怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

山本義隆「リニア中央新幹線をめぐって」

2023-10-08 15:31:55 | 
東京・名古屋を40分、大阪まで開通すれば1時間ちょっとを時速500キロで結ぶリニア中央新幹線。
2027年までに名古屋までを開通させるはずが、静岡県知事の抵抗にあってなかなか進捗せず、開業延期も必至の状況になっています。
川勝知事の大井川水系への影響の論理には言いがかりに近いような感じもあって無理があるのではと思うのですが、JR東海だけでなく国・沿線県は困惑を通り越して内心怒り心頭では。
でもリニア中央新幹線、本当に必要なのでしょうか?
山本義隆さんはバッサリ今の日本には必要ないと切り捨てています。

そもそも東京・大阪を1時間で結んだとして、どれだけの需要があるのだろうか。日本は人口減少社会になっているのだし、コロナ禍で在宅勤務の奨励が言われてきた中、働き方も大きく変わろうとしているのに予測通りの需要があるのだろうか。
技術的に直線走行が求められるためにほとんどの区間(実に90%近く?)は地下トンネルなので車窓からの景観は望めず、地下鉄の30分がかなり苦痛な私としては(値段にもよりますが)従来の新幹線の方が富士山も見られて旅行気分が味わえて2時間でもいいかな。
また大深度地下での工事となっているが、東京調布市での外郭環状道路の工事で陥没事故など地上に影響が出たこともあって、どこまで安全なのか?特に中部山岳地帯の地下深くはフォッサマグナと中央構造線という私でも知っている大断層を貫いて行く工事となる。「黒部の太陽」でも破水帯に悩まされた様子が描かれていましたけどそれとは問題にならないほどの量が予想される湧出水の問題とか掘削残土の処理の問題もその量が膨大になるので本当に環境に悪影響を与えずにできるのだろうか。
さらに走行抵抗は速度の2乗に比例するので、新幹線の2倍の速度のリニア新幹線は4倍の空気抵抗を受ける。さらに機械抵抗・磁気抵抗も受けるため、リニアの消費電力は新幹線の4~5倍になるそうです。ちなみにこの数字に対してはJR側は反論していないみたいです。
膨大な電気を消費して、移動時間を1時間短縮する。なんかSDGsの精神には反しています。飛行機よりは消費エネルギーは少ないのですが、飛行機の客がすべてリニアに切り替えても需要を満たすには足りないだろう。加えてこの膨大な電力消費を支えるためには原子力発電所の安定的な供給でもないと今のひっ迫した電力供給では無理。でも原子力発電所は新増設は絶望的な状況で、柏崎も浜岡も再開のめどは立たない。リニア新幹線が開通した暁にはどこで必要な電力を賄うのか。
リニアの技術的な構造的欠陥としては、モーターの外側の円筒形コイルを開いて伸ばしてつなぎ合わせて、インフラとして地上の線路に沿って何百kmも固定しているので、その限りで推進機構そのものの抜本的な改良・進歩の道が大きく狭められていると言うことがある。技術が目まぐるしく進歩しているのに取り込むことが出来なくなる可能性がある。その線路は他の鉄道路線との親和性はなく、鉄道路線としての発展性はない。将来の他の路線との相互乗り入れなどはあり得ない体系となっている。
高速性を最優先とするあまり、採算性とか安全性とか安定性は二の次になっているのが実情と言うか、すべてが想定内で収まることばかりではない。
事故は起きない前提になっているのでしょうけど、仮に中部山岳地帯の地下で列車が止まってしまったら、何か所かある脱出用のエレベータで500メートルほど上にあがって、そこからさらに高低差300メートル水平距離2キロほどを歩きトンネルを脱出し地上にあがったとしても標高1500メートルの山の中に出されたらどうする?一人二人ならともかく1列車編成何百人ものお客が、都会生活の衣装・靴で、外は悪天候だとするとひたすら事故が起きないことを願うしかないが、それって想定外だった福島の原発事故と同じような構造なのでは。
日本の技術を誇るべく世界一の高速リニア新幹線を運行し、東京・名古屋・大阪を一時間でつないで6000万人のメガロポリスを作る。どうも戦艦大和やコンコルドの姿と重なって見えます。リニア開業はチャンスととらえ名古屋経済を活性化させ飛躍のしなければいけないと言う人はいますが、高速鉄道網の完成によって日帰り経済圏となった地方は中央へどんどん吸い上げられてきたのが現実。関西経済圏は新幹線開業により衰退し東京一極集中が進んだのでは。
ところで個人的に違和感があったのが、リニア新幹線を大国的ナショナリズムの期待を背負ったものとして評価している論文として名古屋大学経済学部長飯田経夫の土木学会誌掲載の「リニアモーターカーの意義と期待」を挙げていること。飯田教授はどちらかというと時の政権にも辛口の異端の経済学者で、しかもこれは1989年のもの。当時はまだリニアは可能性を秘めた未完成の技術で、期待を込めて応援論文を書いたのだろう。その後にもリニアに対していろいろな人が色々な応援演説をぶちあげているはずなのに、なぜもう亡くなった飯田教授か。
静岡県知事の抵抗だけでなくて技術的にも難工事を乗り越えなければならないだろうし問題山積みに思えます。国の財政投融資も行われて多少遅れても突き進むのでしょうけど、民間企業たるジェイアール東海は経営的に大丈夫なのか。
でも開通したら一度は乗ってみたいと思うのは人情です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小田嶋隆「上を向いてアルコ... | トップ | 10月9日鶴舞公園テニスコ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事