牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

口蹄疫

2011-02-12 18:52:44 | 牛の角




朝から石川県で口蹄疫の発生が疑われた情報で大騒ぎであった。
昨秋以来、トラック等の制限やソーダ灰による消毒等は継続してきたが、今回の情報を受けて、これらの強化に加えて、消石灰の散布を徹底する等昨年4月の対応策を踏襲することにした。
やがて夕刻5時頃「石川県の口蹄疫は白」の情報が入り、異口同音に「やれやれ、ほっとした!」。
過度な情報の感は否めないが、実に効果的な訓練であったが実感である。
目下の朝鮮半島に於ける口蹄疫の猛威を考慮するなれば、我が国の何処で発生しても不思議ではない。
災害は忘れた頃にやってくるの例え、警戒は万事怠り無しである。

忠富士号

2010-05-22 20:45:29 | 牛の角
早朝からとてもやるせないニュースが届いた。
宮崎県の種雄牛の取り扱いに物議が取りざたされただけに、関係者ならずとも唖然とされていることであろう。
貴重な遺伝子源を死守したいという関係者の法定伝染病予防法を圧しての措置も空しい結果になろうとしている。人の成せる限界をまざまざとかかる結果が差し示したことになる。
昨年春から宮崎産の素牛を導入してきた。
忠富士号や福之国号は馴染みの種雄牛となっている。この種雄牛の産子だけでも150頭に及んでいる。
当センターでは、未だこれらの産子の肥育結果は1頭も終えていないだけに残念でならない。
今更愚痴をこぼしたくはないが、本来公の施設なら範を示すが当然である。
立地や感染の強弱を考慮する限りでは、そのことを軽々しく責められないが、同疫が終息を迎えたとしても、他県からの導入がない限り種雄牛の育成には6~7年を要する。
当面は保存中の凍結精液の利用か、家畜改良事業団などからの他力本願となる。
宮崎県の畜産は養豚を含めて未曾有の危機を迎えることになる。

短い角

2010-02-07 17:36:12 | 牛の角



写真の牛は生後26ヵ月令の黒毛和種雌牛である。
7ヵ月令で導入したものであるが、子牛の頃から角が伸びず、除角は実施していない。
現在では5cm程度で他の牛とは比較にならないほど短い。
通常雌牛は、去勢牛に比し、性格が荒く同房の牛に角を向けることが多々ある。
去勢牛は温順なため、除角することはないが、雌牛は導入直後に角の先端を切除して見たほどである。
写真の牛は角が短いために他牛を突くこともなく穏やかに育っている。
和牛の角は、良く伸びて黒くなるが、この牛は除角した牛のように肌色みたいな角質だけである。
この牛の角が何故伸びなかったかは、理解し得ていないが、この牛の姉に当たる牛も短く、兄に当たる去勢牛は通常のように伸びている。
何代祖かにそれらしき交配親がいたために、その遺伝子の発現なのであろうと想像を巡らしている。
管理上は、性質温順で管理しやすい優等生であるが、後は肥育成績が伴えば特等性なのだが。


