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kintyre's Diary 新館

野球(西武ファン)や映画観賞記等を書き綴っています。野球のオフ期には関心の高いニュース等も取り上げています。

映画『マンク~破戒僧~』を観て

2012-04-22 17:55:59 | ヨーロッパ映画

12-33.マンク✛破戒僧✛
■原題:Le Moine(英題:The Monk)
■製作国・年:フランス・スペイン、2011年
■上映時間:101分
■観賞日:4月22日、シアターN渋谷

 

□監督・脚本:ドミニク・モル
◆ヴァンサン・カッセル(アンブロシオ)
◆デボラ・フランソワ(ヴァレリオ)
◆ジョセフィーヌ・ジャピ(アントニア)
◆セルジ・ロペス(放蕩者)
◆ジェラルディン・チャップリン(スペリア修道院長)
◆カトリーヌ・ムシュ(アントニアの母・エルヴィラ)
◆ホルディ・ダウデール(ミゲル神父)
【この映画について】
禁欲生活から情欲の世界へと身を落とし悪魔に魂を差し出した破戒僧の姿を描き、160年もの長きにわたって禁書となっていた小説「マンク」を映画化した驚がくのスリラー。
残虐で背徳的な僧を演じるのは、『ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男』シリーズや『ブラック・スワン』のヴァンサン・カッセル。男装で主人公に近づく黒魔術師を、『譜めくりの女』のデボラ・フランソワが演じる。メガホンを取るのは、『ハリー、見知らぬ友人』のドミニク・モル。中世の修道院を舞台にした、エロチックで陰鬱(うつ)な世界観に引き込まれる。
(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
17世紀スペイン・マドリッド。赤子の時にカプチン派の修道院の門前に捨てられ、僧に育てられたアンブロシオ、その熱心さから町中の人が彼の雄弁な説教を聞きにやって来るほどの僧に成長していた。すべての欲を絶ち、規律を重んじるアンブロシオであったが、出生の謎とたまに彼を襲う頭痛に悩まされていた。
ある日、傷ついた顔を覆うために仮面をかぶっているという、ミステリアスな見習い修道士バレリオがやってくる。彼は、なぜかアンブロシオの頭痛を和らげる不思議な力を持っていた。しかし実は、バレリオは彼に近づく為に女性であることを隠している偽りの修道士だったのだ。

バレリオが女性であることを知ったアンブロシオは、彼女を修道院から追放しようとするが、その折に虫の毒によって高熱を出してしまう。するとバレリオは病に伏し朦朧とするアンブロシオと自ら関係を持ち、その不思議な力で再び病を癒す。
破戒僧となってしまったアンブロシオは、それ以来情欲の虜となり、愛欲に身を任せてしまう。そんな中、少女アントニエがアンブロシオの元へ、病気の母へ説法を聞かせてほしいと懇願しにやってくる。美しく、無垢で慎み深い彼女は天使と見紛うほどで、その姿は何度もアンブロシオの夢の中に現れる少女そのものだった。アントニエをどうしても手に入れたいという欲望に負け、アンブロシオは、本性を表したバレリオの意のままに、黒魔術の力を借りる。そして、聖なる教会を黒ミサで汚し、強姦、窃盗、殺人とあらゆる悪徳に身を沈めていくのだった……。

「ブラック・スワン」でN・ポートマンの相手役だったヴァンサン・カッセル(妻は女優モニカ・ベルッチ)が主演の宗教的要素が濃い映画だ。
この作品、舞台はほぼ砂漠の中にぽつんと佇む修道院とその周辺で展開する。ヴァンサン・カッセル演じるアンブロシオは修道院で育ったことから信心深く、欲を絶った生活で町中の人からも人気が高かった。
だけれどもある日、人生30年目にして守ってきた欲に負けて女性だったバレリオと関係を持ってから彼は破戒僧となり、あれ程までに欲を絶っていたのに情欲の虜に陥って行く。人間はやはり性欲の誘惑に弱いから、ここまで30年も童貞だったのに女を知ってしまったことで何かがプツリとキレてしまったようになった。
ストーリー的には最初の懺悔のシーンとラストにアンブロシオが砂漠で朦朧とした意識の中で悪魔に魂を渡すシーンは実は繋がっていたのだ。ここでのヴァンサン・カッセルの演技は見事で、彼自身が役になりきっていた。最近は英語のセリフでの役が続いていてフランス語訛りの英語で奮闘?していたが、本作はフランス語セリフなので自分の演技に集中出来たのもプラスに働いたのかもね。
また、あの修道院は見事なロケーションで、この映画の雰囲気にピッタリだった。

この映画は原作が発禁本だったそうだが、この映画を見る限りは確かに際どいシーンはあるが、映画化に際して問題になっていたシーンは再現されなかったのだろか?なぜ、発禁だったのか映画を観ていただけでは理解出来なかった。


映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を観て~アカデミー賞受賞作品

2012-04-16 23:18:48 | ヨーロッパ映画

12-32.マーガレット・サッチャー鉄の女の涙
■原題:The Iron Lady
■製作国・年:イギリス、2011年
■上映時間:105分
■字幕:戸田奈津子
■観賞日:4月14日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ



□監督:フィリダ・ロイド
◆メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー)
◆ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー)
◆オリヴィア・コールマン(キャロル・サッチャー)
◆アレキサンドラ・ローチ(若き日のマーガレット・サッチャー)
◆ハリー・ロイド(若き日のデニス・サッチャー)
◆ニコラス・ファレル(エアリー・二ーヴ)
◆イアン・グレン(アルフレッド・ロバーツ)
【この映画について】
あらゆる面で機能不全に陥っていた英国を叩き直すべく大鉈をふるい“鉄の女”の異名をとったマーガレット・サッチャー元英国首相。歴史にその名を刻む強靱な彼女が認知症を患っている事が公にされた事を受けて、脚本家アビ・モーガンは妻であり母であるひとりの女性の普遍的な物語として本作を書き上げた。
監督は『マンマ・ミーア!』を世界的大ヒットに導いたフィリダ・ロイド。そして主演は現代最高の名優であるメリル・ストリープ。「感じる事より考える事が大切」と繰り返したカリスマ的ヒロインの凋落を演じて圧巻である。常に妻を支える夫デニスには類い希なユーモアのセンスが光るオスカー俳優ジム・ブロードベンド。
なお、アカデミー賞の主演女優賞をメリル・ストリープが、メイキャップ賞と2部門で受賞した。(この項、一部gooより転載しました)
【ストーリー&感想】
雑貨商の家に生まれたマーガレットは市長も務めた父の影響で政治を志すが、初めての下院議員選挙に落選してしまう。失望する彼女に心優しい事業家デニス・サッチャーがプロポーズする。
「食器を洗って一生を終えるつもりはない」野心を隠さないマーガレットを、デニスは寛容に受け入れる。双子にも恵まれ、幸せな家族を築く一方で、マーガレットは政治家としての階段も昇りはじめる。失墜した英国を再建する。それは気の遠くなるような闘いだったが、彼女はその困難に立ち向かう。愛する夫や子供たちとの時間を犠牲にし、マーガレットは深い孤独を抱えたままたった一人で闘い続けた……。

現在のロンドン。どんなに苦しい時も支え続けてくれた夫・デニスは既に他界した。だが、マーガレットは未だに夫の死を認識していないのか、時折不可解な行動が目立つ。思い出の洪水の中で、デニスの遺品を手に取り彼女は「あなたは幸せだった?」とつぶやくのだった……。

英国は女性が統治していると繁栄するという言い伝えがあるそうで、この時代は首相と女王が国を治めていた。そのエリザベス2世をテーマにした映画は既に製作済みだが、サッチャーに関する作品は無かった。
サッチャーは存命ながら認知症を患っており、そのサッチャー氏を演じたのが大女優メリル・ストリープだ。今更何の説明も不要な女優だが、本人そっくりなメイクには驚かされたが、話し方まで真似ている。
だが全体の流れとしては認知症を患ってからの彼女の姿から過去を振り返るスタイルで「きみに読む物語」のような展開。サッチャーはこの当時を代表する政治家であり、アメリカのレーガン大統領共々自分にとっても印象深い政治家なので、もっと現職時代の苦悩が前面に出るのか?と思っていたのだが、認知症の現在から過去を所々振り返るのでやむを得ない構成とも言える。
彼女が首相の頃は夫のデニス氏は殆ど表に出ることは無く、サミット(当時、先進国首脳会議)の裏舞台では通常首脳のご婦人方達にも外交舞台が用意されるのだが、デニス氏が積極的に関わっていたとの印象は全く無い。ここでは彼女が自分より先に亡くなったデニス氏の生死さえ判断出来ない状況になっており、英国を牽引していた女性首相の現在の姿を思うとレーガン氏の最期もそうだったが、あまりそういう姿は見たく無かったような複雑な思いが去来しました。

このサッチャー役は数多くあるメリル・ストリープの代表作の中でも更に上位にランクされることでしょう。1にも2にも彼女の為にあったかのような作品でしたね。所で、レーガン氏の生涯を振り返るような作品は製作されないのでしょうかね・・・?


