デジカメぶらりぶらり

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2012-05-12 08:14:56 | Weblog
彫刻では、手が最も苦労すると、昨年、98歳で亡くなった佐藤忠良(ちゅうりょう)さんが語っていた。手の位置一つで、作品がきざなってしまったり、甘ったれたりするからだという。

小指一本動かしても全体が動く。「バランスが変わるんです。それに、指だけがおしゃべりすると、彫刻全体がおかしくなる」と、画家の安藤光雅さんが話していた。

辞書を引くと、「手」に関係する言葉はとても多い。手がやける、手に負えない、手に付かない、手を貸す、手を汚す・・・。

手は心の動きと密接に結び付いていることに気付かされる。日本人で初めてパリ・ロダン美術館で個展を開催するなど、世界的な評価を受けていた佐藤さんは自らを「粘土職人」と呼んだ。

職人には勲章は要らないと、文化功労者などを辞退し、無名の人々の姿を削り続けた。「群馬の人」「木曾」など、庶民の力強さが伝わる作品の源泉は旧ソ連のシベリアに抑留された体験だった。

「収容所の中では、みんなただの男になって自分を見せ合っている。そうすると、つきあっていけそうだなと思う人たちは、地位も何もない、ただの人だった」。大家になっても、自らが手に振り回されていることを隠さない謙虚な芸術家は、手が「第二の顔」であることをよく分かっていたのだと思う。今年7月4日で生誕から百年を迎える。