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「幻滅のたびに甦る期待はすべて、未来論の一章を示唆する。」(Novalis)

暴れる神経

2006年06月03日 | Weblog
十年ぶりくらいで、昨日、歯医者に行った。最近肩が凝るのはどうも歯が原因だったらしい。いま、治療してもらった後で、どのくらい患部が熱をもっていて腫れていたかが分かる。楽だもの。肩も。医者からは、どうしてこんなになるまで放っておけたのか分からない、と言われた。いろいろと忙しくて鈍感になってたか。ともかくも「歯痛」の実感に乏しかったのである。少ししみるな、とか、ちと痛いな、くらいは感じても子供の頃の、生まれてきたことを後悔したくなるようなあの「ガーン!」っていう痛みじゃなかったのだ。
それにしても、ねー。最近の歯医者さんはすごいですね。その一、受付の若い女性たちがなんか過剰に化粧気があって、病院の受付って感じじゃない。その二、診察室に入ってみたら横並びに診察台が十台もあり、雰囲気もなんか「てもみん」みたい。その三、出てきた医者が「ちょっと前まで現役だった野球選手」みたいなルックス(ex.色黒、単発、まつげの長い目)で、流ちょうに患者(ぼく)をてなづける。「うがが、こっぽびびまっ(ちょっとしみます!)」とバキュームを助手に施されながら痛みを告げると「そうか、そうか、ちょっとがまんしてっ、ねー」と5歳児みたいな扱いをする。しかも、治療中に女性の歯科助手となにやら楽しそうに話しているし、その「余裕」の感じとか、お客さん商売を弁えている感じとか、「ホスト」なんて言葉も不意に浮かんでくる。ここは、どこだ!と、麻酔の効いてきたちょっと鈍感な頭で思う。で、ちょっと楽しい。拘束されて、励まされて、優しくされて、でも、脇でいちゃいちゃされている、ってなんとも訳の分からないシチュエーション、なのだった!
でも、この「ホスト」先生、治療は抜群にうまく、また説明も丁寧。ぼくのかなり重傷の虫歯は、その中で神経が熱を帯びて暴れている状態だったのだそうだ。しかも、そうした狂った神経は、一本のひもの形状をもう留めていなく断裂していて、それぞれが暴れているらしい。そのバラバラな神経を(歯科助手とのおしゃべりを挟みながら)細い針でグリグリ掻きだしていたのだそうだ。ぼくには、何か歯に指を何度も押しつけているけれど、それは綿で薬でも塗ってる?くらいにしか思えなかった。麻酔ってすごいな。気がついたらぼくの「暴れる神経」は、掻きだされてぼくの一部ではなくなっていた。