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物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

遠山啓 『数学入門』

2012-06-30 12:44:53 | 本と雑誌

遠山啓著『数学入門』(岩波新書)は名著だと思うのだが、その上巻の1959年11月発行の初版には誤植がいくつかあった。

それらがきちんと訂正されているかどうかは前々から気になっていたことであったが、それを今日までチェックしたことはなかった。

新しい版とはいってももう10年以上前の2000年5月の62刷と比べてみたところ、さすがに長く読み継がれているだけあって、私の見つけていたミスプリはすべてなくなっていた。

2000年のときには重刷という感じで、しばらく品切れになっていたのを品切れをなくすというような意味があったのだろう。それで新しいのを買い求めたらしい。

いま振り返ってみると、1959年は私が二度目の大学一年生を繰り返していたころで、もはや戦後ではないといういい方がされて、まだ間がない頃であった。『数学入門』の上巻の方は読んだと思うが、下巻はその当時には読まなかったと思う。

下巻はあまり目新しいことが書かれていないと思ったのか、微積分のことは十分に知っているという思い上がりからであったかもしれない。「下巻は上巻ほど面白くない」という誰かの評もずいぶん後になって、どこかで読んだ気がする。

2005年に勤めを退職してから、下巻を読んで、遠山さんが書かれている連続複利法にもとづいた自然対数の底 e の導入法を詳しく説明したエッセイを書いた(つぎに引用するものは、前に書いたものの改訂版でインターネットでアクセスできる。「数学・物理通信」8巻2号(2018.3.15)11-15)。

これは遠山さんの説明が岩波新書であるというスペースの制限のためにその記述はまだ十分でないと思ったからである。だが、それにしても元のアイディアは遠山さんにある。

上巻で感心したことは虚数単位 i の説明であった。このような説明をまったく知らなかった訳ではないが、徹底した説明であり、これで虚数単位 i を身近に感じるようになった。これと関連して(-1)*(-1)=1であることも納得したと思う(注1)。

私はこの『数学入門』(上)の第1章を読むのにとても抵抗を感じた。だから、1980年代の終わりに、この上巻を読み直したときには上巻の最後の複素数の章から一つづつ前の章へと帰っていくという方法をとって、それを読み終えるのに約1週間かかった(注2)。

これはもちろんそのときは学生ではなく、勤めもあり、夜間の暇を見つけての読書であったから、これくらいの時間がかかったのは仕方がない。いまだってそればかりに熱中しては読めないからやはり同じくらいの時間がかかるだろう。

だが、この書はいまでも読み継がれている。

(注1) 遠山さんの『数学入門』よりも以前に、藤森良夫先生の著書『解析の基礎』 続(考え方研究社、1954)で複素数の90度の平面回転としての i の働きや(-1)*(-1)=1の説明をすでに高校生のときに読んでいたと思う。しかし、それでも遠山さんの徹底した i についての説明は大いに役に立った。

(2018.3.12付記)上に書いた藤森先生の 虚数単位 i の説明は私の読んだ上に引用した本よりも以前にすでに藤森良夫『初等複素関数論学び方考え方と解き方講義』(考え方社、1941)p.21-22に述べられている。この書は私の亡くなった父の蔵書の1冊である。

(注2)私がこの『数学入門』上、下を読み返していた1989年はべルリンの壁が崩壊して、当時の東独と西独とが再統一され、新しいドイツが誕生した記念すべき年であった。

(2019.7.28付記)「数学・物理通信」9巻4号に「遠山啓の岩波新書を読む」というエッセイを載せている。これは以前にある雑誌に載せたエッセイを改訂したものである。「数学・物理通信」はインターネット検索すれば、すぐにわかるので、そちらも読んでみてほしい。


 


7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
昨日はブログの更新がなかったので、どうされたの... (ウエムラ)
2012-07-10 20:03:22
昨日はブログの更新がなかったので、どうされたのだろう
と思ってました。故障だったのですね。。