堆肥の品質を守り続ける

2009-11-15 22:43:00 | 牛の角



今年になってから、堆肥調整用の原材料が減り、堆肥不足で困惑している。
その最大の理由は、牛舎の牛床用敷き料となっている大鋸屑の入手難と堆肥の販売が好調なためである。
当方は、原材料の厩肥を発酵槽に運び入れてから、100~120日間で4~5回切り替えて仕上げている。
厩肥だけでは、水分が多いため発酵に斑が生じ、品質に問題が残る。
そのため、当初の頃は、バークやダストを調整用に利用していたが、ダストは金属片などの混入や購入費が嵩むことなどから、若い担当者は、様々に思考こらし、人工シメジなどの廃菌床を利用開始し、ダストの使用を中止したが、仕上がり時に水分が抜けず、品質に問題が残った。
次に、養殖合鴨の敷き料に利用されている大鋸屑を堆肥調整材料として無料で導入し始めた。
大鋸屑の割合が約90%程度であることから、調整上では問題はないが、鴨に関わる敷き料を使うことに、鳥インフルエンザなどを案じたが、孵化からひよこ時まで外部環境との関わりが無く、鴨の養殖も外部との接触は無いことを確認できたために、使用に踏み切った。
同調整材料としては、安全性が確保できたことと、良質堆肥の調整と経費節減が実現している。
当方の場合、肥育牛1,000頭規模の施設であるが、堆肥発酵処理施設や設備等を95年に1億5千万円かけて設置したが、その内約50%を国など行政機関から補助を受け、残りはJAから近代化資金を借り受け、それが今年末で返済が終了する。
そのため、堆肥舎開設以来、およそ15年近くにわたり、年間750トンを地元の町へ無償提供し、この対価は、既に町から受けた補助金を上回っている。
発酵状態が良く、仕上がった堆肥は施設園芸や黒豆や水田などへの土壌改良等還元用に人気があり、販売用が不足している状況である。
農家側からは、不足気味であれば、多少発酵回数が少なくても大丈夫だからと言う話も聞くが、担当者はここで農家の言葉に甘んじてしまえば、次第に品質の低下を来たし、雑草等の発芽など将来に禍根を残す恐れを否定できず、これまで品質を信頼してきてくれている農家にしわ寄せとなって、挙げ句評判を落とすことになり兼ねないと担当者は頑なである。

導入雌牛の除角

2009-10-06 19:19:56 | 牛の角
             写真1




写真2




写真3




写真4




これまで導入牛の除角は、実施していなかったが、最近になり気性の荒い雌牛が見受けられるようになり、群中で他牛に突き傷を負わせる例数が増えてきた。
そのため、家畜市場から導入した雌仔牛について、除角することとなった。
可能な限り除角は不要であると言い続けてきたが、枝肉にそのためのアタリが出始めたため、被害を受ける牛のことを考慮して除角に踏み切った。
以前紹介した角カバーの導入も考えたが、常時同カバーを重しの如く被せておくことも忍びないこととして、導入をあきらめた。
除角には色々な方法があるが、最も簡便な方法により実施した。
導入直後に、角根部から約1cmのところを塩ビカッター(写真3)ですぱっと切り落とし、流血は除角用ガス式焼烙こて(写真4)を押し当てて止血した。
除角して2週間目の角の切断面が(写真1,2)である。
除角による食欲の減少などもなく、経過は順調である。
どちらかと言えば、雌牛は気性が荒いと述べたこともあるが、この状態は、繁殖雌牛の場合、飼料が制限給餌であったり、子牛がいるために、それらの確保や防除のためには現れる行動であるが、肥育牛の場合は、常に飽食状態にあれば、気性は穏やかになるが常である。
肥育牛の気性が荒い理由は、子牛生産現場における多頭化の影響ではないかと考えられる。
生後間もない時期から群飼いとなり、餌を確保するための競争が身に付いた子牛の中で、極端にその傾向の激しい子牛が、肥育に至ってもその癖が直らないためであろうと判断している。

無角種同様の除角

2009-09-08 18:59:32 | 牛の角







2枚の写真は有角と無角した子牛である。
写真上は、k大学の牛で、生後1ヵ月以内にガス除角器で除角し、アンガス種同様に完全に無角になっている。
写真下は、全く除角していない子牛たちである。
k大学の雌子牛は、繁殖用として更新されるが、繁殖用雌牛の場合は制限給餌であるため、必ずと言っていいほど競合が起きる。
また、親子が同じ群で飼育されるため、母牛らは子牛を守ろうとするため、性格が厳しくなり、大きめの子牛たちは、母牛らに狙われて突かれることが多々ある。
さらに、群飼いのために、母牛以外の親から盗み飲みするが、その様な時に角で怪我を負わせることがある。
つまり、性格的には去勢牛より、雌牛は性格が厳しい。
除角するのに、負担が小さい分娩直後に行うために、始めから無角であったように完全な除角(写真下)が実現する。
性格がおとなしい去勢子牛については、除角は不要と感じている。

