事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

桑野みゆきさん

2006-11-09 16:50:38 | ミステリ

不逞の輩―退職者たち 不逞の輩―退職者たち
価格:¥ 620(税込)
発売日:2005-10
 女優の梓英子さんを訪ねてくださる方がけっこうおられるので図に乗って昔の女優さんシリーズを・・・なんてね、もちろんウソ。シリーズにできるほど映画に詳しいわけがない。ひたすら川津さんを追っかけてただけなんだから。
 ただ追っかけるとなれば徹底的に追っかけたわけで昭和30年代の映画がTV放映されたら時間が許す限り見ました。昭和42-3年のことです(と言ってもハテ何本見たことやら・・・・たぶん片手の指に足りない)。

 そんな中の1本に「恋の画集」(たぶん昭和35年)ってのがありました。同じ時期に松竹で活躍しておられたわりに桑野さんと川津さんの共演作品は少なくて、特に(ちょっと年齢が違うせいか)恋人どうしを演じられたのは「青春残酷物語」以外にこれだけなんではないかと思います(goo映画による-あれの元ネタってキネマ旬報かな?よーく見るとけっこう不備があったりするのだった)。

 セールスマンの彼(川津祐介)は恋人(桑野みゆき)が妊娠したので結婚を考えるがとにかく金がない。ある時夜行列車に乗っていて恋人の上司(佐野周二)と愛人(鳳八千代)の不倫旅行を目撃。隠し撮りして上司にその写真を売りつけようと企んだのだが・・・・

 「あっ」と思われた方がおられたらたいしたものです。ここまでは佐野洋氏のミステリ「ひとり芝居」。登場人物の名前も同じです。また上司の奥さんが妊娠中の恋人に会って彼女が夫の愛人なのでは?と疑う-など細かいところまで原作通りで、偶然似てしまったということはあり得ない(どころか原作・佐野洋のクレジットがちゃんとあった・・・・ハズ。実はこのストーリー、家人にメッチャ不評です。当時のカメラ技術で夜間の隠し撮りなどできるワケがないとのこと、それはその通りなんだろうし作者の佐野さんはわりとリアリティにこだわられるタイプなので確かにこういう安易な設定は珍しいかも)。

 ところがこの先はまるで違う。原作ではシロウトがこんな犯罪者のマネ(いや実際の犯罪)を実行して無事にすむわけがなく、彼は金を手にしたものの殺されて探偵(一番の容疑者である上司の友人)が犯人探しに乗り出す-というオーソドックスなミステリが展開します。

 映画の後半は・・・彼と彼女は結局金を手にできず、でも無事に結婚して新婚旅行に出発(実は創造妊娠だったというフザけたオチまでついていた)、恐喝の被害者であるハズの上司は彼らの結婚式に無内容なスピーチを読み上げる(なぜか浮気もバレずにすむ)・・・まるで気の抜けた「何これいったい」-な展開でした。

 「ひとり芝居」を読んだのはずっと後のことですが、この映画は私にとってまさしくミステリなんですよね。佐野さんは自作の映画化にけっこううるさくチェックを入れられる方と承ってるんですから。よりにもよってここまでマヌケな改変(いやはっきり改悪)台本を黙って見過ごされたのは何故なのか・・・昭和の終わりごろに一度ファンレターを書きかけたのですが、あんまり時間が経ち過ぎてるかな-と思ったのと途中でめんどうになったのとでやめてしまいました。

 したがってこの疑問を公開するのは今が始めてです。46年ぶり-ほんと何を今更-ですよね。
 え?タイトルと内容が合ってない?アハハ、カタいこと言わない・・・実は私、佐野さんのファンでもあるんですが、今まで公表するチャンスがなかったので。


ドン・イルカー、ドン・ナイカー

2006-11-09 00:21:56 | 学問

 ひょうたん島を知ってる人になら通じるギャグ-って何人いるんだ、そんな人ーと言いながらこのタイトルをつけたいから、この記事を書いたと言えないこともない・・・・

 イルカはガラスの水槽で飼われてもガラスに衝突してケガをしたりはしないし、またガラスに映る自分を自分だと認識しているらしい-ことが確かめられているそうです。
 これは大変な学習能力ですよね。陸上動物は水面に映る自分を見られる(でもそれが自分だとはわからないことが多いらしい、イソップの犬はまんざらの作り話でもないような)けれど、野生の水中動物が反射面に出会う状況はちょっと考えにくい。

 2000年のこと、捕獲されてブルックリンの水族館に暮らす10代の男性イルカ君2頭(名前なし)と担当職員の皆さん、それにイルカ研究者諸氏の協力を得てイルカが鏡で自分を観察できるかどうかがテストされました。

 まずこのイルカ君たちは鏡像に向かって生きたイルカに対するような行動はとらないとのことです。その辺はしっかり研究されているのでまちがいない。もちろん初めてガラスの水槽に入れられた時にどうしたかはわからないので、ガラスの裏側を見ようと水槽から乗り出したり、鏡像に話しかけたりもしたかもしれないけれど、彼らはすでにその時期を経験済みなのでした。

 その彼らに対して先日ゾウさんで紹介したマークテストを実行しました。
 イルカ君たちは食事の時に油性マジックで体のあちこちにマークを描かれ食事が終わって自由に行動できるようになったらどう行動するかをビデオカメラで撮影されたのでした。
 結果はおおむねのところ予想通りで、彼らは鏡があれば鏡の前へとんで行って描かれたところにマークがあることを確認しました-と簡単に言えばそうなります。
 もちろんただそう見えたということではなく、彼らがまちがいなくそのように行動しているかどうかを専門のイルカ学者にビデオをよく観察して決めてもらい、複数のテープを統計的に解析して、鏡のあるなし、マークのあるなしの行動の差を確認する大変めんどうな作業を行った上でそういう結論になったのでした。
 ゾウさんと違ってイルカ君がマークを無視しなかったのは幸い。

 さらにまた2頭が交代でマークを描かれている間、もう1頭はまるで相棒のマークに関心を示さなかったとも報告されています。別に仲が悪いわけではないから時には話し合いもするハズだけど、どうやらイルカ君は
「オマエ、顔に何かついてるよ」とは言わないらしいのでした。
 これもゾウさんとは違ったらしいのが幸いでした-って実験はこっちが先だったのですね。このデータがあったからゾウさんも2頭ずつのペアで観察されたようなのでした・・・・・違ったかな?