kintyre's Diary 新館

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映画『BIUTIFUL ビューティフル』を観て

2011-07-17 23:10:35 | ヨーロッパ映画

11-46.BIUTIFUL ビューティフル
■原題:Biutiful
■製作年・国:2010
年、スペイン・メキシコ
■上映時間:148分
■鑑賞日:7月10
日、TOHOシネマズ・シャンテ
■料金:1,600円

 
□監督・脚本・製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
□脚本:アルマンド・ボー、ニコラス・ヒアコボーネ
□撮影監督:ロドリゴ・プリエト
□編集:スティーヴン・ミリオン
□美術:ブリジット・ブロシュ
□音楽:グスターボ・サンタオラヤ
◆ハビエル・バルデム(ウスバル)
◆マリセル・アルヴァレス(マランブラ)
◆エドゥアルド・フェルナンデス(ティト)
◆ディアリャトゥ・ダフ(イヘ)
◆チェイク・ナディアイエ(エクウェメ)
◆チェン・ツアイシェン(ハイ)
◆ルオ・チン(リウェイ)
◆ハナ・ボウチャイブ(アナ)
◆ギレルモ・エストレーリャ(マテオ)
【この映画について】
『バベル』『21グラム』で生と死をテーマにした群像劇を描いてきたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、本作では死に向かう一人の男の姿を描き出した。子どもたちのために非合法な仕事にも手を染める父親を演じたのは、ハビエル・バルデム。良かれと思ってしたことが裏目にでたり、妻や兄との間にもわだかまりを抱えた彼の人生は、はたから見ると悲惨なもの。しかし、そんな人生を子どもたちのために懸命に生きる父親の姿は鮮烈な印象を与え、バルデムはカンヌ映画祭で主演男優賞を獲得している。アカデミー賞主演男優賞・外国語映画賞ノミネート。
タイトルの「Biutiful」は、彼が娘に教えた「beautiful」の綴り。間違ってはいるものの、それは彼が娘に残した生きた証のひとつなのだ。
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
スペイン・バルセロナ。その華やかな大都市の片隅で、厳しい現実と日々対峙して生きているウスバルは、離婚した情緒不安定で薬物中毒の妻マランブラを支えながら、2人の幼い子供アナとマテオたちと暮らしている。
そのウスバルには幼い頃に父はフランコ政権の圧政に嫌気がさして海外に逃亡したので、父の記憶が無く母ともその後死に別れたので、兄のティトと大都市の中で生きて行く為に当り前のように非合法の世界へと墜ちて行った。

決して裕福とはいえず、生活のためにあらゆる仕事を請け負っていたウスバルは、ときには麻薬取引、中国人移民への不法労働の手配など非合法な闇の仕事も厭わない。
しかし、争いごとの絶えない日々のなか、ウスバルはしばしば罪の意識を覚えていた。ある日、ウスバルは末期の前立腺がんであることがわかり、余命2ヶ月を宣告される。「二人の幼い子供を残して死ねない!」、彼は、自分が幼少期に両親の愛情を受けられなかったことから、死の恐怖と闘いながらも、残された時間を家族の愛を取り戻すために生きることを決意する。

だが、薬物依存症から抜け出せずに施設に住む(元)妻マランブラと家族として楽しかった日々を取り戻そうと努力するが、そんな彼の気持ちは薬物依存と精神を病んでいる妻に通じることは無かった。気分の起伏の激しい妻は結局夫と二人の子供たちとの生活を取り戻せなかった。
そこで彼は、仕事仲間で逮捕されたセネガル人の男の妻イヘと子供を不憫に思い狭い家の一角に部屋を与えて、奇妙な共同生活が始まる。当初は打ち解けていなかったが、徐々に、ウスバルの子等とも打ち解けて学校の送迎に同行するまでになった。

このイヘとの関係が、薬物依存の妻に替わってウスバルが信頼を寄せるようになり、ウスバルも自分の体の事をイヘに告白するまでになった。そして子供達も自分の父の肉体が衰えが進行して行くことに気が付き、一方で、父は余命わずかな中でも必死に「現金」を稼ぎ子供たちに残そうと必死になる。
バルデムのこの辺の必死さは画面を通じて痛いほど伝わってくるのだが、やはり世の中は甘くなかった。裏ビジネスで中国人と関わったことがきっかけで、密航中国人労働者らが密室で窒息死してその死体が市内の港に大量に流れ込んで大騒動に。この頃から、彼の裏ビジネスも歯車が狂い始め、信頼を寄せていたイヘに子供たちの将来を託すが、イヘはあくまでも渡航費が工面出来たら帰国したいと強く訴える。それでも蝕まれゆく肉体から最後の気力を振り絞って、イヘに自分が裏ビジネスで稼いだ「現金」を渡して子供たちの面倒を妻では無く彼女に託した...。

やがて、意識は薄れ彼は亡くなるのだが、イヘに託した子供たちの面倒は...その彼の思いは裏切られイヘはもらったお金を元手に帰国することに。彼は、別世界に旅立った後、この事実を知ったらどう思うだろうか?(注:この解釈については「コメント」欄も参照して下さい。)

バルセロナという五輪開催都市でもある大都会の片隅に生きるバルデム演じるウスバルと、その家族を描いた重い作品だが、バルデム無くしてこの映画は成立しなかっただろう。バルデム以外の俳優は知名度も無く従って彼の輝きと演技力とイニャリトゥ監督の脚本と演出力が光った作品だ。
この作品では都会の底辺で生きる人間の生活、そこに渦巻く不法移民たちとの裏ビジネスの様子、横行する麻薬依存症などが描かれている。残された子供たちもやがて父と同じ道を辿りそうな気がするし、イヘに裏切られ情緒不安定の母とイヘに裏切られて残された子どもたちの将来も観ていて不安になる。

冒頭とラストの雪の中の意味深なシーンが出て来るが、この映像は彼の意識が混濁したなかでの回想シーンなのか?それともフクロウの死骸が一瞬アップになるのだが何かを示唆しているようにも思える。相手の男性は意識混濁の中での設定なら海外逃亡した記憶の無い父かな?私にはその辺の映像が意味するところが判らなかった。


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