映画『英雄の証明』を観て

2012-03-17 23:00:55 | ヨーロッパ映画

12-26.英雄の証明
■原題:Coriolanus
■製作国・年:イギリス、2011年
■上映時間:123分
■字幕:岡田理枝
■観賞日:3月17日、シアターN渋谷(渋谷)

 

□監督・製作:レイフ・ファインズ
◆レイフ・ファインズ(コリオレイナス)
◆ジェラルド・バトラー(タラス・オーフィディアス)
◆ヴァネッサ・レッドグレイヴ(ヴォルムニア)
◆ジェシカ・チャステイン(ヴァージリア)
◆ブライアン・コックス(メニーニアス)
◆ジョン・カニ(コミニアス将軍)
◆ジェームズ・ネスビット(シシニアス)
◆ポール・ジェッソン(ブルータス)
◆ルブナ・アザバル(タモラ)
【この映画について】
『イングリッシュ・ペイシェント』『ナイロビの蜂』などで知られるイギリスの俳優レイフ・ファインズは、英国俳優の多くがそうであるように、シェイクスピア劇が出発点だ。その彼が、製作・監督・主演を務めたのが、シェイクスピア晩年の悲劇作品「コリオレイナス」の映画化であるこの『英雄の条件』だ。
原作はローマ時代が舞台だが、本作はそれを現代に置き換え、古典だが現代にも通じる民主主義の危うさ、力あるものの人気も一時的でしかない事や人心のうつろいやすさを描いている。セルビアで撮影された本作は、絶えず危機に脅かされている混沌としたこのローマという国をリアルに表現。リアルな市街戦のシーンも見どころ。共演は、「300」のジェラルド・バトラー、「ジュリエットからの手紙」のヴァネッサ・レッドグレイヴ。
【ストーリー&感想】
国民を愛する小国のリーダー・オーフィディアスはローマ侵略を狙い、幾度となく戦いを繰り返すが、ローマの独裁者コリオレイナスを打ち負かせずにいた。コリオレイナスは数々の武勲により着実に権力をつけていくが、彼の独裁性に危機を感じた政治家の策略により、暴徒と化した国民に飲み込まれていく。
コリオレイナスの味方は、政治的野心溢れる母ヴォルムニア、彼の無事を祈る美しい妻ヴァージリア、政治家の師と仰ぐメニーニアスしかいなくなり、ついに国を追放される。ローマに絶望したコリオレイナスは、1人で宿敵オーフィディアスのもとを訪れる。2人は、お互いを殺すことを望んでいた。失脚してローマを追われたコリオレイナスをオーフィディアスは当初は受け入れを渋っていたが、ローマ進撃へ向けてこれ以上ない強い味方を得ることになり彼を自軍に受け入れたのだった。
ローマのことを誰よりも良く知るコリオレイナスを引き入れたことで、ローマの陥落はもはや風前の灯となりローマ側の和平の使者として派遣されたのは何とコリオレイナスの母と妻子だった。和平を渋る彼の背後にはオーフィディアスとの関係もあったが、家族の嘆願に負けて和平を受諾するのだが、当然ながらオーフィディアス軍側からすれば裏切り行為である。そうなるとコリオレイナスの運命は一つであり、オーフィディアスの部下により撲殺された。

シェイクスピア作品の映画化は珍しくはないのだが、映画化に際しては設定を変えたり登場人物の性別を逆にしたりと映画的な変更がしばしば加えられている。この作品は「コリオレイナス」が原題なのだが、邦題の「英雄の証明」は何だか邦画のタイトルみたいで「コリオレイナス」でも良かったのに(ポスターやチラシに「シェイクスピア原作、コリオレイナス」と謳えば良かった)と思う。設定は古代ローマだが、内容は現代に置き換えておりロケ地もセルビアで主に敢行されたようだ。
現代的な部分は両国の戦闘に関するニュースがTVで流れていたり、執政官選挙に出馬するコリオレイナスがTVスタジオでの公開討論会に出演するというパートがそれだが、やはり元はシェイクスピア作品なので崩し過ぎない程度にアレンジしている姿勢はレイフ・ファインズ監督の拘りだろう。

オーフィディアスを演じるのがスコットランド出身のジェラルド・バトラーで、ライバルでもあるコリオレイナスは監督でもあるレイフ・ファインズ自らが扮している。レイフ・ファインズは映画俳優として売れる前はシェークスピア劇で腕を磨いており、「コリオレイナス」は彼のお気に入りの作品で、監督として映画化にこぎ着けるのが目標だったそうだ。最近ではハリポタ・シリーズでの「ヴォルデモート」役のイメージが強烈だった。ジェラルド・バトラーは「マシンガン・プリーチャー」でのサム・チルダース役と重なる部分もあるが好演していた。

物語としては主役二人の人間関係が中心なのだが、男二人のライバル関係だけではなく、コリオレイナスの母ヴォルムニアを演じるヴァネッサ・レッドグレイヴの個性も遺憾なく発揮されている。ヴォルムニアは権力欲が強く息子コリオレイナスが躊躇していた執政官選挙への出馬を強く後押しする。やはりベテラン英国人女優はこういう役を演じさせたら活き活きとしているね。
コリオレイナスの妻ヴァージリアを演じるのは売れっ子女優ジェシカ・チャステイン。義母ヴォルムニアの権力欲の強さに押されながらも夫と息子を守る女性役を演じていて、義母の個性の強さとバランスが上手く取れていた。二人の女優が全体の中でも良いアクセントになっていたのが、男優陣の汗臭さを薄める役割を果たしていた。

日本では単館系での地味な公開だったが、作品の質そのものはファインズ監督初作品としては合格点突破だろう。今後、どういう作品を監督するのか注目したい。


映画『おとなのけんか』を観て

2012-02-26 10:59:06 | ヨーロッパ映画

12-19.おとなのけんか
■原題:Carnage
■製作年・国:2011年、フランス・ドイツ・ポーランド
■上映時間:79分
■字幕:牧野琴子
■観賞日:2月25日、TOHOシネマズシャンテ

 

□監督・脚本:ロマン・ポランスキー
□脚本・原作:ヤスミナ・レザ
◆ジョディ・フォスター(ペネロペ・ロングストリート)
◆ジョン・C・ライリー(マイケル・ロングストリート)
◆ケイト・ウィンスレット(ナンシー・カウアン)
◆クリストフ・ヴァルツ(アラン・カウアン)
【この映画について】
ヤスミナ・レザの舞台劇を原作に、二組の夫婦4人の室内劇を「ゴーストライター」のロマン・ポランスキー監督が映画化。本編の登場人物はたった4人。ほぼアパートの室内だけで話は進み、ドラマ内と実際の時間が完全にシンクロするなど、舞台向けの設定をあまり変える事なく映画化。
そのため楽しむべきは、アカデミー賞受賞経験がある3人とノミネート経験がある1人による、俳優たちの絶妙なアンサンブルといえよう。子どものケンカが発端で、両家の両親、はたまた夫婦どうしが激しい口論に発展していく様子は、和解のための話し合いがより激しい諍いに発展していく国際社会への風刺でもある。余裕を持って楽しめる大人のコメディだ。
出演は「幸せの1ページ」のジョディ・フォスター、「コンテイジョン」のケイト・ウィンスレット、「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」のクリストフ・ヴァルツ、「ダレン・シャン」のジョン・C・ライリー。(この項、gooより一部転載しました)
【ストーリー&感想】
ニューヨーク・ブルックリン、子ども同士のケンカを解決するため2組の夫婦、ロングストリート夫妻とカウアン夫妻が集まる。双方は冷静かつ理性的に話し合いを進めるが、いつしか会話は激化しホンネ合戦に。それぞれが抱える不満や問題をぶちまけ合い、収拾のつかない事態に陥っていく。

元々は舞台劇だった作品を巨匠ロマン・ポランスキー監督が映画化した。舞台版はみていないので知りませんが、ストーリー展開はほぼ全てロングストリート家の室内でのみなので、後は、監督の演出や役者の演技力に委ねられることになる。
タイトルにあるように、加害者のカウアン家の息子がロングストリート家の息子を怪我させたのがそのそもの発端。カウアン夫妻がロングストリート家に夫婦で出向いて謝るのだが、どうも訴訟関係の仕事をしている夫のアランは携帯で仕事のやりとりを繰り返し場を度々白けさせる。更に、アランはこどものけんかの謝罪に出向いたこと自体が乗り気では無かったのか、相手一家との会話もどこか上の空。
中だるみが起こりそうになると携帯を手放せないアランの話しで「両家の交渉」は遮られる。まあ、ストーリーはこの繰り返しで、そこに4人の仕事が会話の中で明かされる。我慢して聞き役に徹していたマイケルが途中で不満を爆発させたり、ナンシーが嫌々?食べたケーキをこぼして大騒ぎになったり、ペネロペが取材しているアフリカの話、アランの携帯を花瓶に投げ捨てるシーンなどで観客の関心を少しずつ惹きつける演出はポランスキー監督苦心のアイデアだろう。
ラストであれほど激論を交わした大人達の思惑を知らず、子供たちは再び仲良くしていましたというオチがユニークでした。これぞまさに「親の心、子知らず」でしょうか?私には子供が居ませんので実感は沸かないのですが...。

出演者はまさに二組の夫婦を演じた演技派俳優達。特に、クリストフ・ヴァルツは「イングロリアス・バスターズ」でアカデミー賞を受賞して以来ハリウッド映画界からも引く手数多状態の売れっ子。女優陣の二人については説明の必要は無し。4人の会話、特に最初はお互い猫を被っていたのが徐々にヒートアップしていく構成は流石だった。結局、この映画の製作費用は監督と4人の出演料が大部分を占めているのだろうね!

