牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

素牛について考える。

2016-09-29 23:11:50 | 素牛


肥育素牛をセリ落とし、子牛登記を確認すると、血統に不足はないはずなのに母牛の育種価が見事?にCCCCCCでガックリすることがある。
子牛市場によっては上場時の体重が総じて小さく200~240kgのレベルの子牛が出てくる。
そのような小さな子牛でも現相場は80~90万円台で、Kg単価は3,500円以上となる。
大市場では300~350kgの子牛でも平均的には80~100万円で競り落とされ、kg単価は2,800円程度である。
肥育して出荷する時点では、素牛価格が50~60万円の時なら小さな子牛でも採算は合っていたが、今ここに至り前述のようなセリ価格となれば、250kg以下の素牛では、採算割れはほぼ確実となる。
赤字になる子牛については、余程の理由がなければボタンは押せない。
なぜ赤字だろうか。
多少の個体差はあろうが、素牛の増体能力(DG)は、肥育期間を通して小さい牛では0.6~0.65kg程度であり、大きい子牛は0.7~0.8kg程度になる。
大まかな数字であるが、肥育期間が21か月間であれば、小さい牛は増体量は400kg前後で終了時体重は620kgで出荷目減りして枝肉量は約420kg、単価2,500円なら内臓等を含めた仕切り額は115万円にしかならない。素牛代85万円、肥育経費45万円で130万円となり、販売価格には及ばない。
枝肉単価3,000円で採算が合う計算になる。
大きな子牛なら枝肉量525kg、単価2,500円で145万となり、1頭5万円の差益は確保でき、単価を上げればその倍にも3倍にもなるはずである。
さて、文頭のCCCCCCの話であるが、~血統に不足はないのに~の原因は、予想に過ぎないが、上場時の小さな体重が大きくかかわっている。
前述のようにDGが低く、仕上げ体重が小さいために総じて、枝肉の格付結果では、枝重、ロース芯面積、ばら厚、皮下脂肪厚、歩留基準値、そしてこれらのマイナスの相乗効果が脂肪交雑に表れてオールCになる可能性が高いのではと判断している。
そのために両親の潜在能力が肥育の結果では発揮されないまま、母牛の育種価に反映される。
子牛の体重が小さい結果は、その母牛の育種価にマイナス要因となっているのである。
つまり、子牛生産者、市場関係者の方々には、これらの問題をご認識していただくことが、肝要かと危惧している。

人畜共通の癖

2012-08-11 13:39:51 | 素牛



舎内を見回っていれば、気がかりなことに良く出くわす。
写真は幼牛のころの習慣が抜けきらずに、やたらと他の子牛の頸、種雄牛なら頸峰が膨らむ辺りに吸い付いている様子である。
母牛から授乳を受けていた頃同様に、子牛の乳房に吸い付く例は多いが、それ以外の箇所に吸い付くのは希である。
吸われる子牛の方は、迷惑であろうが、いつものこととして諦めているように見える。
吸う牛の方も、真剣では無さそうで、ただ機械的な行為であって、所謂該牛の癖のようである。
この仕種は、離乳してからも母を恋しがったり、母の乳房を触らないと寝付かないという幼児の仕種と同じである。
得てして、このような子牛の場合は、少数頭飼育で、離乳時期がかなり遅いケースが考えられる。
この牛の成長を追い飼料摂取量などの推移など肥育成績を見届けるつもりである。


所用が徐々に増えて、牛コラムもとぎれとぎれとなっている。
いつも開いて下さる皆様には、お詫び致したい。


発育不良でも5等級になる飼い方

2012-04-26 17:37:26 | 素牛

東北の子牛市場では、生後日令が300日を越し、体重か300~350kgの子牛がかなり上場されているが、九州地方では250日令で240~270kgに揃えて出荷しいるケースもある。
日令が若く、発育の良い子牛の方が、飼い慣らし後の食い込みや発育が順調に経過することから、購買者の意向も月齢の若い方が人気のようである。
当方では、後者に絞って導入して成果を出している。
一昨年の口蹄疫の影響を受けた所謂待機牛が仕上げられて出荷されつつあるが、その成績は今一と聞いている。
7月市で導入した素牛らは、飼い慣らしがうまくいかず、その後の食い込みにもやや問題があり、順調とは言い難い状況である。
これらの出荷は、来月後半に持ち越すことになる。

話は導入子牛のことであるが、ある市場に始めて出荷した公的牧場の子牛数頭が揃って発育難で、毛色は茶髪並みで見劣りしたため、僅か10万円前後で競り落とされた。
ところがそれらの子牛が肥育される過程で、意外にも順調な発育で仕上がり、最近食肉市場に出荷された雌牛はA-5に格付けされて、大儲けしたという。
日令300日以上で体重200kgそこそこのシケ牛であったが、この子牛らは、配合飼料は単純な自家配合を2kg程度と良質のヘイレージを若齢時から飽食しており、そのために発育に問題はあったものの、牛本来の粗飼料での育成が功を奏して、肥育に入ると食い込みが良く、見かけに反して良好な結果を出した。
この生産牧場では、子牛市場への出荷を繰り返すことで、子牛を通常の商品化するために、ミネラル等が混合された市販の子牛配合を与えることで、最近は茶髪から黒毛和種に変身し、多少はDGを高めて出荷するようになり、競り価格も40万円と正常評価されつつある。
購買者が食い込みの良さに気付いたことと、子牛の生育状態の好転を評価した結果を得ている購買者は、セリ負けしない意気込みでボタンを押すに違いない。

