牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

断水

2011-05-31 22:00:47 | 牛の管理


朝から牛らがやたらに鳴いている。
断水であった。
山間の沢に直径と高さが1mのコンクリート製円筒形土管に直径15cmの塩ビパイプ部で流れを誘導して溜め、そこから直径10cmのパイプによって約2kmの当センターの貯水槽へ送水して溜めて、それぞれの畜舎で牛用の飲料水としている。
台風2号の影響から大雨警報が発令されるほどの豪雨のため、沢が増水し塩ビパイプが石やゴミで詰まって貯水槽が干上がってしまっていた。
早速に沢を見回り、塩ビパイプの取り入れ口を掃除すると、土管からは勢いよく水がオーパし始めた。
同時に土管からは順調にパイプを通して送水し始める。
しかし、牛らがウォーターカップで飲めるようになるまで、約半日間を要した。
写真は、断水のためにほとんどの牛がウォーターカップの水の出を鳴きながら覗き込んでいる様子である。
今年は、冬は大雪のために杉が倒伏して、この水を止め、今度は起き始めたばかりの台風がらみの豪雨が水を止めるなど、牛らには水難の多き年になりそうである。

カラスの害

2011-05-27 19:10:53 | 牛の病気


人里離れた山中に立地する肥育センターは、牛を肥育するには素晴らしい環境であると自負してやまなかった。
ところが、カラスの大群にとっては、これ以上の素晴らしい環境はない様である。
周囲をナラなどの大木で囲まれていて、カラスにはねぐらにもなり、待避所にもなるからである。
そろそろ、雛を育てるシーズンになったのか、又ぞろ仕上げ牛のロース辺りをつつき始めた。
育成牛をつつくことはない。仕上がり状態の良好な牛の背腰、つまりロースめがけて、深さ数センチの穴を開ける。
薬の付いたガーゼなどを詰めても、外してしまう。
バスタオルにひもを付けて四肢にくくりつけても、牛自身が、いやがって外してしまう。
様々な忌避効果を確かめたが、お手上げ状態である。
畜舎の周囲の開いた部分をネットでカバーする計画中である。
畜舎への出入り口は、ネットで塞ぐわけにいかないため、上げ下げのブラインドのような装置を付ける予定である。
この程度の傷が出来ると、ロース(エ)つまりアタリの格付けとなり、枝肉単価が20~30%程度値引きされる。
噂に過ぎないが、カラスは狩猟の対象になっていないと聞いたことがある。



畜産振興機構

2011-05-25 21:21:13 | 雑感


民主党政権になって、様々な政策の改革(?)が行われている。
肥育生産者が、経営難時に備えて積み立てているマルキン事業も、新規に組織化された(独)農畜産業振興機構による直接加入制度が始まり、その説明会が実施された。
地域畜産振興協会が主催し、東京にある同機構本部職員からの説明があるとの連絡を受けて参加した。
驚いたことに、同機構職員は当然男性であろうと思いこんでいたところ、主客席には、若くて美貌の二人の女性が着席して我々を迎えてくれたのである。

基本的には、これまでのマルキン事業の主旨にそうものであるが、同機構に生産者が直接加入するには、従来地域畜産振興協会を窓口として加入している同事業は解約して、新規契約をしなければならない。
その場合は従来加入で、出荷以前で発動以前のものについては、積立金はパーとなってしまう。
そのような、無駄をなくするわけにはいかないために、平成24年までは従来どおり継続が可能であるという。
しかしながら、平成25年度とそれ以降の取り組みについては、未決であるとのことであった。
個々に微細な改善点はあるが、主なものに、生産者が複数の異なる道府県に肥育場を有している場合、これまでは立地する県ごとにマルキン事業を加入せざるを得なかったが、同機構へ直接加入することで、道府県の枠が外れることになる。
しかし、生産者の加入目的は同一であるにも拘わらず、マルキン事業の窓口が2本立てとなり、生産者には複雑な制度となった形である。
政権が変われば、再び同制度が変わるのだろうか。

