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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

子牛データ

2011-06-09 23:33:52 | 子牛


生産地から子牛を導入する際、それぞれに子牛登記と生産履歴が手渡される。
先ず、子牛登記に記載される項目に、生時体重がある。
家畜市場でセリに掛けられる子牛らは、直前に体重測定されるために、生時体重が掲載されていれば、該牛のほぼ正確なDGが算出できる。
DG値によって、それぞれの導入牛の発育経過が理解でき、それまでの餌の食い込み状態も予測できる。
また、生時体重の大小により、母牛への飼料の給与量が適度であったか否かなども推測できることになる。
何れにしても、これらのデータが次回からの子牛選定用に参考となる。
ところが、平成21年7月から平成23年6月までの2年間に当センターで導入した949頭を調べたところ、生時体重が記録されている子牛の割合は、21.7%に過ぎない。
当センターが関係している繁殖センターからの131頭は100%記載されているために、これを除くと僅か9.2%である。
全国9カ所の子牛市場から子牛を導入しているが、これらの市場によって飛騨(10)20%、京都(87)18.4%、与論(221)11.3%、沖永良部(181)9.9%、曽於(25)8%、岩手中央(129)6.9%、肝属(27)4.8%、宮崎中央(138)0%である。
このうち京都は、87頭の内14頭が府立高校、京都府、大学など公の施設での生産子牛であり、生時体重が記載されているのは5頭に過ぎない。
せめて、公的機関は100%の記載が望まれるところである。
添付書類の内、生産履歴の給与飼料の記録欄では、子牛だけ記録したケースがある。
トリサとくにBSEの原因究明には、母親の飼料摂取履歴は子牛同様重要な項目である。
導入先が、繁殖であれ、肥育であっても、子牛登記や生産履歴の記載事項については、必要とされる項目である以上、購買者へのサービス意識の中で協力頂きたいものである。
生時体重の記載漏れがあった場合などは、生産履歴へのメモ書きでもいいのではと期待したい。

牛の白血病と離乳

2011-03-02 19:46:48 | 子牛


牛の白血病と離乳

近年、牛の白血病がかなりの割合で増加の傾向が見られるとし、最も多い患牛は乳用雌牛とのことであったが、黒毛和種の繁殖雌牛も全国的に感染被害があるようである。
この疾患はその大部分が牛白血病ウイルスが血液を介して感染するため、予防注射など注射器の回し打ち、血液が接触する器具等の連続使用、アブやハエなど吸血昆虫、母乳による親子感染などにより伝播する。
同ウイルス感染で同キャリアになるが急に発症することは希で、和牛の場合は数年かかって眼球突出や痩せるなど年齢の割には老化現象を呈することで発症を気付くことが一般的である。
また同症では体内に腫瘍が出来ることが知られており、歯間など口腔内、各臓器や気管などにガン症状が出るなど様々な症状が診られる。
人の白血病とは異質であるために、人への感染は無く、感染牛の食肉や牛乳が人に与える影響は無いとされている。

同症で気がかりなことがある。
同症を感染した牛が分娩し、折角の子牛が母乳を飲むことにより同ウイルス感染すると言うことである。
繁殖雌牛の場合、母牛の感染の有無を検査することが不可欠である。
万が一感染していても妊娠の持続など繁殖にはさほどの影響はないが、この疾患に対する認識と対策が離乳時期の決定に深く関わってくる。
従来認識では、子牛の離乳時期について、母乳が豊富であれば可能な限り長期に子牛を付けることが、生産効率上は得策である。
しかし、かかる感染が確認された繁殖雌牛については、子牛の健康維持のために躊躇することなく、生時離乳する必要があり、初乳であっても与えるべきではない。
最近は初乳に匹敵する免疫力(ガンマーグロブリンなど)の高いミルクが市販されている。

牛飼いの初心と基本

2010-11-22 17:02:57 | 子牛


生後月齢6ヶ月で導入する子牛の育成法に基本的な問題があることに気が付いた。
常日頃、日本飼養標準(肉用編)を飼い方の指針とすべしが持論でありながら未熟な経験が独りよがりな対応であったことにも猛省中である。
6ヶ月令といえば、子牛用の飼養法が必要な月齢である。
該牛らが、乾燥を実によく食い込み夕方になれば、ゴムまりのごとくパンクしそうな腹容となることに、ふと思い出すことがあった。
今から約30年前、繁殖用雌子牛の栄養レベルに差を設け、それらの後年における繁殖成績を調査する試験を行ったときのことであるが、低栄養レベルの子牛が粗飼料の食い込みはよいが、腹容だけ大きくつまりはシケ牛となったが、現況の6ヶ月令の子牛たちも、以前の状態に近い子牛となっているのである。
離乳直後からの仔牛の飼料には、可能な限り多種のミネラルや高タンパク質が要求される。
それらが不足することで、子牛は肩から背・腰に至り、尖った格好となり、腹容だけがやたらと大きくなり体高の伸びが停滞し順調な発育ができない。
飼養標準を参考にすると、6ヶ月令子牛の給与飼料の内容については、Cpレベル16%のものを与え、体重160~175kgでDG1.0kgを確保するには、Cp830gが必要とある。
従来使用してきている肥育前期飼料はCp14%レベルであり、現状での飼料給与を計算すると、Cp値は700g余りでかなりCp値が不足している。
この月齢では、Cp17%を含有する子牛用配合を与えることで飼料計算値を満たすことができる。
覆おうにマンネリ化が常在化しがちである。
常に、初心に返ること、基本に忠実であることの重要性を今更ながらではあるが、再確認した次第である。