300kgを越す発育の良い子牛作りも良いが、多少発育に難はあっても、評判を取るような子牛作りの方が、和牛子牛本来の育成法なのかもしれない。
当方も、数頭これらを競り落としているが、経過は順調である。

しかしながら、シケ牛が功を奏したのであって、高栄養の配合飼料を与え始めた子牛の肥育結果が気がかりである。




複雑な血統が功を奏している?

2012-04-20 19:21:16 | 素牛

肥育現場でなかなか思い通りに行かないのが、素牛選定である。
最近、僅かではあるが肥育成績が好転しつつある。
肥育牛の飼養管理は従前通りであるが、好転の兆しが出始めた決定的な理由が定かでない。
一般的には、素牛の能力、餌の給与パターンに何らかの変化などが考えられる。
このうち、素牛選定については、産地や産地で利用されている主要種雄牛の影響、子牛の育成技術などの関わりが考えられる。
これらの他に競り価格も重要なポイントになる。
この半年間に出荷した肥育牛について、素牛の競り価格が大まかに50万円以上、40万円台、30万円台、それ以下について、差益について集計した結果、30万円台が最も高い差益を得ていることが判明した。
これらの各ランクでの上物率も30・40万円台が高い値であった。
ただ、BMS値の平均は競り価格が高いほど高い値となり、販売価格も高いが、差益となれば逆転している。
この最大の理由は、素牛価格の差に対して販売価格に同様の差がないことである。
飛び級クラスがあって平均的には数値を引き上げているが、どのランクからも等級の分布が均等で似かよって大差ない。
これは、和牛の血統が全国的に斉一化されてきたことも、その一因と判断している。
このところ、50万円台が3等級になる一方で、30万円台の素牛が連続してBMS10を記録した。
購買担当者は複雑な面持ちのようであるが、高額牛が赤字と言うことではないことから、高額牛の見方を変える必要はない。
当方に限っては、結果的に、子牛市場における平均価格を「中」とするならば、「中」および「中の下」程度の素牛がねらい目と結果が出た次第である。


11月の子牛市場

2011-12-17 01:06:12 | 素牛

農業新聞掲載、11月の全国和牛子牛市況によると、栃木県を含めた東北地方で生産された子牛相場が次第に好転の兆しのようである。
雌子牛の平均36,8万円、去勢牛44.2万円、雌雄平均40.9万円で前回比9%上昇し、中でも、宮城県12.4%、栃木矢板12%と全国でも最大の上昇を見せた。
一方平均価格が下落したのは、北海道と宮崎県を除く九州各県であった。
最も平均価格が高かったのが、岐阜県47.6万円で、去勢牛が50万円を越した。
これまで平均価格トップで、雌子牛の価格が去勢子牛を上回っていた薩摩中央では、雌雄の子牛価格に差が無くなり、岐阜県・宮崎中央にトップを譲る結果となっている。
全共ムードの最中、日本一奪還をねらっている鹿児島県としては上げ潮が期待される折り、些か気掛かりな状況である。
それにしても、最近の市況でも宮崎県小林市場では、去勢牛の平均が50万円を越し、最近の宮崎牛の人気を反映している。
全国的にばらつきは見られるものの徐々に平均化しており、相場は上げ気味の市況となっている。
12月は、肥育牛の出荷頭数が増加するため、肥育舎を満たす目的から、12月1月の市況が注目されるところである。


宮崎からの導入を再開

2011-11-17 18:27:00 | 素牛

口蹄疫が発生して以来、宮崎県産素牛の導入を控えてきたが、11月開催の子牛市場から導入を開始した。
1車、2車とまとめ買いする肥育関係の購買者には、三重、静岡、岐阜、関西地方からの顔もあり、また繁殖関係では地元に加えて、東北北海道からもあったようである。
そのために口蹄疫発生以前の相場に回復した。
目下平成21年秋に導入した宮崎産が仕上がり出荷の最中であるが、忠冨士や福之国が係わる産子は質量ともに安定した成績が得られているために、今回導入を再開した。
しかし、平均導入価格が高いことと、依然低迷中の牛肉消費の影響を考慮すると、なかなかペイし難いことを予想している。
そのために、疾病や事故に至らないような管理意識の徹底が欠かせない。
前回牛白血病について話題提供したところ、様々に参考となるご意見を頂いた。
この問題は、同ウイルスの抗体陽性率や発症率が右上がりに増加している現実を、行政関係者が問題視し、後手後手に至らないための対策が不可避である。
今回の素牛導入に当たっては、同症のキャリア牛は全国的に分布していることを考慮に入れ、今後係る検査でキャリアであることが判明した畜主からの導入を避ける程度として産地にこだわらないこととした。