少女淫行事件でアメリカへ入国出来ない監督がNYを舞台にフランスで英語で撮影したこの映画、舞台版の英題は「God Of Carnage」
だそうで日本では2010年に「殺戮の神」の邦題で上演されていたそうだ。舞台版の邦題は英題の直訳だが、映画版の邦題は映画の中身をそのままタイトルにしたような感じ。どちらが良いとか悪いは別として、どちらのタイトルも?を付けたくなる。英題は多分、ペネロペが関心を持っているアフリカの出来事からなのだろうが、この作品を表現しているとは思えない。
※Carnageは大虐殺とか、殺戮とか物騒な意味の他に「修羅場」という意味も。原作の内容からどちらかと言えば「修羅場」の方が意味合いとしては近いと思う。「殺戮」はどうも映画のタイトルにはね...。


映画『善き人』を観て

2012-02-04 23:02:06 | ヨーロッパ映画

12-10.善き人
■原題:Good
■製作年・国:2008年、イギリス・ドイツ
■上映時間:96分
■字幕:渡邉貴子
■観賞日:2月4日、ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷)

 

□監督:ヴィセンテ・アモリン
□脚本:ジョン・ラサール
□撮影監督:アンドリュー・ダン
□編集:ジョン・ウィルソン
□美術:アンドリュー・ロウズ
□音楽:サイモン・レイシー
◆ヴィゴ・モーテンセン(ハルダー)
◆ジェイソン・アイザックス(モーリス)
◆ジョディ・ウィテカー(アン)
◆スティーヴン・マッキントッシュ(フレディ)
◆マーク・ストロング(ボウラー)
◆ジェマ・ジョーンズ(ハルダーの母)
◆アナスタシア・ヒル(ヘレン)
【この映画について】
善良であるがゆえに主人公ジョンは誰に対してもノーと言うことができない。上司にも、教え子にも、ナチ党にも。それは家族を守るため、生き残るためだった。結果として、無二の親友であるユダヤ人のモーリスを失うことになるのだが。英国の劇作家C・P・テイラーの名作舞台劇「GOOD」を原作に、ごく普通の男が直面する良心と保身の間の葛藤を描いた本作。
主人公ジョンを演じるのは知的でハンサムでセクシーなヴィゴ・モーテンセン。製作総指揮もつとめる『ハリー・ポッター』シリーズのジェイソン・アイザックスがモーリス役を好演している。メガホンをとったのは異色ロードムービー『Oiビシクレッタ』のヴィセンテ・アモリン。
(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】
1930年代、ドイツはヒトラーの台頭とともにナチ党の色に染められ、それは教育の現場も例外ではなかったが、ベルリンの大学で教鞭をとる文学教授ジョン・ハルダーは、失職覚悟で党に抵抗する余裕はなかった。介護が必要な母と妻のヘレン、そして2人の子供たちの生活を背負っていたからだ。

1937年4月、総統官邸から呼び出し状が届き、ジョンは党の検閲委員長ボウラーから意外な申し出を受ける。数年前にジョンが書いた不治の病に侵された妻を夫が安楽死させる内容の小説をヒトラーが気に入り、同様の「人道的な死」をテーマにした論文を書いてほしいという。断るすべもなく仕事を引き受けるジョン。さらに彼は、親衛隊少佐フレディから、執拗に入党の誘いを受け、ジョンは入党を決意、混乱した私生活にも区切りをつけようと思い立つ。母親をブランデンブルクの実家に帰し、ヘレンと別居。数年前から愛人として交際していた元教え子のアンと共に暮らし始める。

やがてジョンは学部長に昇進。親友のユダヤ人精神分析医モーリスは喜んでくれたが、ジョンの入党を知ると軽蔑の視線を投げつけて去っていく。
1938年10月、アンと再婚し、新たな人生を歩み始めたジョンは親衛隊大尉の肩書きを持つまでに出世を遂げていた。そんな中、ジョンの母が孤独な闘病生活に絶望して自殺未遂、そのまま帰らぬ人となった。ある日、パリ駐在のドイツ人書記官がユダヤ人に暗殺される事件が起こり、ベルリンで反ユダヤの暴動が発生。ユダヤ人の家や商店が襲撃され、ユダヤ人たちは警察に連行される。
この騒動にモーリスが巻き込まれることを案じたジョンは、駅へ出向き、パリ行きの切符を購入。「今晩自宅へ来てくれ」と、モーリスのアパートに伝言を残す。その直後、党本部への出頭を命じられたジョンは、留守を預かるアンにモーリスへの切符を託すが、結局彼は現れず、消息は途絶えてしまう。
1942年4月、親衛隊の幹部としてユダヤ人強制収容所の情報収集を命じられたジョンは、党の誇る最新鋭の設備を使い、モーリスの消息を追う。そのとき初めて、4年前のあの夜に何が起きたかを知るジョン。さらに収容所の視察に赴いた彼は、自分が無意識のうちにどれだけ深い罪を犯していたかに気づき、愕然とする……。

ひっそりと公開されていたこの作品、ヴィゴ・モーテンセンが大学教授として教鞭を取っていたが、ヒトラーに気に入られ時代の流れもあってナチスへ入党し親衛隊大尉の地位にまで登りつめた。その一方でユダヤ人の親友モーリスとの仲は入党で引き裂かれ、親友の為に罪滅ぼしの意識からか、自らの地位を利用して逃亡用の切符を用意するものの行き違いから失敗に終わった。
そして彼が収容所でかつての親友の変わり果てた姿を目にして、やっと自分のしたことの愚かさに築いた。そして、用意した切符を取りにモーリスは来たのだが、妻がナチスに通報してしまった事実を知ってしまい激しく動揺する。

ストーリーとしては時代の波に晒されながら生きてゆくユダヤ人のモーリスとジョンの話だが、学者であるジョンの政治アレルギーはその波に呑まれてしまった。そして親友の命運までをも間接的に左右してしまった。ジョンの家族についても描かれているのだが、話の流れの中のエピソード的な扱いであり、モーリスをナチスに引き渡してしまったシーンも映像では無し。従って、ヴィゴ・モーテンセン演じるジョンの苦悩する様子が全体を支配しているのだ。
題名はシンプルに「Good」で邦題では「善き人」となっている。この邦題の方はジョンの事も妻のアンのことも指しているのだろうし、戦争になる前なら特に誰と言う訳では無いのだが、原題は「Good Man」でも「Good People」でも無い。この意味は深いと思う。単純な題名だが、国家に取って「良いこと」をしたジョンだったが、収容所で大勢のユダヤ人をみて呆然とするのだが、時すでに遅しで、自らが関わってきたことに眼が覚めた時にはすでに取り返しのつかない状況だったからだ。

ヴィゴ・モーテンセンはアメリカ人俳優だが、彼は以前からヨーロッパ映画に積極的に出演し渋い演技を見せてくれるが、ここでも感情を押し殺す場面が多いのだがイギリス人俳優に交じっての出演だが何の違和感も感じない良い俳優だ。娯楽性の高いハリウッド映画より、この手のヨーロッパ映画がこれからも彼の演技力を遺憾なく発揮出来る場であると思うので、今後も出演作は関心を持ってチェックしたい。


映画『デビルズ・ダブル-ある影武者の物語』を観て

2012-01-15 11:27:21 | ヨーロッパ映画

12-5.デビルズ・ダブルズ
■原題:The Devil's Double
■製作年・国:2011年、ベルギー
■上映時間:109分
■字幕:林完治
■観賞日:1月14日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ(六本木)
 

監督:リー・タマホリ
□脚本:マイケル・トーマス
□原作:ラティフ・ヤヒア
□撮影:サム・マッカーディ
□編集:ルイス・カルバリャール
□美術:ポール・カービー
◆ドミニク・クーパー(ウダイ・フセイン/ラティフ・ヤヒア)
◆リュディヴィーヌ・サニエ(サラブ)
◆ラード・ラウィ(ムネム)
◆フィリップ・クァスト(サダム・フセイン/フワズ)
◆ミムーン・オアイッサ(アリ)
◆ハリド・ライス(ヤセム・アル=ヘロウ)
◆ダール・サリム(アッザム)
◆ナセル・メマジア(ラティフの父)
【この映画について】
イラクの独裁者サダム・フセインの息子、ウダイの影武者だったラティフ・ヤヒアの自伝を映画化した衝撃作。ウダイに顔が似ていることから無理やり影武者に仕立てられ、人生を狂わされた男の絶望と怒りを描き、サンダンスやベルリンなど世界各国の映画祭で絶賛された。監督は、『007/ダイ・アナザー・デイ』のリー・タマホリ。狂気にとらわれたウダイと家族を愛するラティフという、正反対の2人を一人二役で演じ切った『マンマ・ミーア!』のドミニク・クーパーの熱演が光る。(この項、シネマトゥディより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
20世紀末、世界中の国家を敵にまわしたイラクの独裁者サダム・フセインには、タブー視されていた息子がいた。“狂気の申し子”と悪名高く〈ブラック・プリンス〉と呼ばれた長男・ウダイ・フセイン(1964.6.18-2003.7.22)。そのウダイに顔が似ているという理由で選ばれ、家族の命と引き換えにウダイの影武者を引き受けることとなった男がいた。

男の名はラティフ・ヤヒア。整形手術と付け歯、徹底した所作訓練でウダイに酷似させられたラティフは、ウダイを生きることを強いられ「サダムの息子が前線にいる」というパフォーマンスのためにと、戦火の地にさえも送られた。
莫大な資産と、全てを思うがままにすることを許される権力、毎夜抱き替える女たち、そして理由なき血への欲求。ウダイの飽くなき狂気に寄り添い、影武者として傍らで応え続ける日々に、自身を許容できなくなったラティフだが、彼には生死を選ぶ自由さえ許されてはいなかった。そんなある日、逃げても執拗に追いかけてくるウダイと、ついに戦うことを決意するラティフ。悪魔と対峙することを決意した彼はどう立ち向かい、何を得、何を失うのか……。

サダム・フセインを上回る狂気の持ち主であるウダイ(劇中ではウ・デ・イと発音)に影武者が居たと言う話は知らなかったが、父サダムには影武者が居たことは知られていた。ここではウダイと影武者の双方をドミニク・クーパー一人が見事に演じ分けていた。別々の役者がメイクを似せて演じるという発想は珍しくないが、そういう意味でドミニク・クーパーが別人格に成りきって演じていたのは評価に値する。
ストーリー的には、実際にあったであろう事実やエピソードを元に脚色したのだろうから、これと言って注目するような内容では無かった。それでもウダイが結婚式に乱入?して未成年の花嫁を犯した挙げ句に自殺に追い込む場面や、父サダムの側近をパーティーで惨殺するシーンなどはウダイの狂気を物語っている。逆にこの映画では父サダムの狂気は描かれずに、むしろウダイの自由奔放さの度を超えた振る舞いに手を焼く父として登場するので、湾岸戦争時の独裁者としてのイメージを持つ我々には違和感を感じさせられた。

サダムの側近を惨殺したことで父の逆鱗に触れたウダイだったが、最後は、影武者のラティフも堪忍袋の尾を切ってしまいウダイお気に入りの愛人であるサラブとの逃避行あたりから映画らしくなってきた。だが、足取りは直ぐにばれてしまうのだが、ウダイも最後は女漁りの最中に奇襲にあい、あわや命を落とす寸前まで追い込まれてしまった。

