牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

穀類の消化について

2010-06-28 16:16:53 | 飼料


肥育牛の糞に穀類がそのままの状態で排出されているというコメントがあった。
今から凡そ50年前、日本で若齢肥育が始まった頃は、麦やトウモロコシが未消化のままではあったが、DGは順調であった。
圧ペンと粉砕では、粉砕の方が糞中へ多く見られた。
そこで若齢肥育牛を用いた消化試験が再々行われた。
その結果、未消化の状態であっても、穀類のTDNなどは消化されたものと同様であった。
肥育牛の糞は見た目には未消化でも問題ないとの結論であり、糞の状態をして、これが肥育牛の糞であるが一般的であった。

ところが最近、肥育牛の糞から未消化のままの穀類が無くなった。
これは、単味飼料の加工の仕方が改善されたためである。
四国に本社のあるO社のトウモロコシはアルファー化(加熱処理等によりデンプンの結晶構造がなくなり、糊化すること)処理により消化し易いことで定評がある。
また麦類も圧ペン加熱処理されており、糞中に穀類が未消化のまま見かけることは少なくなった。
コメントのケースは、穀類がアルファー化されていないことが予測できるが、気がかりであれば、同処置を行った穀類の利用を勧める次第である。

収束なるか

2010-06-26 20:11:33 | 牛の病気
今日のニュースでは、7月16日を目処に宮崎県で発生中の口蹄疫の収束宣言が出される見通しとのことである。
今後予定通りに収束することをひたすら願うのみであり、全ての畜産関係者も同様な思いであろう。
今後はこれから3週間かけて、宮崎県の牛や豚などの飼育関係者が再発しないよう万全に取り組んで貰いたいと願っている。
今回の宮崎県における同症の発症にかかる感染経路については、同症感染調査委員会におかれては、順序立てて、正確に公式発表されるであろうが、それを国民の大方が願っている。
10年前の前回は、その感染経路は不明で、おそらく中国産の麦わらであった可能性が高いというものであった。
日本の畜産関係者が利用していない麦わらであれば、混乱は招かないであろうとの姑息な発表であると当時感じたものである。
今回は、そのような姑息な調査結果は許されるはずはない。
同調査委員の専門家が報告されている新聞論調では、川南町内でも発症施設から僅か200m離れていた畜産農家であったも感染していない例があったそうである。
その農家がなぜ感染しなかったかを調べたら、感染直後トラクターなどの自家保有の機械類を玄関までの通路に並べて、人の出入りを塞ぎ、自らもご子息が食料調達に1回外出しただけで、出かけることを2ヶ月間我慢した結果であったとのことである。
この記事を拝読し、感染は人が介在していたことを改めて思い知らされた次第である。
調査結果には、このような感染防止対策についても、詳細な報告を改めて期待する者である。
これからは写真のように、牛らも安心、人も安心して牛らと関わっていきたい。

鼻環は新たに付けることはない

2010-06-26 00:39:18 | 牛の鼻と口



この写真は08.04.02に貼り付けたものである。
導入時に付いてくる鼻環は付けたままか、という問いがあった。
当方では、肥育牛舎の構造が育成用・仕上げ舎用と別々に建てられていて、育成期が終了後は全頭仕上げ舎へ移動している。
また、移動時などに削蹄を行う必要もあり、どちらかと言えば鼻環があった方が捕獲や保定などには楽である。
だから、付いてきた鼻環は外してはいない。
しかし、宮崎産の真鍮(しんちゅう)製の鼻環以外は、肥育途中でかなりの割合で摩耗して外れてしまうが、再装着することはほとんど無い。
有るとすれば、捕獲時に飛び上がるなど突飛も無い行動をとる牛に限られ、年に1度あるかないかである。
鼻環は無ければならないというものでもない。
鼻環がない方が楽に捕まえられ、写真のようにロープを掛ければ全く支障なく管理できる。

公共牧場や特定の個人牧場などで、人慣れせず、よく走り出す子牛を出荷してくる箇所があり、長い間牛飼いしていれば、それらの牧場が特定できて、次第にセリボタンを押し難くなる。
また和牛の飼育の歴史が、比較的浅い地方の場合も、人慣れしていないケースがある。
人のためにある家畜なのだから、もの扱いではなく優しく接してほしいものである。
牛に接していて、自分の足を踏まれたり、尾で顔を叩かれたりしたら、反動的に牛を殴る若者が居たことがある。
「罰当たりなことをするな! おまえさん誰のおかげで生活ができていると考えたことがあるか」と叱咤したことがあった。
最近、牛を殴るのを見かけなくなった。


