goo blog サービス終了のお知らせ 

こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

Public Image Limited   「Ease」'86年1月

2010-03-07 11:33:17 | 音楽帳
ときは、再び1986年の戻る。

ニュー・ウェイヴは、マシンの進化、サンプリング機械の一般化も伴い、次第に「音の空間」を埋め尽くし、重層的かつ「より多くの要素」を入れ込み、音全体の『音圧』を上げていく結果となった。

ある意味では、音楽の「過剰」が行き着く先の最後の姿だったとも言える。
それは、社会が過剰な混沌とした超情報化社会に向かったのと連動していた。

これを、細野さんは「OTT」と表現している。
「OTT」とは、OVER THE TOPの略である。
細野さんは、それをFOE(FREND OF EARTH)というユニットを組む事で、時代の流れの中で、やらざるを得ない状態となった。

「過剰」に加速した車が、最後は激突して大破するのと同じくして、より新しい手段で、日々の差異を産みながら、前を超えていくニュー・ウェイヴも最終地点に向かっていた。

***

1986年1月に発売されたパブリック・イメージ・リミテッド=ジョン・ライドンの6枚目のアルバムは、その名も「アルバム」。



平凡な音楽のあり方が嫌いなジョン・ライドンらしいネーミング。

この6枚目は、CDは「コンパクト・ディスク」、カセットは「カセット」という名前になっている。

「ロックは死んだ」という明言を吐いて「ロック」では無い「パンク」という概念を生み出し、更に、「ロック」を否定したパブリック・イメージ・リミテッドというユニットを作るに至ったジョン・ライドン。

その完成形と言える「フラワーズ・オブ・ロマンス」はベースが無いという姿で、他には無い音楽を産み出したが・・・・・・この6枚目は、パブリック・イメージ・リミテッド結成時に居たメンバーとの揉め事の結果、もはや、ジョン・ライドン1人となり、そこに、やさぐれ者=ビル・ラズウェルがやってきて、またもや、そのツテを伝って大きな実験場を作る。

キーボードに坂本龍一、ギターにスティーヴ・ヴァイを起用する。

このアルバムには、OTT的な音圧で占められながら、常に敵に向かって戦うジョン・ライドンの「正しい」姿は健在である。

当時のU2を「2曲だけは素晴らしい曲を産み出したが、それを繰り返しているだけだ。」と言い切り、プリンスの常に変化しながら戦う姿に共感・共鳴を抱いていたジョン・ライドン。

多分、今聴く人にとっては「ロックじゃないか!何が”ロックは死んだ”だよ。自己矛盾している。」という批判はもっともだが、80年代において、「ロック」は無様なカテゴリーの音楽であり、一見して戦うような姿を見せながらも、中身は何1つ「クリエイト」な面の無い・延々と同じ事をして同じ場所にとどまろうとするきたない音楽だった。

しかし、パブリック・イメージ・リミテッドの「アルバム」はそんな凡々としたものではなく、変化の末にたどりついた姿がたまたま「ロック」的な外装を呈していたに過ぎない。

結果そうなったものと、旧態依然なところにとどまろうとしている他の守りのロックとは一線を画している。

ニュー・ウェイヴが、結果的に、OTTの背景も含みながら「ロック」に接近して行ったに過ぎない。

この「アルバム」には、「何があろうと、自分はこれを越えていく」という意志を込めた「ライズ」という名曲もあるが、今日は「イーズ」という好きな曲をオススメしたい。

イントロのアジア的なキーボードは、まさに教授の独壇場だが、その後、いきなり音が切り替わり、ジンジャー・ベイカーのデカいドラムと天才ギタリストのスティーヴ・ヴァイ、ビル・ラズウェルのベースを含めた重層的な音圧の音像となる。

「20年風邪を引きっぱなしだけど、今日もショーは続くんだよ」(ジョン・ライドン)

彼の引きっ放しの風邪のハナ声は、ここでも素晴らしく前向きに、ヴォルテージ高い歌をキープしている。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ティム・ブレイク 「宇宙の... | トップ | 司馬遼太郎 『21世紀に... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

音楽帳」カテゴリの最新記事