１０月 １２日

　　　　　　　　　　　　　ばつた・精霊ばつた・きちきち・はたはた・飛蝗



　　　　　はたはたの飛びしうす羽の曇りかな　　　　　　　細見綾子


　　　　　いつせいに大ばつた飛ぶ甘蔗（きび）畑　　　　　栗田やすし


　　　　　ほの赤き飛蝗の腹の脈打てる　　　　　　　　　　河原地英武


　　　　　きちきちの草より淡き翅つかふ　　　　　　　　　梅田　葵


　　　　　ばつたとぶ羽黒詣の杖の先　　　　　　　　　　　栗田せつ子


　　　　　ばつた跳ぶ草の雫をはねとばし　　　　　　　　　国枝洋子


　　　　　八方へきちきち翔たすコンバイン　　　　　　　　坪野洋子


　　　　　都府楼趾前後左右にばつた飛ぶ　　　　　　　　　谷口千賀子


　　　　　夕暮れの鵜河原に跳ぶ青バッタ　　　　　　　　　小島千鶴


　　　　　きちきちを夕日へ跳ばし畦ゆけり　　　　　　　　米元ひとみ


　　　　　バッタ飛ぶ米軍基地に王の墓　　　　　　　　　　平　千花子


　　　　　雨粒を落としばつたの飛び立てり　　　　　　　　河井久子



　　　　　　　　　　



　　　　　ばつた翔つ弧の入りまじる中をゆく　　　　　　　八木絵馬


　　　　　手作りのやうにキチキチばつた飛ぶ　　　　　　　太田土男


　　　　　しばらくはばつたを追つて写生の子　　　　　　　飯田弘子


　　　　　はたはたを深追ひすれば入日立つ　　　　　　　　加藤楸邨


　　　　　はたはたのとまり女の肩小さし　　　　　　　　　波多野爽波