牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

待機中の子牛の管理

2010-05-30 07:24:37 | 子牛


九州地方の家畜市場は、口蹄疫の感染を警戒して、6月の子牛市の中止を決定した。
それにより3ヶ月間の移動が出来なくなり、競り間近の子牛達は、13~14ヶ月目に到達する可能性もある。
現状を把握する限りでは、或いは収束宣言は7月以降にずれ込むことも視野に入れておかねばならない経過状況である。
和牛繁殖雌牛は予定通りに分娩するため、子牛頭数は増える一方である。
飼育舎の振り分けに苦慮されているであろうが、出荷を差し留めされている子牛等の日常管理の対応にも困窮されていることであろう。

通常生後9~10ヶ月目の肥育素牛は、肥育センターなどに導入され、乾草飽食に加えて肥育前期用飼料を徐々に与え始めた頃である。
生後15ヶ月目になれば、前期用から本格的な肥育飼料に切り替える時期となる。
同14ヶ月目頃には、前期用飼料を5kg程度与えている。
この肥育前期の期間中は、粗飼料をどれだけ多く与えているかが、その後の肥育成績に深く影響する。

市場閉鎖で出荷待機中の子牛の給餌管理については、上記の肥育法を念頭に、生後月令9ヶ月令からは、濃厚飼料を与えすぎず、乾草を飽食状態とし、栄養補給のため育成飼料または肥育前期飼料を2kg前後から給与開始して、子牛の発育を睨みながら、徐々に増量し、12ヶ月頃には乾草5kg、濃厚飼料4kg程度で推移し、14ヶ月目頃には上記給与量に至るような管理を行う。
生後10ヶ月以降の肥育素牛の場合、牛を過大化させる必要はない。
大きくしたから、高価で競り落とされるものでもなく、このようなケースでは、牛が如何に健康的に飼育されているかが重要であり、月齢に応じた発育状態を維持することである。
無理矢理体脂肪を蓄積させるなどは無用であり、低コストを考慮しながら毛艶のよい子牛を育てることである。

農家の本音

2010-05-28 23:49:17 | 牛の病気


鹿児島県内で和牛繁殖を10数頭行っている畜主から、人里離れた全く人家が周囲にない箇所で10頭、自宅で5頭の繁殖をしているが、口蹄疫対策はどうしたらいいだろうかと相談を持ちかけられた。
自宅の庭や取り入れ道路だけではなく、左右50mに至るまで消石灰を撒き散らし、木戸口に郵便受けを置いているとのことである。
田舎のことなので、口蹄疫問題が発生してからは近所隣との行き来もなくなったという。
町内を車で走れば、家畜を飼っているところは消石灰の白い木戸口から一目瞭然であるらしい。
家畜を飼う畜主等は、自らの家畜を守るため、それなりに知恵を懲らして対処しているようである。
当該畜主の場合、2カ所に飼育場があるというので、管理者が同じであれば、外部接触の少ない飼育場にまとめて飼育し、自らの着衣や靴などの消毒を徹底して、通勤状態で管理した方が、2カ所での飼育より効果的ではないだろうかと検討しあった次第である。
電話の最後で、「発情がきているが、宮崎の農家のことを思えば、とても付けられるものではない」との本音もあった。