この映画を何故このタイミングで製作されたのかは疑問で、しかも、ベルギー映画として製作されながらもセリフは全て英語でドミニク・クーパーはイギリス出身、リュディヴィーヌ・サニエはフランス出身、サダム役のフィリップ・クァストはオーストラリア出身で、その他の脇役にアラブ系の俳優を配しバランスを取っているが、イラクが舞台で登場人物の会話が全て英語というのもどうなのかな?
ハリウッド映画としては製作できず、ベルギー映画として製作されたのだがスポンサーや配給会社が二の足を踏んだのだろうか?それでもウダイと影武者を同時に演じたドミニク・クーパーに取っては演技の幅が広がったし、二つの人格を一人で演じるのは難しいのに見事だった。


映画『パーフェクト・センス』を観て

2012-01-09 23:25:58 | ヨーロッパ映画

12-3.パーフェクト・センス
■原題:Perfect Sense
■製作国・年:2011年、イギリス
■上映時間:92分
■字幕:鈴木恵美
■観賞日:1月9日、新宿武蔵野館(新宿)
 

□監督:デヴィッド・マッケンジー
□脚本:キム・フォッブス・オアーカソン
□撮影監督:ジャイルズ・ナットジェンス
□編集:ジェイク・ロバーツ
□美術:トム・セイヤー
□音楽:マックス・リヒター
◆ユアン・マクレガー(マイケル)
◆エヴァ・グリーン(スーザン)
◆ユエン・ブレムナー(ジェームズ)
◆コニー・ニールセン(ジェニー)
◆スティーブン・ディレイン(スティーブン)
◆デニス・ローソン(レストランのオーナー)
【この映画について】
嗅覚、味覚、聴覚、視覚、触角の五感を奪う未知の感染症が蔓延し、人類存亡の危機に陥った世界を舞台に、危機的な状況下で運命に導かれるように出会い、恋に落ちた男女の行く末を描く。
2011年のサンダンス映画祭に出品され、その斬新な映像世界が注目を集めた作品だ。主演は楽観主義者のシェフを演じるイギリスが誇るトップスター、ユアン・マクレガーと、心を閉ざした科学者役のエヴァ・グリーンが見せる繊細な演技は注目に値する。監督は、『猟人日記』でもユアンを主演に迎えたデヴィッド・マッケンジー。世界終焉をモチーフにした壮大な設定と、共感を呼ぶラヴ・ストーリーを融合させた構成が、絶妙なコントラストを醸している。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
スコットランドのグラスゴーの医療研究施設に勤務するスーザンが、ある日、同僚のスティーブンかあら病院への同行を求められる。すこで対面したのは、一人の急患の中年男性。妻との会話中に突然泣き崩れ「生きる意味が分からない」と呟き嗅覚を失ったと言う。しかも、同様の症状を訴える患者は欧州各国で続出していた。感染症の専門家である二人は病院側から意見を求められるが、全くの未知の症状であったことから「重症嗅覚障害症候群」の頭文字から「SOS」と名付けられた。
“SOS”と名付けられた原因不明の感染病が爆発的に拡散、あらゆる人々の臭覚を奪い去ってしまう。その勢いは衰えることなく、感染者たちの味覚や聴覚をも失わせ、人類は存亡の危機に陥っていく……。シェフのマイケルと科学者スーザンは、そんな極限状況のさなかにめぐり合い、奇しくも謎の病に冒されたまさにその瞬間、恋に落ちた。ひとつ、またひとつと五感を喪失し、世界が終わりを迎えようとしたとき、ふたりはいったい何を求め、何を感じ取るのだろうか……。

ユアン・マクレガー演じるレストランのシェフと 、向かいのアパートメントに住むスーザンはそんな混乱の中で知り合い、客足の途絶えたレストランの厨房に招き即席の料理をふるまい、お互いの距離は急速に縮まる。
スーザンの職業がウィルスの研究者というのは出来過ぎの様な設定だが、堅い職業の彼女と快楽主義者的なスティーブンとは対照的な性格として描かれている。愛想の良い青年役を演じるユアン・マクレガーにとってはハマり役のように思えるのだが、ウィルスが蔓延し始めて、自分達もやがて感染するのではないか?という恐怖と戦い、やはりその通り感染してしまう。
特に、彼が感染してしまい厨房で料理を貪り食うシーンは未知のウィルスの恐怖を観客に植え付けさせる大事なシーンだが、この映画はウィルスの恐怖よりも、ウィルスが蔓延している社会状況下で知り合ったマイケルとスーザンのラヴストーリーとしての側面がむしろ色濃く反映されている。
マイケルはスーザンのタブーに踏み込む発言をして傷つけ、一度は破局してしまうのだがウィルス感染してしまい声も嗅覚も失ってしまい改めてお互いの存在の大きさに気付く。そして、ラストの声の無いシーンが数分間続くのだが、映画はセリフと映像が一体となって成立するのだが、ここではお互いが声を発するのだが「音」は無い。そこで人間の持つ脳の中で蓄積された情報・映像をフルに発揮することで相手とのコミュニケーションを図ると言う感覚(パーフェクト・センス)を得るのだった。

「コンテイジョン」とは異なりウィルスの恐怖にターゲットを絞らず、その中で人間が発揮する隠された能力とか感覚についてを一組のカップルを通して描いた脚本のセンスの良さと、それを演じたユアン・マクレガーとエヴァ・グリーンの確かな演技力も見事だった。


映画『ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-』を観て

2012-01-04 21:52:42 | ヨーロッパ映画

12-2.ロンドン・ブルバード-LAST BODYGUARD-
■原題:London Boulevard
■製作年・国:2010年、イギリス
■上映時間:104分
■字幕:加藤真由美
■観賞日:1月3日、ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷)

 

□監督・脚本・製作:ウィリアム・モナハン
□撮影監督:クリス・メンゲス
□美術:マーティン・チャイルズ
□音楽:セルジオ・ピッツォーノ
◆コリン・ファレル(ミッチェル)
◆キーラ・ナイトレイ(シャーロット)
◆デイヴィッド・シューリス(ジョーダン)
◆アナ・フリール(ブライオニー)
◆ベン・チャップリン(ビリー・ノートン)
◆ジェイミー・キャンベル・バウアー(ホワイトボーイ)
◆オフィーリア・ロビボンド(ペニー)
◆ステファン・グラハム(ダニー)
◆アラン・ウィリアムズ(ジョー)
◆レイ・ウィンストン(ギャント)
【この映画について】
元ギャングと元女優、まったく違う世界で生きてきた男女が出会い、共に自由を手に入れようとする姿を描く犯罪ドラマ。『ディパーテッド』の脚本家ウィリアム・モナハンが、コリン・ファレル、キーラ・ナイトレイら、英国の人気スターを集め、初監督に挑戦。ブリティッシュ・ノワールとも言うべきスタイリッシュな映像を作り上げた。(この項、MovieWalkerより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
重傷害罪で3年間服役していたミッチェルは、今日晴れて出所の身となった。彼はギャングの世界から足を洗おうと考えていたが、迎えに来た悪友ビリーから、住まいとの交換に借金取りの仕事を手伝うことを頼まれる。

その夜、ミッチェルの出所祝いのパーティーでは、妹ブライオニーが酔って暴れていた。盗みと酒とドラッグが好きな彼女は、ミッチェルにとって愛すべきたったひとりの家族であり、心配の種でもある。そんな中、彼はパーティーで再会した女性記者ペニーからある仕事を紹介される。それは引退した女優シャーロットの屋敷の雑用係兼ボディガードだった。
高級住宅街にある屋敷を訪ねると、シャーロットは外にいるパパラッチに怯えていた。彼女は夫と離婚し、屋敷には他にハウスマネージャーの元俳優ジョーダンがいるだけ。ミッチェルは彼女を護る仕事を引き受ける。

そんな折、友人の老人ジョーが、少年2人組に暴行されて死亡。墓地の手配をビリーに頼んだミッチェルは、その代償に借金取りを再び手伝わされるが、屈強な黒人男4人に襲われ、逃げたビリーの分まで殴られる始末。だがその度胸のよさに、ビリーのボスでギャングの顔役ギャントが惚れ込み、楽な儲け仕事をエサにミッチェルを抱き込もうとする。だがミッチェルはそれを辞退、シャーロットの車の運転手として彼女の田舎の別荘に同行する。
束の間の静かな時にシャーロットは次第にミッチェルに心を許し、自分のことを話し始める。実は彼女はイタリアでレイプされて心に傷を負い、そのせいで女優を辞めたのだった。二人はいつしか恋に落ちるが、そんな彼らを見張るかのようにパパラッチが現れる。一方、ミッチェルを何としてでも自分の配下に置きたいギャントは、その後も執拗につきまとう。
ギャントはすでにビリーを通じてミッチェルの生活を探り、シャーロットやブライオニーまで監視、そしてジョー殺しの少年たちも保護下に置いていた。女優復帰を決めたシャーロットとロサンゼルスで落ち合う約束をしたミッチェルは、ジョーダンの協力を得てギャントへの反撃を開始する……。

コリン・ファレルは数年前までは一年に何本も出演作が公開されどれもがヒット作での主役格俳優だったが、気が付いたら出演作がグッと減ってしまい、今では「どうしているんだろう?」ってな感じでしたので久し振りに観た映画がこれでした。
本作はイギリス映画なので派手なドンパチはなく、サブタイトルにあるようにギャングの世界から足を洗って「ボディーガード」として女優を守る仕事に就く一人の男の話。
彼自身は裏稼業から足を洗いたいのだが、彼の「実力」を高く評価する連中は彼が足を洗う事を許さない。かつての仲間もギャントも執拗に彼を追う。ミッチェルはジョーが少年二人組に殺されたことで何としても相手を突き止めようと情報のネットワークを張り巡らし、サッカーが得意だが素行の悪い少年を特定し尾行する。結局、この少年追跡は相手にも知られることになり、ミッチェルはチョットした隙をつかれて逆にこの二人に刺され、それが致命傷になり落命する。
折角、ロスで復帰を果たすシャーロットの姿を見ようと渡米を計画していたのに不覚だった。最も、この映画、仮にミッチェルが少年に刺されずに無事にロスに行ってシャーロットと仲良くなっても面白くないので、最後に彼が亡くなったことで映画全体のインパクトが強くなったのは皮肉かな?

