子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

ポリオワクチン

2011-04-17 16:57:40 | 雑記
ポリオ生ワクチン接種後副反応としてのワクチンウイルスによる麻痺の発生などから、生ワクチンと不活化ワクチンについての質問をされる方が増えてきました。

結論からいえば、現状では生ワクチンの接種をしっかり受ける事をお勧めします。

ポリオ生ワクチンによる麻痺の発生は、最近になり新たに発生したものではなく、以前より「ワクチン関連麻痺 (vaccine-associated paralytic poliomyelitis;VAPP)」として一定の頻度で発生していたものです。

「ワクチン関連麻痺」は、ワクチン接種後に発生する場合と免疫を持たない方がワクチン接種した方から排泄されたワクチンウイルスに感染して発生する場合があり、発生頻度の報告に幅がありますが、200-300万回の接種で1例程度の発生と考えられています。

最近の日本の出生数が100万人強ですので、2回接種するので、1年間に1例程度の発生と推測されます。

この発生数をどうとらえるかは別として、原因が分かっているものをそのまましておくのは問題があり、日本では既に野生ウイルスによるポリオの発生もなくなっており、他の先進国と同様に生ワクチンから「ワクチン関連麻痺」がない不活化ワクチンに可能な限り速やかに移行する必要性に誰も異論はないところです。
それと同時に、ポリオワクチンの接種は、世界的ポリオウイルスの撲滅に向けて計画的に行われており、世界的にポリオウイルスが撲滅されるまでは、確実にワクチンによる免疫をつけておくことも重要となります。

現在日本でも、国産の不活化ワクチンによる治験が行われており、ここ数年以内には導入されると思われますが、今日本で承認された不活化ワクチンはありません。一部医療機関で行われている不活化ワクチンは、民間のワクチン輸入業社が輸入したもので行われています。
現状での不活化ワクチンの接種の問題点は、ワクチン自体の問題ではなく、「計4回の接種で必要で費用がかかる」「ポリオワクチン接種自体重篤な副反応はほとんどないとされていますが、万が一重篤な副反応が発生した場合に保証が受けられない」といったことがあげられます。
今回ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチン接種でも問題になりましたが、ワクチンと関係ない健康被害(有害事象)が接種後に発生した時に、その因果関係の調査など接種医療機関だけで責任をもって対処することはまず出来ないと思われ、副反応かどうかは別として接種後の有害事象(副反応と有害事象についてはクリニックホームページ参照)が発生しても、全て接種する保護者の責任で対処することとなってしまいます。

全ての子どもたちがワクチンで免疫を保ちつつ不活化ワクチン接種へ移行するまで、現状でより安心してワクチンを受けるには、国が責任をもって行う接種計画に沿って生ワクチン接種を受けることをお勧めします。

このような状況で、当クリニックでは当面、不活化ワクチン接種を行う予定はありません。