怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

百田尚樹「橋下徹の研究」

2024-06-24 07:39:40 | 
百田尚樹さんの出世作の「永遠のゼロ」は非常に面白く一気に読んだ記憶があります。
日本軍と言うか日本社会の宿痾ともいうべき「熟練」を全く評価しようとしない体質を鋭くあぶりだしています。養成に手間と時間のかかる優秀な飛行機乗りを誰でもすぐにできるかのように使い捨てる現場を知らない上層部の机上論。その体質は今でも色濃く残っていて、ベテランだからこそこなすことが出来たこともコストの安い非正規に置き換えればいいと言う定員管理が横行していたのは私の以前いた職場。その理不尽さを小説としてうまく昇華させていて、さすがの才能に瞠目しました。
でも河村市長を取り込んで(抱きつかれた?)の保守党を結成した今の彼の政治的立場と言動にはほとんど同意できません。
百田さんは以前は維新の政策を支持していて橋下徹さんとは共感することが多くて親しく会食なども何度かしていたとか。私は橋下さんの部下としては絶対に仕事をしたくはないですし、大阪都構想などの維新の政策にも同意できませんので、二人は同じ穴の狢と思っていました。
ところが次第に百田さんが橋下氏の発言に違和感を感じ反対意見を述べると嵐のような反論が来るように。最初は百田さんと言っていたのに、いつの間にか呼び捨ての百田から百田のおっさん、ただのおっさんと呼称が変わってくる。論争を通してテレビのコメンテーターとしてマスコミに引っ張りだこで発言を続けている橋下徹氏に危険なものを感じただろう、論争の主にツイッターでのやり取りを中心に整理して橋下徹の人間性と理不尽さを追求したものです。

百田さんが論争してきた事柄としては「ウクライナ」「靖国神社」「上海電力の太陽光発電参入」などですが、驚くのは橋下氏が反論、罵詈誹謗を発信するツイッターの数の多さ。絶えずスマホを手にSNSを渉猟し1日に何回となく発信する。膨大な量のツイートは編集者がコピーして整理しているのですが、それをまとめるのも大変でしたでしょうが、読むだけでも辟易としてしまう。異様なほどの負けず嫌いで自分に対する批判については脊髄反射的に反論を重ねなければ我慢できない性格なのだろう。そういうところがテレビ受けするのだろうが、一時の感情に身をさらし反撃するのではなく沈思黙考して物事を整理して周囲に目を配ることも必要と思うのですが、それではテレビの短い時間では何も言えなくなって呼ばれないのか。
相手は弁護士で訴訟提起も多いので名誉棄損で訴えられるリスクを考慮して過去の発言は正確に引用し、原稿のリーガルチェックもしているそうです。
論争の行方はじっくり読んで判断してもらえばいいのですが、最後の方に橋下徹氏の人間性にも触れています。これはなかなか興味深く橋下氏には結構有効打ではないでしょうか。
橋下氏は2014年に新潮社を相手に名誉棄損裁判を起こしているのですが、発端は精神科医の野田正彰氏が新潮45に書いた「大阪府知事は病気である」と言う記事です。この中で野田氏は自己顕示欲型精神病気質の6項目のうち5つに当てはまるとしています。さらに橋下氏の高校時代の元教諭の証言を紹介しています。野田氏の記事の孫引きですが、
「地味なことはしない。伝達、伝言のようでコミュニケーションにならない。噓を平気で言う。信用できない。約束を果たせない。自分の利害にかかわることには理屈を考えだす。相手が傷つくことを平気で言い続ける。文化、知性に対して拒絶感があるようで、楽しめない。人望は全くなく、委員などに選ばれることはなかった」
大阪地裁では真実であることの証明がなく真実について相当の理由があったも認められないと新潮社に損害賠償請求の1割の110万円の支払いを命じました。
新潮社が控訴し、高裁においては、元教諭の証言を真実と信じるについては相当の理由があったと判断し、橋下氏の請求をすべて棄却。新潮社の逆転勝訴となりました。因みに上告は棄却され判決は確定しています。高校時代の同級生も同じ様な橋下評を証言しています。
ただ、「人望は全くなく、委員などに選ばれることはなかった」という点については選挙で圧倒的な強さで大阪府知事、大阪市長に選ばれている訳で、今でもテレビのコメンテータなどには出まくっていて、現状は真逆。百田さんはテレビ、マスコミに作られたものだからとしていますが、人望も素質がないものをマスコミが寵児として作り上げられるのか。私自身は橋下氏が出るテレビは見ないようにしていて、出ればチャンネルを替えるほうですが、虚像かもしれないけれどそれなりに視聴率を稼いでいるのなら、その誘因をもう少し深掘りする必要があるのでは。

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