コリン・ファレルは久し振りでしたが、台本は地味でしたが彼なりに活躍?していたので良かったですが、キーラ・ナイトレイは本来なら主役級の女優が、ここでは目立つ活躍は無かったのは残念。


映画『ブリューゲルの動く絵』を観て

2011-12-23 23:21:55 | ヨーロッパ映画

11-90.ブリューゲルの動く絵
■原題:The Mill And The Cross
■製作年・国:2011年、ポーランド・スウェーデン
■上映時間:96分
■字幕:小野郁子
■料金:1,700円
■鑑賞日:12月23日、ユーロスペース

 

□監督・製作・脚本・撮影監督・音楽:レフ・マイェフスキ
□脚本:マイケル・フランシス・ギブソン
□撮影監督:アダム・シコラ
□衣装デザイン:ドロタ・ロクエプロ
□美術:カタジーナ・ソバンスカ、マルセル・スラヴィンスキ
□編集:エリオット・エムス、ノルベルト・ルジク
□音楽:ヨゼフ・スカルェク
◆ルトガー・ハウアー(ピーテル・ブリューゲル)
◆シャーロット・ランプリング(聖母マリア)
◆マイケル・ヨーク(ニクラース・ヨンゲリンク)
【この映画について】
闇に光を与えたキリストを葬ることは再び闇に支配を許すこと。しかし、人間は愚行を繰り返す一方で、何度でも立ち上がり、図々しいほどの逞しさで歴史を作ってきた。16世紀フランドル絵画の巨匠ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」は、処刑地ゴルゴダの丘へ向かうキリストの道行を当時のアントワープを舞台にして描き出したユニークな傑作。その作品世界に入り込んで普遍的な人間の営みを活写してみせたのは、『バスキア』で原案・脚本を手がけたポーランドの鬼才レフ・マイェフスキ。デジタル技術を駆使した斬新で大胆な映像表現とダイナミックなサウンドに圧倒される。
出演は「ザ・ライト エクソシストの真実」「ホーボー・ウィズ・ショットガン」のルトガー・ハウアー、「わたしを離さないで」「スイミング・プール」のシャーロット・ランプリング。
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
16世紀のフランドルの夜が明け、農村の一日が始まる。若夫婦は仔牛を売りに出かけ、岩山の風車守りの家族は風車を回し小麦を挽く。だが、のどかな村の様子とはうらはらに、支配者は異端者を無惨に迫害していた。
アートコレクターのニクラース・ヨンゲリンクは画家ピーテル・ブリューゲルに、このあり様を表現できるかと問いかける。それに応えブリューゲルが風車の回転をとめると、すべての光景がぴたりと動きをとめた。するとフランドルの風景の中にキリストや聖母マリアらが過去から舞い戻り、聖書の「十字架を担うキリスト」の物語が始まるのだった……。

ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」は、十字架を背負いゴルゴダに向かうキリストの受難の物語を、1564年のフランドルを舞台にして描き出した傑作。映画では数百人がひしめきあうこの絵画から、十数人にスポットが当てられ、彼らの当時の生活の様子と聖書の物語が絡み合いながら繰り広げられてゆく。
ブリューゲルが描いたこの絵の中のほぼ中央で十字架を背負っているのがキリストであるが、眼を凝らしてみないとこれがキリストであるとは分からない。そもそもこの映画には、この絵を分析した美術批評家マイケル・フランシス・ギブソン著「The Mill And The Cross」が原作となっている。
ギブソンはマイェフスキの作品に深く関心を寄せていて、彼に自著の「The Mill...」を贈ったのがこの映画化の始まりだったそうだ。マイェフスキはたぐいまれな想像力を発揮し、まるで一枚の絵画が動いているかのような絵画と映像の融合をCGを駆使して見事にスクリーンに投影した。

この映画はストーリーを楽しむと言うより、邦題にあるように「動く絵」そのものを観賞した人たちが如何にして楽しむかでしょうね。ここには主人公が雄弁にセリフで語るシーンは僅かで、無言のシーンが続きますが「ツリー・オブ・ライフ」で感じたような”苦痛”ありませんでした。
この画から当時のフランドル地方の苦しい生活が垣間見えるようで、そこにキリストの苦難を掛け合わせた解釈は我々日本人には理解するのが難しいですが、この映画の良い所は映像でそうした点を超越したことだと勝手に思いました。


映画『灼熱の魂』を観て~2011年で最も印象的だった作品

2011-12-20 20:52:22 | ヨーロッパ映画

11-88.灼熱の魂
■原題:Incendies
■製作年・国:2010年、カナダ・フランス
■上映時間:131分
■字幕:松浦美奈
■料金:1,800円
■鑑賞日:12月19日、TOHOシネマズシャンテ

□監督・脚本:ドニ・ヴィルヌーヴ
□原作:ワジディ・ムアワッド
□撮影監督:アンドレ・トゥルパン
□編集:モニック・ダルトンヌ
□美術:アンドレ=リン・ボーバルラン
□音楽:グレゴワール・エッツェル
◆ルブナ・アザバル(ナワル・マルワン)
◆メリッサ・デゾルモー=プーラン(ジャンヌ・マルワン)
◆マキシム・ゴーデット(シモン・マルワン)
◆レミー・ジラール(公証人ジャン・ルベル)
【この映画について】
憎しみと暴力が生む報復の連鎖を断ち切る術をひとりの母親が提示する。主人公は愛する者と交わした約束を守るために地獄のような日々を生き抜く強靱さの持ち主だ。その半生を辿る双子の旅はギリシャ悲劇さながらに驚愕の真実を突きつける。
レバノン出身でカナダ在住の劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲「Incendies」に衝撃を受けた『渦』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がダイナミックに映画化した本作。『パラダイス・ナウ』『愛より強い旅』のベルギー人女優ルブナ・アザバルが主演女優賞に輝いたのを始め、カナダ版アカデミー賞に当たるジニー賞で8部門を制覇し、米国アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた魂を揺さぶる秀作である。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワンは、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌとシモンにも心を開くことがなかった。そんなどこか普通とは違う母親は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去った。その二通の手紙は、ジャンヌとシモンが存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられていた。遺言に導かれ、初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命を探り当てていくのだった……。

謎めいた様子のナワル・マルワン、秘書として勤務している会社内でも自分の事は殆ど語らず、後見人役でもある経営者も彼女から遺言を託されたが戸惑うばかり。そのナワルがプールサイドで彼女だけにしか分からない「何か」に気が付いたことがストーリーの発端で、最初と最後のシーンを挟む形で映画は展開する。
遺言どおり母の過去を知ろうとする姉と気乗りしない弟、対照的な性格の双子、積極的に取り組む姉だったが徐々に母の知られざる過去に辿り着くことで、新たな戸惑いを感じる。一枚の写真から母の出身の中東へと飛び、母が学んでいた大学~出身地へと若かりし時代へと遡る。そこで分かったことは、母ナワル・マルワンはキリスト教徒で、異教徒(イスラム教)の恋人との間に子供を授かった。だが、保守的な村で異教徒との恋はご法度で恋人は銃殺され、お腹の子供も出産と同時に手放すことになった。この時、彼女は「いつか必ず探しに来る」と誓う。

叔父宅へ身を寄せて大学に通うが内戦が勃発し大学は閉鎖され、別れた息子を捜しに故郷へと向かうがキリスト教徒とイスラム教徒との戦争は激化していた。息子に辿り着くこと無くイスラム教勢力のテロリストとして活動しキリスト教右派指導者を射殺したが相手側に捕まり南部の監獄へ送られ、そこで死よりも残酷なこの世の地獄を体験することになる。

双子の姉ジャンヌはこの監獄に母が居たことを突き止め、監獄に15年間幽閉され拷問を加えられ獄中で出産していた事実を知りそれが自分たちだった。しかし父が誰なのかは結局判明しなかったが、兄と思える人物の消息が微かに分かり始めた。
母の故郷での調査では結局父も兄も判明しなかった。だが、母がプールサイドで放心状態に陥ったのは何故だったのか?カナダに戻って双子の姉弟が母から託され渡すことになった手紙の相手は驚くべく人物だった。姉弟が2通の手紙を手紙を渡したのは同一人物だった。

【ネタバレ】生き別れになっていたナワル・マルワンと異教徒の間の子。監獄で母をレイプ、拷問を加えたのは何と「息子」だったが、息子は母だと知らなかった。息子はまだ見ぬ母への思いを胸に抱いてカナダへと移住し、母もカナダへと移住した。母は息子の体にある「目印」をプールサイドで発見した。それをみて母は放心状態に陥いるが、母は決して親子であることを言わなかった。息子がその事実を知ったのは双子からもらった手紙を読んでからだった。「息子は号泣」するが、事実を知ったとき、母は既にこの世にはいなかった。

このストーリーは古代神話オイディプスをベースにした戯曲からの映画化なのだが、作者がレバノン出身であることから映画内では特定されていないものの、舞台はレバノン(ロケ地はヨルダン)であることは明白である。キリスト教徒とイスラム教徒の対立から内戦に突入し国が荒廃して行く様子はレバノンそのものと言える。
一枚の写真から母の知られざる過去を辿って行く過程で双子の姉弟が知った事実は余りにも過酷だったが、母は敢えて自らの口で語るのではなく二人にこういう形で知ってもらいたかったのだろう。そこには母自身の過酷な体験もあり、それを知ることで報復、暴力の連鎖を断ち切ることの大事さを体験してもらいたかった。同性の姉ジャンヌは積極的に調査に参加するが、弟は尻込みしていたが姉に中東まで呼び出され最後には男らしく?積極的に関わるようになったことで、重要な手掛かりを得たのだった。
双子の出自を知ることで非暴力の連鎖を断ち切り、宗教を越えてお互いが理解することの大切さを知ってもらいたかったのだと母は思う。双子の体にはキリスト教徒であった母の血と、その母とイスラム教徒との間に生まれた父であり兄でもある男性の血が二人には流れているからだ。
ラストは二人が目的の人物に手紙を渡す場面で終わって行くのだが、真相を知った渡された方はどういう気持ちで今後の人生をカナダで送るのか、或いは送ったのか?そちらも観終わって気になった。