写真にある真鍮の鼻環は宮崎牛のシンボルとして、銘板を見なくても産地がわかる。
しかし、金属製であることから違和感(可哀想)を払拭できないでいる。
写真下や前回の写真のままでも・・・・・。




6月市で導入の牛娘たち

2011-06-15 22:55:32 | 素牛


6月初旬に導入した雌子牛である。
この2頭はこれまで導入歴のない生産者の子牛であるが、聞くところによると、生後数ヶ月の頃から良質ヘイレージを飽食摂取していることと、一頃より育成技術の成果が向上し、肥育素牛としての能力に期待できるまでに至ったため導入した。
以前は、やや発育に難があり、毛色は毛艶がなく赤茶けて市場評価がかなり低かった。
それらの評判を受けて、最近は市販の育成配合などを給与するようになり、発育も上昇して競り価格も平均相場に匹敵するようになった。
毛色が美しく改善した原因の一つは、発育が好転したことであり、その発育を改善するために取り入れた市販の飼料にあることが伺える。
これまで、粗飼料は飽食給与させ、濃厚飼料は自家配合を利用してきた。
市販の配合飼料には、家畜に必要な微量要素が混合されていて、その効果で発育が改善され、毛色も濃くなったようである。
以前も触れたことがあるが、専門家によれば銅が不足すれば茶色になりやすいとのことであるが、市販飼料により銅などの効果が現れてきたものと判断している。
導入後は粗飼料の利用性に富み、飼い直しでのトラブルもなく順調に経過している。
増体に加え、肉質も期待できそうである。
さらなる子牛育成の改善を期待している。

被災地での子牛市の再開

2011-04-19 21:11:59 | 素牛


震災地となった東北地方でも、子牛の競り市が再開された。
宮城県で開催の競り市では、平均競り価格が42万円で、予想された競り値の極端な下落もなく、関係者には安堵の開催であったようである。
岩手県や宮城県では、震災のため、競りが予定通りに開催できず1ヶ月遅れとなり、5月は2回開催が予定されている。
購買者が減るのではとの予想は外れて、盛会のようであり何よりである。
前述したが、この数年東北・北海道での和牛の増頭傾向はめざましいものがあると記したが、福島県を中心に地震・津波・原発に影響を受けた産地では、少なからず増頭傾向に大きな水を差された状態となっている。
津波を受けた地方では、壊滅的な被害を受けた生産者の復興や生産活動の再開にも目処の立たない状況である。
これらの被災地への災害補償がどのようになるかは確定していないが、農地並みに手厚い補償が具体化されることを切に願うのみである。

大震災

2011-03-13 14:11:53 | 素牛


東北三陸沖に発生した未曾有の大震災に遭遇された皆様に、心からお悔やみを申し上げます。
又被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。

被災された各県は、和牛の主産地であり、和牛の品質向上と増頭を目指して一丸となって取り組んでおられる地帯である。
被災状況がテレビで流されるたびに、地域住民の皆様は勿論であるが、和牛の生産者や牛たちのことが案じられるのは、係る全国の関係者とて同様であろう。
また、これらの各県では、肥育生産に於いても優れたブランド肉を生産し、関係誌等でも取り上げられている。
係る生産地での素牛購買者諸氏とともに、被災されていなければ良いがと願う次第である。
現今では畜産分野が家畜伝染病感染等で産業に水を掛けられた感が否めない状況下にあり、今回の被災が追い打ちを掛けることのない様、東北各県の畜産関係者や家畜らのご無事を願い祈るのみである。

市場ランキングから

2011-03-07 23:24:28 | 素牛

日本農業新聞掲載の「子牛市場10ランキング」によると、これまで南高北低の黒毛和種子牛の生産頭数の割合が、次第に南北平均化され、今後の見通しとしては北高で推移しそうな状況が見られるようになった。
これまで主産地であった鹿児島県では南西諸島の徳之島以外は、軒並み頭数減が見られる。また宮崎県では、口蹄疫の発生による影響から頭数減を余儀なくされている。
これらの2つの件では、平成6年度以来いずれも10数%減であり、我が国の主産地だけに係る産業への影響が危惧される。
その一方で東北北海道の生産頭数の増加状況には、従来より予測されていたとはいえ、目を見張るものがある。
とくに、北海道では平成6年度以来約45%の増加率が見られ、近い将来和牛の主産地として君臨するのは確実であることを示唆している。
南九州の場合は、その生産者のかなりの割合が高齢者で占められ、その影響が生産減に見られ、主産地としての今後の対応が注目されるところである。
北海道では、酪農家や軽種馬生産者による和牛繁殖への生産替えなど、生産意欲の効果が生産頭数の増加により如実に現れている。
同様に4年間で約8%増が見られる鹿児島県徳之島でも、サトウキビや馬鈴薯の生産が主産業であったが、若い経営者らが立地にあった和牛生産に着目し、互いに競うように繁殖牛の増頭をはかり、目下年次的に生産頭数を増加させている。
個々の生産者であれ、地域集団や道県単位であれ、生産目標とその実現のための意欲が存在することで、増頭は可能であることが伺える情報であった。