牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

スクープ写真

2011-08-01 22:11:09 | 牛の躯






一時にんまりしそうになる写真を貼り付けた。
本日の昼休みのことである。
熟睡中の去勢牛の生理現象の様子であるが、希有なシャッターチャンスである。
被写体は、寝たまま囂々と長々と放尿しており、つまり、お寝しょの様子なのである。
この様子を正面から覗き見するなどは悪趣味で、人なら犯罪行為だろう。
が、牛らの場合は健康観察の一端であるからには、これは許容できる貴重な光景である。
人の場合同様に夢心地で爽快感を味わっていることであろうか。





黒毛和種の毛並み

2009-12-09 23:32:07 | 牛の躯



写真は、H20/9に導入した黒毛和種去勢牛の被毛の状態を撮ったものであるが、肩から腰角付近にかけて、砂丘の風紋様に波打っている被毛の状態である。
被毛に触ってみると、被毛は細く蜜食していて実に柔らかい。
30~40年前の頃に、兵庫県美方産として導入されていた和牛に、この様な毛並みをしたものが結構いたことを思いだした。
現在1,000頭程度いる中で、この様な毛並みの牛は他には見あたらない。
この牛の父親は北国茂(北国7の8、糸光、静)
母は美津照(美津福、 照長土井、 第2安鶴土井)
母の母の父は平茂勝(第20平茂、宝勝、福花5)であり、父が糸系、母は但馬系、母の母の父は鳥取系であり、適度に様々な血液が混ざり合っている。
この毛並みの良さは、母親の遺伝子を強く受け継いでいると思われる。
それが正しければ、優れた肉質を潜在的に有していようと目下期待しているところである。


鰻線のある牛

2009-10-13 19:27:10 | 牛の躯



牛の背腰の中心線だけが、写真のように本来の毛色ではない色で筋状となっている牛を最近は余り見かけなくなった。
60年頃には、珍しくないほどこの様な牛はいたものである。
このような筋状を鰻線と呼んでいる。
これも、明治期における外国種との交配によるもので、その改良速度が遅れている牛に鰻線は出易いと習ったものである。
子牛の頃には、差ほど目立たなかったが、肥育後半になって鮮明に現れた。
先のコメントにもあったように、肉質には差ほど影響しないようである。
鰻線の存在がどうのこうのではなく、今ではその様な子牛を欲しがる購買者もいたりする。
赤茶けた毛色の子牛を好むように。
タイプ的には、良好な肥育成績になるような仕上がり具合であり、楽しみにしている次第である。

鋏で削蹄する

2008-04-18 19:57:22 | 牛の躯
肥育牛の蹄(爪)は良く伸びる。伸びた爪は間髪入れないで削蹄(爪切り)しなければ、体調不調を来す。その結果、目算したとおりの体重までに至らない。高価で導入する子牛に、削蹄を見逃したために欠損に至るなどは、当初から肥育を手掛けること事態、間違いである。
さて、肥育牛の削蹄は、育成牛であれば意外と容易いが、体重が大きくなったり、恐がりの牛などは、かなり苦労する。重労働での作業となる。本来削蹄用の鎌で削るのが一般的である。四肢を持ち上げて保定するなど、かなりの経験が無ければ、その分、難儀する。
そこで、足を持ち上げず、立たせたままで削蹄する方法を取っている肥育センターがある。専用の鋏による削蹄である。鎌による削蹄ほど正確には出来ないが、肥育牛には、何ら問題ない方法である。写真の鋏が削蹄専用である。


伸びすぎた去勢肥育牛の蹄


専用鋏で削蹄する。


削蹄が仕上がった蹄。


削蹄で切り落とした伸びていた蹄。

子牛の強弱を見抜く

2008-04-16 19:33:41 | 牛の躯
牛は繁殖用の雌牛でも、肥育する牛も足腰の強いことが飼育目的を的確に果たしてくれる。子牛の時から良く運動をさせ、四肢を鍛えておく必要がある。
最近は、多頭飼育が主流になってきたが、その生産者により、それらの差が出ている場合がある。閉じこめた小さな囲いの中だけで飼われてきた仔牛は、運動不足や、競合により四肢を痛めるなどから、四肢の弱い牛がいる。
肥育牛の場合、四肢の弱い牛はどうなるかである。まず、姿勢が悪くなり、蹄の形が変形し、歩様も悪くなる。この様な牛は、700~800kgの体重を支えきれない。
四肢の弱い牛は、四肢の姿勢が前のめりとなり、牛の動きが鈍く、次第に食欲が減退して、仕上げまでに至らないケースもある。
四肢の悪い例として、子牛の頃からアシドーシスなどの疾患がもとで血行不足となり、蹄が浅く丸くなり、蹄が伸びやすくなり、次第に食欲不振となり易い。
写真は、手前が四肢の弱いタイプ、奥側は四肢がしっかりしている例である。