予告編を観たとき、この映画はどういう展開なのか理解し難かったが、観終わって、間違い無く2011年で最も印象に残った作品です。ストーリーの構成も独立した「章」から成り立っていて分かり易い。主演でナワル・マルワンを演じているのはベルギー出身の女優だが、台詞よりその場その場での状況に応じた表情が全てを語っていたように本人に成りきっていた。

この映画はアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたものの、受賞はデンマーク代表の「未来を生きる君たちへ」だったが、「灼熱の魂」が受賞しても不思議では無かった。もっとも「未来を生きる君たちへ」も良い作品なので受賞は当然だと思います。ただどちらも非暴力に対するメッセージが製作の背景にあるのは共通しています。
日本では拡大公開ではなくミニ・シアター系での上映が中心で地方での上映も僅かなので、上映されない地方での映画ファンにはDVD発売時にご覧ください。


映画『サラの鍵』を観て

2011-12-17 22:19:54 | ヨーロッパ映画

11-86.サラの鍵
■原題:Elle s'appelait Sarah(英題:Sarah's Key)
■製作年・国:2010年、フランス
■上映時間:111分
■字幕:斎藤敦子
■料金:1,800円
■鑑賞日:12月17日、新宿武蔵野館(新宿)


□監督・脚本:ジル・パケ=ブレネール
□脚本:セルジュ・ジョンクール
□原作:タチアナ・ド・ロネ
□撮影監督:パスカル・リダオ
□編集:エルヴェ・シュネイ
□美術:フランソワーズ・デュペルデュイ
□音楽:マックス・リヒター
◆クリスティン・スコット・トーマス(ジュリア・ジャーモンド)
◆メリュジーヌ・マヤンス(サラ・スタルジンスキ)
◆ニエル・アレストリュプ(ジュール・デュフォール)
◆フレデリック・ピエロ(ベルトラン・テザック)
◆エイダン・クイン(ウィリアム・レインズファード)
◆シャーロット・ポートレル(成長したサラ)
◆ナターシャ・マシュケヴィッチ(ミセス・スタルジンスキ)
◆アルベン・バジュラクタラジ(ミスター・スタルジンスキ)
【この映画について】
ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、ヴェルディヴ事件を題材に、過去と現代を交錯させながらユダヤ人一家に起こった悲劇を描く感動的な社会派ドラマ。世界中で300万部を売り上げたタチアナ・ド・ロネの原作を基に、『マルセイユ・ヴァイス』のジル・パケ=ブランネール監督が映画化。
『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマスが、アウシュビッツについて取材するジャーナリストを好演。次第に解き明かされる衝撃の事実とラストに胸を打たれる。(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】
夫と娘とパリで暮らすアメリカ人女性記者ジュリアは、45歳で待望の妊娠をはたす。が、報告した夫から返って来たのは、思いもよらぬ反対だった。
そんな人生の岐路に立った彼女は、ある取材で衝撃的な事実に出会う。夫の祖父母から譲り受けて住んでいるアパートは、かつて1942年のパリのユダヤ人迫害事件でアウシュビッツに送られたユダヤ人家族が住んでいたというのだ。さらに、その一家の長女で10歳の少女サラが収容所から逃亡したことを知る。

一斉検挙の朝、サラは弟を納戸に隠して鍵をかけた。すぐに戻れると信じて……。果たして、サラは弟を助けることができたのか?2人は今も生きているのか?事件を紐解き、サラの足跡を辿る中、次々と明かされてゆく秘密。そこに隠された事実がジュリアを揺さぶり、人生さえも変えていく。すべてが明かされた時、サラの痛切な悲しみを全身で受け止めた彼女が見出した一筋の光とは……?

このストーリーはヴェルデイヴ事件とその後のサラの人生と、ジュリアが45歳にして妊娠したことで夫との間に不協和音が生じたこと。この二つが中心に進んでいき、更に、ジュリアがサラのことを取材を通じて知ったことで夫との間に修復不能な亀裂が生じてしまい苦悩する様子が描かれている。
どの話もお互いに密接に絡んでいて知られざるサラの人生をジュリアが取材と称して暴いてしまったことで、サラのことを深く知らなかったサラの息子にまで衝撃を与えてしまう。特に息子は自分にユダヤ人の血が流れていることすらジュリアに明かされるまで知らず、また、ジュリアがサラがアメリカに渡ってからその最期を迎える瞬間までの人生にまで踏み込んだので家族は複雑な思いを抱く。

サラは弟を寝室に閉じ込めてしまい、ヴェルディブ事件から移送先の収容所を抜け出して親切なフランス人夫婦に匿われてかつての自宅に戻ったものの、そこには変わり果てた弟の姿しか無かった。映画なので亡くなった弟の姿は明かされないが、その時のサラの号泣していた姿がそれを物語っている。
サラは両親とも弟とも切り離され、引き取られたフランス人夫妻の家を音も無く去り、人知れずアメリカへと渡り人生を終える。その終え方にまでジュリアが踏み込んでしまったのでサラの遺族からは反発されるし、彼女の夫からは軽蔑され家族から孤立する形で、結局ジュリアは夫の理解を得られず離婚し一人で出産する。

ジュリアは生まれた娘に「サラ」と名付けるが、それは、サラが封じた自らの人生の軌跡を暴いてしまったジュリアが、自らの取材を通じて知ったあの事件の記憶を語り継いでいくことで、あの事件で命を落とした多くのユダヤ人達の魂も少しは救われるに違いない。

「黄色い星の子供たち」でも扱われていた題材だが、こちらはユダヤ人少女サラ・スタルジンスキとジュリアのお話が中心。サラを演じた子役が大人顔負けの演技で非常に良かった。この子役
メリュジーヌ・マヤンス無くしてこの映画は成立しなかったと言っても過言ではないだろう。


映画『スウィッチ』を観て

2011-12-16 17:28:36 | ヨーロッパ映画

11-85.スウィッチ
■原題:Switch
■製作年・国:2011年、フランス
■上映時間:100分
■料金:1,000円
■鑑賞日:12月14日、新宿武蔵野館
 


□監督・脚本:フレデリック・シェンデルフェール
□脚本:ジャン=クリストフ・グラジェ
□撮影:ヴィンセント・ガロ
□音楽:ブルーノ・クーレ
◆カリーヌ・ヴァナッス(ソフィ・マラテール)
◆エリック・カントナ(ダミアン・フォルジャ)
◆メーディ・ネブー(ステファニー)
◆オーレリアン・ルコワン(ドロール)
◆カリーナ・テスタ(ベネディクト・セルトー)
◆ブルーノ・トデスキーニ(ヴェルディエ)
◆マキシム・ロイ(クレール)
【この映画について】
期間限定の自宅交換システムが、ごく平凡な女性を殺人の濡れ衣&身元乗っ取りの恐怖に陥れるという衝撃のサスペンス・スリラー。主人公のソフィ役に抜擢されたのは、ケベックを拠点に活動する新進女優カリーヌ・ヴァナッス。折り紙付きの実力を備えた若手有望株の彼女が魅せる演技力&生命力の眩さには、誰もが見惚れずにいられないだろう。
監督は、『スパイ・バウンド』『裏切りの闇で眠れ』などデビュー以来一貫して猟奇犯罪や裏社会にまつわるテーマを探求してきた鬼才フレデリック・シェンデルフェール。またシェンデルフェール監督とともに脚本を練り上げたのは、『クリムゾン・リバー』の原作者ジャン=クリストフ・グランジェ。このミステリー界の大御所が、急展開に次ぐ急展開の果てに最後に突きつける“驚愕の真実”は、あらゆる観客が息をのむであろう奇想に満ちている。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
モントリオール在住、25歳のカナダ人女性ソフィ・マラテールは容姿も気立ても悪くないが、バカンスを一緒に過ごす親しい友人や恋人がいなかった。その上、ファッション・イラストレーターの仕事は絶不調。あらゆる運に見離されたソフィに、雑誌編集者クレールからアドバイスが。それは“switch.com”というサイトにアクセスし、海外の利用者と自宅を交換してみてはどうかというものだった。

彼女の体験談に惹かれたソフィは、早速、登録。まもなくベネディクト・セルトーという女性との間で契約が成立し、パリに旅立つ。パリ7区にあるベネディクトのアパートは、外観も内装も豪華な造り。
解放感を味わったソフィは、期待に胸を膨らませるが、翌朝待っていたのは悪夢のような出来事だった。激しい頭痛と嘔吐感で目覚めたところに、玄関を破壊して警官隊が突入してくる。連行された警察では、殺人課警部ダミアン・フォルジャから信じられない話を聞かされる。アパートの別の部屋でトマ・ユイゲンスという若者の死体が見つかったというのだ。その上、その死体は切断された頭部が行方不明で、凶器のナイフにはソフィの指紋が付着。さらに問題なのは、警察がソフィを“ベネディクト・セルトー”として逮捕したことだった。

自分がソフィ・マラテールであると主張し、すべての経緯を説明する。しかしアパートで押収されたベネディクト名義のパスポートにはソフィの写真が貼られ、“switch.com”も跡形もなく消滅。何一つ彼女がソフィ・マラテールであることを証明するものは見つからなかった。ソフィは、見知らぬ殺人鬼にアパートだけでなく、身元まで“スウィッチ”されてしまったのだ……。何故自分なのか、ベネディクトとは一体何者なのか……。やがて、事件は猟奇性をはらんだ驚愕の真実へと繋がっていく……。

