牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

時事雑感

2011-07-30 12:16:12 | 雑感


宮城県が繋養している茂洋という著明な種雄牛がいる。
各地の枝共で秀逸していることから子牛市場では茂洋ブームという話も伝え聞いている。
この産子を導入することを考えたほどである。
その宮城県産の肥育牛が福島県産に次いで出荷制限になるというニュースを新聞で知った。
このように原発事故がもとで、国民生活に多大な影響が次から次に明らかになるにつれて、震災復興は着々と進んでいるという菅総理の発言を度々聞くにつれて、東北の農畜産関係者はむなしささえ感じておられることであろう。
先の日本農業新聞の子牛市場の出荷頭数調査では、曽於中央家畜市場を始めて抜いて、日本一の子牛生産県となったのが宮城県の家畜市場であった。
今日に至るまで和牛の子牛生産に官民一体となって意欲的に取り組んできた宮城県の生産者に、今回の放射能汚染は計り知れない打撃を与えてしまったのである。
まさかのまさかである。
国の行く末を傲慢と高圧的に導いた国の指導者らが執った政策のツケが広島や長崎に原爆が投下され、多くの人命が奪われ、同時に原爆病で多くの被害者が苦しんできた。
今回の福島原発事故は、未知の世界に夢を抱いた政治家や学者の傲慢さがもたらした原発行政のツケであったことは否めない。
また宮崎県での口蹄疫の発生と拡大同様に、今回の放射性セシウム被害も、いずれも初動時の対応に問題があったが、今にして思えばそれぞれの危機管理のマニュアルが、存在さえしていなかったのであろう。
稲ワラの給与制限が徹底しなかったことからも、その不備が伺われる。
国や自治体は、口蹄疫や津波被害への貴重な教訓を、今後の係る伝染病対策や災害対策に、生かして貰うことが国民一人一人の偽らざる願いである。
こうした災害や伝染病発生時からその後の対応マニュアルは、常に国民へ周知されなければならないが、菅総理は、各省庁へそのマニュアルの制定について、通達を出しておられるであろうか。
政局目当てのマニュアルよりも災害時のマニュアルの方が、国民生活には重大事であることを重々ご認識されているであろうが、現状では、一抹どころかただならぬ不安を抱かざるを得ない。


わら対応通達は

2011-07-25 23:05:07 | 雑感


このところ、稲ワラ問題が脳裏にへばりついて離れない。
大震災後の政府や政府関係緒機関の危機管理対応能力の無さについては再々触れてきた。今回の稲わら問題もしかりである。
政府は係る通達を出したと言い、農家サイドからは見たことはないという。
通達が正確に伝達されていれば、放射能に汚染した牛肉が全国的に販売されるという前代未聞の事態は回避されたはずであり、ことの顛末の責めは政府の動かざる失態と言えよう。
これまでの様々な政府通達が、これ程不徹底したものであったかが伺い知れる事態ともなった。
通達が繋がらないなどは危機管理以前の問題である。
問題の通達方法であるが、最近はネット参照というのがある。
さも全ての国民がネットに精通していると見越した感覚である。
今回の事象であるが、年配者の多いの畜産農家の方々がネットにどれ程精通されているであろうか。
またそのネットを拝受した各自治体は、それを真剣に農家へ伝達したかが問われるべきであろう。
農相は徹底しなかったことを今後の参考にして徹底させたいと談話を出した。
実に軽々なる談話である。
通達が何故正確に伝わらなかったかを検証するのが先決であり、ことをうやむやにするから、今回の失態に繋がったことを猛省すべきである。
現在東北地方の肉牛農家は言うに及ばず全国的に牛肉消費低迷などの影響から経営破綻に怯えながらの昨今である。
また今回の問題は生産者だけではなく、消費者サイドにも広範囲に疑心暗鬼などの影響を受けていると聞く。
東北のある知事は、本日の談話で通達がなかったと明言している。

再び後手後手のはなし

2011-07-20 19:50:23 | 予防治療

管轄する家畜保健所から、今朝聞き取りがあった。
震災後に東北地方から素牛を導入したか。
稲ワラはどこの産地のものを給与しているか。
そして午後になって、使用している稲ワラをサンプルとして放射性物質の含量を測定したいので協力して欲しいとの連絡があった。

事象が起きて始めて国内全域を対象に係る調査を行うことになったそうである。
震災直後から、対応が後手後手だを発する情報は、枚挙に暇がない状況が130日も持続したままである。
今回はたまたま稲ワラであるが、あらゆる食料品や飼料等について、係る調査に踏み切るための通達を震災直後に出せなかったものか。
震災後1ヶ月の間には、関東地方では水道水の異常や、野菜類への放射性物質の混入のニュースがあった。
その後、茶の話もあった。
これらの情報は係る調査の必要性を示唆していたはずである。

また、震災直後に国産稲ワラを給与させない様にとの通達を出したという農水省の話もあった。
ならば、その時点で何故係る調査をしなかったのであろうか。
何を根拠に通達を出したのであろうか。
最近の情報では稲ワラ1kg中に放射性セシウムが4万ベクレルも検出されたという。
しかも、汚染した稲わらは福島県産ではなく宮城県産とも言われている。
深く考えなくても、放射能の流出の大きさのほどが伺われる。
前述したが、放射能被災地とされる地域以外を含めて、住民や農家や畜産関係者の内外被爆の詳細について緊急調査が急務である。


稲ワラだけではない!