和牛繁殖農家を訪問

2011-05-21 18:34:50 | 繁殖関係


黒毛和種の繁殖牛を10数頭飼育している生産者を訪ねた。
「昨夜一杯飲んでいる間に、雌が生まれていた」と言うことであった。
稲ワラを主としてイタリアンライグラスの生草や乾草を3分の1程度混ぜて与え、濃厚飼料は一般ふすま1kgに繁殖牛用の配合飼料を500g程度あたえていた。
この給与法は、配合飼料を僅かずつでも与えていることが、正解であり、自家産粗飼料だけや単味飼料だけでは、各微量要素に欠け、食欲不振や下痢、繁殖傷害を起こす可能性が高い。
市販の配合飼料には、それらが混合されているために、少量でも毎日の給与であれば、十分に補足されていることになる。
子牛の毛色が真っ茶色というケースもあるが、そのようなケースでは、ミネラル不足が考えられる。

もう一つ気がかりなことがあった。
雌牛の人工授精記録が一覧表にして掲示されていた。
それには、母牛名と人工授精日、交配精液名などが横軸に記録されていた。
人工授精の際、交配精液はどうして決めているのかに対して、人工授精師が勧めるままに実施しているとのことであった。
母の父勝忠平、母の父の父平茂勝に百合茂を交配したケースもある。
人気牛を並べる根拠を聞いても、「これなら良い」としてOKしたという。
挙げ句、雌が生まれたら但馬系の精液を交配するための交配であれば、全くの無意味ではなかろう。
地元の改良組合などで、その辺の勉強会を開くなど、地元産の和牛改良のための指針作りの徹底が必要であると感じた次第である。
ちなみに、一覧表であるが、母牛の次には母の父、母の父の父を加えて人工受精時に参考にしたらどうかと蛇足を加えた。



乾草取り入れ

2011-05-20 23:08:42 | 飼料


ゴールデンウィーク明けになれば、イタリアンライグラスの穂が熟し、ヘイレージ調整の適期を迎える。
ところが、今年は3~4月の低温の影響から、10~2週間遅れで、その適期を迎えたという。
以前、勤務していた牧場の乾草調整の話であるが、今週になって刈り取り適期となり晴天日に恵まれ、総動員で収穫に当たっていた。
晴天のあまり、ラッピングロールべーラーに調整するには、やや乾き過ぎだとのコメントであったが、何はともあれ、100%取り込むことが重要であるために、晴天日のうちに収穫を終えたいとのことである。
ここでは、約60頭の黒毛和種の繁殖雌牛に、このヘイレージを飽食給与している。
そのために、繁殖障害もなく、順調な成績を上げているようである。
合わせて、肥育を行っているが、育成期にヘイレージを飽食していることが、肥育成績にも効果となっていて、最近出荷した中には、ロース芯面積が80平方センチもあったと、自慢たらたらであった。
結構なことである。
約200kgのロールべーラーを2,000個作るを目標にしていた。
このような風景を観ていると、牛ならずとも牛飼いとしても癒される。



牛ヘルペスウイルスⅠ型

2011-05-17 20:44:34 | 牛の病気


最近、農済の獣医師から、法定伝染病の牛ヘルペスウイルス1型が発生した牧場があるので、感染しないように留意するように促された。
聞き慣れない伝染病であったため、関係資料があったら見せて頂くように依頼した。

暫く体調を崩して、文字離れしていたために、今宵はカンニングである。


頂いた写真入りの資料から、以前同症は、IBRと称されており、現在はBHV-1とも称されているようである。
同症の症状には、鼻気管炎などの呼吸器型、角膜結膜炎(写真)など眼型、陰門膜炎、亀頭包皮炎、流産、腸炎、髄膜脳炎など様々な症状の型が診られるという。
一般的によく見られるのが眼型で、高温(40~41℃)を伴い、ピンクアイに似て瞼が腫れ、結膜が充血し、多量の流涙や眼球に白濁が診られるようである。
同症の判定は、家畜保健衛生所により血液採取によるが、最近は検査機器の発達により、半日程度で結果が判明するそうである。
同症に判定されても特効薬はなく、二次感染防止にカナマイシンやテトラサイクリンなど抗生剤を投与する他ないとある。
当方では、過去に同症の発生を診ていないが、導入先が複数の生産地であるため、些か不安感はあるが、発症しないことを祈るのみである。
本来、子牛生産地で、全頭5種混合ワクチンを摂取しており、この5種の中に同症のワクチンも含まれているが、同抗体反応は個体差があり、全頭100%ワクチン効果があると過信は出来ないようである。