以前、ジュード・ロウとキャメロン・ディアス主演で「ホリデイ」という、自宅交換を題材としたラヴ・コメディがあったが、今回は同じ「自宅交換」であっても、そこに恐ろしい陰謀が隠されていたこの作品とは大違い。だが、どちらも共通しているのは「自宅交換」であるが、日本人にはネットを通じてお互いの自宅を一定期間交換して滞在するという題材は馴染みにくいのだが、映画の中での話としては面白い。
「スウィッチ」ではパリとモントリオールの2大都市を巡る話しで、どちらもフランス語圏大都市で起きる。オープニングからして退屈な生活で変化を求めるソフィが、知人に勧められるのだが、ここは余りにも呆気無くイキナリのパリ行きが決まるのだが、手筈が良過ぎて観ている側に疑問を感じさせるスタート。
パリに着いて近所をウキウキ気分で散歩しているとイランからの男子留学生から声をかけられるが、この留学生が後になって鍵を握る存在に。しかしというかやはり上手い話には裏があり、翌朝、ソフィは警察官が乱入して来て訳も分からないうちに警察署へ殺人容疑で連行される。担当刑事のフォルジャを演じているのがエリック・カントナで、彼はフランス大統領選へ出馬すると言われている人物でサッカーの有名選手だったそうだ(私はサッカー全く知らないのでどの程度のレベルの選手だったかは?です)。

取り調べで何時の間にか自分が殺人犯扱いされ、自分の身分を証明するものもなくなり困惑するソフィ。その彼女が大胆にも隙をついて逃亡し、警察の追跡を交わすのだが元サッカー選手のカントナでさえ息絶え絶えの彼女の身軽さは凄い。ソフィ役のヴァナッスは飛びきりの美人ではないけど、サービスショットもあり逃亡劇は思わぬ協力者やイラン人留学生の裏切りもあるが逃げまくる。
この逃亡劇の裏ではフォルジャが徐々に「彼女は本当に犯人?」という疑問も沸いてきて、更に、犯行想定時間の誤りに気が付くなど、警察内部の杜撰さが浮き彫りになり、事件は徐々に核心へと迫る。フォルジャはソフィの過去とカナダでの生活について調べている間に、一つの疑問からある女性へと行き着いた。
最初は犯人像が全く見えなかったのが、ソフィがフランスで育っていた時代にヒントがあり、その時のソフィの父が精子バンクに小遣いの足しに登録していたことが判明。そこから一気に事件は進展し、犯人の女性ベネディクト(自宅交換を持ちかけた女)と最初の犠牲者、ソフィは同じ父を持つ兄弟姉妹であることが分かる。互いに面識は無いのだが、犯人の女性が自らの境遇とソフィの恵まれた生活に嫉妬したのが動機だった、というのがオチでした。

このオチ、ベネディクトが自分の両親が実はそうでは無かったのが出発点でもあるのだが、だからと言ってソフィとトマを殺害しなくとも良いのに?ってな疑問が観終わっても残りましたね。ただ、自宅交換サイトも周到に用意された罠でありモントリオールの家まで燃やされるという恐怖は観ていてもゾッとしました。
ソフィが必死に警察から逃れる様子はスピード感があって楽しめた半面、やはり、犯行を企画して実行するまでの流れが上手く整理できていなかったように思えます。その部分にもっと捻りを加えたら一級品のサスペンスになっていたかも。


映画『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船3D』を観て

2011-11-23 16:36:47 | ヨーロッパ映画

11-77.三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
■原題:The Three Musketeers
■製作年・国:2011年、ドイツ
■上映時間:111分
■字幕:佐藤恵子
■料金:400円(3D料金のみ)
■鑑賞日:11月14日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ


□監督・製作:ポール・W・S・アンダーソン
□脚本:アレックス・リトヴァック、アンドリュー・デイヴィス
□撮影監督:グレン・マクファーソン
□編集:アレクサンダー・バーナー
□美術:ポール・デナム・オースターベリー
□衣装デザイン:ピエール=イヴ・ゲロー
□音楽:ポール・ハスリンジャー

◆ローガン・ラーマン(ダルタニアン)
◆ミラ・ジョヴォヴィッチ(ミレディ)
◆オーランド・ブルーム(バッキンガム公爵)
◆マシュー・マクファディン(アトス)
◆レイ・スティーヴンソン(ポルトス)
◆ルーク・エヴァンス(アラミス)
◆クリストフ・ヴァルツ(リシュリュー枢機卿)
◆マッツ・ミケルセン(ロシュフォール)
◆フレディ・フォックス(ルイ13世)
◆ジュノー・テンプル(アンヌ王妃)
◆ガブリエラ・ワイルド(コンスタンス)
【この映画について】
アレクサンドル・デュマの名作「三銃士」を、8台の3Dカメラを用い、2011年ならではのエンターテインメント作品に翻案した本作。
ダ・ヴィンチが設計した飛行船が実際に作られていた…という設定で、地上での剣劇、空中での砲撃戦など、派手なアクションが繰り広げられるエンターテインメント作品となっている。ダルタニアンを演じるのは、撮影当時実際に18歳だったローガン・ラーマン。若さあふれる演技で、シブい大人の三銃士たちとの好対照を見せる。ミレディを演じたミラ・ジョヴォヴィッチ、バッキンガム公爵を演じたオーランド・ブルームら、悪役陣も皆魅力的で、オールキャストでの続編も期待される。監督は「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソン。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
17世紀。まだ若いルイ13世が王位を継承したフランスでは、リシュリュー枢機卿が、権力掌握のために暗躍していた。その頃、ヴェネチアでは三銃士のアトス、ポルトス、アラミスが、アトスの恋人ミレディの裏切りに会い、ある設計図を奪われる。敵国イギリスのバッキンガム公爵のもとへ向かうミレディ。

3年後。憧れの銃士になるために南部の田舎からパリに向かった青年ダルタニアンは、道中、身なりのいい眼帯の男から侮辱を受ける。パリに着くと、三銃士とは知らずにアトス、ポルトス、アラミスに決闘を申し込むが、その直後、眼帯の男に再び遭遇。その男はリシュリューの腹心、ロシュフォール隊長だった。
成り行きから協力して戦い、ロシュフォールと護衛隊兵士たちを打ち負かすダルタニアンと三銃士。そしてダルタニアンは、戦いを見守っていたコンスタンスと出会う。彼女はアンヌ王妃の侍女だった。宮殿で再会する2人。宮殿上空には、ヴェネチアで奪った設計図を基に製造したバッキンガム公の飛行船が浮かび、バッキンガム公とリシュリューによる会談が行われていた。

その間、ミレディは王妃のダイヤモンドのネックレスを盗み出す。彼女はリシュリューのために働く二重スパイだった。バッキンガム公の宝物庫に奪ったネックレスを収め、王妃とバッキンガム公の不倫をでっち上げて、戦争に導くことがリシュリューの狙い。
王妃の無実を証明するためには、5日後の舞踏会で、国王の前でネックレスを身に着けなければならない。王妃の危機を知ったコンスタンスから助けを求められたダルタニアンは、ネックレスの奪回を決意し、三銃士と共に旅立つ……。

三銃士は過去にも何度か映画化されていてそれぞれの時代でヒットしている。私は、1973年と1974年の「三銃士」「四銃士」、それと1993年の「三銃士」は観ている。1993年版は主題歌をスティング、ブライアン・アダムス、ロッド・スチュワートの三人が三銃士らしく共演した主題歌が大ヒットした。
今回はダルタニアンを若手のローガン・ラーマンが演じているのだが、個人的にはバッキンガム卿を演じたオーランド・ブルームにダルタニアンを演じてもらいたかった。三銃士の一人ルーク・エヴァンスとオーランド・ブルームの二人並べてみると良く似ているんだよね~。
今回のストーリーはダルタニアンが主役というより監督夫人のミラ・ジョヴォヴィッチが要所要所で目立っているので、彼女が準主役的な立位置。それでもアカデミー賞受賞後出演作が目白押しのリシュリュー枢機卿を演じるクリストフ・ヴァルツが良い味出している。「グリーン・ホーネット」では脚本の拙さで折角の彼の個性が浮いてしまっていたが、ここではフランス国王を表向きはサポートしながらも、裏では裏切り工作に余念が無い役を個性的に演じていた。

ミラ・ジョヴォヴィッチは神出鬼没のスパイという役所、彼女らしいアクションもあり持ち味をだした演出はやはり夫が監督なのが大きい?ストーリー的には王妃の盗まれた首飾りをイギリスまで行って奪い返して無事に取り戻すという単純な流れなのだが、サブタイトルにある「ダ・ヴィンチの飛行船」は、この設計図を盗んだのがミレディでバッキンガム卿がこれでパリに乗り込む場面がハイライトなのだが、わざわざサブ・タイトルにするのは?って思いました。
ストーリーとしては見所は乏しいけど、主にドイツで行ったロケ映像がこの作品の最大の見所ですね。ルーヴルの庭園やロンドン塔、ノートルダム寺院などの名所が重要なシーンに出てきます。スクリーンを通じてむしろそちらに目が奪われました。

余談ですが、この作品ドイツ映画ですが台詞は全て英語でした。


映画『ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~』 を観て

2011-11-10 22:32:46 | ヨーロッパ映画

11-73.ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~
■原題:Goethe!
■製作年・国:2010年
、ドイツ
■上映時間:105分
■字幕:吉川美奈子
■鑑賞日:11月6日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)
■料金:1,800円
 

□監督・脚本:フィリップ・シュテルツエル
□脚本:クリストフ・ムーラー、アレクサンダー・ディディナ
□撮影監督:コーリャ・ブラント
□編集:スヴェン・ブデルマン
□美術:ウド・クラマー
□衣装デザイン:ビルジット・ブデルマン
□音楽:インゴ・L・フレンツェル

