
黒毛和種雄子牛の去勢は、生後5~6ヵ月令で実施されている例が大部分である。
2枚の写真のように、去勢して、成畜に成れば、その形は千差万別である。
通常は、去勢した後には脂肪が蓄積して垂れ下がる例が多い。
たまには、写真下のように去勢後に脂肪が蓄積されず、垂れ下がることのないものもいる。
おそらくは、去勢方法によってこの様な形の差が生じるのであろうと判断している。
写真上は、挫滅により、下は観血去勢した場合であろうことが、その傷跡から想像が付く。
ところで、我が国では、雄子牛には種雄牛候補以外は、常識的に去勢を行っている。
ここで、去勢は何故必要かを改めて考えてみることとしたい。
以前、関連業界誌にも書いたことがあり、それを ここでも記述する。
①牛の筋繊維には赤色筋繊維と白色筋繊維があり、赤色筋繊維の割合が多いと肉は硬く、少ないと柔らかい性質がある。去勢すると白色筋繊維が増加するため、肉は軟らかくなる。
②牛肉は結合組織が多いほど、肉は硬い性質があり、去勢すると同組織が肥大し、数量が減るために肉は柔らかくなる。また、肥大した同組織には、不飽和脂肪酸が蓄積しやすい。
③去勢すると雄性ホルモンが減退するため、牡相から牝相へと変化し、性格が穏和となる。穏和になることにより、飼養管理がし易くなり、群飼養が可能となる。また、穏和になれば過激なエネルギーを消耗しないため、飼料効率が良くなる。
④牝相に変化すると骨格なども細くなり、筋肉歩留まりが高くなる。
⑤穏和になるとと殺直前に過激な動きがなくなり、ダークカッティングビーフ(筋肉に血斑が残る現象)に成りにくい。
その他、去勢によるマイナス要因もある。
それは、雄性ホルモンの減少により、成長が若干抑制されることと、そのために、雄牛の成熟値が去勢されることで小さめとなる。
要するに、去勢することは、肉のうまさと密接な関係にある柔らかさや不飽和脂肪酸が得られることと、飼料効率が良くなり、飼養管理がし易くなるなど、良いとこずくめということである。