デジカメぶらりぶらり

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辛抱

2011-03-13 07:43:17 | Weblog
新湊博物館で見つかったまつの手紙に、大きな虫が腹に入って難儀したという一文がある、と報じられた。

加賀藩祖の正室を苦しませるとは、けしからぬ虫である。江戸で過ごした人質の苦労がしのばれる。死ぬ前に長男の利長に会いたい、という書状もあった。

親なら当然の願いだが、対面はかなわなかった。憎っくき徳川家康である。まつの手紙は、金沢の前田土佐守家資料館にも伝わる。次男の利政を案じた書状の中身を教わって心打たれる。

関ヶ原の戦いで徳川に味方せず、追放された息子である。まつは家康に働きかけ、「領国の端にでも住まわせよ」という許しを得た。が、約束は空手形に終わる。まつは家康を責め、「こんな世に生きるわが身」を嘆く。

それでも、タヌキおやじと側近を相手に百万石を守る神経戦を辛抱強く続けた。腹の中ではストレスという虫も暴れたに違いない。権力者がおいしい約束をし、ほごにする。

今も昔もそうである。それなら、別の甘い約束に飛び付くか、それも時代を嘆いて政治不信を決め込むか。どちらも賢くはありませぬ、と辛抱を諭すまつの声が聞こえそうである。