カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

典礼暦のなかのマリア ー 聖母マリア(14)(学びあいの会)

2022-04-25 18:53:03 | 神学


 聖母マリア論は第2部「マリア信心(崇敬)」に入った。5月連休直前の今日の例会は晴天に恵まれたが出席者は少なかった。

Ⅴ 典礼

 典礼(1)とは教会がおこなう祭儀である。典礼暦(2)は4世紀頃(3)東西両教会で定着する。マリア信心もこの頃から盛んになる。エフェゾ公会議(431年)におけるマリアの「神の母(テオトコス)」宣言はマリア信心をさらに促進し、マリアの祝祭日(4)が祝われるようになった。
祭日と祝日と記念日が区別されている。

1 マリアの祭日

 現行の教会暦のマリアの祭日は以下の三つである

①神の母聖マリア(1月1日)
②聖母被昇天(8月15日)
③無原罪の御宿り(12月8日)

2 マリアの祝日

①聖母の訪問(5月31日)
マリアのエリザベト訪問(ルカ1:39~50)を記念する祝日。ローマでは8世紀に降誕節中に祝われたという。東方教会では7月2日に祝っていたが、第二バチカン公会議以後は、天使のお告げ(3月25日)と洗礼者ヨハネの誕生(6月24日)の間に定められた。
②マリアの誕生(9月8日)
7世紀頃にこの日に記念されるようになったという

3 マリアの記念日

①聖母の聖心
聖霊降誕後の第2主日のあとの土曜日。1944年にピウス12世により制定された
②天の元后マリア(8月22日)
聖母が天に挙げられて、すべての者の女王として高められたことを記念。1954年にピウス12世により制定。
③悲しみの聖母(9月15日)
1814年にローマ暦(5)に採用。十字架の下のマリアの記念。ミサの続唱でスターバト・マーテル  Stabat Mater (フランシスコ会の聖歌)が歌われる(6)。
④ロザリオのマリア(10月7日)
1517年レバントの海戦(7)でオスマントルコに勝利したことを記念してピウスⅤ世により制定⑤マリアの奉献(11月21日)
543年のこの日、エルサレムの聖マリア聖堂の献堂式に由来する
⑥その他の「任意」の記念日
ルルドの聖母(2月11日) カルメル山の聖母(7月16日) ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の献堂(8月5日 2016年に制定)

4 マリアの土曜日

 初土曜日にマリアを記念する習慣は、8世紀のカロリング朝時代にさかのぼる(8)。「年間」の土曜日が義務の記念日で無い限りマリアの記念日として任意に祝うことができる。

5 聖母月

 5月をマリアを敬う月とする信心の伝統。ローマ人やゲルマン人が春の訪れを祝う5月祭がその背景とされるが、5月をマリアの月とする習慣は近世に入ってからのものだという。18世紀にイタリアで盛んになり、1815年にピウスⅦ世により認証された。19世紀半ばまでには西欧全域に広まったという。1965年5月1日にパウルスⅥ世の回勅「メンセ・マイオ」はこの信心を尊い伝統をしている。なお、10月もロザリオの月として聖母マリアに捧げられている。
 日本でも5月がマリアの月だという理解はかなり広まっていて、クリスマスについでキリスト教を身近に感じる機会になっているようだ。

 


雪のサンタマリア(日本26聖人記念館)

 

 このようにマリアの祝祭日はたくさんあるが、わたしはせいぜいマリアの祭日くらいしか頭に入っていない。といっても、日本では8月15日は終戦記念日だし、12月8日は開戦記念日だし、お祝いと言ってもなかなか定着しないようだ。元旦だけは、神の母聖マリアの祭日だけは、お正月気分もあってどこでも教会は賑やかなようだ。



