子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

「日本脳炎ワクチン」で思う事

2009-03-08 21:48:51 | 雑記
少し前に、新しい日本脳炎ワクチンが承認され、もうすぐそのワクチンでの接種が開始されるといった内容の新聞記事を目にしました。

平成17年5月に、「積極的接種推奨の差し控え」の通知が厚生労働省より出されてから、ほぼ4年が経過しようとしています。

この間、差し控えの通達が出されて以降現場に対して行政からは今後の具体的な予定や指導などはありませんでした。

特に、この間に定期接種対象年齢を過ぎてしまう子ども達をどうするのか(対象年齢を過ぎていても定期接種と同等に対応してくれるのか)、接種が途中で中断してしまった子ども達の今後の接種をどうするのか、など当然通知があってもよさそうですが、何もありませんでした。

そして、新しいワクチンが接種可能になるといっても、供給量が十分ではないので積極的接種は控えるよう指導するようなことが記事には書いてありました。

本来なら十分供給できる体制になっってから接種を再開するのが理想だとは思いますが、足りないなら足りないで、接種すべき対象者の順番などのガイドラインを提示するなり、前に述べたような対象者に対してどのように行政として対応していく予定なのかをはっきりさせてもらいたいと思います。

定期接種に4年間の空白を作った行政の責任は大きいと思います。


一方で、ワクチンを受ける側のみなさんにも落ち着いた行動をしてもらいたいと思います。
接種推奨の差し控えになった経緯はさておき、定期接種の対象年齢を過ぎてしまうということで、慌てて接種を希望する方が去年ぐらいから増えてきました。

今まで私の日本脳炎ワクチン接種に対するスタンスは、現行ワクチン自体の副反応の僅かな危険性を考えても、ワクチンの有用性を考えれば継続して接種してもよいと考えており、現行ワクチンが十分に供給されているころには、平成17年5月以降も接種した方が良いかと聞かれた時には接種を薦めていましたが、そのころには説明しても接種を控える方がほとんどでした。

それが、現行ワクチンの供給が十分でなくなってきたころから、対象年齢などの期限もあってか、接種希望される方が昨年夏ごろから増えてきて、逆にそのころには確実にワクチンを確保できなくなったため、接種は中止し新しいワクチンがでるまで待つ様にお話するようになりました。

ワクチン自体は、対象年齢を過ぎていても問題なく接種することができます。
ただ、行政が対象年齢を過ぎた場合に定期接種と同様に対応してくれるかが今のところ分りません。
一つは、費用の負担の問題、もう一つは、万が一副反応が発生した場合の対応の問題があります。
この点に関しては、今後の厚生労働省や地方自治体の通知を待つしかありませんが、被接種であるみなさんが行政に働きかける必要があるかもしれません。


海外に仕事や留学などで長期滞在した方は分るかもしれませんが、日本の予防接種行政や予防接種実施状況は、世界の中の最後進国で、悪い言い方ですがよく医療関係者の中では北朝鮮並みと言われています。

この様な状況を出来るだけ早く改善するには、行政任せにするのではなく、ワクチンを実際に受けるみなさんの予防接種に対する意識を高める必要もあるのではないかと思います。

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