鼻環を掛ける

2010-06-24 23:44:39 | 牛の鼻と口
時折育成牛が奇声をあげて泣き出すことがある。
慌てて現場に駆けつけると、大概は鼻環を柵などの取っ手などに引っかけた時である。
写真は、ウォーターカップの僅か3mm程度の窪みに鼻環が掛かった瞬間である。
牛自体が鼻環を僅かに緩めれば、難なく外れる状態なのに、外そうと後すざりする一方である。
後ろに回って尻をぽんと叩いたら、楽に鼻環は外れ、何もなかったように平然としている。
牛を飼育していれば、大多数の現場で同様の体験をしておられるはずである。
牛らは考えられないような状態で、このようにトラブルを起こす。
扱いを間違えれば、鼻環で鼻鏡を引き裂いてしまうこともある。
それだけ、このようなことのないように担当者が事細かに配慮してやらねばならない。
いっそのこと鼻環を装着しなければ起こりえぬことではあるが。
育成牛は鳴いて騒ぐが、成畜になれば奇声を出さないケースが多い。
よくもこの高さまで届いたものだと思うような所に掛けてしまっていることもあり、大方は牛の行動の意外性に舌を巻くことしきりである。

一大関心事

2010-06-22 23:56:21 | 予防治療


山間にあれば、写真のように昼間から、うり坊やバンビらが畜舎内に群らがる。
夜間になれば、これらを引き連れた成獣らが同様に群れることになる。
そして肥育用の稲わらを踏み散らし、おまけに糞や尿をやたらと置き土産にしていく。
彼らの襲来を受けて、舎内の牛らは興奮してざわめきたてる。
肥育末期であれば、その騒動のあおりを受けて心不全を起こしかねないのである。
敷地面積が5haもあれば、周囲をシシ除けネットで囲むのは、採算割れの現状では、ままならない。
この状況が宮崎県児湯郡であればと想像すれば、空恐ろしい状況を伺い知ることとなる。
猪や鹿など野生動物への口蹄疫感染は防止処置がなされているのであろうか。
最悪の場合、野生動物や家畜の絶滅につながりかねない大問題となる恐れを払拭できない事態を、しかるべき機関関係者は念頭に有るであろうか。
危惧すべきことであり、伝染性疾患が罹患していない時から真剣に対策を行うべきであり、国民の関心を啓発すべきではあるまいか。

今日のニュースから

2010-06-19 20:39:13 | 予防治療
今年4月20日に宮崎中央から導入した牛たちである。
導入時、全体的にやや背幅に欠けた感はあったが、導入以降乾草や発酵飼料などの食欲は、実に旺盛で順調に発育している。
導入日、導入先のことがあり、独自の防疫体制を布いてきたが、幸いなことに口蹄疫に関しては現在のところセーフであったと判断している。
家畜保健所からの指導もあって、約50日間日報的にFAXにて報告してきたが、現在ではそれからも解放されている。
しかし、現在でも、消毒や人や車などの出入りの制限は以前と変わらない。
一方、本日その宮崎中央市場管内においても口蹄疫発生のニュースが流された。
同症の感染拡大件数が一頃よりは減り、次第に沈静化の方向であろうと予想していただけに、同地では牛に関しては新たな事例であり、私だけではなく、地元関係者は勿論、これまで同地域から素牛を導入された購買者諸氏も残念な思いであろう。
今回は、発見から処分までの対応が早かったことから、他への蔓延は塞げたであろうと祈る思いである。


尿管バイパス

2010-06-16 18:56:21 | 牛の病気


肥育牛に関わりを持たれている獣医師諸氏には、何の写真であるかは明白であろう。
尿道結石症で尿が出なくなった去勢牛の尿管にバイパス手術を行ったもので、そのバイパスの放尿口の写真である。
この放尿口は、肛門から約15cm下に位置している。
同症の発見が遅れ、回復させるにはバイパス手術しかないと、ベテラン獣医師2名により施術が行われた。
手術は順調に経過したが、手術箇所が複雑な構造からなっているため、2時間程度かかったが、バイパスのパイプから放尿も順調に経過したため、数日後パイプを取り除いたものである。
本来の包皮からの放尿ではないため、尿が皮膚を伝わることになる。
下方の色が変わっているのは、やたらと放尿することから湿っているためである。
本来、このような手術を受けることの無いようこまめな監視が必要である。