1 典礼 liturgy とは、教会がおこなう神への公的な共同の礼拝行為のこと。集団の行為であって、個人の行為(祈りや信心)は典礼に含まれない。事実上カトリック教会の用語とされ、正教会では奉神礼、プロテスタントでは礼拝と呼ばれる(訳される)ことが多いようだ。日本語の典礼という言葉は「典法礼儀」に由来すると言われる(「岩波キリスト教辞典」)。典礼には、神からの人間の「聖化」と人間からの神への「奉仕・感謝」の2側面が含まれる(ドイツ語訳は Gottesdienst 直訳すれば Service of God/ Divine Service 神の奉仕 ミサ)。現代の典礼の特徴は第二バチカン公会議の「典礼憲章」に明記されているが、最も大きな特徴は、典礼が特定の国・時代・場所によって表現される教会の信仰だと確認されていることだろう。第1章第3節Dは「諸民族の特性と伝統への適応に関する基準」と題されている。つまり、典礼は根本は共通でもその表現形式は国や文化によって異なってもよいとされているようだ。典礼は教会活動の頂点であるが、神学生にとっては実践神学の中では教会法と並んであまり人気が無いようだ。
2 典礼暦 または 教会暦。Liturgical calendar。典礼暦とはキリスト教独自の暦のことで、一般社会の普通の暦とは異なる(とはいえいろいろな「こよみ」があるが)。いわば信仰上の暦だ。とはいっても、キリスト者は一般の暦にしたがって生活しているから、教会暦は一年を周期とする一般の暦のなかに組み込まれている。定義的に言えば、教会暦とはキリストの生涯の出来事を、一年を通して記念していく教会の暦のこと。一年間でキリストの一生を記念する。カトリックでは教会暦には「季節」と「年間」がある。季節には、四旬節・復活節・待降節・降誕節がある。季節以外の期間は「年間」と呼ばれる。それ以外に、祭日・祝日・記念日・祈願日などがある。
3 大シスマ(東西両教会の分裂)は1054年のローマ教皇とコンスタンチノポリス総主教の相互破門とされることが多いが、実際には4・5世紀頃から両教会の対立はあったという。395年のローマ帝国の東西分裂、476年の西ローマ帝国の滅亡のなかで、両教会では教義の解釈、典礼方式の違い、教会組織の違いなどが徐々に生まれてきていたようだ。
4 一般に祝祭日というが、教会では祭日のほうが祝日より重要だ。重要度でいえば、祭日>祝日>記念日>祈願日といえようか。たとえば、1月1日は「神の母聖マリア」の「祭日」、1月3日は「主の公現」の「祭日」、1月10日は「主の洗礼」の「祝日」、などとなる。教会暦はA・B・C年に」分けられ(今年2022年はC年)かなり複雑なので、移動主日や祝祭日の表は毎年発表される(『教会暦と聖書朗読』)。なお、守るべき祝日(必ずミサに出なければならない日)は「現在の日本では」ご降誕祭(12月25日)と神の母聖マリアの祭日(1月1日)の2回のみである。復活祭(イースター)は守るべき祝日には入っていない。このように典礼暦・教会暦は複雑なので公教要理(入門講座)できちんと学ばないと教会生活は成り立たない。ポツンポツンと時々ミサに出るだけでは暦がわからなくなってしまう。コロナ禍のもたらす災いの一つであろう。
5 ローマ暦とは古代ローマで使われていた暦。ローマ紀元とは異なるという。ユリウス暦やグレゴリオ暦を含む使い方もあるようだ。
6 よく知られたクラシック音楽らしい 出だしは、
  Stabat mater dolorosa 悲しみの母は立っていた
 iuxta Crucem lacrimosa、 十字架の傍らに、涙にくれ
 dum pendebat Filius. 御子が架けられているその間
7 レバントの海戦とは、1571年に、スペイン・ローマ教皇ピウス五世・ヴェネツィア連合艦隊がオスマン帝国艦隊を破った海戦。オスマン帝国の勢力はこれを機に縮小期に入る。スペインはやがて無敵艦隊となっていく。
8 カロリング朝(751-911,987)はフランク王国の2番目の王朝。カール大帝(747-814)の時代に最盛期を迎える。

 

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