事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

浅田次郎

2015-05-15 16:39:17 | 本と雑誌
何かものすごくアホらしいモノを読んじゃった気がする(こちら)、いや別にケナしてはいない、見事にギャグが滑ってるとこは高橋源一郎に近いけど彼と違ってギャグじゃないところが退屈ということはない、それとこれけっこう肝心なことなんだけど、読者が知ってることを登場人物は知らずに右往左往のスレ違いという状況がほとんどない、また現実には存在するハズのない「絵に描いたような」成金や警官や詐欺師や小説家や編集者やオカマや学校の先生がさほど不自然でもなく目の前にいる気分にさせてくれる、さらにはパズルみたいに人間関係がピシっとハマるというあるわけのない結末すら、めでたしの大団円でよかったなと思わせてくれる、何と言うか、お話のツボがわかってるんだよな、これは映画見てもよいかも、元がこれだったら映像化してもつまらんくはなりようがないんじゃないか・・・(と思ったけど登場人物の省略以外にもいろいろ改変があるみたいね)

「王妃の館」というホテルは実在でルイ14世の母親(=ルイ13世のお妃)が滞在してたからこの名前なんだそうである、なるほどそういうことか、小説の中ではルイ14世の元愛人と息子が住んでいる、そのヒト王妃(英語で言うとQueen)じゃないじゃんとはなぜか誰もつっこまない

最高に滑ってるギャグというか私が一番笑ったところは(久々に地下鉄の怪を実現)ルイ14世の子供たちがどいつもこいつもバカばかり、天衣無縫のバカ、古今無双のバカに完全無欠のバカ、起死回生のバカ(何だそれは?!)というくだり・・・おいおい何もそこまで言うこたないだろと思うけど、14世の母は(近親婚で有名な)スペインハプスブルグ家の王女、本人のお妃もスペインの王女で父方母方双方のイトコに当たってるとなると、まあそら子供はバカになるかもしれんわな(失礼)

しかしなればとて愛人の子供が賢いから後継に迎えるなんてことができるかと言えば、いかな太陽王だって(いやそれなればこそ)できるわけがない、特にフランスはカソリックの国だから嫡出子と庶子は明確に区別されている、それにそも君主というものを賢いかバカかで決めるべきではないのである(名君しばしば簒奪者という事実はまた別)、作中の小説家が書く小説中小説ではなぜか誰もそれを指摘しないフシギ(坊さんだってついてないハズないのに)、作者(浅田の方)の中ではそんなこと(=嫡出かどうかということ)どうでもよいんだろか、ナゾだ、ま、カソリックではない日本人なればこそ書けるシッチャカなのかもわからんが

そうそう些細なツッコミを一つ、7年は2555日ではない、その間に閏年が1回あれば2556日、2回あれば2557日である、日付がずれないためには8年2922日(閏年2回)をとるべきだ、もっともそれだって1700年(閏年じゃない、ルイ14世58年-フランスでそういう言い方するかどうかわからんけど-に当たる)が来たらずれちゃうけどね

もう一つ、私は騙されるの大好きなミステリ読みだが予定調和的(だと思ったよ的)大団円が嫌いというわけでもない(笹沢左保のミステリ、特に時代物ってそういうとこがあったと思う)、最初に傷心のリストラOLと堅物の元警官が登場した時点で「あ、この二人はくっつくな」という予感絶対あると思う(ないというヒトがいたらお目にかかりたい)、実際彼らはかなり早い時期にニアミスを果たす、男は女の名前も知っている、ところがラスト近くで二人がバッタリ遭遇した時は・・・え、そらないだろ、そもまっとうな男とオカマがペア成立なんてありなの??どんな予定調和作者にも完全にはコントロールできないストーリー展開ってあるもんなのかもね

↓続き

2015-05-15 09:26:22 | アニメ・コミック・ゲーム
常識人(自分のことのつもり)だったら脳内人格を何て名づけると思う?

議長-中曽根風見鶏、誰が考えてもこれしかあるまい
ノー天気-村山か細川、どっちがいいかな?
悲観主義者-小泉、最近では一番攻撃的だった気がするし
記録係-宮沢か福田、冷静なことでは宮沢の方がいいかも
子供-鳩山、これはこれ以外考えられぬ

これだとせっかく美男美女に描かれてもモデルの顔が浮かんじゃってお笑いになりさう、思いっきりミスマッチでよかったんだろね、子供の鳩山以外は

少女マンガ

2015-05-14 12:00:03 | アニメ・コミック・ゲーム
映画のポスターを見て「へえ、カッコイイ(脳内人格が)」と思い、原作がマンガと聞いてソニーを見たら1冊目は期間限定無料(こちら)、これは読まずんばあるべからず・・・というわけで早速読了してしまった

期待にたがわず脳内5人組はカッコイイ、美男美女ぞろいで服装もバッチシ決めて(今時こんなフォーマルはやらんのじゃない?という感じだがそれはそれでかまわない、現実じゃないんだから)机を囲んで会議を続ける、その間現実のヒロインは何をしてるかと言うと、これが王道の少女マンガをやってる・・・・んじゃないかな、とんでもなく傷ついた過去を持ち会社もやめちゃったけどバイトで始めた仕事が意外とうまく行って収入バッチシ(無能な人間としてはそんなうまく行くかよとツッコミたくなるんだがそこは有能なヒト=作者の弱点よね)、甲斐性のありそうなイイ男もみつかる、めでたし(何かスゴい要約という気もせんではない)、彼女は大人の女性でセックスシーンもあるから対象読者が小学生ということはないんだろが、これで納得なのはせいぜいが中学生じゃあるまいか

