラック等の制限やソーダ灰による消毒等は継続してきたが、今回の情報を受けて、これらの強化に加えて、消石灰の散布を徹底する等昨年4月の対応策を踏襲することにした。
やがて夕刻5時頃「石川県の口蹄疫は白」の情報が入り、異口同音に「やれやれ、ほっとした!」。
過度な情報の感は否めないが、実に効果的な訓練であったが実感である。
目下の朝鮮半島に於ける口蹄疫の猛威を考慮するなれば、我が国の何処で発生しても不思議ではない。
災害は忘れた頃にやってくるの例え、警戒は万事怠り無しである。

雪かき

2011-02-08 23:40:59 | 牛の管理


今年は迎春とともに記録的な豪雪であった。
未だに畜舎周りには除雪で積み上げられた雪景が見られる。
雪のために水源地のパイプが外れたことは前述したが、この他通勤に難儀したり、除雪やウォーターカップの水守りなど一苦労させられた。
これだけではない、写真にあるが貯留用の飼料タンク付近の除雪作業もある。
さらに、このタンクまで飼料運搬車を横付けさせるのに、ドライバーも一苦労することになる。
除雪して、トラックを横付けできるようなスペースは確保するが、タンク内への飼料投入口のある天井に積もった除雪も一苦労である。
飼料の補給は不可欠であり、現在使用中のこれらのタンクの数は15カ所あり、豪雪の影響は一筋縄ではいかないのが現状である。
飼料運搬車にとっては、補給後も一苦労が待っている。
畜舎は段々畑のような傾斜地に建てられており、施設の取り入れ道路は最上部から、段々に下がりながらそれぞれのタンクに着けるため、帰りは登り坂となる。
空車になった飼料運搬車や大鋸屑運搬車は雪道に弱く、チェーンを巻いてもスリップする。
その度に堆肥調整用の大型ショベルカーで牽引して表道に誘導することになる。
またぞろ、今週末の雪マークが気がかりである。


検査成績報告書

2011-02-06 00:50:22 | 牛の改良

子牛登記書に「検査成績報告書」(写真)が添付された肥育素牛を導入した。
つまり、親子鑑定成績であるが社団法人家畜改良事業団が判定し発行したものである。
導入牛は受精卵移植(ET)で生産された子牛である。
ET子牛が、黒毛和種の子牛登記を取得するには、生産報告後の子牛検査までに全国和牛登録協会が依頼者として同事業団の研究所へ届けられた該牛の毛根を基に親子鑑定を実施し「上記の親子関係に矛盾は認められなかった」と検査結果が記された「検査成績報告書」が必要とされている。
従前は種雄牛の血統が不一致するなどの問題が起きたことから、種雄牛を育成する課程で同様の報告書を取得しなければならないと定められていたが、ET牛の生産が一般的になり、和牛としての登録認定するために種雄牛同様の処置が執られるようになったようである。
ET子牛の場合、上記証明症のほかに、受精卵証明書および移植証明書の提出も科されている。
当方には繁殖部門があり、繁殖雌牛から受精卵を採取保存し、条件が整った雌牛に移植してET子牛を生産しており、これらの生産子牛の親子判定検査が必要となっている。
ちなみに、同検査手数料は1頭9,500円と聞いている。

チアミン不足

2011-02-01 20:01:52 | 牛の病気






平成22年12月14日に受け入れた鹿児島県大島郡産の去勢牛が、1月31日早朝真横に倒れた状態(写真上)を担当者が発見した。
早速に共済組合の家畜診療所に緊急の連絡にて、往診を受けたところ、消化器は通常に近い動きであるが、ヘモフィルス或いはチアミン不足(B1欠乏)が考えられるとのことで、それらの応急処置を受けた。
四肢は硬直に近い状態であった。
同時に採血して、再度午後に結果をみて再処置を行うこととなった。
その間、昼休み中に巡回した時は、発見時と同様に倒伏したままであった。
午後3時頃に獣医師が再診のため来場し、その結果チアミン不足を確定しての処置を行った。
その結果、夕方5時頃には自力で起立した。
翌朝(本日)の9時頃の往診時には飲水したが、食欲は前期配合飼料を若干摂った程度であったが、昨日午後の治療を再度行い、昼には写真下のように回復した。
本来チアミンはルーメン内で自力生産されるが、子牛生産者が濃厚飼料の給与割合を高く設定していることから、ルーメンアシドーシスなどによりルーメン内壁に何らかの機能障害があり、チアミンが出来ず不足したことが考えられる。
配合を常食していたことは、乾草を食さないことから頷けるが、子牛の育成時から粗飼料と濃厚飼料の給与バランスを確実に設定して貰いたいと切に所望したい。
この病気は「大脳皮質壊死症」が病名で、早期発見早期治療が無ければ回復しない可能性が高いとの獣医師の説明であった。