牛の暇仕事

2009-08-28 19:56:55 | 牛の角



ウォーターカップで飲んでいる写真であるが、テーマは飲水の話でない。
角の話である。
被害が出て始めて気付くことはままあり、これまでも何度か述べてきた。
太めの牛房柵にしたが、思わぬことが意外と多発した。
導入舎であるが、月齢が進み角が10cm位に伸びた頃、角を折る事故が起きた。
当初は、どこに引っかけて折るのか気が付かなかったが、数回めに判った。
ウォーターカップの上方の横作に丸太を差し込んでいるが、この丸太は、角がパイプ内に入らないために差し込んだ写真なのである。
牛からは柵の外でもあり、まさか角をパイプに差し込むなどは考えてもいなかった。
ところが牛は暇だらけのために、何をしでかすか想像だにしないことをやってのける。
その様な時は、決まって良いことではなく、結果的に怪我などに繋がる仕草である。
この様なことの改善策は、自らで考えつくことではなく、牛に教えられることばかりである。




不味い除角

2009-02-25 19:40:46 | 牛の角
南西諸島や鹿児島県から肥育素牛を導入しているが、その雌雄比は1:9の割合である。
その雌牛の内7~8頭は、関係している生産牧場へ繁殖更新用として供用し、それらの更新対象の老輩牛は、再度当方に移動して約7~8ヶ月間肥育後出荷している。
10産前後分娩を経験した高齢牛であるが、枝肉重量450kg、BMS3~4、BCS5~6の枝肉により、単価800~1,000円で販売している。
これらの枝肉は、特定の購買者が待ってましたとばかり競り落としている状態である。




写真の牛は、95年生まれの繁殖雌牛であるが、96年夏南西諸島から導入し、繁殖用として供用し、繁殖を終えたとして再び当方へ戻ってきた老廃牛である。
ところが、当牛は、繁殖用に移動した際、除角したが、当方へ戻ってきた時に、除角後に伸びた右角が、頭部の耳の上側皮膚に突き刺さるように伸びていたため、獣医師に依頼して切断した。




突き刺さっている手前約1cmの箇所を鋸で深さ1cm程度挽いて、その挽いて出来た溝に線鋸を通し、左右の手で交互に挽いて角を切断した。
幸い、切断面には血管は無かった。
この線鋸を使用する理由に、左右に挽く際、かなりの摩擦熱が出るために血管があれば、止血されることを狙ったものである。
切断中は、結構加熱による煙が湧いて出た。




切断後の状態であるが、角は皮膚内に1cm余り突き刺さっていたが、これ以上ほーって置けば危険な状態であった。
その箇所には、乳房炎軟膏を塗布して終えた。
繁殖牛への中途半端な除角は、長年飼育するため、この様な事態に至る可能性がある。
家畜にストレスを与えないような管理を心がけたいものである。

大きな角と鼻環無しでも

2008-12-09 18:46:18 | 牛の角



写真の肥育牛は、そろそろ仕上がり間近の黒毛和種去勢牛である。
2頭とも堂々たる角をし、鼻環もないが、これらの牛は順調に増体している。
これまで、管理担当者らは、1,000頭規模の牛たちの削蹄や風邪の治療などのために何回か個々の房内に入り捕獲など接触しているが、負傷などの問題を起こしたことはない。
鼻環がないことで、痛みを感じないこともあり、容易く捕まる。

ただ、初任者の場合、牛たちとのあうんの呼吸が判らず、牛たちを驚かすことがあり、それらの管理法を的確に指導しなければ、問題を引き起こすことは考えられる。

短い角

2008-10-26 13:46:23 | 牛の角



生後月齢10.5ヵ月の雌子牛群である。
除角した如く、何れも短い角である。
何故角が短くなったかは、確たる原因は判っていないが、栄養環境と性別が雌であるなどが拘わっていると判断している。
以前、発育時の角は、その伸びに勢いがあることで発育速度も高いと記述したが、この様に角の伸びない雌牛は、確かに増体がやや鈍く、DG0.6程度で月齢的に若干小さい。
子牛育成時の摂取栄養量が不足したことが考えられる。
この様な素牛は、肥育しても、精々600kg未満と言うことになる。
肉質については、今の時点の腹作りに懸かっていると判断している。
育成時の栄養管理が如何に重要であるかがわかる。
この様な素牛について、肥育成績が気がかりであるが、20ヵ月後には報告できると思っている。