産業を維持するために

2010-05-26 23:22:11 | 牛の病気


宮崎県家畜改良事業団が所有の種雄牛の処遇に関しては、法定伝染病予防法に則り、口蹄疫ウイルスの伝播の危険性を回避することで経過している。
一方で農水省等は、全ての種雄牛が殺処分された宮崎県の今後の供有牛として、これまで宮崎県が繋養してきた種雄牛の系統をひく国所有の育成牛を提供すると発表した。
当然の処置とはいえ、宮崎県内の繁殖牛繋養関係者等には、少なからず安堵の報であったことであろう。
これまで、宮崎県に置いては、口蹄疫の感染拡大の中で、様々な問題点が浮き彫りとなってきている。
まだ、同感染は拡大の最中にあり、国の感染経路の公式発表を待たざるを得ないが、その他の対処すべき重要事項に関しては、国の係る事象への指導方針や対策、県や自治体の行うべきこと、家畜保険衛生所や農業共済等獣医師、生産者団体、生産者や生産者の家族、JAや地域住民、出入り業者や学校関係、各種団体等、冠婚葬祭や各種イベント、流通関係者など、自らが置かれた立場において、感染防止に向けて行うべきこと、何が良くて何がまずいのか、何をすべきなのか、無駄なことはないのかなどを徹底して参考とするマニュアルが不可欠となる。
とくに、近隣県や国内の畜産関係者は、宮崎県が悲惨な状況に至った経緯を正確に捉え、マニュアルを含めて対処すべきである。
埋め場所がなくで、感染拡大に至ったという談話があった。
今後の課題として、そのような問題は国を中心に事前に解決しておくべきである。
つまりは、国内産業を維持や発展を進める上では、未だ明らかになっていない危機管理のための設計図が不可欠なのである。

忠富士号

2010-05-22 20:45:29 | 牛の角
早朝からとてもやるせないニュースが届いた。
宮崎県の種雄牛の取り扱いに物議が取りざたされただけに、関係者ならずとも唖然とされていることであろう。
貴重な遺伝子源を死守したいという関係者の法定伝染病予防法を圧しての措置も空しい結果になろうとしている。人の成せる限界をまざまざとかかる結果が差し示したことになる。
昨年春から宮崎産の素牛を導入してきた。
忠富士号や福之国号は馴染みの種雄牛となっている。この種雄牛の産子だけでも150頭に及んでいる。
当センターでは、未だこれらの産子の肥育結果は1頭も終えていないだけに残念でならない。
今更愚痴をこぼしたくはないが、本来公の施設なら範を示すが当然である。
立地や感染の強弱を考慮する限りでは、そのことを軽々しく責められないが、同疫が終息を迎えたとしても、他県からの導入がない限り種雄牛の育成には6~7年を要する。
当面は保存中の凍結精液の利用か、家畜改良事業団などからの他力本願となる。
宮崎県の畜産は養豚を含めて未曾有の危機を迎えることになる。

口蹄疫

2010-05-22 01:39:50 | 牛の病気

いよいよ口蹄疫発症地から10km以内の家畜が殺処分される。
実に嘆かわしい事態となった。
養豚・養牛いずも様々な嘆きや悲痛の中で実施されることとなる。
この事実を防疫関係者や行政担当者は、非ハート的に捕らえず真剣にハートのこもった処理をしてもらうが、生産者一人一人の思いであろう。
長い間、家畜とともに生計を立て、心血を注いできた畜主の方々であり、家畜の1頭1頭がいわば家族同様の生き物たちなのである。
これほどまでに強い感染力のある伝染病はないと専門家に言わせるほどの口蹄疫により、畜産団地が壊滅状態になろうとしている。
心ならずもこれほどまでに至るとは、政府も県も予想だにしなかったのであろうが、その認識に担当者の甘さがあったことは、この状況をシビアに把握できる限り、斯様に判断せざるを得ない。
他所への感染の影響力と補償問題が天秤にかけられがちな状況でもあるが、この際の保証は言い得くではなく、此度の事象は国民が等しく認識しているだけに、政府や自治体の対応次第で生産者への理解は得られるはずである。
今は、感染防止に一刻を争う時であり、その効果的な対策が優先されるべきである。
それにしても、今回の事象では、日本の防疫専門家のノウハウが活かされていない。
陣頭指揮するトップが居ないとコメントにあったが、そのような専門家は実在していないのだろうか。
感染経路などの調査団は当初に組織されたままであるが、政府の感染を断つための対策本部は機能しているのであろうか。
「なんとかせんといかん」と意気巻いていた頃の知事の勢いをすれば何とかなるはずであるが・・・。
今や、近隣県などだけでなく、全国的に畜産関係者は同感染に怯えながらの毎日である。
政府には、映画「日本沈没」に見られたような危機意識が希薄であるとの不満が関係者に見られるが、一刻も早い終息への手だてを期待している次第である。