導入以前に打たれる予防注射

2010-09-13 22:53:13 | 子牛

年間500~600頭の肥育素牛を導入していると、導入して2~3ヶ月以内で、ヘモフィルスやRSウイルスが原因による疾患で死亡させることが珍しくない。
その都度、市場開設者宛にクレームを付けて確実に接種したかを問い合わせるのであるが、確実に接種しているので、市場や生産者の責任はないという回答が届く。
多くの場合、このような水掛け論で、泣き寝入りせざるを得ない状況である。
宮崎県や岩手県の場合は、市場名簿の説明メモに五種混合とヘモフイルスワクチンは全頭接種済みであると記述してあるのみである。
鹿児島県と京都府では、子牛登記書の裏にワクチン名と接種日が記録されている。
京都府の場合は、それに加えて接種した獣医師の署名付きである。
生産県により、その対応はまちまちである。
導入直後、2回目のヘモフイルスを接種する場合、鹿児島県や京都府産の子牛の場合は、前回の接種日が記されていることから、接種間隔が割り出せて、躊躇無く対応できる。
その他の県の場合、競り市直前に接種されていれば、導入直後に2回目の接種では、その間隔が短すぎることになる。
これらの産地の場合、予測しながら接種している状態である。
本来ポジティブリストやトレサビリティーの記録を全うする上では、いつ、どこで、誰が、何を接種したかを記録しなければならないはずである。
また、何らかの原因不明の疾患が発症した場合、家畜保健所へ採血などで原因調査を依頼することがあり、その際、接したワクチン等の詳細を聞かれることがある。
これらのことを考慮に入れれば、鹿児島県や京都府の場合は、問題のない対応がなされている。
頭数を日本一抱えている鹿児島県のケースをして、頭数が多いから面倒などとは、他の産地ではいえないはずである。
これが、購買者つまり消費者へのサービスであり、疾病記録の提出まで要望はしないが、関係者のまじめな取り組みを期待している次第である。


鼻梁の白斑

2010-09-09 22:41:59 | 子牛







導入子牛で気がかりなことがある。
写真にある鼻梁上の白斑のことであるが、これらの白斑は、生まれながらのものではない。
横一文字や横二線であったり写真下のように4列のものもある。
この白斑が出来る原因は、子牛の頭部は発育とともに日々大きくなるが、子牛に付けた「トウラク」「頬綱」などと呼ばれ頭部にくくりつけたロープを、畜主がいつまでも付けたままにしているため、顔を締め付け鼻梁にロープが食い込むなど傷が付き、それが治癒後に白斑として残るためである。
そのため、白斑はロープ跡が残るように、横向きである。
ここまでに至ることは、子牛らは長期にわたりかなりの苦痛を経てきたことになる。
うがった見方をすれば、複数の白斑があるケースでは、ロープを再々きつく締め付け直していることが伺われる。
子牛を販売して収入を得ることは、子牛あっての畜主の生活である。
子牛や親牛に常に感謝して牛飼いすることも牛飼いの生き方の一つでもある。
子牛に感謝していれば、このような白斑は出来ないはずでもある。
得てして、発育の良い子牛ほど、これらの被害になりやすいのかもしれないが、毎日給餌しているのであるからには、それらの観察も見逃してはならない管理の一つである。

出荷待機牛の栄養度

2010-08-12 00:01:09 | 子牛

写真は再開された鹿児島県内の子牛市場における繋留場の風景である。
この写真は、THE BEEF CATTLE MAGAZINE 編集長から時節伺いとして頂戴したものであるが、頂いたものはこの数倍の被写体からなり臨場感のある繋留場風景であったが、繋留されている出荷牛の特徴を表現したい意図があり、了解を得てトリミングしたものである。
鹿児島県で子牛市場が再開され間もなく当方でも去勢子牛20頭、雌仔牛5頭を導入した。
到着した子牛の全てが、口蹄疫発症以前にはあまり見かけたことの無いような、写真の手前にいる子牛のように肋骨が鮮明で体幅の無い素牛であった。
聞くところによると、市場待機している子牛には餌を控えて与えるようにとの指導があったようである。
当方に着いた子牛らは、生後月齢が以前より2~3ヶ月大きい割に、体重は若干抑え気味であった。

