Peace Waveの平和な日々~行く雲、流れる水のように~

気が向いたら、ボチボチ更新しようかと・・。(笑)

たくろう火 ~広島の妖怪④~

2011年03月21日 | 広島のオススメ!

「広島県東部の海で、ずっと昔に見られた火の妖怪である。

二つの火が並んで海上に浮かぶというもので、名前は比べるという意味の古語「た比ぶ」に由来するようだ。

瀬戸内海は重要な交通路であり、島づたいになら小舟でも十分に航海ができた。

そういう小舟の船乗りたちに、たくろう火は語られていたのだろう。

 

大百怪のカードの村上健司による解説である。

(カテゴリー/食玩など:「大百怪」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/a30253944d2884ea692c147bb4445e6e

 

「比べ火」と呼ぶ地方もあるそうだ。 

水木しげる「日本妖怪大全」では、こんなエピソードが紹介されている。

「同じ広島県でも中部の海岸には、二人の女の怨霊にまつわる話がある。

悲惨な死をとげた二人の女が、いつしか京女郎・筑紫女郎と呼ばれる二つ並んだ石と化し、その霊が「たくろう火」になって、夜ごと、海上に浮かんだのだという。」

 

西洋でも「セント・エルモの火」という、嵐の時に、マストの先に火が灯るような怪現象が、船乗りたちによって伝えられている。

船乗りの守護聖人、聖エルモに由来した名をもつこの火も、2つ現れる時があるそうで、1つの時は「ヘレナ」、2つの時は「カストルとポルックス」と呼ばれ、2つの火が灯った時は、嵐がおさまる・・と信じられたそうだ。

 

セント・エルモの火は、大気電磁現象の一種で、学問的には「檣頭電光」(しょうとうでんこう)と呼ばれる現象だとか。

 

 

自然の前には、人間の力は、あまりにもちっぽけで無力だ。

太古の昔から、多くの命を呑み込んできた海を前にすると、粛々とした思いになる。

 

呼び方はいろいろであるが、こうした怪現象を、洋の東西を問わず、人々は畏怖をもって見つめてきた。

 

それは、波間に揺らめく炎を見た時、海に消えた人々の霊を悼む気持ちが去来したからなのかもしれない・・。