感染防止策

2010-05-21 00:03:44 | 牛の病気


口蹄疫感染防止について、対岸の火事では済まされない状況となりつつある。
当方でも、既に対処を実施しているが、口蹄疫の感染力の強さを場員及び関係者が常に認識するとともに、現在次の項目について実施中である。
①当施設の取り入れ道路内や駐車スペース、畜舎の出入り口などに消毒槽を設置する。
消毒槽は、5日毎に更新する。
消毒剤は4%炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を使用する。
水10Lにソーダ400g。
③取り入れ道路内に、車両を制限するためのロープを張る。
②場員用及び一般車両は、制限ローブ外の空き地に駐車する。
④飼料運搬車両等は、制限用ロープの手前付近で、動噴機によりタイヤの消毒を徹底する。
⑤場内に入る場合は、全ての人について制限ロープ外で長靴を履き必ず消毒槽で消毒する。
それを行わない場合は、入場を許可しない。
運搬車の運転者も同様に対処願う。
⑥取り入れ道路、駐車スペース付近、畜舎の出入り口および新規導入舎等に消石灰を適宜散布する。
⑦郵便・メール便等の配達は、当分制限ロープ外のポストを利用して貰う。
⑧場外との接触については、電話・メールにて用を足す。
⑨牛の出荷時は同業者等の接触は出来るだけ避ける。
⑩場員は出勤・退社時には、通勤着と作業服を着替える。
⑪以上のほか、家畜保健所等の指導を仰ぐとともに、牛に発熱・よだれ・蹄や口内に水ぶくれなどの潰瘍等が見られたら、獣医師に連絡する。

以上について、早朝のミーティングで確認している。

口蹄疫 

2010-05-19 22:54:55 | 牛の病気

NHKのトップニュースに畜産関連の生産現場での事象が話題になることは、なかなか無い。
記憶に新しいところでは、京都で発生した鳥インフルエンザの時と今回の口蹄疫位いであろうか。
昨日、東国原知事の非常事態宣言における文言ではないが、全国的に及ぶ可能性を否定できない。
正に由々しき事態である。
今にいたり、行政や畜産関係者等は連日の懸命な対応を余儀なくされている。
昨日、同知事や赤松農水産大臣も一生懸命やっているとして、反省すべきことはない旨の発言があった。
感染拡大が現実の様相が明るみになりかけてからの一生懸命であった感は、周知の事実である。
一生懸命とは成果をあげるために努力することである。
余計なことだが、一生懸命の結果が非常事態宣言に至ってしまったからには、相応の苦情には冷静に対応すべきが公の長ではないだろうか。
テレビでは、連日かなりの大人数でスコップや竹箒でごしごししていて、如何にも消毒しているようなポーズが見てとれる。
行政の行うことは、何でも一生懸命であるが、口蹄疫のウイルスは箒でこすれば消滅するのであろうか。
当初は予想だにしなかった凡そ30万頭の家畜らが処分対象になる見通しとなった。
感染拡大の原因が全く見えてこない。
だから周辺10km域内を無差別に処分対象とせざるを得なくなったのが現実である。
感染防止対策の具体的な指導指示は出ているであろうか。
感染源は人の動きにあると専門家の発言がある。
生産現場の人の行動を箸の上げ下げに至るまで、細かい指摘が必要で、それらが徹底されていれば、ここまでの拡散はなかったのではないだろうか。
何年もかかり経営を徐々に拡大して、年も重ね、それなりに安堵の生産現場であったろうに、青天の霹靂、その増加の一途を日増しに伝え聞き、この惨憺たる実情からは、かかる生産者にかける言葉に窮する有様である。