あれ、ケナしちゃったね、だからこの作品のキモはストーリーじゃなくて延々と続く脳内会議なんだって、あんまし誰も言ってないけど彼らの名前がいい
優柔不断な議長の吉田(メガネの若い男)、ノー天気な石橋(もっと若い男)、悲観的で攻撃的な池田(キャリアウーマンな若い女)、無口な記録係の岸(ヒゲの中年男)、衝動的なハトコ(少女、なぜかこいつだけ鳩山じゃないのね)
それぞれのキャラがモデル(歴代首相)とミスマッチ過ぎ、これわざとやってるんだよなと思うけど私より20年下の作者が彼らをリアルで知ってるハズないわね、私ですら岸と池田しか知らんのに(鳩山だけは孫の方ってジョークだったりして、もしそうだったら変に合ってるかも・・・と調べたら連載開始当時の首相は確かに鳩山だった)

他の作品を読みたくなる作者かも

カー短編集

2015-05-12 12:07:12 | 本と雑誌
これまた連休中に丸善でゲトして来たモノ、既読である、絶対既読なのである(強調することか?)、「かぎ煙草入れ」よりは後だったが「髑髏城」よりは前、つまりカーの探偵で最初に出合ったのが(たぶん)マーチ大佐だったのだ、2番目の「空中の足跡」が印象的だったのでもう一回読みたいと思ってたんだがなかなかみつからなかった(と思う)、創元社の在庫一掃シリーズに感謝(違うって?)

新透明人間-読んでるうちに思い出した、ああ、あれか(トリックは忘れてたけど)、ハメられたことに全く気づかない主人公(?)が気の毒、これをおかしい(アッハッハと面白いって意味)と思うヒトもいるんだろな
空中の足跡-悪知恵が働くわりに全然後先考えてないマヌケな犯人がいい、好きだよ、こういうの、一回やったらオワリだけどさ(そら何でもさうだ)
ホット・マネー-意外な金の隠し場所・・・そんな都合よく目撃者がいるもんか(そこかよってそこさ)
楽屋の死-簡単に人間を入れ替えるなよ(あ、これネタバレ?)
暁の出来事-死んだふりにアッサリ騙されるなよー(あ、これもネタバレ)
二つの死-そっくりな他人なんていると思う?(これはネタバレじゃない)
目に見えぬ凶器-返り血のことを忘れてないか?
めくら頭巾-かわいそうな殺し方するんじゃねえ!!

てなわけで3番目以後は完全に忘れてた、何となく気に入らない犯人のことは忘れちゃうもんなのかも(少なくとも私は)、マーチ大佐に似たキャラでマーキス大佐というヒトもいたハズだがこれは別の本に出てきたらしい、こちらも細かいとこは忘れたし、いずれ買うかな?


昨日の続き

2015-05-11 16:26:46 | 映画
元ネタをみなおすとヒロインのお栄さんはいまいち影が薄い、北斎はとにかくカッコイイけど一番キャラが立ってるのは後の渓斎英泉こと池田善次郎(まだ無名)で後半はほとんど「善次郎女難録」になっちゃったという感じ、キャラが勝手に動き出すことってあるもんよね

という元ネタを映画ではどうしたかと言えばお栄さん、別居中のお母さん(なぜいっしょに住んでないかという説明は特になし)、眼の見えない妹(早世)を中心に据えて、でもそれだけじゃ長編にならないから、龍や地獄絵を描く話、火事が好きというネタ(でもサラッと流す)、年下だけどすでに有名な歌川国直とのちょっとしたいきさつ(ほとんど何もなし)、首が伸びる女郎の怪談(吉原ってああいうところだったのか、初めて見た気がする)、版元に「嫁入り前の娘が(春画を)描くものじゃない」と言われて陰間茶屋で男娼を買う一件(なぜか阿弥陀如来、いや盧遮那佛に踏んづけられる)、美男の先輩に片思いしてアッサリ失恋(いくら何でもアッサリし過ぎのような、女弟子のお政さん、このワンカットしか出ないんだもん)と言ったエピソードがさしたる脈絡もなくつなぎ合わされる(別にオムニバスというつもりじゃなかろうが)
これはこれで文句ないけど、できれば美人画を買ってくれたダンナが「絵の女に呼ばれた」と言うエピソードともう一つ大マジメな弟登場の巻を是非入れてもらいたかった(あれは笑ったからなあ)、いや映画オリジナルな妹の出演シーンも別に悪くはないのだが(あの「神奈川沖波裏」をこう使うかって)

ともあれできれば「読んでから見て」もらいたいな、これ何でもさうとは言えない、「読まなくてもいい映像化」って確かにあるからね、ま、何にしてもアニメでよかった、実写だったらとても見るに耐えんだろうから

最後に一つ、犬の演技が実にいい、これも実写じゃほとんど不可能な美点

追記-そう言えば思い出した、風太郎御大の「八犬伝」で馬琴が「あんたはともかくお栄さんの絵が売れるのか」と失礼なことを言うと北斎いわく「笑い絵を描いてるのさ、あご(=お栄さん)の笑い絵はおいらよりうまいんだ」、確か出戻り娘だと言ってたからこの時期より後の話なんだろうけどそっかうまくなったんだ、よかったよな(何がだ?)