2011-07-12 23:34:31 | 牛の病気

南相馬市の肉牛にセシウムの体内被曝が認められた問題で、その根源が国内産稲ワラであることが報じられた。
震災後まで水田に放置されていた稲ワラを肥育牛に給与したもので、福島県はその稲わらから1kg当たり7万5千ベクレルのセシウムを検出したことを明らかにした。
暫定基準値の56倍としているが、放射性セシウム137の食べ物に対する暫定基準値は500ベクレルとされ、それから換算すると150倍と高い数値となる。
乾いた稲ワラが、これほどまでに汚染していることは、稲ワラだけが汚染するとは考えにくく、他の土壌や水質汚染が考えられ、家畜への影響もさることながら、稲ワラを給与した畜主には影響はないのであろうか。
人体への影響をことさらに注視しなければならないのではと案じられてくる。
既に4ヶ月が経過した今頃になって、このような被害の事実がもとでの国や県の対応は、まさしく後手後手の対応である。
震災後の無策の結果が今回に至ったと判断すべきであろう。
ある専門家曰く、放射性セシウムやヨウ素などは尿検査で目安がわかるとのコメント、だったら震災直後にその検査を実施すべく、政府に進言し実施していたら今回の体内被曝牛の問題はクリアできたはずである。
有識者たるや係る責任の一端は無ではないのだ!
この姿勢こそが、今の日本に欠けている気がしてならない。

放射能汚染

2011-07-10 19:35:46 | 牛の病気

南相馬から東京芝浦市場に出荷された11頭の枝肉からセシウムが検出されたというニュースが8日深夜から9日にかけて報道された。
11頭全頭から基準値の6倍前後の高い数値という。
福島県の肉牛関係者には、この報道をとても重大で深刻な事象として受け止めておられることであろう。
これまで、政府は放射能汚染について、農畜産物全般について消費者に影響することはないとの見解を示し楽観的であった。
しかしながら、以前にも同市場へ出荷し、検査を実施しないまま流通させた経緯があるという。
このような現象が明白になるにつれて、政府民主党が掲げてきた消費者や住民のための政権とした姿勢は、集票目的であって絵に描いた餅に過ぎないことが事実となって見えてくる。
消費者や生活者の生命と財産を守るなどとはおこがましいの一語に尽きる。
やるべきことをやり、その結果を包み隠さず情報開示するは国家の生命線であるという自覚が欠如していることも明白となってきた。
現行では、農畜産物の流通や消費に甚大な悪影響となって推移し、生産者の生産意欲の低下や食糧自給率のさらなる低下も予想される。
今回のニュース報道に触れて今更の感はあるが、国民を裏切らない新政権の1日でも早い発足を切望する次第である。

さて、3.11の大津波による原発事故が発生して以来、家畜への取りざたが様々であった。
小欄でも山に放せとと述べた。
地震後4ヶ月経過し、家畜への放射能汚染が現実の問題として報道されることによる農畜産物の需給に係わる産業界や消費動向などへの影響を具に危惧せざるを得ない。
原発発生後の家畜への放射能汚染に関して、政府関係施設や家畜衛生関係施設等では、どのような対応が執られているであろうか。
原発被災地を徘徊していた牛等の家畜を国や独立法人施設などへ収容して、放射能汚染に関する追跡調査などは実施されているであろうか。
世界的に見て原発施設の立地密度の高い我が国では、今回の事故の発生をきに今後の再発率が高まったが、他国の文献だけでなく、今回の事故後、放射能関係の研究対象となったサンプルは多々あると考えられる。
このサンプルを、不幸中の幸いとして研究現場では国を挙げて取り上げて貰いたいものである。


肢蹄の審査

2011-07-08 23:58:12 | 審査
戻牛のことを前述したが、そのブログに記述した4頭は、全頭10産の分娩を果たして戻ってきた。
つまり結果的に強健で足腰の強さが裏付けされたことに他ならない。
これらの牛に共通していることに、登録検査時の肢蹄の審査減率が22~23である。
この減率では審査得点に換算すれば77~78点で厳しい減率である。
因みに登録点数は何れも80点前半である。
肢蹄の良し悪しは品位資質を連動させ、細くて強さを強調して、但馬牛のようなクリーンカットな肢蹄を良しとされた審査法になっているが、肢蹄に関しては長期のお産に耐えられる強健さが求められているはずである。
第10回全共では、50年ぶりの和牛維新を掲げ、新たな改革のスローガンとするならば、クリーンカットな肢蹄が強健に繋がっているのか、雌牛の繁殖成績に繋がっているのか、はたまた、肉質の善し悪しにどの程度関わりがあるのか、結論的にこれらの形質が科学的根拠に基づいているのかなどを明白にすべきであろう。
話を肢蹄の減率に戻すが、和牛の肢蹄はどの牛も本来強健である。
和牛の大半が減率20以上となっているが、10産を果たすような雌牛は、減率10の能力を有していると判断すべきである。
少なくとも、登録点数80点であれば、中躯等の減点に匹敵する減率に評価すべきである。
5産次の母親の体型を見ると、品位資質・均称や中躯等の検査時の減率は信じがたい現実となり、肢蹄だけは当時を現存している。
「つなぎ」が弱く歩様に欠陥が認められるものを除けば、多産次を評価すべく、その可能性を加味した肢蹄の減率や配点を現行より高い評価を行っても良いのではあるまいか。