認知症の早期診断 介護並びに回復と予防のシステム

アルツハイマー型認知症は、廃用症候群に属する老化・廃用型の生活習慣病なので、発病を予防でき、早期治療により治せるのです

「重度認知症」(大ボケ)と脳の働き具合(A-20)

2012-03-28 | アルツハイマー型認知症の三段階の症状

中等度認知症(中ボケ)の段階になっても手をこまねいていて、相変わらずナイナイ尽くしの「単調な毎日」を送っていると、脳全体の廃用性の機能低下が更に加速度的に進んでいきます。「アルツハイマー型認知症」の末期の段階である「重度認知症」(大ボケ)は、「前頭葉」(前頭前野を言うものとする。以下、同じ)を含む脳全体の働きが「中等度認知症」の段階よりも更に異常なレベルに衰えてきています。左脳と右脳の働きも、幼稚なレベルの機能が残っている程度である上に、脳の司令塔の「前頭葉」は殆ど機能しなくなっています。そのため、意識の認知度を左右する「意欲」、「注意集中力」と「注意分配力」がほとんど働いていない状態なのです。「重度認知症」(大ボケ)の脳の働きは、3歳児以下のレベルと考えて下さい。前頭葉、左脳、右脳の機能の衰えが進行していく中で、MMSの得点が一桁の点数になってくるあたりから、運動の脳も異常なレベルに衰えてきて、重度認知症の症状が更に進行していくのです。 

脳全体の司令塔の役割をしている「前頭葉」がほとんど寝たきりの状態になっているため、これまでの人生で何度となく体験して体に浸み込んでいるような「言葉」や「テーマ」或いは「状況」に対しては或る程度の対応ができるのですが、折々に直面する新しい状況や体に浸みこむほどの経験がないテーマに対しては、理解することも対応することもできないのです。精神科医が「アルツハイマー型認知症」であると診断する第一の要件である「重度の記憶障害」の症状は、「認知」それ自体と「記銘」、「保持」及び「想起」の機能が極めて不十分にしか働かない為に起きてくるものなのです。脳の司令塔の「前頭葉」は、殆ど働かなくなっている上に、左脳や右脳や運動の脳も極めて不十分にしか働かない「大ボケ」は、自分の身の回りのことをする「セルフ・ケア」にも支障が出てきます。食事をしたり、服を着たり脱いだり、お風呂に入ったり、トイレの後始末をしたりといった、身の回りのことも自分でできなくなり、日常生活に「介助」が要るようになります。

   

そもそも、記憶は、「記銘」して、「保持」して、「想起」してくるという経路をたどるのです。「中等度認知症」(中ボケ)の段階になると、昔のこと(認知症の重い症状が出ている人とは、とても思えない程の)かなりなレベルで、はっきりと思い出すことが出来ます。その一方で、最近の新しいことについての記憶が困難になるのです。その理由は、「意欲」、「注意集中力」と「注意分配力」の機能が不十分にしか働かなくなっているため、「記銘」するときの記銘度が低いことが第一の原因なのです。昔の記憶は、年が若くて「記銘度」が高かったころの記憶なので(記銘度が高いと、長期に保存されるので)、今でも思い出す(想起する)ことが出来るのです。

(コーヒー・ブレイク) 次のグラフは、加齢とともに機能が衰えていく、「前頭葉」の3本柱の「衰えていき方のカーブ」です(縦軸が機能レベルで、横軸が年齢です)。

アラサーとかアラフォーとかの世代でも、「物忘れ」が起きてきます。物忘れが気になる程度に起きている年齢の人は、(N-07)で提案している「速足の散歩」を日課にすることをお勧めします。お友達と一緒に、おしゃべりを楽しみながら、「速足の散歩」を数カ月継続すると、散歩の効果が出てきて「物忘れ」の回数がはっきりと減ってきます。そのメカニズムは、おしゃべりを楽しみながら「速足の散歩」をすることにより、「前頭葉」の3本柱であり、加齢によって次第に衰え始めていた「意欲」、「注意の集中力」と「注意の分配力」の機能が、頻繁に且つしっかりと使われることで、機能回復してくるからなのです。

(再度、コーヒー・ブレイク) この「重度認知症」のレベルになって初めて、精神科医は「アルツハイマー型認知症」と診断しているのです。それでいて、「アルツハイマー型認知症」になっても(ここでは、「重度認知症」のレベルのこと)、「人格は保たれている」などと言うのです。「前頭葉」は、脳全体の司令塔であり、状況を判断し、何をどうするかのテーマを企画し、いろいろな視点からシミュレーションした上で、最終的な行動や言動や態度を選択し、左脳、右脳、運動の脳に必要な指示を出して、それを実行させているのです。

最終的な意思決定としての「選択」を行うには、「評価の物差し」が必要不可欠となります。その評価の物差しは、「前頭葉」の重要な機能の一つなのです。「重度認知症」のレベルにまで脳全体の機能が衰えてきている人に、正常なレベルで機能する「評価の物差し」は存在しません。重度認知症のレベルの人の「前頭葉」の働き具合を調べてみれば、すぐに私たちの言う意味が理解できるはずです。

専門家が「人格が保たれている」と言っているのは、「側頭葉性健忘」のケースを重度認知症(大ボケ)レベルの「アルツハイマー型認知症」混同しているのです。「重度認知症」のレベルになった「アルツハイマー型認知症」は、重度の記憶障害の症状だけでなく、「前頭葉」が殆ど働かなくなっているのがもうひとつの特徴です。他方、「側頭葉性健忘」は重度の記憶障害の症状を示しますが、「前頭葉」の働き具合は「正常なレベル」にあるのが特徴なのです。

「新しい記憶」がまったく入っていかないという「重度の記憶障害」を抱えていても「前頭葉」が正常レベルで働いているので、表情が豊かで、状況の判断も的確に出来て、日常頻発する「物忘れの状況」に対する切実な問題としての理解と認識があるのです。重度認知症のレベルの「アルツハイマー型認知症」と「側頭葉性健忘」とは、重度の記憶障害の症状を示す点では共通していますが、前頭葉の働き具合(働きのレベル)が全く異なるのです。両者は、「前頭葉」の働き具合を調べてみれば、直ぐに区別が出来るのです。

権威あるテレビ局の番組でも、「働き盛りの50代で認知症を発病する人が増えてきている」と言うテーマで放送を組んだことがありますが、それも同じ過ちを犯していて、「側頭葉性健忘」のケースを「重度認知症」のレベルの「アルツハイマー型認知症」と混同しているものでした。「側頭葉性健忘」も、その確認がなされないままでいると、原因が分からないまま日常生活上さまざまな支障や出来事が起きてくるために(周囲からは、認知症と間違われて)自信をなくしていき、やがて、ナイナイ尽くしの「単調な生活」が継続していく中で、60歳を超えてくると、「アルツハイマー型認知症」を併発してくることが多いのです。

 注)本著作物(このブログA-20に記載され表現された内容)に係る著作権は、(有)エイジングライフ研究所に帰属しています。

    エイジングライフ研究所のHP(ここをクリックしてください)


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