土曜日は遠山先生の”さんすうだいすき”をこよなく愛してる80歳のおじいちゃん先生のお話会に参加しました。
アットホームなお話会で和気あいあいとした雰囲気で楽しい時間でした。幼児から小学校低学年向けで、親が子供に行う行為で、①数を唱える②12345。。。と順番に教える。そして子供がやりがちな③指算。この3つをやらない!
かけ算の九九は5段→9→2→4→6→8→3→7→1→0の順番に教える。とても興味深い内容でした。 

遠山先生の”数学の学び方・教え方”の本は数学の苦手な私でもなんとか読めたのですが、数学入門はなかなか進みません。。後半はめくっただけで睡魔がやってくるようです。

話がまとまり無くすみません。
数日前、長男が計算ドリルをしていて、
Q: 10を63こあつめた数は?
の問題が解らないと聞いてきたので、とても困りました。。そんな大量な同じサイズの積み木もないし、作るのにも時間かかるしで。。
結局主人が10を10個は?10を60個は?10を3個は?と聞いていきなんとか答えがでたようです。
でも理解はしてないようでした。
で、昨日、息子は『先生から習ってきたよ1』と自慢げに言ったので聞いてみたら。。
『63に10の0を63の後に付けるんだよ!』と答えました。愕然としました。それはテクニックにすぎないではないですか!かけ算も倍も知らない、位取もままならない子供にそんな教え方するのでしょうか??
その教え方が正しいのでしょうか?算数は暗記だという先生もいます。
どう教えたらよいのでしょうか?
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おはようございます。 (ウエムラ)
2012-07-11 04:44:09
おはようございます。
昨日コメントさせて頂きました!
横で子供がぐずり出し慌てて書いた文章で
確認する事も出来ず、誤字脱字、おかしな文
ありましたらお許しください。。

それにしてもひと学年で10%の落ちこぼれ(落ちこぼし)がいて中三までには90%の落ちこぼれを出すという教科、数学。もちろん私もそうです。
どうしたら算数が好きになるのでしょうね、、
ちなみに私は、遠山先生の本よんで、なるほど!!
と思ってもしばらくしてまた読み返すとまたなるほど!
と感じてしまいます、、、すぐ忘れてしまうのです。。
子供達は毎日沢山の勉強を詰め込んで帰ってくるのだから忘れたり解らなかったり当然ですね~

ほんと今の子は大変だ~~

先生は間違いなく子供の頃算数がお好きでしたよね???
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ウエムラ様 (あおやま)
2012-07-11 11:06:32
ウエムラ様

たくさんコメントを頂いたのですが、なかなかすべてに答えることができません。

徐々にお答えしていくことにします。

まず、簡単にお答えできることから、私は算数とか数学が好きだったかですが、考えることは好きでしたが、数学とか算数の計算は好きではありませんでした。

また、数の計算などは大抵間違えていたようです。だから、最上級のよくできる生徒ではありませんでした。

中学校の頃にでも、計算のない数学があったらといつも思っていたものです。

高校1年のときに数学ができなくなり、そのころは英語が好きでしたので、英語学か何かを専攻するつもりでした。

2年になり、自分の人生を思いやって、もう一度理科系に帰ることに決意しました。そのためにある学習参考書を自習して、高校でわからなかったところが少しづつわかってきました。

それと私を教えてくださった、先生の数学の理解に批判的になりました。とても私には納得できるような、いい教え方だとは思われなかったのです。

だから、私の数学好きはある意味で「筋金入り」です。
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ウエムラ様 (あおやま)
2012-07-11 11:33:53
ウエムラ様

> Q: 10を63こあつめた数は?

いろいろ教え方はあると思いますが、絵に描いて教える方法があるでしょう。

まず、1は1cm四角のもの1個とします。それを10個集めて、縦に積み重ねてやれば、横幅が1cmで縦の長さが10cmのものができます。それを1本と呼んでいます。

さらに、その1本(これは数としては10)を10本横に並べて集めると横幅が10cm、縦の長さが10cmの大きな正方形ができます。これを1枚と呼んでいますが、これは数の100を表します。