写真は、生後10ヵ月令の去勢牛の後肢であるが、左は、ツナギ(蹄の上側)が強く正常な肢である。右は、ツナギから蹄への角度が直角ではなく、前のめりで、この様な形のものは、肢が弱い典型的なタイプである。この様な牛は、早め早めの削蹄で歩様が異常にならない対策が必要である。
家畜市場では、四肢の弱い子牛の見極めを的確にしないと、この様な子牛を落札したら、確実に欠損になる。子牛を選ぶ重要なポイントである。

子牛の見方 後望

2008-04-15 19:22:11 | 牛の躯


子牛の見方を後方からみて、その良し悪しを判断するため、生後10ヵ月令の去勢子牛について、その対照的な写真を掲載した。
写真左は、腰角幅、尻幅、カン幅、腿の外腿と内腿の充実具合や下腿の充実など、素牛に選ぶ良い条件を備え持った牛である。
写真右の場合は、腰角幅に乏しく、尻が側方にも後方にも傾斜角度が付きすぎている。そのため、カンの位置が若干低めにある。腿は外腿がやや窪んだ状態で、後方ほど左右の厚みに欠けている。内腿の充実にも欠けている。総じてこの牛の後躯はボリューム不足である。実際に家畜市場では、この牛以上にボリューム感のない子牛も見かける。最大限の枝肉重量を重視するなら、右の写真のような子牛を選定する。しかし、如何なる子牛であっても、素牛価格が高いなりに、低いなりに肥育すれば仕上がる。問題は、購買者が、それぞれの子牛の肥育能力相当分の競り値を決める判断能力を収得することが肝要なのである。

子牛の見方 側望

2008-04-14 22:12:10 | 牛の躯
肥育素牛の善し悪しについて、牛の側望から見た対照的な写真を示して説明する。
上下の写真は、生後10ヵ月齢の去勢子牛である。
写真上は、首が長く繊細で厚みがない。肩はほぼ垂直で弱い肩付きをしている。胸は狭く、肩との移行が良くない。肋骨の張り方が下方後方へ斜めで、肋張りが悪い。腹部は後方の腰角方向へ切れ上がり(切れ上がった箇所を下ケン部という)、腹容の無さが見て取れる。尻の形状は左右と後方への傾斜が目立ち、尻の幅の無さや形状が悪い。腿は上腿・下腿ともに幅と厚みに欠ける。
この牛の側望からは以上のような判断が出来る。つまり前がちな体型をしており、前がちについては、以前説明した。
余談であるが、腹の中央辺りで下方へ体毛が垂れている箇所を包皮と言い、雄や去勢牛は包皮から放尿などをする。ちなみに雌牛は、尾根部の後方直近に放尿箇所があり、雌雄でその位置が異なる。
次に、写真上の牛を一見して気づくことがある。全身から生気が感じられないことである。毛艶の無さも感じられる。つまり健康上に何らかの支障のあることが伺える。それを如実に表した箇所がある。腰の直下で腰角に面した前側が大きく窪んでいる。窪んでいる箇所を飢凹部と言うが、飢凹部が窪むと言うことは、満腹状態ではなく、かなり食が細いことを表している。そのために、体力的なパワー不足に至り、生気がない理由になっている。この様に旺盛な食欲の無い牛は、素牛としてはかなりの問題がある。この様な子牛は、健康上の起因を診断治療してから、セリに出す必要がある。内臓的疾患、寄生虫などをクリアすべきである。



写真下の子牛は、上の子牛とは対照的に体各部が良く充実し、全体的なボリューム感が見られる。飢凹部の位置すら確認できないほど豊かな腹容をしている。このことは、旺盛な食欲があることを意味している。被毛にも艶があり、健康を裏付けできる。当牛は、体型発育面で、支障が認められず、肥育用には、抜群な素牛である。