安眠中なのか気になる

2010-06-16 00:18:02 | 肥育


家畜を管理していれば、いつかはそれらとの決別がある。
彼らの生命を犠牲にしながらの経営でもあると認識し、日頃から常に一抹の思いを持ちながら、尊い畜魂への感謝と供養の日々である。
口蹄疫の感染拡大により、罹患したもの全く関係のないものたちを見送る畜主らの無念さは、如何ばかりかと、日夜思わずには居られない。
このところ、日々の発症件数が数例と一頃よりは減りつつある。
このまま終息へと向かってくれることを願うのみである。


さて、家畜を飼っている畜主にとって、早朝の見回りは、いつもある種の緊張感を抱きながらの巡回である。
繁殖経営であれば、子牛が生まれていたりして、その初対面や無事で生まれたことに感動や喜びを味わうことは多々あろう。
しかし、肥育の場合は、朝の見回りで繁殖での感動を味わうようなことは先ず考えられない。
もしあるとしたら、どのような生き物と関わっていても経験することであるが、ぐったりとして或いはもう助からないと宣告された患畜が、早朝頭を持ち上げて、耳をぴくぴく動かしていたりするものなら、それまでの不安が一蹴され、喜びと感動に変わることである。
家畜との毎日は、罹患しているかいないかの様子伺いに尽きるのである。
写真はまさしく安眠状態の肥育牛の様子であるが、初めにこのような光景が視野に入った時、「よく寝ているな」などと思うことなど一度もないのが実感である。
「おいおい! 息しているか?」と大きな腹容の鼓動を確かめることになる。

牛は発泡酒が好き

2010-06-14 23:32:17 | 飼料





肥育育成用のビール粕の話である。
滋賀県高島市で製造されている「エクセル」という発酵飼料であるが、これまで、キリン一番搾りから出るビール粕が主原料であったが、この春から発泡酒粕に変わった。
見た目にはさほど変わらないが、写真上がその製品であり、下はそれを採食中の様子である。
従来品より、風味がよく食いつきが良くなった。
ビールと発泡酒では用いられている麦芽の割合が異なり、ビールは50%以上、発泡酒は50%以下とされ、実際は20数%が一般的とされ、発泡酒の場合、その分麦芽以外の原料が多く使用されていて、含まれる粗タンパクが若干多いようである。
そのために、心なしか食い込みがよいのかもしれない。
これまでは、1頭1日あたり、精々3kg程度の摂取量であったが、5kgを食い込む牛もいる。
我々は、気分的にビールの方を好んでいるが、牛らは発泡酒粕の方が嗜好性が高いようである。
ただし、気温の上昇時は、発泡酒粕の方が若干カビ易いような気もしている。
肥育前期用の配合飼料だけより、同発酵飼料を与えることで、整腸効果がある。

肺炎

2010-06-12 01:25:41 | 牛の病気


いつもの年であれば、そろそろ梅雨入りの頃であるが、今年は気象異常のようである。
日ごとに寒暖の差があり、特に子牛らには自律神経の制御が出来辛いらしく、このところ時折、風邪になったり発見が遅れれば肺炎になったりの症状が診られる。
写真は、体温41℃で肺炎症状の子牛である。
頸や両耳が垂れ下がり、一見して発熱症状であることがわかる。
二日前に高熱で治療をして、その夕方から食欲が戻ったため、その翌日は回復したものとして、治療をしなかったところ、今朝になって写真のような様子となり、あわてて治療に入った牛である。
このような治療経過の場合は、当初から二日間連続治療しておけば問題は起きなかったはずであるが、肺炎に至れば完治まで数日はかかる場合が多い。
折角早期発見してくれたのに、残念なことであり、これで10日間は順調な増体期待できないことになった。
このようなケースでは、その後の肥育経過に影響を及ぼしかねないのである。
治療中は、完治まで念入りに診る必要がある。