私どもの教会の月報(第402号)に典礼係から貴重な投稿があった。タイトルは「典礼奉仕について」となっており、主に香部屋と祭壇の準備についての説明であった。祭壇はいつも見慣れてはいても細部はよくわからないことが多い。また、香部屋は侍者をしたことがなければほとんどの方は入ったことがないのではないか。祭壇はどこの教会でも同じだが、香部屋の内装は教会の個性が出てくるところだ。少しこの投稿を紹介してみたい。
まず香部屋だが、聖具室とか祭具室とか呼ぶこともあるそうだが、わたしは香部屋以外聞いたことがない。祭壇に接して設けられている教会が多いようだが、祭壇から離れたところにある場合もあるようだ。大きさも様々らしい(1)。
香部屋はさまざまな収納や保存機能をもつが、基本は神父様の祭服の用意をする場所だ。典礼係はその日の典礼色に合わせて、神父様が重ねて着用される祭服を、着る順番に準備台にたたんで置いておくという。
ここでは典礼色のチェックが大事だ。聖櫃のカバーの色、朗読台の十字架の布の色、祭服の色、はいつも同じものにする。典礼係が一番気を遣うところだろう。
では、典礼色には何種類あるのだろうか。基本は5種類だそうです(2)。
①白色 :神の栄光・勝利・復活・喜び・清らかさの象徴
待降節、復活節、主な祝祭日、洗礼・堅信・初聖体・結婚の儀式で用いられる
②赤色 :火と血の象徴 火は聖霊で、聖霊降臨の主日に用いられる 血は命まで捧げ尽くす愛の象徴、主の受難の主日・聖金曜日・殉教者の祝祭日に用いられる
③緑色 :成長する新芽の色で、天国への旅路を導く希望を意味する 通常の「年間」の主日に用いられる
④紫色 :回心・節制・悲しみを表す色で、待降節・四旬節・ゆるしの秘跡・葬儀・死者のためのミサで用いられる
⑤ばら色 :控えめな喜び・待つ喜びを表す 待降節第3主日・四旬節第四主日に用いることができる
「年間」の緑色が一番なじみがある色だろう。司祭がほかの色の祭服を着てお聖堂に入ってくると、「そうか」ということで典礼暦年や祝祭日を思い起こすことになる。
つぎは、祭服の話だ。司祭はミサの時、何枚の祭服を重ねて着ているのだろうか。
普段はカラーもつけない司祭が増えているのでわかりずらいが、なんと4枚も重ね着をしているという。
①アミクトス まず首の周りに着ける 肩衣と訳すこともあるらしい
②アルバ 白い祭服を着る
③ストラ 当日の典礼色に合わせた色のストラを着る
④カズラ 幄衣(あくい)ともいうらしいが聞いたことはない 合羽みたいなもの 色はストラと同じ
どれもラテン語そのままで覚えづらいが、教会内では日常的に使われる用語だ。祭服を4枚も着ると結構重いし、夏は暑いことだろう。仏教のお坊さんの衣(外側の袈裟 内側の法衣)の方が涼しそうだ。
続いて、祭壇の説明があった。大事なのは、聖櫃の鍵、チボリウム、ホスチア だろうが、説明は、祭壇をカバーする布、ローソク、祭器具について詳しくなされた。一部を簡単に要約してみたい。
①祭壇布 祭壇をカバーする布 高価なものらしい
②ローソク ローソクは現在は左右二本づつ計4本置かれている(司教ミサでは計7本)(3)
③祭壇 祭壇中央には十字架が置かれ、書見台のうえにミサ典礼書が置かれる(4)
④祭壇右脇の祭器具 これらは侍者をやらないとミサに与っている信徒からはよく見えないので知っておく必要がある
カリス ぶどう酒を入れる杯 カリス拭き(プリフィカトリウム)が上に載っている
パテナ 司祭が用いる大きめのホスチアを載せる受け皿 パラ という四角い固めの板状のものが上に載っている異物が入らないようにするための蓋のようなもの
コルポラーレ 白い大きな麻布 パテナからこぼれたパンやカリスからこぼれた御血(ぶどう酒)を保護する(5) 聖櫃の鍵もここに置かれる
つまり、上から順番でいえば、パラ・パテナ・プリフィカトリウム・カリス・コルポラーレ となる。
手洗い容器の水と手拭き(手ぬぐいのようなもの)の用意も典礼係の仕事のようだ。侍者が一人の場合は同時に用意するので侍者は慎重になるようだ。侍者がいない場合は司祭はさらに慎重になるようだ。
これらもラテン語で覚えづらいが、カリス・チボリウム・ホスチアは信者ならだれでも聞いたことがあるだろう。
信徒にとって一番大事なのは、ホスチア(御聖体 パン)とチボリウム(信徒用の小さいホスチアを入れる蓋付きの器)だ。チボリウムは普段は聖櫃に安置されているが、ホスチアの準備や用意は大変なようだ(6)。
ぶどう酒入れと水入れも典礼係の仕事のようだ。水は信徒であり、ぶどう酒はキリストなので、ミサではぶどう酒の中にごく少量の水を注ぐことになっている(7)。
聖水盤の水の管理も典礼係の仕事のようだ。コロナが終わって聖水盤の使用が復活し始めているようだ(8)。
このように、今回の典礼係の投稿はいろいろ学ぶことが多かった。典礼といっても、クリスマス、聖週間、洗礼式、葬儀などではまた別の準備が必要なようだ。ミサは、香部屋係だけではなく、聖歌隊、オルガニスト、朗読者、先唄(さきよみ)など多くの方の協力で挙げられていることがよくわかった。典礼係には心から感謝したい。
注
1 私は侍者の経験は多くはないが、上智大学のクルトゥルハイムの香部屋は大きくて立派だった記憶がある。
【香部屋の例】(クルトゥルハイムではない)
2 祭服の種類や色は「ローマ・ミサ典礼書 総則」(346条)に規定されているという。正教会やプロテスタント教会では異なるようだ。また黒色のように時代とともに使われなくなる色もあるようだ。
【典礼色】(八木谷涼子『なんでもわかるキリスト教大事典』)
3 ローソクに点灯するタイミングも難しいし、一週ごとに点灯するローソクを増やすこともあるようだ。気を遣うところだ。ローソクの購入や管理も大変複雑らしい ローソク立てやローソク消しなど細かい祭具もあるようだ
4 以前は「ミサ典書」と呼ばれていたが、現在は典礼書と言うらしい。ミサーレのこと。
5 口で聖体拝領をしていた時代には、侍者はひしゃくのようなものを信徒の顎の下に置いて御聖体がこぼれ落ちるのを防いでいた
6 ホスチアは司祭用と信徒用ではサイズが違う。信徒用はミサごとに数が異なるので必要数を用意するのは大変だろう。典礼係は聖体拝領のあと、チボリウムの中のホスチアの残量をいつもチェックしているという。これはわたしは知らなかった。
7 ぶどう酒は赤・白どちらでもよいらしい。水は硬水・軟水を問わないようだ。水で薄めずにぶどう酒をそのままがぶりと飲む司祭はさすがにいないようだ(冗談)。
8 聖水盤の聖水は右手の指先につけて十字を切るという習慣を忘れてしまっている人もいるという。手を合わせて祈るとき、右手の親指を上に載せるという慣習も崩れてきていると聞く。コロナ禍の悪影響ははかりしれないようだ。