子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡報告(熊本市)について

2011-06-15 22:05:53 | 雑記
既に報道でご存知と思いますが、熊本市が13日に「市内の医療機関でヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの同時接種を6月3日受けた同市在住の2カ月の男児が、接種翌日に死亡していた」との発表をしました。

3月に報道された予防接種同時接種後の死亡報告(7例)後の初めての死亡報告(8例目)で熊本市では2例目の報告となります。

熊本市は接種と死亡との因果関係について「現時点では不明」としており、 厚労労働相は「接種時の状況などについて情報収集し、因果関係の有無について専門家に意見を聞いている段階」とのこのとで接種見合わせなどの対応は今のところ行われてはいません。

具体的な調査結果がでていないのでどのような対応がとられるのか結果を待つしかありませんが、今得られる情報から判断して、今の段階で当クリニックでは今まで通り同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種は継続します。
当クリニックで接種予定している方で、結果がでるまで接種することに不安があり接種を見合たいなどの場合は早めにご連絡をお願いします。

亡くなられたお子さんの遺族の方は非常に辛い思いをし、色々な報道や色々な人の発言を聞いたり見たりすることで色々な思いを持たれることに考え無責任な事は言えないという思いと同時に、何も自分の態度をはっきりしないまま接種を続けることもできないと考えて、今の自分の立場を書きましたので、これから接種を予定している方は参考にして下さい。

3月の死亡報告に関しては予防接種との明確な因果関係はないとのことで4月より、同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン接種は再開されていました。

今回の事例は時間経過(接種翌日に死亡)以外に乳児突然死症候群(SIDS)の可能性が示唆されている他、死亡の原因は今のところ報道されていません。

予防接種が原因で翌日の死亡するようなことがあるのなら、死亡後にしても調べれば何かしらはっきりした異常が認められるだろうと、多くの医師は考えることだと思います。
何もはっきりした原因が調べてもわからなければ、乳児突然死症候群(SIDS)という可能性になる訳ですが、予防接種(または同時接種)で乳児突然死症候群(SIDS)の危険性が高まるのではないかとという可能性が残されます。ただ、日本では同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種の歴史が浅いため結論は出せません(今のところ危険性の増加はない)が、日本以外の諸外国では同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種は10年以上の実績があり、今まで乳児突然死症候群(SIDS)の危険性が高まるといった報告はなされていません。

厚生労働省の予防接種後副反応報告書(平成16年4月1日~平成21年3月31日)では、時間経過や因果関係など詳細は読み取れませんが、5年間でヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン以外の小児定期接種(単独接種)で29例の死亡が報告されています。

一方で、ワクチン接種をすることで予防できる病気で亡くなられたり・後遺症を残す事になってしまったり辛い思いをする子どもや保護者の方も少なくはなく、ワクチンを適切な時期にすることでこれらのことの多くが防げることは諸外国の状況をみれば明らかです。

これらのことを考慮し、現段階では厚生労働省からはっきりした通知が発表されるまで、当クリニックでは今まで通りワクチン接種をしていく方針です。
ただ、保護者の方に強制するつもりはありませんので、同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンをどの様に受けるかの最終的は判断は保護者がすることになります。

難しい判断かもしれませんが、接種をどうしたらよいかと聞かれたら、現状では同時接種も含め接種することをお勧めします。