通常の場合では、導入後の飼い直しの関係から、生後月齢7~8ヶ月齢のものを意図的に選定しているが、今回は、可能な限り生後日齢の少ない子牛を選定したが、雌雄ともほぼ320日齢で、平均体重はそれぞれ311.4kg、300.6kgであった。
DGがやや低いことと、通常より日齢が多いことから、体調を問題視し、とりあえず管轄の家畜保健所へ事情を説明して、V/Aだけでも測定してくれるよう依頼した結果、導入日から6日目に採血した。
その結果、V/A値の平均は去勢子牛は56.9(iu)±11.35、雌仔牛は50.3(iu)±5.26であった。
写真にある子牛の栄養状態から予測できるように、通常数値より約30%低い値が判明した。
夏期でもあり長距離輸送によるV/Aの消費量も有ろうが、子牛育成中の飼料給与に多少の問題があったであろうと判断している。
市場性を睨んでの思惑が伺われるが、過肥にならない程度の栄養補給は商品として当然であり、生時体重を除しないDG値で少なくとも0.95kg以上は確保すべきである。
早速にV/ADE剤の補充を行ったが、例のない導入月齢の高さもあり、飼い直しに苦慮している次第である。


待機中の子牛の管理

2010-05-30 07:24:37 | 子牛


九州地方の家畜市場は、口蹄疫の感染を警戒して、6月の子牛市の中止を決定した。
それにより3ヶ月間の移動が出来なくなり、競り間近の子牛達は、13~14ヶ月目に到達する可能性もある。
現状を把握する限りでは、或いは収束宣言は7月以降にずれ込むことも視野に入れておかねばならない経過状況である。
和牛繁殖雌牛は予定通りに分娩するため、子牛頭数は増える一方である。
飼育舎の振り分けに苦慮されているであろうが、出荷を差し留めされている子牛等の日常管理の対応にも困窮されていることであろう。

通常生後9~10ヶ月目の肥育素牛は、肥育センターなどに導入され、乾草飽食に加えて肥育前期用飼料を徐々に与え始めた頃である。
生後15ヶ月目になれば、前期用から本格的な肥育飼料に切り替える時期となる。
同14ヶ月目頃には、前期用飼料を5kg程度与えている。
この肥育前期の期間中は、粗飼料をどれだけ多く与えているかが、その後の肥育成績に深く影響する。

市場閉鎖で出荷待機中の子牛の給餌管理については、上記の肥育法を念頭に、生後月令9ヶ月令からは、濃厚飼料を与えすぎず、乾草を飽食状態とし、栄養補給のため育成飼料または肥育前期飼料を2kg前後から給与開始して、子牛の発育を睨みながら、徐々に増量し、12ヶ月頃には乾草5kg、濃厚飼料4kg程度で推移し、14ヶ月目頃には上記給与量に至るような管理を行う。
生後10ヶ月以降の肥育素牛の場合、牛を過大化させる必要はない。
大きくしたから、高価で競り落とされるものでもなく、このようなケースでは、牛が如何に健康的に飼育されているかが重要であり、月齢に応じた発育状態を維持することである。
無理矢理体脂肪を蓄積させるなどは無用であり、低コストを考慮しながら毛艶のよい子牛を育てることである。

子牛の早期離乳は経営にプラスなのだろうか

2009-06-29 18:15:20 | 子牛


最近、多頭化している和牛繁殖農家では、この様な風景を見かけなくなった。
それは、諸々の理由から早期離乳しているからである。
撮らせて貰った箇所の繁殖牛の管理は、今でも約6ヶ月間は親に付けて母乳を飲ませて管理している。
その理由は定かではないが、母牛の飼料設定と牛本来の能力を自然体のまま活かそうという狙いがあるようである。
粗飼料主体で、しかも自給飼料100%の給餌でヘイレージを飽食させているために、母体の健康状態はすこぶる良好で、50~60頭の受胎率はほぼ90%程度の成績で、年1産を実現させている。
このような飼養管理状態のために、母乳も豊富にあって早期離乳することの方が、むしろ不自然な状況である。
前述したが、子牛のルーメンを順調に発達させるために、生後まもなく離乳して哺乳後、人工乳だけで3~4ヵ月育ててから、良質粗飼料を与える保育法が新技術だと紹介した。
その新技術は既に国内でも実践されて成果を上げている牧場がある。
しかし、そのことを改めて再考してみると、子牛のルーメンをより発達させることになるが、それでは、これまでの母乳での育成は、成畜に成長した暁に、繁殖や肥育を行う上で問題があったのかと言うことになるが、現実にはその様なことは、先ず考えられない。
確かに、多頭化が進めば、効率的な子牛管理が必要となるため、哺乳の自動化にはメリットがあるかも知れない。
言われているところの、母体の産後の回復効果と早期受胎の実現、子牛の事故や生後発育などに於いて、早期離乳が優れているとは断言できないのが現実である。
生後月齢約8ヵ月でDGが1kg、産後35日目の発情時に種付けして受胎させ、その大部分が10産をものにしていることを考慮に入れれば、低コストに繋がる母乳生産の方が、理にかなっている。
この早期離乳は、生産者自らの発想なのか、生産者以外からの発想なのか定かではないが、生産費高と子牛相場の低迷で採算が合わないという論議だけで良いのだろうか。
低コスト生産を視野に、もう一度個々の経営の中で、再検討する価値があるように思えてならない。


