最近、父親から繁殖牛の管理を任された若者から電話があり、「2月の子牛市に出すのに、餌をなかなか食い込んでくれないが」というものであった。
詳細に聞いてみると、生後数ヶ月目の頃から、乾草と稲わらを半々にして与え、子牛育成用のペレットを与えているという。
粗飼料を与えることはよいが、競り市以前に稲わらを与えていることに、食い込みの悪さの原因があると判断した。
最近の子牛の管理については、以前ブログで紹介したが、3年前だっか、徳之島で200頭近い繁殖牛を家族で管理されている牧場を見させて頂いたことがある。
其処では、生後数日で離乳して、その後3ヶ月間は哺乳ロボットで保育していた。
この間、粗飼料は一切与えず、人工乳と哺乳時用のペレットのみで育てていた。
人工乳には、下痢防止などの添加剤が混ぜられており、殆ど下痢や肺炎などに罹らないとのことであった。
数10頭がいるクリープ房が2箇所有り、それぞれに一箇所の哺乳ロボットが設置されていた。
子牛たちには、ロボットが哺乳量や哺乳時間などを感知させるためのセンサーが装着され、一箇所のロボットに向かって子牛たちが、一列横隊に順番を待っている。
センサーで個体管理が出来ていて、決められた量を飲んでしまえば、ストップされ、順番を割り込んでも、その授乳時間が来なければミルクは出ない仕組みになっている。
次第に、子牛たちはその仕組みを学習するようになり、実に上手に授乳していた。それらの様子は、見ていても楽しくなるような光景であった。
3ヶ月間は、胃袋の中に異物や雑菌などを入れないために、粗飼料を与えない。
人工乳とペレットのみで、胃内にストレスを与えないことから、胃も順調に発達し、子牛も順調な発育をするという。
3ヶ月が過ぎてから、良質の乾草を徐々に与え、増量して粗飼料の利用性を高めることで、ルーメン内環境が順調に発達して、健康な状態で順調な発育が得られるというものであった。
子牛を母乳で育てれば、子牛は生後1月も経てば、母牛の餌を食べることから始まるケースが一般的である。
この様な場合は、生後1~2ヶ月経った頃から子牛専用の飼槽で哺乳時用のペレットを置き餌として慣らし、3ヶ月目から良質の乾草を与える。
子牛市に出す頃までの子牛には、乾草を2~3kgを食い込むようにして、育成用の配合を過食させない程度に与え、繊維が荒く、タンパク質(DCP)の少ない稲わらの給与は、胃に負担となり効率の良い給与法とは言えない。
肥育素牛となった子牛たちには、仕上げ用配合飼料を給与開始する生後15ヶ月目までの粗飼料は、乾草のみとするケースが一般的で、その後から徐々に稲わらに切り替え、1月くらいで本格的に稲わらだけを与えるようにしている。
だから、若者が稲わらを子牛に与えているというのは、乾草だけの場合より、胃にストレスと成りやすく、発育が劣ることになる。
導入牛の中には、乾草よりも稲わらを好んで摂取する子牛がいる。
この場合も、早い内から稲わらが与えられているためであろうと判断している。
乾草を順調に食い込んでくれないと、優れた素牛ではないのである。