歴声庵

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あさくらゆう著 「慶応四年 新選組近藤勇始末」

2007年02月04日 21時09分08秒 | 読書
 どうも鳥羽伏見の戦い以降の新選組に関しては、土方歳三中心で書かれる事が多く、江戸敗走後の近藤勇について書かれる事は少ない中、珍しく江戸敗走後の近藤勇、それも甲州での敗走後に再起を目指すものの、流山で捕らえられて板橋で斬られるまでという、今まで新選組研究家やファンには見向きされなかった時期を丁寧に描いた良書です。
 従来の新選組関連書にありがちな、憶測や思い込みで自説を繰り広げるのではなく、根拠となる史料をその都度示しながら自説を述べる書き方には好感が持てました。また同じく新選組研究家及びファンにありがちな、新政府軍を悪の権化として短絡した描き方をするのではなく、新政府軍(東山道軍)の組織についても詳しく描かれ、どのように近藤の処刑を決定したのかというのを、感情的にではなく客観的に書かれているのにも好感が持てました。
 ただ少し残念だったのは、甲州勝沼の戦いの軍事面からの説明が少なかった事ですね。これは筆者がこの本の重要なテーマではないと判断したからでしょうが、この点は物足りなかったです。