生時体重

2009-06-13 19:57:50 | 子牛


黒毛和種の子牛登記によれば、生時体重を明示している頭数は、導入頭数全体の1%未満である。
自らが生ませた子牛の体重を気にする生産者は、その計測を分娩時の作業の一つとしているケースもあるようだが、稀なケースのようである。
子牛の生時体重、在胎日数など生時のデータから、その母牛の栄養条件など飼養管理の良否を判断するデータとして参考になるはずなのだが。
生時体重は、性別、両親の相性(とくに種雄牛の影響)、産次、前産次時の離乳時期、母牛の栄養状態などにより多少の違いはある。
妊娠中に遺伝疾患やアカバネウイルス等の影響を受けた場合などは、生死に関わる疾患を背負って生まれてくる。
分娩毎に生時体重を測定しておくことで、上記ファクター毎の影響が理解できて、和牛に関する知識が豊かになるはずであり、それらを子牛生産技術に加えることも、マイナスではないはずである。
一方、購買者にとっても、生時体重が名簿に記載されていれば正確なDGがわかり、導入子牛の選定に大いに参考になる。
肥育や繁殖育成時にも発育の基礎となるのが生時体重なのである。
当方では、自治体の牧場や農業高校などから出荷される子牛を導入することがある。
これらの組織は、片方で研究や教育に携わっているはずであるが、何故か生時体重が子牛登記に明記されていない。
老婆心ではあるが、公的関係者が率先して実施することで、さすがだ!と。

牛飼いのとりとめのない話

2009-02-16 19:24:39 | 子牛



購買者の立場からは、繁殖目的の子牛と肥育用では、子牛の見方の項目が若干異なる。
共通するのは、日令相応の発育、体全体の釣り合いの取れたボリューム感、欠損部位や疾患歴の有無と健康度合いなどである。
繁殖用の場合は、将来妊娠に耐えられる足腰の強さ、乳徴器では乳頭数や配置や柔軟性などに異常がなく乳房の豊かなものが望まれる。
最近では、とくに血統重視で最低3代祖にわたる種雄牛を吟味している向きがあり、母牛の体型や繁殖成績、登録点数、期待育種価などを参考としている。
種雄牛候補を物色する場合は、民間の種雄牛生産者などは、3代祖どころではなく、さらに数代遡って吟味していると聞いている。
優れた種雄牛を複数頭繋養している行政機関では、それらの産子雌に互いに交配したり、著明な種雄牛の精液を同様の産子雌に交配して新たな種雄牛候補を生産していることが、供用種雄牛の血統一覧から知ることが出来る。
血統を優先して購買するは、繁殖素牛に限らず、肥育素牛も同様である。
ところが、一発勝負の肥育では、なかなか血統通りには結果が出にくいのが現状である。
その点、繁殖雌牛の場合は、その交配の相性が交配種雄牛毎に異なるために、相性がよいものを交配することによって、その雌牛の能力は相性という相乗効果が生かされることになる。
しかしながら、その相性を例えば、1年ごとに突き止められれば良いが、生まれてからおよそ30ヶ月後でなければ結果が出ない。
結果が出ても、それを生かすには、4産目からとなる。
余談になるが、肥育結果により、BMS11~12の成績をもとに再度同じ母親の産子をゲットしようと市場名簿を見て、がっかりすることが多々ある。
それはタイプの異なる種雄牛を交配しているからである。
それでも、と購買して肥育した結果は、BMS8程度の例がままある。
全兄弟であれば、その程度のブレはあるが大きな差には成らない。
また全兄弟であっても、産次数が増す毎に能力低下の傾向があり、兄の成績を飛び越すケースは、確率的に極稀であるが、5等級の範囲であれば、同じ交配を続けるべきである。
これらを考えると、生産者と肥育者の情報交換は優れた能力の牛を作出する観点から必要不可欠のように思われて成らない。