1枚が6枚あると600ですが、これは10を60個集めたものです。

それに1本(これは10でした)を3つ集めたものが3本です。これは全体で30を表します。

1枚(100でした)が6枚と1本(10でした)を3本ですから全体では630です。

これを図に描いてお教えになるか、実際に紙の正方形をつくって確かめてもらいます。手間を省くために方眼紙を使うことも考えられますね。

しかし、お母さんが手作りで1本のタイル(これは画用紙か何かに描いたものをきったものでもよい)をつくって教えてくださると頭に入るかと思います。

これが唯一の教え方ではないでしょうが、一つの教え方でしょう。
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ウエムラ様 (あおやま)
2012-07-11 12:02:48
ウエムラ様

>かけ算の九九は5段→9→2→4→6→8→3→7→1→0の順番に教える。とても興味深い内容でし>た。

ああ、そうでしたか。いい教え方ですね。

私が知っているのは5の段をはじめに教えるというのは同じですが、つぎは2の段だったようです。

9の段の方が却って教えやすいという、このごろの経験なのでしょうか。昔は9の段は一番最後に教えたように思います。もっとも0の段があるなら、この0の段の方が難しいでしょうが。

それと普通は上り九九ですが、数学教育協議会は下り九九だったように思います。

ただ、九九を歌のようにして覚えさせるので、これは上り九九ですね。その辺をどうしているのかはよくは存じません。

下り九九を推奨するのは割算の仮の商を考えるときには大きい数から試していくということにあるのかもしれません。

その辺の話は「算数の探検」に載っていませんか。 
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おはようございます。 (ウエムラ)
2012-07-14 05:19:16
おはようございます。
お返事たくさんありがとうございます!!
遅くなりましてすみません。

この3連休はキャンプへ行く予定でしたが、このとてつもない大雨の為キャンセルになりました。
なので、自宅でのんびりしようと思います!
で、タイル作りをしたいと思います。
一昨日試しに厚紙を20まいくらい切ってみたのですが1枚の厚みがあまり感じられず1枚も10枚もあまり変化がないのがちょっと考える余地ありかなとおもいました。
でもやはり自分で見て数えて体験するのが一番ですよね!!
先生の学生時代を暴露させてしまいすみません!!
算数ってクイズを解くようなものなんですよね、出来た時の達成感が最高なのでしょうね。。(私には、あまり解りませんが、、、)でも子供にもそんな風に楽しんでもらいたいです。
しかし、もう一度理科系に戻ったから今の先生があるのですね!分岐点の一つでしたね。でも先生ならば他を選ばれてもきっと成功されてた事でしょう。
先生のブログをいつも拝見してて、お年を召されてても(失礼ですみません)色んなことに興味をもたれとことん調べていく、すばらしいな~と思います。

もうすぐ夏休み、こどもは大量な宿題を抱えつつ、この夏しか出来ない体験を一杯させたいともくろむ母!をどう対応していくのか。。楽しみです。
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ウエムラ様 (あおやま)
2012-07-14 12:00:09
ウエムラ様

あまりコメントに返事をされることを義務だとかはお感じにならないようにしてください。

それでなくとも、女性は母であり、妻であり、一家の中心で忙しくされているのですから。

ちょっと気になったことは厚紙のタイルですが、10が63で630というときの10は平面上に縦に並べます。上下に積み上げるのではありません。

そうすると、横1cm、縦10cmの長方形ができるので、それを子どもが1本と呼んだことから1本の名が来ています。

1本を横に10個並べると横10cm、縦10cmの正方形ができますが、これが1枚といわれるものです。

誤解はされてはいないとは思いますが、ちょっと気になったので申し添えます。

さらにつけ加えますが、1cm四角の正方形を縦に10個並べてそれをうらにガムテープか、セロテープで貼って10個を一体とした1本を標本としてつくって置いてください。

さらにこの10本を横に並べた1枚もつくって置かれるといいと思います。

これらのサンプルは一つづつあれば、後は1cm掛ける10cmの厚紙や、またさらに10cm掛ける10cmの厚紙があればいいでしょう。

私の子ども時代とか少年時代のことは隠すようなことでもないので、そのときのことを話したからつらい思いをしているわけでも、またそれを誇らしげに自慢したい訳でもありません。

いろいろな人がいるのが、世の中なのでその内のひとりにしか私はすぎません。
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