子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

Hib・肺炎球菌・子宮頸がんワクチンの定期接種化

2012-05-17 20:21:23 | 雑記
今日、来年度より「Hib・肺炎球菌・子宮頸がんワクチン」の3種類のワクチンが定期接種となる内容の報道がありました。

このことは、これから継続的にこの3種のワクチンを接種する機会が確保されたことになり、日本のワクチン行政の一歩前進と捉えることができます。

ただ、その他の「水痘・おたふくかぜ・B型肝炎・ロタウイルス」に対するワクチンの位置づけはどうなのか。
なんとなく、上記の3種に比べ必要性が低いのかと思われてしまわないか心配になります。



上記の定期接種化の提言を決めた会議(民主党の厚生労働部門会議)では、

1.基本方針:「WHO(世界保健機関)が推奨するワクチンは原則、定期接種化を目指す」

WHOが推奨するワクチン:
BCG、B型肝炎、ポリオ、DPT(ジフテリア、百日せき、破傷風混合)、Hib、小児に対する肺炎球菌、ロタウイルス、麻しん(はしか)、風しん(三日ばしか)、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)の10種類。

2.安定した財源確保の上で定期化をめざす:水痘、おたふくかぜ、成人用(高齢者)肺炎球菌

3.エビデンスを集めて定期接種を検討:B型肝炎

4.評価・検討したうえで定期接種化をめざす:ロタウイルス

といったことになっているようです。



小児科医の立場としては、水痘・おたふくかぜを差し置いて子宮頸がんの定期接種化には納得がいきませんし、「エビデンスを集め/評価・検討したうえで」とは今更何を言い出すのかと言った印象は否めません。

以前にも書きましたが、定期接種/任意接種という枠組みは、行政上(費用負担や副反応に対する救済制度など)の枠組みで、ワクチンの必要性とは直接関係はありません。
ワクチンで予防できる病気から子どもたちを守るためには、接種適応のある全てのワクチンを全ての子が平等に受けられる体制の早期確立が望まれます。

今回の定期接種化で、日本の予防接種が世界標準に近づいたように印象付けようとしているようにも感じますが、水痘・おたふくかぜワクチンは米国などでは2回接種となっており、B型肝炎ワクチンはほとんどのWHO加盟国で定期接種が行われ、肺炎球菌ワクチンは日本で7価ワクチンが導入された時には米国では13価ワクチンが導入されていますし、9月に開始が決まった不活化ポリオワクチンに至っては海外承認後30年経過してやっとのことで、まだまだ諸外国に比べて見劣りする状況ではあります。