2変数関数だとか3変数関数を扱うときには必ず偏導関数が必要になる。
それで普通の1変数の微分の一般化は偏微分だと思ってしまうが、これがまちがいだ。
そうではないと教えてくれる本が松田・宮本『微分と積分』(講談社)である。どの本でもそのことをはっきりとは書いてくれていないのだが、宮本先生がその点を詳しく考察してくれている。
だが、あまりこのことが知られていないのだと思う。これは残念なことである。ついでに言えば、大学の基礎数学として微分と積分と線形代数ということになって久しいが、これらの教育の背景に正比例という思想があることを知ってほしい。
最近の線形代数のテクストではそのことを書いたテクストが多くなっているのでその点では大進歩だと思っている。しかし、まだ微分と積分に関してはそこまで行っていないのではないか。
さらに、森ダイアグラムに基づいた大学の基礎数学の本が主流を占めるようになるのはいつの日か(注)。
倉田令二朗とか、森毅とかまたは瀬山士郎といった数学者の書かれた、数学のテクストがこの流れに沿ったものであるのだが、まだまだ十分ではないと考えている。
(注)
森ダイアグラムは数学者にはまだよくは知られていないと思う。森ダイアグラムは別に森毅さんだけの発明ではないそうだが、それでもそう呼ばれている。これは森毅『ベクトル解析』(日本評論社)p.6とか倉田令二朗『数学と物理学の交流』(森北出版)p.16に説明がある。
松田・宮本『微分と積分』よりも以前に全微分可能が多変数関数の微分可能だとの見解は笠原『微分積分学』(サイエンス社)に意識して書かれていることを知った。このことをさきほど笠原の本を参照して知った。
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