アマゾンで調べると、このアルバム評に、このような、たいそう優れたコメントがある。
「それ以前のポリスにはなかった、暗く陰鬱(いんうつ)で一貫したテーマをもつ本作は、ほぼすべてのナンバーで、現代政治とテクノロジー文化のマイナス面を取り上げている。唯一の例外は「Every Little Thing She Does Is Magic」で、この完璧なポップ・ソングはラジオでヒットした。その他のナンバーはさまざまな問題を扱っている。抑圧に抵抗しようとする潜在的な願望、ほとんど工業化されていない世界の放棄、毎日爆撃のように脳に浴びせられる過剰なまでの言葉とイメージ、個人的な意見や政治的な主張を通すためにしばしば振るわれる暴力。それらが、ポリスにとっていつになく濃密な、何層にも音を重ねたアレンジで表現されている。」
このアルバムは、NewWave/エレクトロニック・ミュージックの全盛にいたろうとする1981年という瞬間においての、ポリス流の、その同時代の解釈・表現なのだろうと思う。
同時期に発売されたアルバムといえば、YMO「テクノデリック」、ゴドレイ&クレーム「イズミズム」、ゲイリー・ニューマン「ダンス」、シンプルマインズの「サンズ&ファシネイション」・・・・・
などなど、つい思い浮かべてしまう。
1981年年末近くの「時代の空気感」が、ここには「真空パック」で、詰まっている。
よく「シンクロニシティ」を、ポリスの最高作と上げる人が多いが、個人的には、思いいれも含めて、自分は、このアルバムを選ぶ。
まさに、陰鬱さが、全体を覆い、その陰鬱さに、自分は同調していた。
それまでのポリスの簡素な音構成を捨て、まさに、いくつもの層を重ねたヒュー・パジャムの作る、霧のような空気音の中、キラリと輝くものがある唯一のアルバムである。
ほとんど見えない暗闇の中で、鋭利なナイフを持って、ニヤリと薄笑いを浮かべた、危険な思想的感情を持った3人が居るような・・・。
4. Hungry for You・6. Too Much Information・7. Rehumanize Yourselfなどの従来のファンキーな路線、8. One World (Not Three) のようなポリス特有のレゲエ調のナンバーもあるが、自分が同調するのは、そこではない。
1. Spirits in the Material World ・3. Invisible Sun ・10. Secret Journey ・11. Darkness などの暗く暗闇でこそ輝く曲である。
物質世界の魂・見えない太陽・暗黒の世界・・・・
これこそが、自分が好む、「シロウト」ではない「プロ」のポリスの姿である。
万人に勧めるべきものではないし、本人らも万人に騒いで欲しくなかったアルバムであろう。
しかし、「シンクロニシティ」の騒ぎように比べて、余りにも過小評価されたアルバムと思う。
アルバムタイトル、ジャケットデザインも含めて、薄ら寒さというか、不気味さをたたえている点が、自分には、このアルバムを特別なものにしているのかもしれない。
<「ほとんどビョーキ」な世界です>
XTCといい、ポリスといい、音の繊細な美しさを表現することにかけては卓越した才能を持つ、ヒュー・パジャムのプロデュースの名作。
1. Spirits in the Material World
2. Every Little Thing She Does Is Magic
3. Invisible Sun
4. Hungry for You (J'Aurais Toujours Faim de Toil)
5. Demolition Man
6. Too Much Information
7. Rehumanize Yourself
8. One World (Not Three)
9. Omega Man
10. Secret Journey
11. Darkness
A面 1~3の流れの見事さ! そして、美しさ!
トータルコンセプトアルバムとしても、優れている1枚です。