怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

佐藤千也子「オッサンの壁」

2024-06-14 14:18:23 | 
情報番組のコメンテーターで時折出演していることがある佐藤千也子さん。
学歴を見たら名古屋大学の文学部卒。学部は違いますが私より10年後輩。てっきり早稲田くらいかと思っていたのですが、名古屋大学とは。政治部の記者になる人はほとんどいなかったのでは?
ところで私が就職した当時はセクハラとかパワハラなんて言葉もなく、今振り返ると男社会で体育会系雰囲気がまん延していました。
まさにオッサンの世界でした。
このところ自治体の首長でパワハラ、セクハラが問題になって辞任に追い込まれてしまった人が何人かいます。たぶん自分が見聞きし育ってきた社会習慣をそのまま時代に適応させることなく今の部下にぶつけていたのでしょう。本人にとっては俺はこうやってキャリアを積み上げてきたのだから何が文句あるの。パワハラは教育の一環だし、セクハラは親愛のしるしで問題にする方がおかしいと思ているのでは。
今は職場でもコンプライアンスの順守が言われ内部通報制とかもあるのだが、政治の世界はいまだにオッサンの世界のまま。
佐藤さんの言うオッサンとは「男性優位に設計された社会で、その居心地の良さに安住し、その陰で、生きづらさや不自由や矛盾や悔しさを感じている少数詩派の人たちの気持ちや環境に思いが至らない人たち」のことです。すいません、私もどっぷりオッサンの社会に浸って生きてきました(過去形だと思っているけどまだ現在進行形もあるかも)。
この本は佐藤さんの新聞記者としての仕事ぶりを振り返りながら男性社会である政治の世界を論じているものです。

私としてはオッサン社会への批判はよく分かるつもりなのですが、この本を読んで一番興味を持ったのは新聞記者の仕事ぶり。
最初佐藤さんは長野支局に配置されるのですが、新人は警察・消防の「署回り」が通例で、朝一番7時に長野中央署に行き宿直警察官に夜中に何があったか聞きだすのが日課。ひとたび事件事故が起きれば最初に現場に出動しなくてはいけない。当時は携帯もなくカーナビもなくデジカメもなく写真もしなくてはいけないなので忙しい。女性の場合は身だしなみにもそれなりに時間がかかるので大変。私は若いころ顔も洗わずに起きて30分以内に出勤するのが常でしたけどね。
長野支局に3年いて異動の時期になるのだがひょんなことで政治部に配属される。政治部記者の1年目は首相番。官邸で首相に張り付く役ですね。
政治部には当然ながら「夜討ち朝駆け」があって、それが毎日。佐藤さんが当時の大島官房副長官の担当だった時は高輪の議員宿舎ロビーに午前6時過ぎに到着して待っている。政治家が出勤す歳の車に記者が一緒に乗り込み車中で話を聞く取材「ハコ乗り」。乗れる記者は3人まで。新聞社、通信社、NHKの8社ほどで毎朝、ハコ乗り競争をするのだが、夜遅くまで夜回りなど当然取材はあるので寝ることが出来るのは3時間ぐらい、この生活は私には絶対できない…ちなみに佐藤さんは入浴時間を削ったので最長で5日間風呂に入らなかったことがあったとか。
政治記者は記者クラブ制度に守られ記者会見の時に肝心なこと聞かないという批判は多い。大手新聞の政治記者は「記者会見で何も知らない他紙記者に質問を通してみすみす情報や問題意識を教えてやる必要はない。本当の勝負は、記者会見という表の場ではなく、裏の懇談取材やサシ取材でやれ」と考えていたみたいです。
そんな過酷な政治記者をこなしていくのですが、当然ながらセクハラについては実際に体験し、かつ見聞している。そんな実例も紹介しているのだが、夜討ち朝駆けしているとなんかの折に二人きりになることもあって危ない目に遭うことも。そんな時には同僚とか上司の対応が非常に大切になるのですが佐藤さんはその点では恵まれていたみたい。まあ、セクハラという言葉がそんなに広まっていない頃はさもありなんですけど。
佐藤さんはそこからキャリアを重ね、ワシントン特派員となり、論説委員になり、女性初めての全国紙政治部長になり、と順調に出世しています。本人的にはいろいろな思いがあって必ずしも喜んでばかりではなかったみたいですけど。
ところで佐藤さんが政治部長になれたのは自己分析によると「逃げない女」だったからとか。政治部長として仕事をしていくうえでオッサンの壁を社外ではあまり感じなかったそうですが、社内ではいろいろあったみたいです。社内では男社会の本音で対処されることが多かったからか。でも政治部長だった2年間は安倍一強時代で対外的には「オッサンの壁」よりも「安倍政権の壁」との闘いだったと言われると一部メディアを優遇し気に入らないメディアを排除する傾向の安倍政権の不気味さを改めて感じます。
国際比較すれば後進国といえるなかなか進まない女性の政界進出ですが、女性議員の壁についても1章割いています。高市早苗、野田聖子、稲田朋美と論じていますが今話題の小池百合子とか蓮舫とか辻本清美とかも取り上げてほしいのですが、佐藤さんはあまり付き合いがなかった?
オッサンの世界にどっぷりつかってきた我が身としてはもっと目を配らないといけなかったと反省しきり「どうもすいません」としか言いようがないのですけど、新聞記者の仕事ぶりも含めて一気に読み通せました。




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