◆アレクサンダー・フェーリング(ヨハン・ゲーテ)
◆ミリアム・シュタイン(シャルロッテ・ブッフ)
◆モーリッツ・ブライブトロイ(アルベルト・ケストナー)
◆フォルカー・ブルッヒ(イェルーザレム)
◆ブルクハルト・クラウスナー(シャルロッテの父)
◆ヘンリー・ヒュブヒェン(ゲーテの父)
◆ハンス・マイケル・レバーグ(カマーマイヤー裁判長)
◆リン・リュッセ(アンナ・ブッフ)
【この映画について】
ドイツの文豪ゲーテが、世界的な名声を得るきっかけとなった「若きウェルテルの悩み」。この名作を生む原動力となったせつない恋の実話を『アイガー北壁』のフィリップ・シュテルツェル監督で映画化。ゲーテの恋敵として『es[エス]』のモーリッツ・ブライプトロイが出演している。舞踏会などの豪華セットや衣装も見どころだ。
(この項、MovieWalkerより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
1772年、ドイツ。法律を学ぶヨハン・ゲーテは、博士号取得の試験を受けるが、不遜な態度を非難され不合格、父親から田舎町ヴェッツラーの裁判所で実習生として働くように命じられる。上司のケストナー参事官は、初対面からゲーテに厳しく接するが、陽気で自由奔放なゲーテは、同僚のイェルーザレムとすぐに仲良くなり、舞踏会へと繰り出し、そこでシャルロッテ・ブッフと出逢う。

ある日、ゲーテは礼拝堂のミサで柔らかな朝の光に包まれて歌うシャルロッテに再会、彼はその瞬間、まっさかさまに恋に落ちた。イェルーザレムと遠乗りに出かけたゲーテは、気が付けば、シャルロッテの住むヴァールハイムへ向かっていた。シャルロッテの妹や弟たちと庭を駆け回り、ピアノを弾き、共に歌い、すっかり打ち解けて楽しい時間を過ごすゲーテとシャルロッテ。
歌が得意で戯曲を愛し、舞台に立つことを夢見るシャルロッテと作家になることを諦めきれないゲーテは、魂の深い部分でも共鳴し合うのだった。そんな折、ゲーテはシャルロッテの強引な頼みに負けて、自作の詩を暗唱する。
シャルロッテは感銘を受け、自信を失くしていたゲーテを心から励ます。翌日、ケストナー参事官がブッフ家を訪れる。シャルロッテを見そめたケストナーは、彼女の父に縁談を申し込んでいた。シャルロッテの心はゲーテの想いでいっぱいだったが、この縁組で家は安泰、弟たちも学校へ行けるというのだ。

一方、優秀な仕事ぶりで、ケストナーに高く評価されたゲーテは、ケストナーからのプロポーズの言葉を相談される。まさか相手がシャルロッテとも知らず、ロマンティックな台詞をアドバイスするゲーテ。
ケストナーはゲーテの教えどおりシャルロッテに求婚、シャルロッテは泣きながら承諾する……。ゲーテは何日もかけて作ったシャルロッテの大好きな戯曲「エミーリア・ガロッティ」の紙劇場を届けるが、そこではロッテとケストナーの婚約祝賀会が開かれていた。打ちのめされたゲーテに追いうちをかける、人妻との恋に破れたイェルーザレムの自殺。ゲーテは猛然と小説を書き上げ、シャルロッテに贈る。「若きウェルテルの悩み」という題名のその物語を読み終えたシャルロッテは、ある決意を胸にゲーテのもとへ向かうのだが……。

私は欧米の偉人の生涯を描いた作品を観るのは好きな部類で、ゲーテの作品そのものは全く知りませんが予告編を観て気に入ったので観ました。個人的にはドイツ旅行でフランクフルトに滞在中にゲーテの生家である「ゲーテハウス」を訪れたことはあります。
ゲーテが有名になる前に若い女性と恋に落ちていながらも、運命の悪戯で一緒になれなかった部分は話の対象が文豪や偉人で無くても良くある話。ただしゲーテの場合は働いていた裁判所の上司と恋人シャルロッテが一緒になってしまったことは青天の霹靂だった。シャルロッテの父は決して裕福では無く長女シャルロッテを筆頭に幼い弟妹たちの面倒を見るのは不可能で、その時、一家の面倒を見てくれることを条件にゲーテへの恋心を残しながらケストナーと結婚してしまいゲーテは大ショック。
結局、この失恋を綴った書物が「若きウェルテルの悩み」として出版されたのだが、出版は本来ゲーテは意図していなかったものの、本の下地となっていたシャルロッテへの手紙を彼女がゲーテに内緒で出版社へ持ちこんで実現したものだった。ゲーテ自身もこの著作への大反響は意外だったと見えて、ラストではゲーテの周りを書物を買い求める市民に取り囲まれる場面があった。

ストーリー的にはゲーテとシャルロッテの恋愛話を中心にケストナーが絡んでくるという展開。「ミケランジェロの暗号」にユダヤ人画廊として出演していたモーリッツ・ブライブトロイがケストナー参事官役で出演していたが、ゲーテ役のアレクサンダー・フェーリングはタランティーノの「イングロリアス・バスターズ」に出演していたらしいが知らなかった。
作品の大部分はドイツ東部でのロケ撮影だったそうだが、18世紀初頭の雰囲気を感じさせる映像が続き全く違和感を感じさせなかったのは評価したい。
ラストでシャルロッテとゲーテが一度だけ再会した、との字幕が出ていたが、お互いどういうシチュエーションでの出会いだったのかちょっと気になりました。

最後にトリヴィア的こぼれ話ですが、郷ヒロミがカバーした「哀愁のカサブランカ」をご存知でしょうか?30年位前の話ですが、その曲はアメリカのAORシンガー、バーティ・ヒギンスが歌ったのがオリジナルですが、バーティー・ヒギンスはゲーテの子孫というのが当時の触れ込みでした。但し、文豪ゲーテ自身の直系なのか親戚筋なのかまでは覚えておりません。
興味のある方はネットで検索してみて、分かったら教えてください。


映画『ブリッツ』を観て

2011-10-23 22:41:50 | ヨーロッパ映画

11-70.ブリッツ
■原題:BLitz
■製作年・国:2011年
、イギリス
■上映時間:97分
■字幕:種市譲二
■鑑賞日:10月23日、新宿バルト9(新宿三丁目)
■料金:1,800円


□監督:エリオット・レスター
□脚本:ネイサン・パーカー
□撮影監督:ロバート・ハーディ
□編集:ジョン・ギルバート
□美術:マックス・ゴットリーブ
□衣装デザイン:スージー・ハーマン

◆ジェイソン・ステイサム(ブラント)
◆パディ・コンシダイン(ポーター・ナッシュ)
◆アイダン・ギレン(バリー・ワイス”ブリッツ”)
◆ザウェ・アシュトン(フォールズ)
◆デヴィッド・モリッシー(ハロルド・ダンロップ)
◆マーク・ライランス(ロバーツ)
◆ネッド・デネヒー(ラドナー)
【この映画について】
『トランスポーター』『アドレナリン』シリーズなどで人気のアクションスター、ジェイソン・ステイサムが母国イギリスで主演を務めたクライム・サスペンス。彼が演じる正義感の強い荒くれ刑事が、警官ばかりを狙う愉快犯を相手にロンドン市内を奔走する。脚本は、『月に囚われた男』のネイサン・パーカー。共演には『シンデレラマン』のパディ・コンシダイン、テレビドラマ「THE WIRE/ザ・ワイヤー」シリーズのアイダン・ギレンら実力派が名を連ねる。
(この項、シネマトゥデイより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
ロンドン市警に所属する強情で妥協知らずな刑事ブラントは、その情熱のあまり、犯罪者に対してやり過ぎてしまうこともしばしば。ある夜、暗い路地で車上荒らしを「しそうだった」不良グループをボコボコにしていたりした。署に帰れば上司から、行き過ぎた捜査に対してガミガミ言われるが、同僚間の受けはすこぶる良い。

そんなある日、ロンドン市内で警官ばかりを狙う連続殺人事件が発生する。ブラントの横暴な振る舞いを追いかけている新聞記者ダンロップは情報提供者から電話を受けるが、その男・ワイスは自らを「ブリッツ(Blitz=稲妻、電撃)」(弾丸=Bullet(s)ではありません、ややこしいけど)と名乗り、自分
こそが殺人鬼であるとうそぶく。
ワイスはダンロップに記事を書かせ、自らを虐げてきた警官を殺害し、有名になろうと目論む愉快犯だったのだ。ブラントの師や職場の仲間たち、さらには密告者までも次々と手に掛けていくワイス。だが彼の最後の標的はブラントだった……。

警官連続殺人事件の容疑者を特定できないで焦っていた警察だったが、ワイスが犯人と分かってきて、今度戸惑ったのは、次はどの警官が狙われるかに興味が移るのだが、そこで、ワイスの犯歴を調査すると興味深い事実が判明。過去の犠牲者は全てワイスを逮捕した警官であることが分かり、ブラントもその中の一人だった。
但し、このワイス、一度は逮捕されるも証拠不十分で放り出されてしまう。でもでも、ブラントがそれを許す訳が無いのは明らか。ブラントとゲイの相棒ナッシュ巡査部長と捜査を続けていたある日、ワイスによってハンマーで撲殺された上司ロバーツの葬儀に、盗んだロバーツの制服を着ていたことに気付いたブラント(他の同僚らは気付かず?)。静かに尾行したブラントはナッシュと共にワイスを追い詰め、彼の流儀で決着を付けた。
警官の制服を着たワイスをブラントが射殺したことで、ワイスはブリッツに射殺された一警官として永遠に闇に葬られるのだろうか?そうだとしたら余りにも皮肉な死に方だった。

この作品をみて、やはりイギリス映画だな~って印象を持ちました。熱血警察官ブラントをジェイソン・ステイサムに演じさせたのだがら、ハリウッド映画だったら銃を撃ちまくり容疑者には容赦せず殴り倒していたでしょうね。でもヨーロッパ映画はそういう描き方をしないので、派手な銃撃戦も分殴り合いも控え目でステイサムのアクションを期待していたら拍子抜けするかも?
もしも、この映画をハリウッドでリメイクするなら、ブリッツ役にもう少しインパクトのある役者に演じさせて派手にドンパチしたら面白いかもね。


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