教訓を活かしていきたい

2010-05-15 13:03:21 | 牛の病気


宮崎の口蹄疫は、なかなか歯止めがきかないようである。
今朝のプレスリリースでは、81例目を報じている。
関連農家は、その結果に落胆していることであろう。
法定伝染病の怖さにまざまざと戦いているのが実態でもあろう。

当方でも、そのあおりを受けなければ良いがと出入りの制限を実施しながら、宮崎からの導入牛の経過を注視してきた。
導入から25日目が経過したが、罹る症状はなく、一つの関門をくぐり抜けられたと思っている。
この導入が元で、家畜保健所や獣医師、出入りのトラックなどに多大なる協力を得ている。
宮崎での終息宣言が出るまでは、安閑とはできない。

全国的にソーダや石灰が品薄となり、高値を呼んでいるようである。
このようなときこそ、安価に供給してもらいたいものである。
精神的、人為的、労役などに多くの気配りを得ているが、これが浪費と思えるような最終結果が得られることを望みたい。
そして、今回の教訓を今後の経営に生かすことを肝に銘じていきたい。

産業は推すだけではなく、思わぬ災害をも視野に入れて手抜かりなくスマートに推進すべきハートが不可欠である。
今回の初期の対応などの情報を得ている限り、宮崎県は様々なブランド化を推進してきたが、そのハートを少しばかり棚に置き忘れていたのではないだろうか。


気がかりな中国わら

2010-05-12 22:58:19 | 牛の病気


依然猛威を振るいつつある宮崎県内で発症中の口蹄疫である。
4月20日の公式発表以来3週間が経過した段階で70例を超し、予想だにしなかった経過である。
これは、初度の対応と畜産関係者の口蹄疫への認識の甘さ、つまりは危機意識の欠如に他ならない。
自らの家畜は自らで死守する意識が欠如していることの結果である。
10年前の経験が全く生かされていないことになる。
今更蛇足ではあるが、今回の感染については、空気感染が考えられ、その直接の原因は人による感染が最も高いと考えられる。
口蹄疫のキャリアを保有する関係者が他の牧場関係者と接触したり、対策会議を行うなどは感染のばらまき行為である。
家族などの出入りや公衆での接触、郵便配達や宅急便もその媒介になりかねない。
獣医師や家保、行政やJA関係者の出入りも無関係ではない。
飼料や畜産資材の納入業者もしかりであり、来場時にトラックの消毒を完全に行なっても、運転者は場内にて作業したり場員と接触し、次の牧場で同様な行為をすることで、感染を助長することとなる。
これらの誰でも思いつくような対策が、実際の行為としてはなおざりにされているのではないかと案じられる。
家保などの行政機関は、発症後ではなく日頃から、これらのマニュアルを提示しておくべきである。
この春、韓国で口蹄疫が発症した時点で、プレスリリースされていたはずであり、当方ではその時点で消毒等の対応を行ったが、それに伴って具体策のマニュアルも交付すべきではなかったろうか。
危機管理を徹底していただきたいものである。

10年前の口蹄疫の発症経路について、政府は中国産の麦わらではないかと発表した。
その根拠は明白にはされないままであり、「何で麦わらなのだ」と稲わらなら確率は低いがあり得ないこともなかろうと判断したものである。
その後、害虫問題もあり口蹄疫のことも含めて中国産稲わらは加熱処理が義務化されている。
これらの情報からか、JA等では中国産稲わらの扱いを中止したと噂を聞いた。
また、肥育関係者の中には、今回のことから中国わらを疑い国産稲わらに変更した例もあると聞いた。
中国産稲わらは、中国東北地区から輸入しているが、この一帯での口蹄疫の発症時例は情報になく、加熱することで安全性は確保されると、同わらの輸入解禁時に農水省は発表している。
気がかりではあるが、1,000頭からの肥育牛用の稲わらは、国産稲わらへと簡単には変更できかねている。
過去にウイートやバーリーストローでは、牛の健康や肥育成績上苦慮したことがあり、当分は冷静に中国産稲わらに固執する予定である。