牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

最高級牛肉ア・ラ・カルト

2008-12-18 00:59:46 | 牛肉



最高級和牛すき焼き肉であるが、よくよく見ると素晴らしい芸術品である。
実に美しい霜降り様斑紋である。
この様な芸術品は、なかなかお目にかからない。
この芸術品の含有脂肪量は年々増加傾向にあると言われている。
またこの芸術品は、年間数十万頭の出荷牛の中で、数百頭しか出現しない。
これくらいの出現率だから、希少価値として珍重がられる。
これは黒毛和種だけがその能力を有し、世界に類を見ない希有な能力であるとされている。
この芸術品の発現を期待して、購買者は法外な価格で子牛を落札する。
この夏だったか、鹿児島では、去勢牛で104万円が出た。
現在の市況平均であれば、2.5頭分に相当する。
おそらく、著明な枝肉共進会をターゲットとしての目算があってのことであろう。
その牛が、目論見通りに芸術品となることを願うが、結果は肥育が終了し出荷してみないと判らないのが、肥育の世界である。
子牛価格が50万円クラスでも芸術品は発現している。
現況では5等級、少なくともBMS値7以上で、枝肉重量が500kgを目指すことで、赤字からは逃れる。
それ以下ではほぼ赤字を免れない。
去勢牛の若齢肥育が普及し始めてから、およそ45年になる。
以来、国内外の産業界も研究機関も脂肪交雑に関する研究を持続している。
しかしながら、その成果が肥育現場で実用化されるまでには至っていない。
脂肪交雑に関するBMS値などの平均数値が年々上昇していることは事実である。
それらは、アニマルモデルなどの育種の手法が生かされて、経年的に優秀な種雄牛が作出され、その結果、年々優秀な産肉能力を有するそれらの産子が出現していることによろう。
希少価値的な芸術品であるが、様々に好転してこれが、仮に全体の数十%の割合までを占めるようになれば、その価値自体が下がる可能性が高い。
そうなれば、そこで問題となるのは、芸術品は単なる食材なのか、最高の食材なのかである。
それにしても芸術品は、柔らかく、肉汁が多く、これぞ霜降り肉の伝統の味で、最高級の美味しさや風味を持ち合わせていることだけは確かである。