腹作りのために粗飼料を飽食させ、生後15ヵ月令で採血した結果、血中ビタミンA濃度は125(IU/d1)とかなり高い牛が何頭かいた。
生後21ヵ月令の同濃度は、80程度のものもいた。
さらに25ヵ月でも70と言うのもいた。
この様に20ヵ月令以上において同数値が高ければ、同Aコントロールの失敗で、サシは期待できない。
生後21ヵ月令で同Aが順調に下がらなかった場合は、その後も尾を引き、なかなか数値が下がらない傾向があり、同コントロールによる肉質改善には至らない。
一方、同Aが下がらない理由の一つに、仕上げ用配合飼料の給与の低下がある。
育成時に順調な飼料摂取とそれに伴う順調な増体が24ヵ月令まで続くようであれは、同コントロールも旨くいく。
βカロチン含量の少ない配合と粗飼料を飽食させて、もりもりに肉付きが良好であれば、同Aの体内消費が進むために、血中濃度は下がり、極端な場合、同A欠乏症状に至るケースもある。
ところが、18~20ヵ月令で、何らかの理由により配合等の摂取量が低下した場合は、増体が進まず、同Aの体内消費も進まないために、同濃度は下がらず、常時同剤を補給し続けるケースと同様に、同Aは高いまま推移し、肥育後半にいたり、食欲を回復するケースが見られることもある。
これでは、和牛が潜在的に有するサシや肉色などを引き出せないままに肥育を終えることとなる。
草の利用性の良否により、同コントロールの開始時期を適切に行わないと失敗することとなる。
同コントロールの失敗は、同数値がかなり高い場合、コントロールの開始時期を1~2ヵ月早めるのも一考である。
18~20ヵ月令で、仕上げ舎に移動するケースでは、環境が異なるために、摂取量が一時的に低下するケースがままある。
このケースを経験する肥育牛は、最悪のケースと言っても良い。
育成から仕上げまで移動無しで全期間同じ房で飼う場合の方が、肥育は無難に終了できる。
同コントロールを形の上でしっかり行っても、実質成果とならない場合がある。
時たま、採血してその確認を行うことも必要なことである。
肥育牛の70%以上がつねに5等級というケースでは、余計な話でもある。