牛の背中の名称

2008-04-14 00:21:59 | 牛の躯
牛の背中、背腰とその前後にかけて、写真に図示したように、肥育牛の品質が象徴的に評価される筋肉である胸腰最長筋、つまりロースが脊髄の両側に2本並列している。
そのロースを最大限大きくするには、最大限飼料を摂取させる必要がある。
そのために必要な部位が肋腹である。
肋腹は、200リットルドラム缶1本以上を収納する消化管が余裕で機能可能なものでなければならない。
そのためには、肋骨の張り方が前後に振れなく下方に垂直で、肋間幅が広い方がよい。
また肋から下方へ移行している腹は、肋からの移行が良く、写真の牛のように形良く余裕があり、多量の餌の摂取に耐えられる大きな腹容が望まれる。
ロースの生産を象徴的に肋腹を取り上げたが、飼料の摂取能力が高ければ、牛全体の各部位の増大に深く拘わりがあることは、当然のことである。
写真の牛は、肥育開始後約1ヵ月目の去勢牛であるが、体幅、つまり肩幅、胸幅、肋張り、腹容、腰角・カン幅、尻幅の全てが充実している。
背幅や腰幅、それらの厚みと長さもあり、ほぼ理想的な体型であり、生後30ヵ月齢到達時には、体重は900kg以上が期待できる。
この様なタイプの素牛が理想的である。



素牛の尻の善し悪し

2008-04-12 23:44:51 | 牛の躯


 

肥育素牛の体型のうち、尻の形が良い牛と好ましくない牛を写真に示した。写真上は、体上線の延長線上の尾の付け根当たりまで、ほぼ平直な形をしている。写真下は腰部も弱く、腰の左右に腰角が飛び出すように位置しているが、左右の腰角と頸から尾までの脊椎線上を交差する場所を十字部と言うが、この牛の尻は、十字部当たりから後方へ向けて、下方へ傾斜している。この様に傾斜している尻のことを斜尻という。斜尻で有るほど、尻の深みや幅も細く、尻全体のボリュームがないことになる。同時に斜尻の牛は、下腿の幅や厚みが薄い傾向にある。つまり、尻の形が良くない牛は、後躯の充実が悪く、その分筋肉等も少ないことに繋がる。
要するに長方形を成さないことになる。

導入時の子牛の見方 横から見る

2008-04-11 20:52:54 | 牛の躯
肥育目的で子牛などを導入する牛のことを素牛という。素牛を家畜市場などで導入する時、その体型の善し悪しを見極めることが、経営の善し悪しに繋がる。
これまで頭頸部について、具体的な説明をした。今回から、胴体について説明する。
牛の肥育とは、牛肉生産のための飼育を行うことである。牛肉を生産するには、安全で美味しい牛肉を可能な限りの低コスト生産により、生産性の高い枝肉を効率よく生産して、収益性の高い経営を行う必要がある。
具体的には、与えた飼料が体内で効率よく吸収され、筋肉や脂肪・骨などを順調に成長させ、増体能力を高めるとともに、良質の精肉を出来るだけ多量に生産することである。肉質に関する内容は後述する。
如何に多くの枝肉を生産するかは、牛の体型と密接な関係がある。
牛を見る場合、
①牛の前方から頭部の良否や肩や背腰などの幅を観察する。
②牛の横から牛の長さ(体長)を見る。長さとは肩から尾の付け根までを言う。背や腰の長さなども観察する。次に深みを見る。深みとは、体上線と体下線間の上下の長さをいい、この長さが大きいほど深みがあり、短ければ深みがないという。さらに体上線、つまり背腰の強さや体下線の平直さなどを見る。
③牛の後方から見る。背腰の幅や尻や腰幅を見る。
④これらを牛の斜め前や後ろからも観察する。胸や肋張り腹容などを点検する。
本編では、②の牛の横から牛の善し悪しを見る。

良い牛とは、深みがあり、体長があり、長方形をしているのがよいとされる。
体上線が平直であることは、その牛の背腰が強いと解釈する。背腰が強くなければ、最大限の増体に耐えられない。背腰は、それにより枝肉の評価が左右されると言っていいロースが位置するので、強く広く長くなくてはならない。
写真の牛は、これらの条件を見事クリアしており、抜群の体型である。


写真の牛は、通称「前がちの牛」と評されているタイプの牛である。前肢を中心とする深みは有るが、後肢に近い部分、腰の部分の深みが浅く、腰の部分がやや垂れて弱い。これでは深みのある長方形とは言い難い。つまり、腹容が少なめのため、餌の摂取量が上の写真の牛より少ないと予測出来る。よって増体能力に欠ける。
このタイプは、食が細いため、体力的に強靱ではないため、気象などの急変について行けず、肺炎や下痢など問題を起こし易いので、細心の観察等が不可欠である。